ばーかばーか!
食材を取る目的で、森の入口に来ている小さな少年がいた。
いつもならば、この場所にいる心優しき魔物娘たちが手伝ってくれるのだが、今日に限っては誰もいない。
きっとみんな忙しいのだろう、と彼は納得して、一人で森の奥深くへと入っていった。
森に入って数時間後。少年は未だに何の収穫も得られていなかった。
それもそのはずである。サバイバルな知識など何もない小さな少年に、ここでの食材調達など魔物の助力が無ければ出来るはずもないのである。
しかし、だからと言って手ぶらで帰るわけにもいかない――そんな小さな意地もあってか、彼はさらに深くへと入り込んでいってしまう。
やがて木の幹は大きくなり、地面から生えた草は彼の身長を越すほどに大きなものへと変わっていく。
気づけば前も後ろも草に囲まれ、来た道が分からなくなっていた。
ようやく、これはまずい、という念が彼の中に灯りはじめるが、時は既に遅く。
見上げても、周囲の木々は何の目印にもならず、彼は完全に迷子となったことを自覚した。
「…………」
しかし、彼の中に絶望感はなかった。
この森にいる魔物娘たちは、基本的に人間とは仲が良いのである。
いや、この近くにある街の人間たちが魔物娘に対して友好的である、と言うべきかだろう。
とにかく、魔物娘の誰かと会い、迷ったことを話せば、簡単に出口へと導いてくれるだろう。
そもそも、少年がこの森で迷うことは初めてではなかった。迷うたびに魔物娘たちに助けてもらった。
その過去が、彼に確証を与えているのだ。
とりあえず、この場所から抜け出そうと、大きく茂る草々を掻き分け進んでいく。
そして、ようやく草の迷宮を抜けた先は、木々の草が太陽を遮断してはいるが、どこか広場のように開けた場所だった。
ここで待っていれば、何となく魔物娘たちに会える気がした彼は、ふぅ、と安堵の息を吐く。
「ちょっと、ここあたしの縄張り」
「……え?」
その時、上方から聞こえてきた。
声のした方に顔を向ければ、樹から伸びた太い枝に座っている、黒い少女がいた。
黒いと言っても、それはその少女自体を占める割合の多い色、という意味合いであって、真っ黒な少女が出てきたわけではない。
その素肌は灰色とも言えなくもない、白色に見える。
とはいえ、やはり所々黒い物によって覆われているので、やはり黒色の占める割合が多かった。
「人間の癖に、土足で踏み込もうなんて、いい度胸じゃない」
少女が樹の枝から飛び下りてくる。
木の陰から脱したとは言え、素肌と大きな紅い眼を除けば、やはり大体が黒かった。
セミロング程に伸びた髪も黒い。彼女の手足を覆い、また体の所々にある粘度の強い液体のような物質も黒い。ついでに少女の腰の後ろ側にある、幾房にも見え、大きく広がっている毛のような物も黒い。
彼女の身体の各所にある液体のような黒い物質に隠されていない素肌は、灰色と言えなくもない白肌だった。とは言え、身体に付着しているその物質は極端に少ないので、およそ全裸と言えなくもないが、それは魔物娘の大概がそうである。故に、見慣れている少年にとってはあまり気にはすることではない。
どちらかと言えば、その少女が魔物たらしめる要素と言えば、顔にある眼が一つしかないことと、その周りに十個ほど存在する、先端が目玉となっている黒い触手。
目の前には、自分と同じくらいの背丈の少女一人しかいないのに、彼女から感じる多数の視線。
異様な光景ではあるが、少なくとも少年が今まで出会った魔物娘よりも魔物らしい。
何にしても、彼は魔物娘と出会えたことに、ホッとした気持ちでいっぱいだった。
「ここはあたし――エルゼ様の縄張り。それを人間の、しかもがきんちょ風情が荒らそうなんて、黙って見てるわけにもいかないでしょ?」
「…………」
これは彼女なりの自己紹介なのだろう、と少年は解釈した。事実、名前を出している。
彼女はどう見ても魔物ではあるので、その年齢は察することはできないが、体型的に見れば彼女も十分”がきんちょ”なのでは、と思うが口には出さないことにした。
言って良い事と悪い事の区別ぐらいは、少年でもわかるのである。
「……あの」
「ん?」
「……この森には、なわばりなんてないよ」
「……は?」
「みんななかよく使ってる。僕も、よく遊びに来るから」
「う、うっさい! そんなのしるかばか! ここはあたしの縄張りなの! さっき決めたの!」
どうやら、彼女は元々はこの森に住んでる魔物ではないらしい。いわゆる、新参者、という奴だった。
特にこの森にルールが存在しているわけではないが、公共の場として使われていることは、少年ですらも知っている事実である。
「でも……」
「ばーか! ばーかばーか!」
顔を真っ赤にして怒る彼女に、さらに何か言おうとするが遮られてしまう。
ひどい言われようであった。
「うっさいお前には――こうしてやる!」
「……!?」
どこか小物っぽいが、どことなく不穏な言葉を吐くエルゼに、少年は思わず身構えた。
そんな少年に、彼女は全ての眼を閉じて、自らの単眼に両手の人差し指を中指を、両側から添える。
そして、その状態から一気にカッと眼を見開くと。
「くらえ、ゲイザービーム!!」
叫んだ。
彼女の単眼はただ見開いたような感じだが、周囲の触手たちの眼光はとてつもなく鋭かった。
しかし、そんな不意打ちでも、対応策は知っていたらしい少年。
すかさず、両手を前に出して――呟くように言う。
「……バリア」
「……えっ!?」
少年の防御策に、エルゼはひどく驚いた様子だった。
無論、実際にバリアなど張られておらず、それは仮想の物でしかない。
何かをされれば、バリアを張るのは当然である。それは少年が街で遊んでいる、同年代の子供たちとの交流の末に得た賜物であった。
だが、エルゼには予想外の反応らしく、おたおたと慌てていた。
周りの眼も困惑しているのか、互いを見合わせて眼内会議が各所で行われている。
それを少年がバリアを張りながら見届けたところ。
「……え、なに、バリアって」
どうやら眼内会議でも答えは得られなかったようである。
バリアとは何か。少年からすればバリアはバリアなのだが、それを説明しろというのは些か難易度が高すぎた。
故に、答えることも出来ず、頭を掻くしかない。
「……ゲイザービーム!」
「バリア」
その隙を突くつもりだったのだが、再びエルゼはシュビシッと先ほどのポーズでビームを放った。
しかし、少年に神がかり的な速さでバリアを張られ防がれる。
そして落胆したように両手を降ろしたのを見て、少年も手を降ろす。
「ゲイザ」
「バリア」
「……うぇぇ……」
二回も奇襲に失敗し、エルゼは拗ねるような呻き声をあげる。
その大きな単眼が潤み、端には涙が零れそうになっているのがはっきりと見え、慌てた少年は彼女に駆け寄った。
と、駆け寄ったは良いがどうすればいいかわからず、何となく一番近い触手に手を伸ばして目元を撫でる。
「っ、ひぁん!」
瞬間、ビクッと身体を跳ねさせると共に、甲高い声が彼女の口から漏れた。
そして、触手を触れていた手を跳ね除けられ、先ほどよりも顔を赤くしたエルゼに睨まれる。
「さささ、触んなばか! ばーかばーか!」
「……ごめん」
顔を赤くしたと言っても、それは怒りとは別の意味で顔を赤くしているのだが、少年にそれを察する能力は無かった。
謝罪しながら一歩下がると、エルゼは逃げるように視線を降ろし――
「んん?」
そして、少年の下半身を見て、何かに気付いた。
「あれ……んん――へぇ……ふーん」
最初は驚いたように。しかし、次第にどこか納得したように顔を上げ、こちらに詰め寄ってくる。
その顔は、先ほどとは打って変わって、口の端を吊り上げた笑みを浮かべていた。
彼女に詰め寄られ、その大きな単眼から自分の顔が確認できるくらいに身体を密着される。触手の視線に囲まれる中、ドキリと少年の胸が高鳴る。
胸に両手を置かれる。エルゼは相変わらず笑みを浮かべたままだった。
そして、その単眼をスッと細めると、片手を下に降ろしていき――
「……っ!」
股間から電流のような物が脳髄に走り、少年の身体はびくりと跳ねた。
エルゼの手が服の中に潜り込み、陰茎を直接掴んだのだ。
「……なんだ、やっぱり効いてたんじゃん……なんだよバリアって……本当に……びっくりしたんだから……」
どこか不貞腐れたように呟いているその言葉の意味を、考えることは許されなかった。
陰茎を撫でまわされ、身体を走る電流のような快感が少年の思考を飛ばした。
息がかかるほどに近い距離で、彼女の大きな一つ眼が少年を見ている。
「うわぁ、チンチンがくちゅくちゅ言ってるー」
エルゼの手はぬめりとしていて、すぐに陰茎から粘液音が聞こえてきた。
どこかねちっこくペニスを弄る彼女の手に、身体を震わせることしかできない。
「こうしたら、もっとくちゅくちゅ大きくなるかなー」
「うぁ、あっ!」
ペニスの皮を降ろされ、剥き出しの亀頭を上下にゆっくりと扱かれた。
流れてくる快感の量が一気に多くなり、思わず声をあげる。
「あぁん、こら逃げるな」
反射的に腰を引こうとして、後ろから何かで押されて再び戻される。
何かと周囲を探れば、エルゼの触手の幾つかが、少年の後ろ側に回り込むように伸びていた。
逃げ場は、完全に防がれている。
「絶対に逃がさないから。お前はもうあたしの物なんだし」
エルゼは眼を細めて、口の端を吊り上げる。
そして、胸に置いていた片手で、少年の頬を撫でる。
手にある黒い物質はまるで手袋のように、すべすべとした感触で心地よかった。
「このままあたしに、犯されるんだ」
服を脱がされ、陰茎が外気に晒された。
上気した彼女の顔は、こちらを見ているのに、股間にも視線を感じる。
いや、股間だけではなく、様々な箇所へと視線を受けていた。
「あはは、チンチンが涎垂らしてる。もう犯される準備万端じゃん」
「……っ……」
彼女の顔はおろか眼すら動いていない。少年の顔をずっと見つめたままだ。
触手の眼を通じて、少年の身体全体を見ているのだろう。
ぬちゃぬちゃとした粘っこい音と、彼女のねちっこい手つきが、少年の快感を強制的に引き上げていく。
「扱いてるだけなのに、膝もがっくがく震えてるし……大丈夫なの? たとえば、こうしちゃったらさ――」
「……っあ、うぁぁ……」
頬を優しく撫でるエルゼの片手が、股間に下りていく。
そして、降りた片手で、亀頭の鈴口をむにむにと揉まれ、裏筋をぐりぐりと押し回され、カリ首をすりすりと擦られる。
ピンポイントに敏感な部分をねちっこく弄られ、思わず腰が動いた。
「ねぇ、気持ちいい? 腰が動いちゃうほど、気持ちいい?」
顔にかかるエルゼの吐息はとても熱く、彼女自身も興奮していることを少年に伝えていた。
彼の喘ぎ声を肯定と受け取ったのか、エルゼはさらに息を荒くして、陰茎を弄る両手の動きを早くする。
頭がおかしくなりそうな快感に、少年はすでに心身を彼女に捧げていた。
「……う、ぁぁ、える、ぜ、ちゃん……」
「チンチンのびくびく強くなってきてる♪ いいよ、このまま出しちゃっても」
亀頭全体をくにくにと指で弄る手が早くなり、肉幹を扱くスピードも強くなる。
そして、彼女が意地悪く笑ったかと思えば。
キュッと亀頭全体を握られ、ドアノブを回すように強く擦られた。
「……うぁっ」
その強烈な快感がとどめとなり、少年は人生初の射精を迎えた。
「んぁ♪ 出たぁ♪」
股間からドクドクと精液が飛び散り、それをエルゼが片手で受け止めている。
しかし、もう片手は依然扱いたままで、快感を供給してきていた。
「あ、うぅっ、ぁぁぁ……」
「がきんちょのくせに、すっごい量……♪ んっ……ちゅっ……んあぁ、おいしぃ……♪」
長い初射精を終えて、目の前が眩む。
エルゼが目の前で、少年が吐き出した白濁を浴びた手を舐めて、淫靡に顔を蕩けさせていた。
その時、後ろ側の触手が緩み、支えを失った少年は後ろに倒れて尻餅を付く。
何を言うことも出来ず、彼は自らの精が付着した手を舐めるエルゼの様子を眺めることしかできなかった。
「ねぇ、まだ終わりじゃないよ……?」
射精後の余韻でボーっとしていると、突然エルゼがこちらを向いてしゃがみながら顔を寄せてきた。
視界が、彼女の眼で埋まっていく。
「……あ、ぇ……?」
「一回だけなんて、全然足りないよ」
静かにそう言われて、彼女の大きな紅い単眼を見つめ返す。
先ほどよりも、ずっと熱っぽいその眼差し。
そして、目の前以外からも感じる視線。
視線。視線。視線。
熱い眼差しに浮かされたように、頭がクラクラしてきた。
「それに言ったでしょ? お前はあたしの物だって」
「……う……ぁ……?」
エルゼの眼から、目を離せない。
彼女の紅く大きな瞳に、吸い込まれてしまいそうだった。
「だからもっと、精を――よこせ」
縦長の瞳孔が、横に膨らんで大きくなっていく。
黒く広がっていくそれは、少年の理性と、湧き上がる性欲の箍を――飲み込んだ。
「――ん、んむっ、んんぅ!?」
突然、少年に口を塞がれ、今度は別の意味で瞳孔を開くエルゼ。
そのまま彼女にキスをしながら押し倒し、地面に倒れたところで彼女の口内に舌を入れる。
「ひょ、まっ……んっ、ぇ、っっ!」
侵入を拒むように、押し返してくるエルゼの舌をするりと避けて、口内を舐め回る。
技巧も何もない、自らの欲望に任せた蹂躙だった。
「んぐっ、むぐぅ、なん、れっ、んぁっ、ひゃぁぁ……」
それでも、エルゼは快感に身体を震わせ、か細い声をあげる。
押し倒してから、可愛い反応しかしない彼女に、少年はさらに欲望を昂ぶらせた。
「ひぁ……んぐぅ、ふぁ、かぁ……んんぅ、ちゅぅっ、はむっ、んくっ」
エルゼが何かを言ったかと思えば、唇で舌を掴まれて吸われ舌を絡ませてくる。
それだけで脳髄をピリピリと痺れさせる快感が流れ、キスに没頭していく。
こちらを見る紅い単眼は、だらしなく瞼を落としていた。
「はっ、ふはぁ……ばかぁ……ばかぁ……」
口を離すころには、エルゼの顔はだらしなく緩み、口からは涎が垂れていた。
「はぁ、ちょっと……ふぅ……まってよ……ばか」
身体を弛緩させ、息を整えながら、彼女は言う。
しかし、湧き上がる欲情をぶつけてもいいと思える相手が目の前にいるのに、それを抑えることなど少年にはできそうもなかった。
それも、どこか甘えるように潤んだ瞳でこちらを見られれば、なおさらである。
「はぁ、はぁ、エルゼちゃん、ごめん」
中途半端に脱がされていた服を完全に脱ぎ捨て、先ほどよりも怒張したペニスで、黒い粘液で守られた彼女の股間を何度も擦る。
「あ、ひやぁ、ばか、んっ、ちょっと、なにして……!」
「……さっき、触られてた場所、なんか、むずむずしてて」
抗議の声をあげる彼女に、荒い息を吐きながら少年は答える。
ぬちゅぬちゅ、と股間から音が漏れ聞こえ、性欲を刺激する。
それ以上に、動揺して揺れている一つ眼に見られていることが、何よりの興奮剤だった。
「あ、やぁ、ふぁんっ、うごき、はや、くっ、するなぁっ」
「……ごめん、とまらなくて――うぁっ!」
腰を動かしていると、くちゅり、と大きな音と強烈な快感が、股間の先から全身に伝わった。
動きを止めて自分の腰を確認すると、自分の亀頭が彼女の陰唇に飲み込まれている。
股間を覆っていた黒い粘液が、拭い去ってしまったらしい。
本能的に今やっている行為を悟り――これまでにないほどの興奮を覚えた。
「まっ、まって、おねがいまって、あたし、今いれられたらやば――ひぁぁぁん♪♪」
エルゼの言葉を最後まで聞かず、少年は自身をズプンっ、と強く突き入れる。
瞬間、彼女の嬌声と共に、膣内が強く狭まった。
「……っうぁ!」
熱い蜜壺に締め上げられ、気が遠くなるほどの急激な刺激に耐えられるはずもなく、早々に白い粘液を膣内に放出した。
「やぁぁぁ♪ でてるぅぅぅ♪♪」
膣内に精液を浴びて、エルゼが嬌声を上げて身体を痙攣させる。
そこに嫌悪の色は一切なく、それを証明するかのように、膣肉は少年の射精棒から絞り出すように蠢いた。
「ふぁ♪ んぅ♪ あぁ♪♪」
精液が出されるたび、エルゼが悦びに声を上げた。
少年は歯を食い縛り、快楽に飛ばされそうな意識を留める。
それでもお構いなしに膣内は収縮し、少年の精を絞り取っていく。
「……うぅぅ、ふぅ……はぁ……」
やがて射精が終わり、少年は何度か荒い息を吐いた。
そして、息が整った頃にペニスを引き抜く――ことなく、再び抽挿を開始する。
「んぁっ♪ あっ、ちょ、まってってばぁ――」
「……なんか、まだ、むずむずとまらなくて」
「そん、なの、しるか、ばかぁぁぁ♪」
突かれるエルゼの声に、拒絶の色は感じられなかった。
膣中は精液と愛液で潤滑し、絶頂したばかりの二人には強すぎる快感をもたらす。
「ぁひっ、まって、よぉ♪ あた、あたしがやる、やるっ、からぁ♪」
彼女の言葉にも構わず、少年は腰を動かす。
腰を打ち付ける度に小さな破裂音のようなものが鳴り、膣内を混ぜる度にぐっちゅぐっちゅと卑猥な音が響いた。
「あぅ、やぁん、ばかぁ、ふぁ、ばかぁ……♪」
甘い罵倒を吐く彼女の潤んだ紅い瞳を、彼はただ蜜壺に肉幹を打ち付けながらじっと見つめ返す。
その時、視界の隅で彼女の触手がゆらゆらと揺れているのが見えた。
その触手の眼も、エルゼ自身と同じょうに潤んでいる。
こちらを見るその触手に、少年は顔を寄せて目元を唇で食んだ。
「――っくひぃん♪」
「……っっ」
瞬間、エルゼが小さな悲鳴のような声を上げながら、膣内を収縮させて肉棒を締め上げてきた。
その快感に口を離してしまいそうになるのを何とか堪え、触手を愛で始める。
「んはぁ、やぁぁ♪ それ、さわるっ、なっ、てっ、さっきひぃ♪」
極力、目を傷つけないようにその目元のトゲのような物を唇で食み、舌で舐めてみる。
エルゼだけではなく、触手自体もビクンビクンとのたうち回った。
さらに、膣内も、ぎゅぅ、と締め上がり、少年の射精欲を刺激する。
触手の眼を見ると、こちらを見てはいるが、その焦点は既に合っていなかった。
「ふぁ、あひっ、やっ、まぁ♪ おねぅ、ひぁぁ、やっ、あぁぁぁ♪♪」
触手の眼と、トゲの境目を舌で撫でると、エルゼが眼に涙を浮かべながら何度もかぶりを振った。
膣肉はぎゅうぎゅうと狭まり、股間の根本にある精液を絞り上げようとしてくる。
その強い快感に、思わず口に含んでいたトゲを、強く唇で挟んでしまう。
「んぁぁぁぁぁ♪♪」
エルゼが一際高い声を挙げたかと思えば、膣壁がこれまで以上に強く締まる。
これまで刺激を受け続けていた男性器には、その快感は射精の引き金を引くには十分すぎる物だった。
「――っっ!!」
肉壺が、再び白濁で満たされる。
意識が飛びそうな快感に、思わず触手を口から離してしまい、触手がまるで無機質のように、ボトリと地面に落ちる。
その眼は既に少年すら見ておらず、虚空を見つめて白目を剥きながら痙攣していた。
「ふは、ひぁぁ♪ また、でて、るぅ♪」
エルゼ本人は、膣内が精液で再び満たされる感覚に恍惚とした表情を浮かべている。
少年はその顔を見ながら、絞り出されるままに精液を吐き出した。
「っ、っっ――まだ」
「ふぇ――えっ、はわっ、あひぁん♪」
出し切って早々に、少年は腰を動かす。
余韻に浸ろうとしていたエルゼは、一瞬にして悦楽の中へと引き戻された。
少年はこの快楽の虜になっていた。
自分でも戸惑うほどに、湧き上がる底無しの性欲を、ただただ目の前の愛しい少女にぶつける。
「んひっ、ひきぃ♪ まっ、っ、てぇ、ほん、とに、まって、よぉ♪」
静止をかける彼女の声には、悦びの一色しかなかった。
ずちゅずちゅ、と動く腰に合わせて、先ほどよりも粘度の濃い音が辺りに響く。
快楽に涙を貯める彼女の目元に顔を寄せ、触手にした時と同じように唇を当てる。
「ふぁ、うくっ、ひっ、んぁ、ひぅぅ……♪」
顔を背けることはしなかったが、ぎゅっと目を閉じてしまう。
それでも、構わず目元を唇だけで食んだ。
「んぁぁ、ふぇっ、はふぁ♪」
「……うっ、ぁ!」
瞼を舐め、まつ毛を唇で撫でると、さらに身体をビクビクと震わせ、彼女の膣がきゅぅ、と締まった。
快感に思わず顔を上げると、彼女が眼を開けた。
目が合った瞬間、両腕で頭を抱え込まれ、唇を塞がれる。
「んむっ、ちゅっ、ふむぅ、ちゅぅ♪」
すぐさま舌を入れられ、先ほどの仕返しとばかりに口内を蹂躙される。
挨拶代わりに舌先を舐められてから、歯茎を撫でられ、天井の溝部分をちろちろ、とくすぐられる。
目的意識を持った舌の動きに、少年は身体を震わせた。
「ふふっ、じゅっ、あむっ、れろっ、んんぅ、じゅるるっ♪」
エルゼが嬉しそうに笑うと、口内の唾液を舌で舐め取られる。
それを自らの口内に持って帰ると、ごっくん、と喉が鳴った。
「――んふぅぅ♪♪」
彼女の眼が蕩けた。
それを見て悟った少年は、自分の口内の唾液を集め、舌で持って彼女の口内に持っていく。
口内に持って行った舌を、エルゼに唇でがっちりと抑えられ、問答無用で舌を絡ませられた。
「はむっ、ちゅるちゅる、れるっ、んぅ、あむぅ♪」
丹念に、且つ甘えるように舌をゆっくりと舐められ、脳髄に甘い痺れが走る。
出来る限り舌を絡ませるように動かすと、嬉しそうに目を細めた彼女に、頭をさらにギュッと抱え込まれた。
「……っ!」
同時に、腰を前に突き押された。エルゼが両脚で腰を抱えて引き込んだのだ。
肉棒が思わぬ刺激にビクンっと強く跳ねた。
彼女はこちらをじっと見つめながら、腰を自ら動かし始める。
くちゅくちゅ、と音を鳴らす性器同士に、いつの間にか止まっていた抽送運動を再開した。
「んぁっ、ずじゅるるっ、ねろろっ、はぅっ、んちゅぅぅ♪」
喘ぎながらも、それでも舌は離さなかった。
むしろ貪欲に舌を絡ませ、吸われ、舐め取られる。
膣内を擦る男性器の直接的な快感と、舌に受ける刺激が、少年の射精欲に拍車をかける。
彼女も腰を動かしているせいで、さらに快感は何倍にも増していた。
「んぅっ、れろぉ、ちゅずずっ、んはぁ♪ はむっ、れろれるっ、ずじゅじゅっ♪」
限界はそれからすぐにやってきた。
ずじゅずじゅ、じゅっぷじゅっぷ、と今までに無く大きな音が結合部から漏れ聞こえる。
膣壁が蠢き、その射精を受け止める準備をしていた。
「はふっ、むぁ、ちゅろろっ、んむっ、ふふっ♪」
腰を動かしながらもペニスを震わせていると、エルゼがその大きな一つ眼を細めて小さく笑う。
そして。
「じゅるるるるるぅぅぅ♪♪」
「――――!!」
舌を強く吸われ、膣内でぎゅぅぅぅ、と肉棒を強く抱きしめられた。
同時に送られる強烈な快感に耐えることもできず、白濁液を噴射する。
「んんぅぅぅぅぅ♪♪♪」
少年の射精を受けて、エルゼは再び嬌声を上げ、抱きしめる腕や脚に力を込めてきた。
「んぷっ、はぁっ、ふぁっ、ばかぁっ、イって、やめっ、あっ♪♪」
しかし射精中にも関わらず、彼の腰は止まることはなかった。
絶頂中の快感がさらに上乗せされ、キスを続ける事が難しくなったのか、エルゼは口を離して抗議する。
「ごっ、めん……とまら、なくてっ」
「あっ、やぁ、あっ、まっ、あっ、やっ、らぁ、んぃっ、ひぃ♪♪」
彼女の両脚が腰を抱えているせいで、腰を小刻みにしか動かせない。
膣肉は狭まったまま痙攣を起こし、それがちゅぷちゅぷ、と絡みついてくるような快感をもたらしてくる。
動かすたびに、ごぽごぽと音が鳴り、出したばかりの精液を外へと送りだしていった。
「あっ、あっ、もったい、なっ、あふぁっ、こ、らっ、ちくびっ、さわ、るなっ、やぁん♪♪」
結合部から掘り出される精を名残惜しげに呟くエルゼに、少年は両手を胸に移動させてその突起を親指で弄り回す。
芯のあるグミのような柔らかさは、くにくにと触っているだけで心地いい。
「……さわってるだけで、きもち、いいから」
「へんっ、たい♪ あっ、やぁ、だっ、からっ、ひぁぁぁぁ♪♪」
罵倒された仕返しに、人差し指も使って乳首を強くつまむと、身体を震わせながら甲高い声を上げる。
その大きな眼は快感に涙を流しながらも、どこか甘えるようにこちらを見つめていた。
「エルゼちゃん……えるぜ、ちゃん……っ」
「あー♪ あっ♪ らめっ♪ ぁー♪ もうっ♪ んぁっ♪♪」
膣壁が奥へ奥へと導くように蠕動運動を始めた。
掘り返した精液を少しでも取り戻そうと、強くも柔らかく肉棒をマッサージしてくる。
射精したばかりの少年も、限界は近かった。
「あっ♪ あー♪ あっ♪ んっ♪ ひぁ♪ ぁー♪ やぁぁ♪♪」
不意に、しがみつくように、ぎゅっと強く抱きしめられた。
同時に、狭い膣内もぎゅぅぅぅっとさらに締まる。
膣肉が絡み、それでも止まらない蠕動が、肉幹全体を吸引されるような感覚をもたらし、それがとどめとなった。
「――――!!!」
「――ふぁぁぁぁぁぁぁ♪♪♪」
少年は言葉も出ないほどに強烈な快感の中で、精液を吐き出した。
「ふぁ、あっ、あー♪ あぁっ♪♪ ぁうっ、ひぁ、ぁー♪♪」
呂律が回らないのか、呆けたような言葉を発しながら、エルゼは精液を受け止める。
口元からは涎が零れ、その眼は虚空を見ながら、身体をびくん、びくん、と痙攣させていた。
「はっ……はっ……はぁ――」
魂が持っていかれそうなほど長い射精を終えた時、ようやく燃え盛っていた情欲の炎が消え去った。
その瞬間、身体が鉛のように重くなり、両腕では支えきれず、エルゼに覆い被さるように倒れこむ。
「ひゆぅん♪♪」
今の彼女にはそれすらも快感になり得るのか、あまり心配にはならない声を挙げる。
「あぅ……あー……はぁ……ぁー……はっ……ぁー♪」
「……えるぜ、ちゃん……」
余韻に浸っているのか、ペニスが萎えて自然と膣外に抜け出しても、呆けた声が時折出ていた。
少年の声は聞こえていないのか、それに対する反応は帰ってこない。
それでも、少年はボーっとした意識の中で、エルゼの眼を見つめていた。
「……あ」
ようやく身体が動かせるほどに体力が回復し、脱ぎ捨てていた服を拾って、着直していた時だった。
周囲の景色が、茜色に染まりかけていることに気が付いたのだ。
もう夕暮れ時である。
そろそろ帰らねばならなかった。
エルゼに声をかける為に振り返る。
「…………えへへ♪」
少し距離の空いたところにいるエルゼが、宙に浮いた状態で自分の下腹部を撫でてにやにやしていた。
少年の視線には気づいていないようである。
「……エルゼちゃん」
「ひぁっ、ふわぁっ、えぁぁ、な、なに!?」
声をかけると、エルゼは慌てたように取り乱した後、撫でていた下腹部を隠すようにその場で膝を抱えた。
あからさまな反応だが、あえて気にしないことにした。
触れて良い事と悪い事の区別ぐらい、少年にも分かっているのである。
「そろそろ帰らないと。出口まで、つれてってほしい」
「えっ――えぇー、と、その……ぁの……」
少年の要求に、エルゼは言葉を詰まらせる。
その大きな単眼は、遠くからでも分かるほどに泳いでいた。
周りの触手たちもゆらゆらと泳いでいた。
「……?」
「……うぅ……」
少年の顔をチラチラと窺い、しまいには何も言わずに顔を伏せてしまう。
周りの触手たちも、しゅんと地面に眼を落とし項垂れている。
その反応で、彼は何となく察した。
「…………」
「あたしも、その……ここに来たばっかで……迷って……」
「そうなんだ」
少ししてから白状した彼女に、少年は穏やかな声音で答える。
そして、彼女の隣に歩み寄って腰を下ろした。
宙に浮きながら膝を抱えていたエルゼも、すとん、とその場で地面に落ちた。
「……って、ていうか! あたしが知ってたとしても、帰るのはダメだから!」
「えっ、どうして?」
いきなり顔を上げたかと思えば、怒ったように帰ること自体を否定されて、思わずエルゼに顔を向ける。
その顔は、やはり膨れていた。
「な、なんでって……言ったじゃん! 『お前はあたしの物』って」
「…………うん」
彼の理性が吹き飛ばされる前に、そんな言葉を一回か二回ほど聞いた気がした。
つまり、少年は既にエルゼの物だったのである。
「だ、だから! その、あたしと離れるの……禁止」
少しずつ声が小さくなっていき、エルゼ自身も縮こまっていく。
服の袖を二本の指で摘まれて、軽く引かれる。
その言動は、強制力が一切なく、どちらかと言えばおねだりに近かった。
「……エルゼちゃんは、一緒に帰らないの?」
「えっ……ふぇっ!? そ、そんなの、それこそダメに決まってんでしょばか!」
新たな案――というよりも、最初から考えていたことを彼女に掲げてみるが、さらなる強い拒否によって却下されてしまった。
「……どうして?」
「少しは考えろばか!」
そう言われて、少年は少し考えてみるが、やはり思い当たらなかった。
彼女が魔物娘である以外の要素は、どこにも見当たらないのだ。
となれば、彼女は少年が帰る場所が魔物娘に対して敵対的である可能性を考えているのかもしれない、という結果に行き着いた。
「……だいじょうぶだよ。森のみんなも、街の人となかよしだから」
「そうじゃなくて! あたしが行ったら……その、気持ち悪がられるから……」
「……? エルゼちゃんはかわいいよ」
「かわ……っ!」
少年の当たり前のように出てきた言葉に、エルゼの顔がぼふん、っと一気に真っ赤に染まった。
彼女自身の紅い瞳にも負けないほどに紅くなっていた。
しかし、すぐに顔をぶんぶんっと振り回して、冷静さを取り戻す。
「あ、あんたはそう思ってくれてても、他の人たちがそう思ってくれるとは限らないだろばか!」
エルゼがどうしてそこまで人の目を気にしているのか、少年には分からなかった。
その雰囲気を悟ったのか、エルゼは大きくため息を吐いて、顔を落とした。
「その、普通にしてくれてるけどさ。あたし、眼が一つしかないから」
だから、気味悪がられる、と。
周囲にある彼女の眼たちも、二つで一組ずつ、眼を閉じて互いに寄り添っている。
その姿は、お互いを抱きしめながら涙を流しているようにも見えた。
「ワガママなのは、わかってるよ。でも、街には行きたくないし、あんたと離れるのも……やだ」
それが、彼女の本音だった。
しかし、それでも少年は理解できない。
初対面の時からエルゼの単眼に対して、一切の嫌悪感を持たなかった彼にとっては、そこまで悩む理由がどうしても分からないのだ。
「ねぇ、どうしても帰りたいの? 帰らなくちゃ、ダメなの?」
縋るような視線で、エルゼが身体を寄せてくる。
その眼は、本当に涙を零してしまいそうなほどに、潤んでいた。
「ダメじゃないけど……だいじなばしょだから、エルゼちゃんにも来て欲しいんだ」
「……うぅ……」
その言葉に、エルゼは複雑な表情を見せる。
やはり渋る彼女に、少年は逆に聞いてみることにした。
「……どうしても、行きたくないの?」
「どうしてもじゃ、ないけど……行きたくない」
彼の質問に、ぷいっと顔を逸らして、エルゼは答える。
どこか拗ねたように見えたその態度に、少年は呆れたようにため息を吐いた。
「そっか――じゃあ、行こう」
「えっ、あっ、ちょっ、やっ……!」
そして、エルゼの手を握ると、そのまま立ち上がって引っ張っていく。実力行使である。
言葉では嫌がっているが、その抵抗はとても小さく、少年の腕力でも引っ張れる程度の物だった。
彼女は怖がっているだけなのだ。忌避される可能性がわずかだったとしても、それを恐れて行動に移せないでいる。
少年はそれを悟ったのだ。
「……うぅ……知らないから」
構わず引っ張っていると、エルゼがそう呟いた。
そして、小さな抵抗すらもやめて、彼に手を引かれて一緒に歩いていく。
もう景色は茜色を通り越して、暗くなってきていた。
早く帰らねば本格的な迷子になってしまう。
少年は、少しだけ早歩きで森を歩き始めたのだった。
「……あ」
しかし、重大なことを思い出し、少年は立ち止まる。
「……なに、どしたの?」
怪訝そうな表情で見るエルゼに、少年は真顔で告げる。
「帰り道、わからないんだった」
むしろ最初から浮上していた問題の告白に、エルゼはきょとんと目を丸くする。
そして、少しの時間を使ってその意味を理解すると。
「っっ! このばか! あたしの覚悟返せばか! ばかばか! ばーかばーか!!」
今まで以上の罵倒が飛んできた。
彼女もその事実を忘れていたらしく、恥ずかしさのためか顔がわずかに紅い。
早くも彼女のその罵倒には慣れてきてしまったこともあってか、少年の精神的ダメージは一切無かった。
そして、二人が別の魔物娘に見つけられ、出口どころか街まで送ってもらったのは、陽が完全に落ち切ってからであった。
いつもならば、この場所にいる心優しき魔物娘たちが手伝ってくれるのだが、今日に限っては誰もいない。
きっとみんな忙しいのだろう、と彼は納得して、一人で森の奥深くへと入っていった。
森に入って数時間後。少年は未だに何の収穫も得られていなかった。
それもそのはずである。サバイバルな知識など何もない小さな少年に、ここでの食材調達など魔物の助力が無ければ出来るはずもないのである。
しかし、だからと言って手ぶらで帰るわけにもいかない――そんな小さな意地もあってか、彼はさらに深くへと入り込んでいってしまう。
やがて木の幹は大きくなり、地面から生えた草は彼の身長を越すほどに大きなものへと変わっていく。
気づけば前も後ろも草に囲まれ、来た道が分からなくなっていた。
ようやく、これはまずい、という念が彼の中に灯りはじめるが、時は既に遅く。
見上げても、周囲の木々は何の目印にもならず、彼は完全に迷子となったことを自覚した。
「…………」
しかし、彼の中に絶望感はなかった。
この森にいる魔物娘たちは、基本的に人間とは仲が良いのである。
いや、この近くにある街の人間たちが魔物娘に対して友好的である、と言うべきかだろう。
とにかく、魔物娘の誰かと会い、迷ったことを話せば、簡単に出口へと導いてくれるだろう。
そもそも、少年がこの森で迷うことは初めてではなかった。迷うたびに魔物娘たちに助けてもらった。
その過去が、彼に確証を与えているのだ。
とりあえず、この場所から抜け出そうと、大きく茂る草々を掻き分け進んでいく。
そして、ようやく草の迷宮を抜けた先は、木々の草が太陽を遮断してはいるが、どこか広場のように開けた場所だった。
ここで待っていれば、何となく魔物娘たちに会える気がした彼は、ふぅ、と安堵の息を吐く。
「ちょっと、ここあたしの縄張り」
「……え?」
その時、上方から聞こえてきた。
声のした方に顔を向ければ、樹から伸びた太い枝に座っている、黒い少女がいた。
黒いと言っても、それはその少女自体を占める割合の多い色、という意味合いであって、真っ黒な少女が出てきたわけではない。
その素肌は灰色とも言えなくもない、白色に見える。
とはいえ、やはり所々黒い物によって覆われているので、やはり黒色の占める割合が多かった。
「人間の癖に、土足で踏み込もうなんて、いい度胸じゃない」
少女が樹の枝から飛び下りてくる。
木の陰から脱したとは言え、素肌と大きな紅い眼を除けば、やはり大体が黒かった。
セミロング程に伸びた髪も黒い。彼女の手足を覆い、また体の所々にある粘度の強い液体のような物質も黒い。ついでに少女の腰の後ろ側にある、幾房にも見え、大きく広がっている毛のような物も黒い。
彼女の身体の各所にある液体のような黒い物質に隠されていない素肌は、灰色と言えなくもない白肌だった。とは言え、身体に付着しているその物質は極端に少ないので、およそ全裸と言えなくもないが、それは魔物娘の大概がそうである。故に、見慣れている少年にとってはあまり気にはすることではない。
どちらかと言えば、その少女が魔物たらしめる要素と言えば、顔にある眼が一つしかないことと、その周りに十個ほど存在する、先端が目玉となっている黒い触手。
目の前には、自分と同じくらいの背丈の少女一人しかいないのに、彼女から感じる多数の視線。
異様な光景ではあるが、少なくとも少年が今まで出会った魔物娘よりも魔物らしい。
何にしても、彼は魔物娘と出会えたことに、ホッとした気持ちでいっぱいだった。
「ここはあたし――エルゼ様の縄張り。それを人間の、しかもがきんちょ風情が荒らそうなんて、黙って見てるわけにもいかないでしょ?」
「…………」
これは彼女なりの自己紹介なのだろう、と少年は解釈した。事実、名前を出している。
彼女はどう見ても魔物ではあるので、その年齢は察することはできないが、体型的に見れば彼女も十分”がきんちょ”なのでは、と思うが口には出さないことにした。
言って良い事と悪い事の区別ぐらいは、少年でもわかるのである。
「……あの」
「ん?」
「……この森には、なわばりなんてないよ」
「……は?」
「みんななかよく使ってる。僕も、よく遊びに来るから」
「う、うっさい! そんなのしるかばか! ここはあたしの縄張りなの! さっき決めたの!」
どうやら、彼女は元々はこの森に住んでる魔物ではないらしい。いわゆる、新参者、という奴だった。
特にこの森にルールが存在しているわけではないが、公共の場として使われていることは、少年ですらも知っている事実である。
「でも……」
「ばーか! ばーかばーか!」
顔を真っ赤にして怒る彼女に、さらに何か言おうとするが遮られてしまう。
ひどい言われようであった。
「うっさいお前には――こうしてやる!」
「……!?」
どこか小物っぽいが、どことなく不穏な言葉を吐くエルゼに、少年は思わず身構えた。
そんな少年に、彼女は全ての眼を閉じて、自らの単眼に両手の人差し指を中指を、両側から添える。
そして、その状態から一気にカッと眼を見開くと。
「くらえ、ゲイザービーム!!」
叫んだ。
彼女の単眼はただ見開いたような感じだが、周囲の触手たちの眼光はとてつもなく鋭かった。
しかし、そんな不意打ちでも、対応策は知っていたらしい少年。
すかさず、両手を前に出して――呟くように言う。
「……バリア」
「……えっ!?」
少年の防御策に、エルゼはひどく驚いた様子だった。
無論、実際にバリアなど張られておらず、それは仮想の物でしかない。
何かをされれば、バリアを張るのは当然である。それは少年が街で遊んでいる、同年代の子供たちとの交流の末に得た賜物であった。
だが、エルゼには予想外の反応らしく、おたおたと慌てていた。
周りの眼も困惑しているのか、互いを見合わせて眼内会議が各所で行われている。
それを少年がバリアを張りながら見届けたところ。
「……え、なに、バリアって」
どうやら眼内会議でも答えは得られなかったようである。
バリアとは何か。少年からすればバリアはバリアなのだが、それを説明しろというのは些か難易度が高すぎた。
故に、答えることも出来ず、頭を掻くしかない。
「……ゲイザービーム!」
「バリア」
その隙を突くつもりだったのだが、再びエルゼはシュビシッと先ほどのポーズでビームを放った。
しかし、少年に神がかり的な速さでバリアを張られ防がれる。
そして落胆したように両手を降ろしたのを見て、少年も手を降ろす。
「ゲイザ」
「バリア」
「……うぇぇ……」
二回も奇襲に失敗し、エルゼは拗ねるような呻き声をあげる。
その大きな単眼が潤み、端には涙が零れそうになっているのがはっきりと見え、慌てた少年は彼女に駆け寄った。
と、駆け寄ったは良いがどうすればいいかわからず、何となく一番近い触手に手を伸ばして目元を撫でる。
「っ、ひぁん!」
瞬間、ビクッと身体を跳ねさせると共に、甲高い声が彼女の口から漏れた。
そして、触手を触れていた手を跳ね除けられ、先ほどよりも顔を赤くしたエルゼに睨まれる。
「さささ、触んなばか! ばーかばーか!」
「……ごめん」
顔を赤くしたと言っても、それは怒りとは別の意味で顔を赤くしているのだが、少年にそれを察する能力は無かった。
謝罪しながら一歩下がると、エルゼは逃げるように視線を降ろし――
「んん?」
そして、少年の下半身を見て、何かに気付いた。
「あれ……んん――へぇ……ふーん」
最初は驚いたように。しかし、次第にどこか納得したように顔を上げ、こちらに詰め寄ってくる。
その顔は、先ほどとは打って変わって、口の端を吊り上げた笑みを浮かべていた。
彼女に詰め寄られ、その大きな単眼から自分の顔が確認できるくらいに身体を密着される。触手の視線に囲まれる中、ドキリと少年の胸が高鳴る。
胸に両手を置かれる。エルゼは相変わらず笑みを浮かべたままだった。
そして、その単眼をスッと細めると、片手を下に降ろしていき――
「……っ!」
股間から電流のような物が脳髄に走り、少年の身体はびくりと跳ねた。
エルゼの手が服の中に潜り込み、陰茎を直接掴んだのだ。
「……なんだ、やっぱり効いてたんじゃん……なんだよバリアって……本当に……びっくりしたんだから……」
どこか不貞腐れたように呟いているその言葉の意味を、考えることは許されなかった。
陰茎を撫でまわされ、身体を走る電流のような快感が少年の思考を飛ばした。
息がかかるほどに近い距離で、彼女の大きな一つ眼が少年を見ている。
「うわぁ、チンチンがくちゅくちゅ言ってるー」
エルゼの手はぬめりとしていて、すぐに陰茎から粘液音が聞こえてきた。
どこかねちっこくペニスを弄る彼女の手に、身体を震わせることしかできない。
「こうしたら、もっとくちゅくちゅ大きくなるかなー」
「うぁ、あっ!」
ペニスの皮を降ろされ、剥き出しの亀頭を上下にゆっくりと扱かれた。
流れてくる快感の量が一気に多くなり、思わず声をあげる。
「あぁん、こら逃げるな」
反射的に腰を引こうとして、後ろから何かで押されて再び戻される。
何かと周囲を探れば、エルゼの触手の幾つかが、少年の後ろ側に回り込むように伸びていた。
逃げ場は、完全に防がれている。
「絶対に逃がさないから。お前はもうあたしの物なんだし」
エルゼは眼を細めて、口の端を吊り上げる。
そして、胸に置いていた片手で、少年の頬を撫でる。
手にある黒い物質はまるで手袋のように、すべすべとした感触で心地よかった。
「このままあたしに、犯されるんだ」
服を脱がされ、陰茎が外気に晒された。
上気した彼女の顔は、こちらを見ているのに、股間にも視線を感じる。
いや、股間だけではなく、様々な箇所へと視線を受けていた。
「あはは、チンチンが涎垂らしてる。もう犯される準備万端じゃん」
「……っ……」
彼女の顔はおろか眼すら動いていない。少年の顔をずっと見つめたままだ。
触手の眼を通じて、少年の身体全体を見ているのだろう。
ぬちゃぬちゃとした粘っこい音と、彼女のねちっこい手つきが、少年の快感を強制的に引き上げていく。
「扱いてるだけなのに、膝もがっくがく震えてるし……大丈夫なの? たとえば、こうしちゃったらさ――」
「……っあ、うぁぁ……」
頬を優しく撫でるエルゼの片手が、股間に下りていく。
そして、降りた片手で、亀頭の鈴口をむにむにと揉まれ、裏筋をぐりぐりと押し回され、カリ首をすりすりと擦られる。
ピンポイントに敏感な部分をねちっこく弄られ、思わず腰が動いた。
「ねぇ、気持ちいい? 腰が動いちゃうほど、気持ちいい?」
顔にかかるエルゼの吐息はとても熱く、彼女自身も興奮していることを少年に伝えていた。
彼の喘ぎ声を肯定と受け取ったのか、エルゼはさらに息を荒くして、陰茎を弄る両手の動きを早くする。
頭がおかしくなりそうな快感に、少年はすでに心身を彼女に捧げていた。
「……う、ぁぁ、える、ぜ、ちゃん……」
「チンチンのびくびく強くなってきてる♪ いいよ、このまま出しちゃっても」
亀頭全体をくにくにと指で弄る手が早くなり、肉幹を扱くスピードも強くなる。
そして、彼女が意地悪く笑ったかと思えば。
キュッと亀頭全体を握られ、ドアノブを回すように強く擦られた。
「……うぁっ」
その強烈な快感がとどめとなり、少年は人生初の射精を迎えた。
「んぁ♪ 出たぁ♪」
股間からドクドクと精液が飛び散り、それをエルゼが片手で受け止めている。
しかし、もう片手は依然扱いたままで、快感を供給してきていた。
「あ、うぅっ、ぁぁぁ……」
「がきんちょのくせに、すっごい量……♪ んっ……ちゅっ……んあぁ、おいしぃ……♪」
長い初射精を終えて、目の前が眩む。
エルゼが目の前で、少年が吐き出した白濁を浴びた手を舐めて、淫靡に顔を蕩けさせていた。
その時、後ろ側の触手が緩み、支えを失った少年は後ろに倒れて尻餅を付く。
何を言うことも出来ず、彼は自らの精が付着した手を舐めるエルゼの様子を眺めることしかできなかった。
「ねぇ、まだ終わりじゃないよ……?」
射精後の余韻でボーっとしていると、突然エルゼがこちらを向いてしゃがみながら顔を寄せてきた。
視界が、彼女の眼で埋まっていく。
「……あ、ぇ……?」
「一回だけなんて、全然足りないよ」
静かにそう言われて、彼女の大きな紅い単眼を見つめ返す。
先ほどよりも、ずっと熱っぽいその眼差し。
そして、目の前以外からも感じる視線。
視線。視線。視線。
熱い眼差しに浮かされたように、頭がクラクラしてきた。
「それに言ったでしょ? お前はあたしの物だって」
「……う……ぁ……?」
エルゼの眼から、目を離せない。
彼女の紅く大きな瞳に、吸い込まれてしまいそうだった。
「だからもっと、精を――よこせ」
縦長の瞳孔が、横に膨らんで大きくなっていく。
黒く広がっていくそれは、少年の理性と、湧き上がる性欲の箍を――飲み込んだ。
「――ん、んむっ、んんぅ!?」
突然、少年に口を塞がれ、今度は別の意味で瞳孔を開くエルゼ。
そのまま彼女にキスをしながら押し倒し、地面に倒れたところで彼女の口内に舌を入れる。
「ひょ、まっ……んっ、ぇ、っっ!」
侵入を拒むように、押し返してくるエルゼの舌をするりと避けて、口内を舐め回る。
技巧も何もない、自らの欲望に任せた蹂躙だった。
「んぐっ、むぐぅ、なん、れっ、んぁっ、ひゃぁぁ……」
それでも、エルゼは快感に身体を震わせ、か細い声をあげる。
押し倒してから、可愛い反応しかしない彼女に、少年はさらに欲望を昂ぶらせた。
「ひぁ……んぐぅ、ふぁ、かぁ……んんぅ、ちゅぅっ、はむっ、んくっ」
エルゼが何かを言ったかと思えば、唇で舌を掴まれて吸われ舌を絡ませてくる。
それだけで脳髄をピリピリと痺れさせる快感が流れ、キスに没頭していく。
こちらを見る紅い単眼は、だらしなく瞼を落としていた。
「はっ、ふはぁ……ばかぁ……ばかぁ……」
口を離すころには、エルゼの顔はだらしなく緩み、口からは涎が垂れていた。
「はぁ、ちょっと……ふぅ……まってよ……ばか」
身体を弛緩させ、息を整えながら、彼女は言う。
しかし、湧き上がる欲情をぶつけてもいいと思える相手が目の前にいるのに、それを抑えることなど少年にはできそうもなかった。
それも、どこか甘えるように潤んだ瞳でこちらを見られれば、なおさらである。
「はぁ、はぁ、エルゼちゃん、ごめん」
中途半端に脱がされていた服を完全に脱ぎ捨て、先ほどよりも怒張したペニスで、黒い粘液で守られた彼女の股間を何度も擦る。
「あ、ひやぁ、ばか、んっ、ちょっと、なにして……!」
「……さっき、触られてた場所、なんか、むずむずしてて」
抗議の声をあげる彼女に、荒い息を吐きながら少年は答える。
ぬちゅぬちゅ、と股間から音が漏れ聞こえ、性欲を刺激する。
それ以上に、動揺して揺れている一つ眼に見られていることが、何よりの興奮剤だった。
「あ、やぁ、ふぁんっ、うごき、はや、くっ、するなぁっ」
「……ごめん、とまらなくて――うぁっ!」
腰を動かしていると、くちゅり、と大きな音と強烈な快感が、股間の先から全身に伝わった。
動きを止めて自分の腰を確認すると、自分の亀頭が彼女の陰唇に飲み込まれている。
股間を覆っていた黒い粘液が、拭い去ってしまったらしい。
本能的に今やっている行為を悟り――これまでにないほどの興奮を覚えた。
「まっ、まって、おねがいまって、あたし、今いれられたらやば――ひぁぁぁん♪♪」
エルゼの言葉を最後まで聞かず、少年は自身をズプンっ、と強く突き入れる。
瞬間、彼女の嬌声と共に、膣内が強く狭まった。
「……っうぁ!」
熱い蜜壺に締め上げられ、気が遠くなるほどの急激な刺激に耐えられるはずもなく、早々に白い粘液を膣内に放出した。
「やぁぁぁ♪ でてるぅぅぅ♪♪」
膣内に精液を浴びて、エルゼが嬌声を上げて身体を痙攣させる。
そこに嫌悪の色は一切なく、それを証明するかのように、膣肉は少年の射精棒から絞り出すように蠢いた。
「ふぁ♪ んぅ♪ あぁ♪♪」
精液が出されるたび、エルゼが悦びに声を上げた。
少年は歯を食い縛り、快楽に飛ばされそうな意識を留める。
それでもお構いなしに膣内は収縮し、少年の精を絞り取っていく。
「……うぅぅ、ふぅ……はぁ……」
やがて射精が終わり、少年は何度か荒い息を吐いた。
そして、息が整った頃にペニスを引き抜く――ことなく、再び抽挿を開始する。
「んぁっ♪ あっ、ちょ、まってってばぁ――」
「……なんか、まだ、むずむずとまらなくて」
「そん、なの、しるか、ばかぁぁぁ♪」
突かれるエルゼの声に、拒絶の色は感じられなかった。
膣中は精液と愛液で潤滑し、絶頂したばかりの二人には強すぎる快感をもたらす。
「ぁひっ、まって、よぉ♪ あた、あたしがやる、やるっ、からぁ♪」
彼女の言葉にも構わず、少年は腰を動かす。
腰を打ち付ける度に小さな破裂音のようなものが鳴り、膣内を混ぜる度にぐっちゅぐっちゅと卑猥な音が響いた。
「あぅ、やぁん、ばかぁ、ふぁ、ばかぁ……♪」
甘い罵倒を吐く彼女の潤んだ紅い瞳を、彼はただ蜜壺に肉幹を打ち付けながらじっと見つめ返す。
その時、視界の隅で彼女の触手がゆらゆらと揺れているのが見えた。
その触手の眼も、エルゼ自身と同じょうに潤んでいる。
こちらを見るその触手に、少年は顔を寄せて目元を唇で食んだ。
「――っくひぃん♪」
「……っっ」
瞬間、エルゼが小さな悲鳴のような声を上げながら、膣内を収縮させて肉棒を締め上げてきた。
その快感に口を離してしまいそうになるのを何とか堪え、触手を愛で始める。
「んはぁ、やぁぁ♪ それ、さわるっ、なっ、てっ、さっきひぃ♪」
極力、目を傷つけないようにその目元のトゲのような物を唇で食み、舌で舐めてみる。
エルゼだけではなく、触手自体もビクンビクンとのたうち回った。
さらに、膣内も、ぎゅぅ、と締め上がり、少年の射精欲を刺激する。
触手の眼を見ると、こちらを見てはいるが、その焦点は既に合っていなかった。
「ふぁ、あひっ、やっ、まぁ♪ おねぅ、ひぁぁ、やっ、あぁぁぁ♪♪」
触手の眼と、トゲの境目を舌で撫でると、エルゼが眼に涙を浮かべながら何度もかぶりを振った。
膣肉はぎゅうぎゅうと狭まり、股間の根本にある精液を絞り上げようとしてくる。
その強い快感に、思わず口に含んでいたトゲを、強く唇で挟んでしまう。
「んぁぁぁぁぁ♪♪」
エルゼが一際高い声を挙げたかと思えば、膣壁がこれまで以上に強く締まる。
これまで刺激を受け続けていた男性器には、その快感は射精の引き金を引くには十分すぎる物だった。
「――っっ!!」
肉壺が、再び白濁で満たされる。
意識が飛びそうな快感に、思わず触手を口から離してしまい、触手がまるで無機質のように、ボトリと地面に落ちる。
その眼は既に少年すら見ておらず、虚空を見つめて白目を剥きながら痙攣していた。
「ふは、ひぁぁ♪ また、でて、るぅ♪」
エルゼ本人は、膣内が精液で再び満たされる感覚に恍惚とした表情を浮かべている。
少年はその顔を見ながら、絞り出されるままに精液を吐き出した。
「っ、っっ――まだ」
「ふぇ――えっ、はわっ、あひぁん♪」
出し切って早々に、少年は腰を動かす。
余韻に浸ろうとしていたエルゼは、一瞬にして悦楽の中へと引き戻された。
少年はこの快楽の虜になっていた。
自分でも戸惑うほどに、湧き上がる底無しの性欲を、ただただ目の前の愛しい少女にぶつける。
「んひっ、ひきぃ♪ まっ、っ、てぇ、ほん、とに、まって、よぉ♪」
静止をかける彼女の声には、悦びの一色しかなかった。
ずちゅずちゅ、と動く腰に合わせて、先ほどよりも粘度の濃い音が辺りに響く。
快楽に涙を貯める彼女の目元に顔を寄せ、触手にした時と同じように唇を当てる。
「ふぁ、うくっ、ひっ、んぁ、ひぅぅ……♪」
顔を背けることはしなかったが、ぎゅっと目を閉じてしまう。
それでも、構わず目元を唇だけで食んだ。
「んぁぁ、ふぇっ、はふぁ♪」
「……うっ、ぁ!」
瞼を舐め、まつ毛を唇で撫でると、さらに身体をビクビクと震わせ、彼女の膣がきゅぅ、と締まった。
快感に思わず顔を上げると、彼女が眼を開けた。
目が合った瞬間、両腕で頭を抱え込まれ、唇を塞がれる。
「んむっ、ちゅっ、ふむぅ、ちゅぅ♪」
すぐさま舌を入れられ、先ほどの仕返しとばかりに口内を蹂躙される。
挨拶代わりに舌先を舐められてから、歯茎を撫でられ、天井の溝部分をちろちろ、とくすぐられる。
目的意識を持った舌の動きに、少年は身体を震わせた。
「ふふっ、じゅっ、あむっ、れろっ、んんぅ、じゅるるっ♪」
エルゼが嬉しそうに笑うと、口内の唾液を舌で舐め取られる。
それを自らの口内に持って帰ると、ごっくん、と喉が鳴った。
「――んふぅぅ♪♪」
彼女の眼が蕩けた。
それを見て悟った少年は、自分の口内の唾液を集め、舌で持って彼女の口内に持っていく。
口内に持って行った舌を、エルゼに唇でがっちりと抑えられ、問答無用で舌を絡ませられた。
「はむっ、ちゅるちゅる、れるっ、んぅ、あむぅ♪」
丹念に、且つ甘えるように舌をゆっくりと舐められ、脳髄に甘い痺れが走る。
出来る限り舌を絡ませるように動かすと、嬉しそうに目を細めた彼女に、頭をさらにギュッと抱え込まれた。
「……っ!」
同時に、腰を前に突き押された。エルゼが両脚で腰を抱えて引き込んだのだ。
肉棒が思わぬ刺激にビクンっと強く跳ねた。
彼女はこちらをじっと見つめながら、腰を自ら動かし始める。
くちゅくちゅ、と音を鳴らす性器同士に、いつの間にか止まっていた抽送運動を再開した。
「んぁっ、ずじゅるるっ、ねろろっ、はぅっ、んちゅぅぅ♪」
喘ぎながらも、それでも舌は離さなかった。
むしろ貪欲に舌を絡ませ、吸われ、舐め取られる。
膣内を擦る男性器の直接的な快感と、舌に受ける刺激が、少年の射精欲に拍車をかける。
彼女も腰を動かしているせいで、さらに快感は何倍にも増していた。
「んぅっ、れろぉ、ちゅずずっ、んはぁ♪ はむっ、れろれるっ、ずじゅじゅっ♪」
限界はそれからすぐにやってきた。
ずじゅずじゅ、じゅっぷじゅっぷ、と今までに無く大きな音が結合部から漏れ聞こえる。
膣壁が蠢き、その射精を受け止める準備をしていた。
「はふっ、むぁ、ちゅろろっ、んむっ、ふふっ♪」
腰を動かしながらもペニスを震わせていると、エルゼがその大きな一つ眼を細めて小さく笑う。
そして。
「じゅるるるるるぅぅぅ♪♪」
「――――!!」
舌を強く吸われ、膣内でぎゅぅぅぅ、と肉棒を強く抱きしめられた。
同時に送られる強烈な快感に耐えることもできず、白濁液を噴射する。
「んんぅぅぅぅぅ♪♪♪」
少年の射精を受けて、エルゼは再び嬌声を上げ、抱きしめる腕や脚に力を込めてきた。
「んぷっ、はぁっ、ふぁっ、ばかぁっ、イって、やめっ、あっ♪♪」
しかし射精中にも関わらず、彼の腰は止まることはなかった。
絶頂中の快感がさらに上乗せされ、キスを続ける事が難しくなったのか、エルゼは口を離して抗議する。
「ごっ、めん……とまら、なくてっ」
「あっ、やぁ、あっ、まっ、あっ、やっ、らぁ、んぃっ、ひぃ♪♪」
彼女の両脚が腰を抱えているせいで、腰を小刻みにしか動かせない。
膣肉は狭まったまま痙攣を起こし、それがちゅぷちゅぷ、と絡みついてくるような快感をもたらしてくる。
動かすたびに、ごぽごぽと音が鳴り、出したばかりの精液を外へと送りだしていった。
「あっ、あっ、もったい、なっ、あふぁっ、こ、らっ、ちくびっ、さわ、るなっ、やぁん♪♪」
結合部から掘り出される精を名残惜しげに呟くエルゼに、少年は両手を胸に移動させてその突起を親指で弄り回す。
芯のあるグミのような柔らかさは、くにくにと触っているだけで心地いい。
「……さわってるだけで、きもち、いいから」
「へんっ、たい♪ あっ、やぁ、だっ、からっ、ひぁぁぁぁ♪♪」
罵倒された仕返しに、人差し指も使って乳首を強くつまむと、身体を震わせながら甲高い声を上げる。
その大きな眼は快感に涙を流しながらも、どこか甘えるようにこちらを見つめていた。
「エルゼちゃん……えるぜ、ちゃん……っ」
「あー♪ あっ♪ らめっ♪ ぁー♪ もうっ♪ んぁっ♪♪」
膣壁が奥へ奥へと導くように蠕動運動を始めた。
掘り返した精液を少しでも取り戻そうと、強くも柔らかく肉棒をマッサージしてくる。
射精したばかりの少年も、限界は近かった。
「あっ♪ あー♪ あっ♪ んっ♪ ひぁ♪ ぁー♪ やぁぁ♪♪」
不意に、しがみつくように、ぎゅっと強く抱きしめられた。
同時に、狭い膣内もぎゅぅぅぅっとさらに締まる。
膣肉が絡み、それでも止まらない蠕動が、肉幹全体を吸引されるような感覚をもたらし、それがとどめとなった。
「――――!!!」
「――ふぁぁぁぁぁぁぁ♪♪♪」
少年は言葉も出ないほどに強烈な快感の中で、精液を吐き出した。
「ふぁ、あっ、あー♪ あぁっ♪♪ ぁうっ、ひぁ、ぁー♪♪」
呂律が回らないのか、呆けたような言葉を発しながら、エルゼは精液を受け止める。
口元からは涎が零れ、その眼は虚空を見ながら、身体をびくん、びくん、と痙攣させていた。
「はっ……はっ……はぁ――」
魂が持っていかれそうなほど長い射精を終えた時、ようやく燃え盛っていた情欲の炎が消え去った。
その瞬間、身体が鉛のように重くなり、両腕では支えきれず、エルゼに覆い被さるように倒れこむ。
「ひゆぅん♪♪」
今の彼女にはそれすらも快感になり得るのか、あまり心配にはならない声を挙げる。
「あぅ……あー……はぁ……ぁー……はっ……ぁー♪」
「……えるぜ、ちゃん……」
余韻に浸っているのか、ペニスが萎えて自然と膣外に抜け出しても、呆けた声が時折出ていた。
少年の声は聞こえていないのか、それに対する反応は帰ってこない。
それでも、少年はボーっとした意識の中で、エルゼの眼を見つめていた。
「……あ」
ようやく身体が動かせるほどに体力が回復し、脱ぎ捨てていた服を拾って、着直していた時だった。
周囲の景色が、茜色に染まりかけていることに気が付いたのだ。
もう夕暮れ時である。
そろそろ帰らねばならなかった。
エルゼに声をかける為に振り返る。
「…………えへへ♪」
少し距離の空いたところにいるエルゼが、宙に浮いた状態で自分の下腹部を撫でてにやにやしていた。
少年の視線には気づいていないようである。
「……エルゼちゃん」
「ひぁっ、ふわぁっ、えぁぁ、な、なに!?」
声をかけると、エルゼは慌てたように取り乱した後、撫でていた下腹部を隠すようにその場で膝を抱えた。
あからさまな反応だが、あえて気にしないことにした。
触れて良い事と悪い事の区別ぐらい、少年にも分かっているのである。
「そろそろ帰らないと。出口まで、つれてってほしい」
「えっ――えぇー、と、その……ぁの……」
少年の要求に、エルゼは言葉を詰まらせる。
その大きな単眼は、遠くからでも分かるほどに泳いでいた。
周りの触手たちもゆらゆらと泳いでいた。
「……?」
「……うぅ……」
少年の顔をチラチラと窺い、しまいには何も言わずに顔を伏せてしまう。
周りの触手たちも、しゅんと地面に眼を落とし項垂れている。
その反応で、彼は何となく察した。
「…………」
「あたしも、その……ここに来たばっかで……迷って……」
「そうなんだ」
少ししてから白状した彼女に、少年は穏やかな声音で答える。
そして、彼女の隣に歩み寄って腰を下ろした。
宙に浮きながら膝を抱えていたエルゼも、すとん、とその場で地面に落ちた。
「……って、ていうか! あたしが知ってたとしても、帰るのはダメだから!」
「えっ、どうして?」
いきなり顔を上げたかと思えば、怒ったように帰ること自体を否定されて、思わずエルゼに顔を向ける。
その顔は、やはり膨れていた。
「な、なんでって……言ったじゃん! 『お前はあたしの物』って」
「…………うん」
彼の理性が吹き飛ばされる前に、そんな言葉を一回か二回ほど聞いた気がした。
つまり、少年は既にエルゼの物だったのである。
「だ、だから! その、あたしと離れるの……禁止」
少しずつ声が小さくなっていき、エルゼ自身も縮こまっていく。
服の袖を二本の指で摘まれて、軽く引かれる。
その言動は、強制力が一切なく、どちらかと言えばおねだりに近かった。
「……エルゼちゃんは、一緒に帰らないの?」
「えっ……ふぇっ!? そ、そんなの、それこそダメに決まってんでしょばか!」
新たな案――というよりも、最初から考えていたことを彼女に掲げてみるが、さらなる強い拒否によって却下されてしまった。
「……どうして?」
「少しは考えろばか!」
そう言われて、少年は少し考えてみるが、やはり思い当たらなかった。
彼女が魔物娘である以外の要素は、どこにも見当たらないのだ。
となれば、彼女は少年が帰る場所が魔物娘に対して敵対的である可能性を考えているのかもしれない、という結果に行き着いた。
「……だいじょうぶだよ。森のみんなも、街の人となかよしだから」
「そうじゃなくて! あたしが行ったら……その、気持ち悪がられるから……」
「……? エルゼちゃんはかわいいよ」
「かわ……っ!」
少年の当たり前のように出てきた言葉に、エルゼの顔がぼふん、っと一気に真っ赤に染まった。
彼女自身の紅い瞳にも負けないほどに紅くなっていた。
しかし、すぐに顔をぶんぶんっと振り回して、冷静さを取り戻す。
「あ、あんたはそう思ってくれてても、他の人たちがそう思ってくれるとは限らないだろばか!」
エルゼがどうしてそこまで人の目を気にしているのか、少年には分からなかった。
その雰囲気を悟ったのか、エルゼは大きくため息を吐いて、顔を落とした。
「その、普通にしてくれてるけどさ。あたし、眼が一つしかないから」
だから、気味悪がられる、と。
周囲にある彼女の眼たちも、二つで一組ずつ、眼を閉じて互いに寄り添っている。
その姿は、お互いを抱きしめながら涙を流しているようにも見えた。
「ワガママなのは、わかってるよ。でも、街には行きたくないし、あんたと離れるのも……やだ」
それが、彼女の本音だった。
しかし、それでも少年は理解できない。
初対面の時からエルゼの単眼に対して、一切の嫌悪感を持たなかった彼にとっては、そこまで悩む理由がどうしても分からないのだ。
「ねぇ、どうしても帰りたいの? 帰らなくちゃ、ダメなの?」
縋るような視線で、エルゼが身体を寄せてくる。
その眼は、本当に涙を零してしまいそうなほどに、潤んでいた。
「ダメじゃないけど……だいじなばしょだから、エルゼちゃんにも来て欲しいんだ」
「……うぅ……」
その言葉に、エルゼは複雑な表情を見せる。
やはり渋る彼女に、少年は逆に聞いてみることにした。
「……どうしても、行きたくないの?」
「どうしてもじゃ、ないけど……行きたくない」
彼の質問に、ぷいっと顔を逸らして、エルゼは答える。
どこか拗ねたように見えたその態度に、少年は呆れたようにため息を吐いた。
「そっか――じゃあ、行こう」
「えっ、あっ、ちょっ、やっ……!」
そして、エルゼの手を握ると、そのまま立ち上がって引っ張っていく。実力行使である。
言葉では嫌がっているが、その抵抗はとても小さく、少年の腕力でも引っ張れる程度の物だった。
彼女は怖がっているだけなのだ。忌避される可能性がわずかだったとしても、それを恐れて行動に移せないでいる。
少年はそれを悟ったのだ。
「……うぅ……知らないから」
構わず引っ張っていると、エルゼがそう呟いた。
そして、小さな抵抗すらもやめて、彼に手を引かれて一緒に歩いていく。
もう景色は茜色を通り越して、暗くなってきていた。
早く帰らねば本格的な迷子になってしまう。
少年は、少しだけ早歩きで森を歩き始めたのだった。
「……あ」
しかし、重大なことを思い出し、少年は立ち止まる。
「……なに、どしたの?」
怪訝そうな表情で見るエルゼに、少年は真顔で告げる。
「帰り道、わからないんだった」
むしろ最初から浮上していた問題の告白に、エルゼはきょとんと目を丸くする。
そして、少しの時間を使ってその意味を理解すると。
「っっ! このばか! あたしの覚悟返せばか! ばかばか! ばーかばーか!!」
今まで以上の罵倒が飛んできた。
彼女もその事実を忘れていたらしく、恥ずかしさのためか顔がわずかに紅い。
早くも彼女のその罵倒には慣れてきてしまったこともあってか、少年の精神的ダメージは一切無かった。
そして、二人が別の魔物娘に見つけられ、出口どころか街まで送ってもらったのは、陽が完全に落ち切ってからであった。
13/10/01 06:01更新 / edisni