読切小説
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血の虜
俺は今、放課後の学校の廊下を歩いている。なぜ呼ばれたかは目的地である俺のクラスのクラスメイトである女子生徒、瀬戸紅が説明をしてくれるだろう。ついでに俺は戸崎陽樹。ついでと言ったのはそこまで自分がすごくないと自分で理解しているからであって決して自虐からではない。ここ重要テストに出るまである。まぁそれはどうでもいいとして俺を呼び出したのは瀬戸だ。理由はわからない。だから今こうして目的地に向かってる。告白?バカ言えそんな色恋沙汰に染まるほど落ちぶれていない。仮に告白だったとしてそれはドッキリに違いない。瀬戸はクラス、いや全校でも三本の指に入るほどの美少女であり美女である。人間と魔物(女)が混ざった魔物娘という種族が見つかって数十年。人類は新たな種と共存することを望み、今は平和な世界そのものだ。





しかし、魔物娘という種族との共存が始まって数年、男と女の誕生比率がおかしくなってきている。というか、おかしい。ほぼ同じくらいであった男女比率は魔物娘が出現してから男三対女七という形になっている。これを聞いていいように考える輩もいるに違いないが、男子高校生にとってそれは毒以外の何者でもない。隣を向けば女子、前を向けば女子、後ろも女子、教師も女子、しかも魔物娘がほとんどだ。魔物娘はそこらの人間より遥かに優れた容姿を持ち男を誑かす。言い方に語弊を生むかもしれないから補足しておくと魔物娘は愛した男を離さず墓まで持っていく。よって男、女そろって愛し愛されるウィンウィンな結果で生涯を閉じるということだ。





んで持って何が言いたかったかというとその瀬戸も魔物娘であり、種族は吸血鬼、ヴァンパイアだってこと。その証拠に瞳はルビーも真っ青な紅色をしており、長く美しいと言える黒髪をしている。体はボンキュッボンを体言したグラマラスな体系をしており数少ない男子はその体を盗み見ては前かがみ状態だ。最初に言っておくと俺もEDではないのだが、女子にあまり興味の湧かない俺でもたまに股間が反応してしまうことが時折ある。もちろん学校という公共の場所で前かがみや常時ポッケに手を突っ込むといった羞恥はしたことがない。





そんな美女であり、ヴァンパイアである魔物娘の瀬戸が俺なんぞに何のようだろうか。期待などという言葉は捨て、いつも間にか目の前にあった教室の扉をスライドさせた。




「こんにちは、戸崎君。呼び出してしまってごめんなさいね」




大人の女性を連想させるような余裕をもった口調だ。




「バイトもないし別に良かったけど。んで、さっそくだけど何の用?正直早く帰りてぇんだけど」




あんまり女子と話したこともないせいか早口になってしまう。そして瀬戸紅ファンクラブが見たら火を噴いて発狂しないとも限らない言葉を俺は発する。苦笑いを浮かべて彼女も口を開いた。




「ちょっとお願いがあって」





「ほー、それは興味が湧くねー」





窓側に立つ彼女を見ずに外で部活動に励む生徒達に視線を向ける。やべ、棒読みすぎたか?さすがの彼女も眉にしわを寄せる。




「人とは目を合わせて話しなさいな」





「あ?あー、すんまそーりー」





一瞬、俺と彼女の間に冷たーい風が吹いたよな気がする。これ以上考えるのはやめとこ。




「あなたの血が欲しいのよ」




「血?血ねー。はぁ?なんでまた」




またも外の部員に目が移りそうになったところで我に返った。




「ね、いいでしょ?」




「いや、良くないっていうか・・・」




後ずさる俺の歩調に合わせて瀬戸も俺を追うように歩みを進める。





「さすがに瀬戸の頼みでもそれはちょいとあれだな・・・」





美女=クラスの中心。彼女はまさにそれであり彼女の頼みを断れば翌日俺にどのような報復が待ち構えるかわかったもんじゃない。それでもそれがわかりながらも葛藤するほど俺も回答に悩んでいた。俺の中でも固定観念である吸血は魔物化。魔物娘と言われつつも性別は女だけではなく男も少なからずいる。代表例がインキュバス。魔物娘と性行為を重ねることで徐々に体が人間のそれから離れていき、最終的には精を吐き出し続けることのできる体に改造される。他にもメリットはあり、身体能力の向上や寿命が魔物娘に合わせて延びたりする。しかしながら俺は人間でいたい、と本能が叫んでいるような気がして、彼女に近づけない。



トン、と背中になにかがぶつかる。あれー?なんでもう壁際?はやくね?





「どうしてもだめかしら?」





「・・・・だめ、かな」






「・・・そう」







葛藤の末に出した答え。俺ももう少しは人間として余生を過ごしながら人間の女性と結婚したい。彼女は残念そうに呟くとなぜか不必要な牙を俺に見えるようにチラつかせた。



「じゃあ勝手にやるから」




「あ?いっ・・・」





蛇のように彼女の腕がするりと首に回され、近かった距離がさらに縮まった。女性特有の甘い香りが鼻腔を擽る。一瞬何が起こったかわからなかったが、不意に走ったうなじ近くの痛みが俺を我に返した。



「なに、してっ」




「ん〜〜」




注射のときのような痛さが首筋を通り抜けた。彼女の方を掴み引き剥がそうとするが、力が強いのか離れない。あれ、違う。彼女の力が強いんじゃなくて、俺の力が弱まってるんだ。掴んでいた肩への力はとうとう力尽き腕がだらんと垂れ下がる。ついに立っていられなくなり、尻餅をついてしまう。体中には微々たる物ながら快感が迸っていた。




それでも彼女は首元から離れない。ぐったりとする俺の上に彼女が対面で俺の血を吸っている。数十秒、数分経ったところでやっと瀬戸が首から口を離した。唇がてらてらと俺の血で淫靡に光る。頬は心なしか上気し朱に染まっている。




「「はぁ、はぁ」」




呼吸が自然と重なる。俺は血を吸われて脱力したことで、瀬戸は俺の血を吸ったことで息を乱しあう。




「はぁ、お前っ、なにしてくれてんだよ・・・」




怒ろうと声を出そうにもまだそこまで大きな声を出せない。ここまで来ると俺の脱力感が伺えるだろうか。




「あぁ!ごめんなさい、つい我慢できなくて・・・」




ついさっきまでの勢いはどうしたのか、乙女モード全開の瀬戸。




「誰かに見られたらどうすんだよ。それよか、俺許可なんて出してないんだけど・・・・」




「本当にごめんなさい。でもあなたの血を吸いたくて堪らなくて・・・」




がばっ、といきなり顔を上げて自然的にまたも近づく俺と瀬戸の顔。あっ、と行き詰るが彼女の顔が俺の首、ではなく顔、口に




「ちょっ、まっ、さすがにまずいだろ」




ここで引く俺、さすがチキン野郎だぜ。いや、そうじゃない。その場の流れで接吻なんてするもんじゃない。残り少ない力を振り絞り、落っこちていた鞄を地面から引ったくり、俺は廊下に飛び出した。今さっき起こった出来事が嘘だと言い聞かせて。


















「いっくぞー」





「こいやこらぁ!!」






翌日。特に瀬戸に絡まれることも無く朝のホームルーム前である。友達のグループで駄弁りながら、そのグループの数人が紙くずをボールに野球を始めた。俺もそれを咎めることなくおもしろおかしく見届ける。顔面やら股間にボールが命中するたび男子の中で笑いが起こり、俺も便乗して笑う。何球目かもわからない球が教室の中を舞う。それは何の因果か瀬戸の椅子下に落ちる。しかし瀬戸も女子グループとの会話のせいか落ちたときの音が聞こえなかったらしい。




「陽樹ー、ボールとってー」




「へいへーい」




椅子から立ち上がり瀬戸の席に近づく。関わりあいを持ちたくないためすぐさま拾い友達に投げ返す。そこでチャイムが鳴り横を向いていた瀬戸が俺に気づいた。嫌な予感がぷんぷんする。




「あら、戸崎君。おはよう」




「・・・おう」




「今日も来てね。放課後」





「は?」





「じゃないと放課後襲われたって噂流すから」





「・・・・・・・」





ぐいっ、と顔を近づけられたと同時にものすごいことを言われる。そんなことをされれば俺の今の地位、まぁあってないようなものだがクラスメイトたちに引かれるのは当然今後の学校生活に関わる。それは是が非でもやめていただきたい。




「わかった」





「うふふ、楽しみ」





それはお前さんだけだろうけどな。




















「あら、来てくれたのね」




「そりゃあんな噂流されたくないし」




「うふふ、そうね。それよりさっそくいいかしら?」




「・・・・なにが?」




「もう分かってるくせに」




「・・・・俺の血のどこがいいんだか」




ネクタイを緩め、第二、三ボタンを外し瀬戸が血を吸いやすいようにしてやる。





「あら、親切ね」




「知らん。早くしてくれ」




「ふふ、恥ずかしがり屋さん」




嬉しそうにそう呟くと椅子に座らされる。吸血なんて立ったままで・・・・、と思った矢先俺の膝に対面の形で瀬戸が座りもたれ掛かって来た。豊満な胸の感触が如実に伝わってくる。そこでまた首筋への軽い痛み。そして全身を駆け巡る快感。




「くすっ。時々体、ビクッてしてるわよ?」




「っ、うっさい」




ただでさえ嫌、というか無理矢理されているのにそんなことを言われると死にたくなってくる。そうしてはぁぁ、と甘ったるいため息に似た声を吐き出し、俺の顔を覗きこむ瀬戸。




「あぁぁ、その脱力し切ってトロンとした顔・・・可愛いわね」




「だからっ、るっさいっての・・・!」




昨日は数十秒経つと逃げられてから今日も同じように逃げようと思っていた。そう思い腕上げようとするが、上がらない。逃げられない。



「昨日よりちょっとだけ多く吸ったから逃げられないでしょ?」




してやったと言わんばかりににやりと笑う瀬戸。




「あなたの血、甘くておいしくて蕩けちゃいそうよ」




「知るかよ、自分の血なんて。早く退けっての」




やけになっているせいか捻くれた言葉しか出てこない。しかし瀬戸はそれをも楽しむように俺を目を合わせ続ける。




「ねぇ、戸崎君。いえ、陽樹」




言い直しいきなり名前で呼ばれる。今度はなんだ。




「なんだよ?」





「私の恋人になってくれない?」





「わー・・・そりゃ嬉しい」





棒読みもいいところだ。だが、棒読みですら俺がそんなこと言うわけが無い。




「なんて言うと思ったか。いきなり血吸われてなんで恋人なんぞにならないといかねぇんだよ」




なんぞ、という言葉に反応してか瀬戸の顔が小さく歪む。




「私とは、嫌?」




「お前じゃなくともいきなり血吸われて告白されたら警戒くらいするさ」




裏がありそうでな。




「そう。じゃあ今度から前もって言うわ。『今から血を吸います』と」




「伝達の問題じゃねぇ!!しかも今度ってなんだ今度って!!もうさせねぇよ!」





こんな関係がこれからも続く?鳥肌もんだ。俺はごめんだね。悲しそうな顔をするがだめだ。腕に力が戻りつつあるのを感じていると、彼女自身が噛んだ俺の首筋をじーっ、と眺め始めた。




「な、なんだよ?」




「そんなに血が吸われるのが嫌だったら、あなたの方からその気にさせてあげる」



再度噛まれたところに犬歯が食い込む。これ以上血を吸われたら俺死ぬんじゃね?そう予知したところで得たいの知れない何かが俺の中に流れ込んできた。



「あぐっ!?あぁぁぁぁあ・・・・」




力が入らないとかの次元じゃない。まず思考が正常に作動していない。視界が朧気になるが、体に流れ込むなにかのせいで気絶することも許されない。




「あんだ、これ?」




なんだ、のつもりが呂律も回らない。彼女はおかしそうに顔を綻ばせ、一瞬だけ歯を抜いた。




「魔物娘特有の魔力よ。ほんとは性行為中なんかに使ってお互い感度を高めたりするけど、あなたはまだ人間だからこれは私からあなたへの一方通行でしかないわ」



魔力?いろんな疑問が浮かんだけど、そんなものはどうでもいいくらいに気持ちいい。



「うふふ、あなたの顔、もうすっかり蕩けちゃってるわよ?あぁ、いいわぁ」




「つうぅっ、ふぅ、ふぅ」




「私の恋人になってくれるわよね?」




魔物娘は嫉妬深く、一度決めた標的は外さない。俺はもう瀬戸の手のひらで転がっているのだろう。せめてもの抵抗、否拒否の答えとして俺は首を縦には振らず、横に振る。いつもならここでドヤ顔の一つでもして、相手を挑発できるのだが、瀬戸は笑みを絶やさない。




「もう、私はあなたのことが好きで愛しているのに。一目惚れだったのよ?いっつも女の子同士で駄弁っていたけれど頭はいつも陽樹のことだけよ。夜も陽樹とああなれたら、こうなれたらと妄想して一人でしていたのよ?私がこんなにも想っているのにあなたったら・・・。えいっ」




「はぐっ!?うっぐうううううううううううっ!!?」



衝撃の事実が頭を揺らす。が、その驚きの感情も吹き飛ばされるハメになる。三度目の噛み付き。二回目の魔力を流されたのもヤバかったが、それの比じゃないくらいの魔力が俺に流される。体も心も快楽の波でおかしくなりそうだ。



「もう一度聞くわ。私と恋人に、なってくれるかしら?」




「・・・は、はい・・・」




快楽に勝てないとはこのことか。




























はたまた翌日。噂はクラス伝いに広まり学年に広まった。噂というのはもちろん学校三本の指である瀬戸が男子と付き合いだしたという件で間違いない。相手まではまだ誰かは明かしていないらしい。噂、と言ったが噂の発祥地は瀬戸自身であり彼女のグループ伝いでクラス、学年、全校へと広がったらしい。これは大きな波紋を呼び現在ファンクラブ総出で相手を血眼で流しているらしい。うー、怖い怖い。快楽に任せていってしまったものの、やはりこういった点は覚悟せねばならなかった通過点だ。仕方がない。




「あー、マジ羨ましすぎるわ瀬戸さんの彼氏。誰なんだよー、俺とポジ変わってくれよ」




「声でけぇっつうの。でもまぁそうだな、ちょっと羨ましいかも」




いつメンで話す内容もやはり瀬戸絡み。ここにいますよー、なんて言う勇気があるはずもなく俺も興味なさ気に頷く。




「次なんだっけ、授業」




「移動教室だよ」




次の授業は音楽と書道であるためクラスの半数同同士が別々に移動し始める。ちなみに俺は書道、瀬戸は音楽である。



「陽樹」




「あ?瀬戸・・・じゃなくて紅」




苗字を言うと嫌そうな顔をするため、慌てて言い直す。昨日の吸血の後に決めたことだ。



「またお昼休みにね」




現在が四時限目であるため必然的に次に会えるのは昼休みになる。別れを惜しむように麗奈は顔を近づけてくる。




「ん」




目を瞑り、顔を近づけてくるシチュエーションなどキス以外にあるまい。吸血のときは目を開くし。ってそんなことはどうでもいい。俺も雰囲気を汲んでキスをする。数秒唇をつけるだけの軽いやつだ。離れると小恥ずかしそうに頬を朱に染めていた。




「「「「なっ、なっ、なっ」」」」





「じゃあ、またあとでね」





「あいよー」






最後に残っていた麗奈のイツメンと俺のイツメンにも見られたらしい。口をパクパクと開けている。ああゆう光景始めてみた。・・・俺に昼休みはあるだろうか?







































放課後。今日は教室ではなく俺の家への帰路の途中である。隣にはもちろん紅の姿が。初々しく手を握り合う俺らはどう見えるのだろうか。だめだ、恥ずかし過ぎる。昼休みは彼女がなんとか連れ出してくれたおかげで難を逃れられた。感謝感謝。そのおかげて膝枕体験できたし。変わりばんこで俺もしてあげたんだけども。



「それにしてもほんとだったのなー。招待しないと他人の家に入れないって」




「そうね。でも不法侵入なんて私しないわよ」




「くははっ、違いない」





ギャルゲーのヒロインも真っ青になるレベルの早さで攻略され、紅と恋人になった俺。行き当たりばったりですぐ別れるのが関の山と考えていたりもしたが、意外とお互いの趣味や話題があったりと会話の種が尽きない。そして今は俺の家へ招待しているところだ。毎日吸血を行う必要はないらしいが、回数を早めに重ねることでインキュバスに早く近づくらしい。それに俺の血は特別おいしいらしい。今日は場所が俺の部屋なのだが、吸血だけですむのだろうか?俺の中の危険信号が軽く悲鳴を上げている。




「たでーま」




「お邪魔します」





母親も紅ほどの美人を前に腰を抜かしていた。でも一番驚いているのはこの俺だぞ、おかんよ。




「あら、以外とおしゃれな部屋」




嬉しい感想だ。部屋の壁にはどでかい本棚があり、家具もお気に入りのモノクロで揃えてある。少し気取り過ぎだろうか。俺も自然体になりソファに寝っ転がりスマホをいじる。




「わっ」




「彼女がいるのにその態度は何よ」




不満気そうな顔をしているといきなりマウントポジを取られる。馬乗り状態だ。




「昨日の今日でべたべたし過ぎじゃね?もうちょいゆっくり距離を縮めようではないか」




やべ、焦り過ぎて口調がバグった。




「吸血も済ませてあるのに距離を置く必要なんてないわ」



吸血か、と思いきやキスの嵐。クビやら頬、口とあらゆる場所にキスの雨が降る。俺も今恥ずかしさに顔をリンゴのようにさせているだろう。再び唇同士が触れ合う。しかし今度はソフトなやつではなく俗に言うディープなやつ。舌が混入してきたと思うと舌が俺の舌に絡みつき離さない。口内のすべてを嘗め回されたと錯覚するくらいの深いキスだった。目を開き、唇を離すとぬらりと光る唾液の橋。満足気に俺の顔を覗きこむ麗奈。




「・・・満足?」




「まさか」




これ以上されたら俺の体力他何かが崩れるような気がする。




「さっきから陽樹のあそこが私のあそこに当たってるわよ?」




エロ漫画であるような台詞を現実世界で、それも俺が聞くとは思わなかった。




「お前がエロいせい」




「じゃあ沈めて上げなくちゃねえ?」





お世辞にも慣れているとは言えない手つきでベルトを外し、俺の息子を外気に晒す紅。だがそれも可愛らしい。




「こうゆうのあなたが始めてだから」




「俺もだ」




その返事を聞いて嬉しそうにキスをねだる彼女は本当に可愛い。普段のギャップと相まってか、その破壊力は計り知れない。



「んむっ」




肉棒を口で咥え、ゆっくりとピストンを始める。ぬるぬると口の中は温かく、慣れない様子で下が鈴口を舐めまわしている。童貞の俺には刺激の強い代物だ。じゅぶじゅぶと時折水音が部屋に響き、それがまた俺の性欲を駆り立てる。しかし、俺の性欲のダムは彼女の前に遭えなく決壊する。




「もうっ、出、るっ」




ガクガクと男ながら腰が砕けそうになる快感。精液の波が迸り、彼女の口内を白く染めていく。




「んぶっ!!?」




数十秒間に続く長い射精の果てに、お決まりの脱力感が体に奔る。イチモツから口を離した紅はあふれ出した精液を手のひらにこぼし、嬉しそうに俺を上目遣いで俺を見つめた。




「んふふ、イってくれて嬉しいわ。初めてで緊張したのだけど」



そう言うと手のひらにこぼれた俺の精液を再度口に含み、租借し飲み込んだ。官能的なシーンに思わず生唾を飲んでしまう。そこで俺の足が妙に濡れていることに気づく。




「陽樹のこれをイカせたと同時に私もイっちゃったわ・・・。この熱、鎮めてくれない?」



そう言い彼女はスカートをたくし上げ、ぐしょぐしょに濡れ、役目をしていないショーツをずり下げる。てらてらとまだ汚されたことのない秘部が艶かしく光る。虫を誘う花の蜜のように潤沢とした女の汁が溢れていた。頭がもう前座すら必要ないと判断し、俺は自分のイチモツを紅の割れ目に押し当てた。それに合わせるように彼女のあんっ、と甘い声が耳元を擽った。これ以上ないくらいに怒張した肉棒を膣に突き立てた。




「あああああああああああああああああっ」




悲鳴にも近い彼女の嬌声が部屋を満たした。頬を紅潮させ、目を虚ろにし、口元をだらしなく空け、紅は呟く。



「イっちゃったぁ・・・」




言葉はいらず、お互い求め合うように唇を合わせる。舌が互いの涎を飲み合い、肉棒が彼女の中で暴れる。獣にでもなったように理性が、意識が飛びかけの状態で貪りあう。惜しむように唇を離すと、次に行くのは首筋。することなど分かりきっている。



「ぐっ、あああああああぁ」



声が、抑えきれない。全身を伝う快感に腰の動きが止まり、身悶えする。血管の一本一本が、血の一滴が、細胞の一つが快感に溺れていく。



「んっ、ああん、だめっだめっ。またイくっ、止まっへっ、止まっ、はぁん、イっ、ああああああああああああっ」




そんな彼女の言葉さえも耳に届かない。普段の姿からは想像できない乱れよう。俺だけの、俺だけが見れる、俺だけの女だ。




「俺も、イっ、くっ!」




亀頭からわかる子宮の入り口。理性の欠片もないイチモツが入り口と濃厚な接吻を交わし、白濁と染まる欲望が吐き出された。




「んあああああああああああああっ!?」





「っぐ、ああああああああああああ」






お互い獣のような嬌声を上げ、そこで俺たちの意識は途切れた。

















行為を果たしたことを嬉しく思いつつ、その翌日が休日だったことに感謝する。ドラマのワンシーンのようにシーツに包まり、俺に抱きつく紅。彼女を起こさないようにリビングに向かうと意地悪く笑う母の顔。十数年生きてあんな気味悪い笑顔は始めてみた。なぜ笑うかなど考える必要もない。声が響いていたようだ。沸騰する顔を冷ますため水分を取りすぐさま自室に戻った。パン一だから着替えないと、なんて思って扉を開ける。



ベッドで眠るお姫様は言語化できない美しさに覆われていた。こんな綺麗な人が俺の彼女だなんて未だに信じられない。服を取り出そうとクローゼットを開けると後ろから首に手を回された。




「うおっ。起きてたのかよ。おはよ」




「おはよぅ」





やっぱりヴァンパイアなだけあって朝方は苦手なのだろうか。舌足らずな今の口調から推測する。



「あむぅ」




「いっ!?」




何度目か分からないくらい吸血されているが、慣れるものでもない。首にヒルのように吸い付いた唇は離れない。足ががくがく震え、立っているのがやっとの状況。快感によってぶっ倒れそうになった瞬間、首の感触がなくなった。




「うふふ、朝からごめんなさい。美味しかったわ。陽樹の血」




はぁはぁと荒く息をすう俺を他所に、くすりと彼女が笑うのがわかった。昨日の今日で朝からこれは辛い。いや、むしろ男なら本望か?



「んのやろっ」



恥ずかしさを紛らわすために今度は俺から抱きつく。くるんと半回転し俺が下でベッドに倒れこむ。数秒見つめあいの後、キスをする。少し鉄の味がしたのは気のせいではないだろう。


16/08/12 01:10更新 / 時計の長針

■作者メッセージ
初めて出した作品でしたが、どうだったでしょうか?
リクエストとか感想いただけると嬉しいでおじゃる(*´∀`*)コメクレー
それではさよならー ヒューン─=≡Σ((( つ•̀ω•́)つ;

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