「入国許可証は?」 「こちらに」
「「おはようございます!」」
「おはよう」
「「我が国に栄光あれ」」
「我が国に栄光あれ」
兵士たちとの挨拶を終え、私は検問に設けられた狭い一室に入る。
朝の光が入らない薄暗い部屋の中には
布のブラインドの下りた受付と、尻が痛くなるような簡素な木の椅子がある。
受付の机の上にはわが国で発行されている新聞と定例報告の書類
そして私の仕事道具がいくつか置いてある。
どうやら今日は特例は発効されていないようだ。
私はブラインドを開け
机の仕事道具の一つ、我が国お抱えの魔法使いたちが作った
「拡声器」なる魔法道具を手に持ち、冷える空気を吸い仕事の開始を告げた。
「これより検問を開始します。入国許可証をお持ちの方は前にお進み下さい」
私の声が検問所の向こうの列へ響き渡る。
仕事で使う道具だがどのような仕組みなのか私にはよく分からない。
列がアンデッドのように、もそもそと動き一人目の入国者が入ってくる。
外套で身を隠した小柄な体格だった。
「入国許可証は?」
「こちらに」
女の声だった。
受付の向こうからよれてくたくたになった許可証が渡される。
「どのような目的で」
「観光です」
「どのくらいの期間ですか」
「1週間から2週間ほど」
「結構長く滞在されるのですね」
「・・ええ、色々と見たいものがありますから」
私はやり取りをしながら許可証を見る。そして気が付いたことを口に出す。
「発行期限が切れていますね」
「えっ」
「発行期限が切れた入国許可証は使えません」
「そんな!」
「再発行してもらってください」
私は入国不許可の印を押し、紙をつき返す。
すると女は外套の胸元をはだけさせながらこう言った。
「も、もし通してくれるならイイコトしてあげるわ♥」
彼女はサキュバスだった。
私はサキュバスの下着同然の姿を見て怪しいものがないかチェックした。
魔界製の怪しい道具類は見当たらなく、どうやら観光目的というのは本当らしい。
しかし人間に変装する魔法も使わずこれほど杜撰な隠蔽で
ここを通過しようとするとは
「ちょっといつまで視姦してるのよ」
彼女は冷静にじろじろ見る私に文句を言う。
私は迷惑な旅行者に定型文で返した。
「申し訳ございません。わが国では魔物娘の入国は許可しておりません」
「そこをなんとか!ちょっと気持ちよくなって目瞑るだけでいいからさ」
「入国は許可しておりません」
私がそう告げると彼女は悪態をつきながら検問所をあとにした。
まったく一人目から魔物娘がくるとは先が思いやられる。
そう、我が国は人類の国である。
魔物娘は国内には「いない」とされている。
商業的交流においてのみ一部では黙認されているが、
堕落と退廃の思想を広めようとする彼女らの
入国、居住は一切許可されていない。
そしてその門番が私たち入国審査官の仕事である。
私は拡声器を手に取り言った。
「次の方、お入りください」
さあ仕事は始まったばかりだ。
「おはよう」
「「我が国に栄光あれ」」
「我が国に栄光あれ」
兵士たちとの挨拶を終え、私は検問に設けられた狭い一室に入る。
朝の光が入らない薄暗い部屋の中には
布のブラインドの下りた受付と、尻が痛くなるような簡素な木の椅子がある。
受付の机の上にはわが国で発行されている新聞と定例報告の書類
そして私の仕事道具がいくつか置いてある。
どうやら今日は特例は発効されていないようだ。
私はブラインドを開け
机の仕事道具の一つ、我が国お抱えの魔法使いたちが作った
「拡声器」なる魔法道具を手に持ち、冷える空気を吸い仕事の開始を告げた。
「これより検問を開始します。入国許可証をお持ちの方は前にお進み下さい」
私の声が検問所の向こうの列へ響き渡る。
仕事で使う道具だがどのような仕組みなのか私にはよく分からない。
列がアンデッドのように、もそもそと動き一人目の入国者が入ってくる。
外套で身を隠した小柄な体格だった。
「入国許可証は?」
「こちらに」
女の声だった。
受付の向こうからよれてくたくたになった許可証が渡される。
「どのような目的で」
「観光です」
「どのくらいの期間ですか」
「1週間から2週間ほど」
「結構長く滞在されるのですね」
「・・ええ、色々と見たいものがありますから」
私はやり取りをしながら許可証を見る。そして気が付いたことを口に出す。
「発行期限が切れていますね」
「えっ」
「発行期限が切れた入国許可証は使えません」
「そんな!」
「再発行してもらってください」
私は入国不許可の印を押し、紙をつき返す。
すると女は外套の胸元をはだけさせながらこう言った。
「も、もし通してくれるならイイコトしてあげるわ♥」
彼女はサキュバスだった。
私はサキュバスの下着同然の姿を見て怪しいものがないかチェックした。
魔界製の怪しい道具類は見当たらなく、どうやら観光目的というのは本当らしい。
しかし人間に変装する魔法も使わずこれほど杜撰な隠蔽で
ここを通過しようとするとは
「ちょっといつまで視姦してるのよ」
彼女は冷静にじろじろ見る私に文句を言う。
私は迷惑な旅行者に定型文で返した。
「申し訳ございません。わが国では魔物娘の入国は許可しておりません」
「そこをなんとか!ちょっと気持ちよくなって目瞑るだけでいいからさ」
「入国は許可しておりません」
私がそう告げると彼女は悪態をつきながら検問所をあとにした。
まったく一人目から魔物娘がくるとは先が思いやられる。
そう、我が国は人類の国である。
魔物娘は国内には「いない」とされている。
商業的交流においてのみ一部では黙認されているが、
堕落と退廃の思想を広めようとする彼女らの
入国、居住は一切許可されていない。
そしてその門番が私たち入国審査官の仕事である。
私は拡声器を手に取り言った。
「次の方、お入りください」
さあ仕事は始まったばかりだ。
19/12/30 01:41更新 / 二三の理