読切小説
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「亀頭がクリトリスで、金玉が卵巣。じゃあ子宮は?」「多分前立腺?」
夜、月が照らす麦畑や果樹園、そしていくらかの家屋が点在するばかりの景色に、一つの影が聳えていた。
この辺りの住民が城と呼ぶ、領主の別荘だ。正確には、尖塔を備えた大きな屋敷と言ったところだ。
だが、年に一度訪れるかどうか、という別荘には常に数人の使用人が滞在し、手入れを欠かさないという。
俺は、その城からそそり立つ尖塔の一本を見上げていた。
尖塔には明り取りの穴がいくつかと、てっぺん近くに窓が一つあるばかりだった。
城に小麦を納める知り合いの話によると、あの塔は開かずの塔で、ここ数十年ほど入った者はいないらしい。
だが俺は知っている。夜になると、あの窓から時々美しい女性が外を眺めるのだ。
遠目ではあるものの、月明かりに照らされるゆるく波打つ金色の長い髪も、その整った顔立ちも確かに俺は見た。
最初は幽霊かと思ったが、何度か見るうちに彼女が実在することを俺は確信し、いつしか彼女に対する想いが膨らんできた。
いつからあの塔にいるのか。あの塔でどんな暮らしをしているのか。一人でさびしくは無いのか。
そんな話をしたい。
だが、きっとあの塔にいるのは領主の親類だろうから、俺如きと話どころか会うことすらできないだろう。
それでも彼女に対する欲求は膨れ上がり、こうして塔を見上げるて紛らわせることしかできない。
「ああ、会いたいな…」
今宵はまだ見ぬ彼女の姿を脳裏に描きながら、俺は思わずそうこぼした。
その瞬間だった。
「誰と?」
高く澄んだ声が俺の横から不意に生じ、同時に辺りが冷たくなるのを感じた。
凍えるような寒気に襲われながら、俺が横に顔を向けると、すぐそこに一人の女が立っていた。
肩口ほどで切りそろえた青白い髪の毛の、ぞっとするほど美しい顔立ちの女だ。
ただ、下着に直接上着を羽織ったような格好をしており、その背中からは蝙蝠めいた羽が広がっていた。
魔物だ。それもかなり高位の。
彼女の正体に思い至ると同時に、俺は辺りの冷気が気温によるものではなく、彼女自身の発する気配であることを悟った。
「誰と、会いたいの?」
凍りつくような気配の中、彼女の唇が艶めかしく動き、言葉を紡ぎ出した。
質問だというのは分かっているが、答えるよりもその唇に俺の目は釘づけになっていた。
答えを紡ぐよりも、数歩歩んでその唇に吸い付く方が数倍はたやすいのではないか、そんな気がしてくる。
だが、魔物の放つ色香は、毒花の放つ甘い香りだという。下手にふらふらと近寄れば、喰いつかれるかもしれない。
そうなれば、名も知らぬ彼女と言葉を交わすどころか、もう見ることすらできなくなる。
魔物への恐怖感と、彼女への想いを胸に、俺は前へ進みそうになる足を押さえつけ、口を開いた。
「あ、あの塔にいる、女の人です…!」
「……そう…」
彼女が残念そうにそう呟くと同時に、肌に刺さるような冷気が消え去った。
同時に、彼女の纏っていた妖艶な気配が潮を引くように薄まる。
「うーん、好きな人がいるんなら仕方ないわねえ…」
後に取り残された女性が、やれやれとばかりに顔を左右に振った。
「あーあ、多少いい感じだと思ってたんだけど、また外れか…」
彼女はそう訳の分からないことを呟くと、くるりと背を向けた。
するとその蝙蝠のような翼が広がり、ふわりと彼女が宙に浮かんだ。
「邪魔して悪かったわね。縁があったらまた」
「ま、待ってください!」
そのまま飛んで行こうとする彼女に向かって、俺は思わず声を掛けていた。
「何?」
「あの、飛べるんですよね!?」
「え?あー…まあ、見れば分かると思うけど…」
宙に浮いたまま、彼女は若干の戸惑いを滲ませながら答えた。
「だったらお願いがあるんです。今から用意しますから、手紙を、どうかあの塔の窓に届けてください!」
「今から…?」
俺の申し出に、彼女は塔を見上げてから、再び視線を俺に向けた。若干皺の寄った眉間からは、面倒そうだという感情が滲んでいた。
「急ぎますから!すぐに準備しますから、少し待って届けてください!どうか!どうか!」
「うーん…」
俺の頼み込む声に、彼女はしばし呻いた。
そして、ふと思いついたように彼女が手を打つ。
「ねえ、手紙だけでいいの?」
そう彼女が問いかけた。




紙の上に文字を書き綴り終えると、僕はペンを置いた。
窓から差し込む月明かりの他には何も光は無いが、問題は無い。ヴァンパイアの目には、昼間の室内と変わらぬほど明るい。
僕は人の目には闇と変わらぬ薄明かりの中、今しがたしたためた一日分の、殆ど内容の無い記録を眺める。僅か三行に凝縮された一日だ。
無理もない。今日は一日部屋で過ごしていた。
昨日も、一昨日も、ここを出ることなく過ごしたため、ページをめくっても変わりはない。
時折、五行程度の長い日記が挟まれるが、それもほんの少し外に出た時だけだ。
塔の尖塔の、この部屋で暮らすようになってどれほどになるだろう。他者との出会いをほぼ絶ち、夜も明かりをともすこともできない暮らしをするようになって、どれほどになるだろう。
始まりは、勇者の進撃の情報だった。
方々で魔物を討つ勇者の情報に、恥ずかしながら僕は心底震え上がり、とある人間に住んでいた屋敷を譲り渡した。
ただ、所有権こそ人間に移ったものの、私は変わらずその屋敷に住み続けた。もちろん、人目につかぬよう隠し部屋に潜み、隠し通路から人を引き込み、最低限の血を吸いながらだ。
人に見られないよう、僕の存在を悟られぬよう、僕を倒そうという人間が現れないよう、僕は徹底しておのれの存在を隠し続けた。
そして勇者がついに魔界に突入し、魔王との決戦を目前にしていると聞いてしばらくしたころだったか。
不意に何かが変質するのを僕は感じた。何か大規模な攻撃が始まると思った僕は、とっさに塔のてっぺんにある一室に飛び込み、内外の魔力の影響を遮断する結界を張ったのだ。
魔王の交代による魔物の変化が露呈したのは、しばらくしてからだった。
スライムもドラゴンも、高位低位に関わらずすべての魔物が、人間の女にも似た姿になったという。
外部の情報を伝えていた私のしもべの蝙蝠も、いつしか人間の女性と蝙蝠の間のような姿のワーバットになり、ついにここに来ることもなくなった。
最後に言葉を交わしたときは、気になる男性がいるとか言ったが、たぶんその人間の側にいるのだろう。
だが、幸いにも僕はまだ影響を受けていない。この、魔力を完全に断絶する結界の内側にいるからだ。
まだ肉体的には男の身体のままで、精神的にも男性的である。
このままこの、机一つにベッド一つの小さな部屋に留まっていれば、新魔王の影響を受けることは無いだろう。
だが、そう甘くない。
ヴァンパイアである私は血が必要だ。ぎりぎりまで我慢し、隠し通路を伝って屋敷の使用人からほんの少しずつ吸わねばならない。
その外出の際に、少しずつ新魔王の影響を受けているようだ。
鏡に目を向ければ、波打つ金髪の下には整った顔立ちの僕が映っていた。だが、一見すると男装した女に見えなくもない。
元から中性的な顔立ちだと思ってはいたが、それでも肌は艶を増し、髭や胸毛などの体毛は消え去り、全体的に体つきが柔らかくなった気がする。
気のせいか、声も高くなり、股間のモノも小さくなったかもしれない。
このまま、ゆっくりと新魔王の影響を受けて女になってしまうのだろうか。
「…はあ…」
僕はため息をつくと、椅子を立ち、窓に歩み寄った。窓から見えるのは、月に照らされる田畑と、光の灯る家々だ。
魔王が変わり、魔物が変わり、自分さえも変わっていく中、変わらないのはこの景色だけだった。
僕は、あとどれだけの間この景色を見られるのだろうか。
そんな、ある種の憂いめいた感情に、目を開きながらも窓の外を見ていなかった僕の目に、僅かな影がかかる。
「ん?」
月に雲でもかかったかと、思考を経って窓の外を見る。すると僕の目に、月明かりを遮る影が入った。
月の光に目が慣れ、月を背にする、白銀色の髪を肩口で切りそろえ、蝙蝠のような翼を広げる女の姿が、はっきりと見えた。
「っ!」
僕がとっさに窓から離れるように飛び退くのと、女が窓めがけて接近するのはほぼ同時だった。
窓を打ち破り、女が部屋に入り込む。同時に、結界の内側に目に見えない何かが流れ込んできた。
新魔王の魔力だ。
「夜分失礼するわ」
窓を突き破ってきた女は、床に降り立ちながら口を開いた。
「私は魔王の娘、リリムが一人ルーシャ。今宵は少しあなたに用事があって、お邪魔させてもらったわ」
「く…ついに直々に…!」
言葉とともに放たれる、高位の魔物特有の独特な魔力に、僕はそう呻いた。
すると、目の前の女、魔王の娘のルーシャが、微かに眉をひそめつつ首を傾げた。
「いや、多分あなたが考えているのと違う用事で…」
彼女が紡ぐ若干の困惑を孕んだ言葉を聞き流し、僕は一息に彼女との距離を詰めた。
一歩二歩と近づくにつれ、リリムの目が丸く見開かれていく。そして、最後の一歩に合わせるように、全身全霊の力でもって、その鳩尾に向けて拳を繰り出す。
半身ごと突き出す拳は、掠めれば腕ぐらい持って行けるし、命中すれば命は無い。
直後、拳が鈍い手ごたえと共に止まる。
だが、拳はルーシャの鳩尾に突き刺さるどころか、彼女に触れる直前で止まっていた。
「はあ、びっくりしたわ…突然殴りかかってくるなんて、どこが深窓の令嬢よ…」
彼女の感慨深げな言葉とともに、拳がじりじりと押されていく。
「く…う…!?」
距離を取って体勢を立て直そうとするが、僕は繰り出した腕はもちろん、残る四肢も動かない。
魔力による力場か何かで、完全に捕えられてしまった。
「は、放せ…!」
「放したらまた暴れるでしょ」
もがく僕を宙に持ち上げると、彼女はそう言いながら僕の身体をベッドの上に横たえた。
「全く、ヴァンパイアって妙に気位が高いから、人と会う機会をとりまとめるのもたいへ…ん…?」
僕に向けてぼやく彼女の口調が、徐々に疑問を孕んだものになり、ついに首を傾げる。
そして、ベッドに横たわる僕の側に立つと、掌で服の上から僕の身体に触れた。
「な、何を…うわ…!」
遠慮なく這いまわる彼女の手に、僕は思わず上ずった声を上げてしまう。
だが、彼女はお構いなく胸や腹を触り、ついにはズボンの股に触れた。
「…ある…」
「当然だ!」
愕然とした様子のルーシャに、僕はそう吠えた。
「えー、何で…?」
「お前の親が魔王になった頃から、結界で魔力を遮断していたんだ」
こうしている間にも、魔王と目の前のリリムの魔力が僕を蝕んでいく。とっとと話してもらって、結界を張り直さなければ。
「お願いだから、僕のことは放っておいてくれないか」
「うーん、そうは言ってもねえ…約束が…うーん」
ルーシャは腕を組み、しばらく呻くと、うんと頷きながら目を開いた。
「やっぱりデルエラ姉さんの真似なんて、慣れないことはするもんじゃないわね」
「分かってくれたか…」
デルエラ姉さん、とやらの真似を止めてくれそうな気配に、僕は内心胸を撫で下ろした。
「デルエラ姉さんだったら女の子の意思を尊重するけど、私は男の子の方を尊重するわ。ごめんなさいね」
「…え?」
最後の謝罪の言葉の意味を理解しかねる僕の頭に、彼女の手が乗った。
直後、ルーシャの掌から、僕の頭に何かが注ぎ込まれた。
「ぃひっ!?」
見えざる力に抑え込まれる手足が痙攣し、全身が硬直する。遅れて、稲妻のような何かが全身を駆け巡った。
「っかはぁっ…!」
肺から息が搾り出され、身体がぐんぐん熱くなっていく。
熱さと息苦しさに、目の前がちかちかと瞬き出す。
「ああ、こっちを先にすべきだったわね」
リリムがそう呟くと、手を伸ばして僕の上着とシャツのボタンを外し、ズボンを開いた。
汗のにじむ肌を夜の空気が触れ、僅かながらも爽やかな涼しさが生じた。
「はぁ、はぁ、はぁ…」
喘ぐように呼吸を繰り返し、息苦しさを治めようとするが、身体の火照りとともに呼吸が上がっていく。
まるで、かなりの距離を走って来たみたいだ。
「ふふ、始まったわ」
闇の中、僕の身体を見下ろしていたリリムが、そう呟いた。
「ほら、御覧なさい」
彼女が言うがまま、視線を下におろしてみると、僕の身体が見えた。
最近薄くなったように感じた胸板があったが、なぜか乳首が屹立し、その向こうではやや小ぶりの肉棒がそそり立っている。
命の危険を覚えると、肉体が反応すると言うが、それなのだろうか?
だが、屹立する肉棒よりも、隆起する乳首の方が熱を帯びているように感じる。
すると、ルーシャが指を伸ばし、軽く乳首に触れた。
「ひゃいっ!?」
瞬間、僕の口から甲高い声が漏れだし、遅れて痺れのようなものが乳首から頭に届いた。
「どう?胸が敏感になってるでしょう」
「な、なんで…?」
痺れの余韻に喘ぎを挟みながら、僕はどうにか問いを紡ぎ出した。
「簡単なことよ。さっき私の魔力を注いだからよ」
「それ、ってぇ―っ!?」
僕の言葉を遮るように、彼女は僕の胸に手を添え、軽くつかんだ。
同時に、乳首を擦られた時とは比べ物になるほどの刺激が、胸から意識に届く。
「どう?膨らんでいる最中のおっぱいを揉まれるのは?」
彼女の言葉に、僕の胸にぽっかりと穴が空いた。
やはり、新魔王の魔力が、僕を蝕んでいるのだ。
胸の刺激と快感に涙の滲む目で、どうにか胸をもう一度を見ると、かなり小ぶりではあるものの乳房があった。
しかも、見ている間にも少しずつ、少しずつ膨らんでいる。
「あ、あ、あ…ああ…!」
「ほらほら、おっぱいだけじゃなくて、肩も腰も太腿も…」
「ひっ、あっ…!」
体つきの変化が顕著な場所にルーシャが触れる度、そこから焼けるような快感が生じ、僕の口から喘ぎを絞り出す。
肩は細くなり、腰はくびれ、太ももは柔らかそうな肉に包まれ、女の身体になっていた。
「はぁ…はぁ…はぁ…!」
「そろそろかしら?」
快感に震えながら息をつく僕の屹立に、彼女がそっと触れた。
すると、僕の身体で唯一残った男性の特徴は、僕がまだ男だと主張するかのように震え、一際強い快感を生み出した。
「あぁ…っ!」
ほんの少し、指先で突いた程度だというのに、快感は僕の脳裏を駆け巡り、たちどころに絶頂へと僕を導いた。
瞬間、腰の奥で渦巻いていた何かが、精液とともに股間から迸った。
快感に体が震え、解放感が意識を霞ませる。だが、しばし射精してから、僕は異常に気が付いた。
精液が止まらないのだ。
「あ、あああ…なんっ、で…!?」
「これから女の身体になるのよ。今まで作ってた精液なんて、いらないでしょ?」
止まらぬ射精への疑問に、ルーシャはそう答えた。
彼女の言葉を裏返せば、射精が止まった時、僕の身体は…。
「い、いやだぁ!止めて、とめてぇ!」
男としての最後のよりどころである、肉棒を失ってしまうことへの恐怖に、僕は精液をまき散らしながら声を上げた。
だが、いくら身を捩っても射精は止まらない。
「ふふふ、結構ため込んでたのね…ちょっと手伝ってあげる」
揺れる肉棒に彼女が指を伸ばし、軽く握った。
屹立は熱く滾っていると言うのに、肉棒を包む彼女の手のぬくもりと柔らかさが、柔らかない快感を更にもたらした。
「あああっ!あぁっ!」
脈打つ肉棒が、彼女の掌と擦れて、射精の勢いが増していく。
そして、ついに射精の勢いが弱まり、ついに何も出なくなった。だが、絶頂が止んだのではなく、肉棒は最後の一滴を搾り出してもなお、びくびくと脈打ち続けていた。
「これで全部ね」
撒き散らされる白濁を見下ろしながらるルーシャは呟くと、肉棒から手を離した。
同時に、痙攣する屹立が脈動と共に、徐々に縮み始めた。射精が終わって萎えていくのではなく、屹立したまま縮んでいくのだ。
「ああぁ…な、にぃ…?」
「もう精液が全部出たから、これから女の子になるのよ」
快感を維持したまま萎縮していく肉棒に脳裏を焦がされながら、僕は彼女の言葉に恐怖した。
「あぁぁ…!」
「嫌がっても無駄よ…ほら、もう玉が体の中に引っ込んでいったわ…」
ルーシャの言うとおり、股間から体内に睾丸が引き込まれる感触が生じた。
睾丸は身体の中に入っても動きを止めることなく、奥へ奥へと潜り込み、内臓をもぞもぞと擦っていった。
同時に、肉棒はもはや親指よりも小さく、細くなり、体の中へ埋没していった。
そして、つるりとした股間に、ごく小さな亀頭だったものが取り残され、完全に僕の肉棒は消滅した。
「あ、あああ…な、なくなっ…ひゃいっ!」
生殖器を失った衝撃に、快感のうねりの中にありながらも絶望に浸っていた僕の腹を、不意にリリムが撫でた。
単に指で触れた程度だというのに、彼女の指の感触は皮膚を通して内臓に届くようだった。
「分かる…?お腹の中に、子宮が出来ているの…」
鳥の羽でくすぐるようでありながらも、胎内の何かを探るような指遣いで、ルーシャが僕の下腹を撫でつつ、続ける。
「赤ちゃんを育てる場所で、精液をたっぷり注ぎ込んでもらうための場所…女の悦びは、ここから生まれてくるの…!」
僕が横たわるベッドに腰を下ろし、耳元に唇を寄せながら、彼女は微かに熱を帯びた言葉を紡いだ。
「い、いやだ、分かりたくない…!」
「そう、今はね」
必死の僕の主張に、彼女はそう笑みを孕んだ声で続けた。
「でも、その内分かってくるわよ…身体が女であるってことが…」
「あ、ああ…」
いつしか生まれていた腹の中の熱に、僕はそう呻いた。




屋敷の近くの茂みに俺はいた。
あの後、リリムのルーシャさんは塔の彼女に手紙を届けるのではなく、直接俺と彼女を合わせる提案をした。
彼女の言葉に、俺は『お願いします』と即答し、彼女の『準備ができるまで待っててね』という指示に従ってこの茂みに隠れている。
魔物と言うのは、彼女のように皆親切なのだろうか?
「ハァイ、お待たせ」
頭上から、いくらか楽しげな言葉とともに、ルーシャさんが舞い降りてきた。
「『彼女』の準備ができたから迎えに来たわ。ちょっと浮かぶけど、びっくりして暴れないでね?」
「は、はい!」
直後、俺の身体がふわりと浮かび、彼女とともに塔の壁面に沿って上昇していった。
「うぉ、お…!」
浮遊感と足の裏に何もないという状況が、尻から背筋をむずむずとくすぐるが、俺はルーシャさんの言葉に従い拳を握りしめ、痙攣一つ起こすまいとじっとしていた。
やがて、ルーシャさんと俺は塔の窓から、塔の部屋へ入った。
「お待たせ」
香水だろうか?甘い香りの立ち込める闇の中に向けて、そう言い放ちながら、彼女は床の上に降り立った。
窓から月明かりが差し込んでいるものの、直接照らされている床板ぐらいしか俺には見えない。
「ええと…」
「あら、ゴメン。人間には暗すぎたわね」
闇に目を凝らす俺にそう謝ると、ルーシャさんはパチンと指を鳴らした。すると、彼女の目の前にゆらゆらと燃える白い火の玉が一つ現れた。
火の玉から放たれる光は、部屋全体を淡く照らし出す。机も、衣装ダンスも、ベッドも、ベッドの上に横たわる彼女の姿も。
「うわっ!?」
俺は間近に目にした、金髪の彼女の姿に、思わず声を上げた。彼女が何故か男物のシャツとズボンを半ば脱ぎ、胸も股間も晒しながらベッドの上で大の字になっていたからだ。
「る、ルーシャさん一体何を…」
「いやあ、ちょっと強情だったんで素直になってもらったのよ」
どこか虚ろな瞳で虚空を見つめ、ぼんやりとしている彼女を示しながら、ルーシャさんは若干申し訳ないと言った様子で答える。
「でも、このぐらい素直になってもらった方が、あなたもイロイロやりやすいでしょ?」
「俺は彼女と話をしたかったんです!こんな状態じゃ、碌に受け答えもできないでしょうが!?」
「事後にピロートークぐらいはできると思うけど?」
「普通の会話をしたいんです!」
やっぱり魔物は駄目だ。やることしか考えてないんだろうか。
一瞬でも魔物に対する評価を改めようとしていた自分を、俺は悔やんだ。
「でも、この…娘、ヴァンパイアよ?」
「へ?」
突然のルーシャさんの言葉に、俺は虚をつかれた。だが、彼女は構うことなく続ける。
「ヴァンパイアってのは気位が高いから、あなたみたいな木端人間は歯牙にもかけないわよ。だからこうして素直にしてあげたのよ」
彼女が魔物だった、と言う事実をじわじわと意識に染み込ませている俺にそう告げると、彼女はぽん、と俺の頭に手を載せた。
「まあ、あなたも素直になった方がいいみたいだけどね?」
直後、俺の頭を衝撃が突き抜けた。殴られたわけでもないらしく、痛みは全くない。
だが、急に足元がふらつき、俺は半ば倒れ込むように床に屈んだ。
「え?あ…?」
「ちょっぴり魔力を注いだだけだから、すぐ動けるようになるわよ」
降り注ぐ彼女の声とともに、急に力の抜けた四肢に力が戻り、動くようになる。
それに合わせて、身体が何だか火照り始めた。まるで、運動してきたかのように全身が熱を帯び、呼吸が荒くなり始めたのだ。
そして、急に股間に鈍い痛みが生じた。
「うぅぅ…」
呻きながら視線を下げると、ズボンの股間が張りつめていた。
俺は反射的にベルトを緩め、下着ごとズボンを下ろし、痛いほどに勃起したイチモツを介抱してやる。
夜気が肉棒に絡み付き、火照る皮膚を冷ますが、勃起が萎える気配はない。肉棒の中に、精液が詰まっているような気分だ。
早く射精して、楽になりたい。
そんな思いが、俺の頭の中で煮え湯のあぶくのようにごぼごぼと生じる。
「はぁ、はぁ、はぁ…!」
右手で肉棒を掴んで扱くが、射精までまだかかりそうだ。だが、この間にも勃起はさらに猛っていき、肉棒が破裂するのではないかと言う恐怖が湧いてくる。
一刻も早く射精しなければ…!
手でしごくよりも、もっと気持ちのいい方法を求める俺の目に、ベッドの上に横たわる女の姿が目に入った。
波打つ金髪に、整った顔立ち。華奢な体つきでありながらも、片手に収まるほどの乳房に、引き締まった腰と肉付きの良い尻と太もも。そして、両脚の間には、本来ならばつつましく引き締まっているはずの亀裂が、薄く口を開き透明な粘液を垂らしていた。
まるで、物欲しげに涎を垂らす口のように。
亀裂の奥の桃色の肉を見た瞬間、俺の意識の中で何かが切れた。
「うぉぉぉ…!」
俺は呻き声のような、雄叫びのような声を漏らしながら、ベッドの上に上がった。
そして大きく開く彼女の股の間に入り、半ば倒れ込むようにして彼女にしがみついた。
「ひ…!」
虚ろだった彼女の目に、ようやく恐怖の光りが浮かび、小さく声を漏らした。
だが俺は構うことなく彼女の口に吸いつき、無我夢中で腰を押し付けた。
太腿か下腹か、滲んだ汗で薄く濡れる彼女の皮膚を屹立が擦り、すべすべした感触が股間から甘く伝わった。
その一擦りで、俺は限界に達し、たぎる白濁を漏らしてしまった。
「ん、んん…!ん…!」
勃起が脈動し、精液を放つたびに、無理やり重ねた唇の間から、彼女の小さな声が漏れる。
彼女の芳香や唇の感触、そして柔らかな肌が、俺の腰の奥から白濁を引きずり出していく。
だが、延々と精液が迸るかのように思えた射精も、やがて終わりを迎えた。
最後に少しだけ精液を搾り出してから、けだるい余韻が残る。
「ふふふ、どうだったかしら?」
たっぷりと精液を出し、一息つく俺の背中に、ルーシャさんの言葉がかかった。
「あっつい精液、肌に触れるだけでそんなになっちゃうのに、中に注がれたらどうなるのかしらねえ…?」
どうやら彼女の言葉は俺に向けた物ではないようだ。
「い、いやだ…」
俺の下で、彼女がか細く声を漏らした。
「いやだ?口ではそう言っても、身体はどうなのかしら?おなかの奥が疼いてしょうがないんじゃないの?」
ルーシャさんの言葉に、俺の下のきゃしゃな体がびくん、と震えた。
「ほら、あなたも一回出したくらいじゃ満足できないでしょ?」
俺に向けられた言葉に、股間の屹立が小さく脈動した。
「二人とも、素直になりなさいよ」
火の玉が照らす部屋の中、俺と彼女の目が合った。
情欲の涙に潤む彼女の瞳は、俺の屹立を求めているようだった。
「……」
俺の目に浮かぶ興奮を読み取ったのか、彼女が無言のまま小さく頷いた。
彼女の同意に、俺は腰を一度引き、彼女の股間に屹立を押しあてた。
一度、二度と彼女の下腹を擦ってから、ようやく肉棒が温もりに包まれた。
「…ぅう…!」
柔らかく、温かく、濡れていて、押し入って来た肉棒を優しく抱擁する彼女の内側に、俺は立ちどころに限界を迎え、呻きながら精を放っていた。
身体が強張り、彼女の内側で肉棒が幾度も脈動する。
「…っ…っ…!」
注ぎ込まれる精液に、彼女が声にならぬ声を上げ、小さく身体を震わせた。
同時に、膣壁がきゅっと窄まり、屹立の脈動を抑えつけようとする。その動きが、俺の肉棒に甘い快感を与え、さらなる射精を引きだした。
「う…うぅ…!」
「はぁっ…あっ…!」
途絶え途絶えの喘ぎ声を漏らしながら、俺と彼女は互いに身体を震わせ、快感を貪った。
「もういらないみたいね」
ルーシャさんが不意にそう呟くと、ベッドの上で大の字に広げられた彼女の四肢が突然動いた。
両腕が俺の背中に回り、両脚が俺の腰に絡みつく。
俺を逃すまい、放すまいとするかのように、彼女は全身で俺にしがみついた。
そして俺も、彼女を離すまいとするかのように、深く深く腰を押しつけ、白濁を腹の奥へ奥へと迸らせた。
彼女の爪が背中に食い込み、俺の唇が細く白い首筋に吸いつく。
呻きと喘ぎを漏らしながら、互いに互いを貪り合う。
「…!」
感極まったように、彼女の唇が俺の首筋に吸いつき、鋭い痛みが走った。首筋に歯を立てたのだ。
しかし、痛みはすぐに薄れ、首筋から体液が流れ出る感覚が甘く広がっていく。まるで、首筋からも射精しているかのようだ。
首と肉棒。荒々しく吸いつく唇と、優しく抱擁する柔らかな膣肉によって、俺は搾られていた。
そして、徐々に俺の射精の勢いが弱まり、彼女の体内でもう一度だけ搾りだしたところで、精液が尽きた。
「っはぁ、はぁ、はぁ、はぁ…」
彼女の胎内に肉棒を挿し入れたまま、俺は絶頂の後の気だるい感覚に身をゆだねた。
そしてそのまま、甘い疲労感の海に、俺の意識は沈み込んでいった。


全身を満たす疲労感と倦怠感に身をまかせつつ、僕は天井を見上げていた。
「……」
先ほどまで荒かった呼吸もすでに落ち着いているが、身を起こそうと言う気にはならない。
僕に覆いかぶさる男の重みが、不思議と心地よかったからだ。
そして新魔王の影響だろうか、彼から吸った血液は、非常に美味だった。
「ふふふ、御満悦のようね」
ぼんやりとする僕に、リリムがそう声を掛けた。
「満足してもらったようでよかったわ。これからは、素直に生きなさい」
「お前は…」
ともすれば気だるさのまま眠りに落ちてしまいそうなところを、僕はどうにか言葉を紡ぐ。
「お前は、何をしたかったんだ…?」
「うーん、本当は婿探し」
懸命の問いかけに、彼女はそう事もなげに返した。
「だけど、今は姉の真似ごとかしら?上手く行ったかどうかは分からないけど」
ルーシャはそう言うと、軽く肩をすくめた。
「でも、自分を抑えつけて生きていても、碌な事がないわよ?もう少し素直に、ね?」
彼女はそう続けると、軽く片目を閉じて見せ、窓へと歩み寄る。
「それじゃあお二人さん、末永く、お幸せに」
その一言を残し、彼女は塔から夜空へ飛び立っていった。
「……」
リリムの立ち去った窓を見ながら、僕は小さくため息をついた。
さて、これからどうしたものだろう。まずは、胸の上で寝息を立てる、彼をどうにかしなければ。
12/05/16 21:48更新 / 十二屋月蝕

■作者メッセージ
性転換っていいよね!僕もちんこ喪失したい!
でも今現在、ちんこ喪失と言うと外傷と手術ぐらいしかないから困る。
もうすこし、ほりほね先生世界のようにちんこが気軽に着脱できる時代になればいいのに。

ちんこ〜(→)ちんこ〜(↑)ちんこ〜(↓)
ちんこはいらんかえ〜

ってちんこ屋さんがやってきて、ちんこを売ったり買ったり付けたり外したりするんだよ。
うん、何言ってるのかわかんないね!
ちんこ

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