(123)ケプリ
砂の下に埋もれた大迷宮、本来ならば古い王族の居城を一人のトレジャーハンターが走っていた。月日の流れとともに、脆くなった床を踏み抜くのでは、という恐れは彼の足取りからは伺えなかった。
無理もない。もっと恐ろしいものが背後から迫っているからだ。
「はぁはぁはぁ…！」
男が呼吸も荒く、遺跡の中を進む。すると彼の足音に紛れて、背後からいくつもの音が響いた。
かさかさかさかさ。
軽く、硬いもの同士がこすれ合う音。虫の立てる音に似ていたが、トレジャーハンターは音の主が虫などでないことを知っていた。
「はぁはぁ…！」
通路を曲がる瞬間、彼は首をひねり来た道を振り返った。すると通路の闇の中に、黄金色の輝きがいくつも並んでいるのが見えた。
一瞬だけ見えた金色の光は、ケプリと呼ばれる魔物の甲殻の色だ。財宝に似た色のため、物をよく知らない冒険者やトレジャーハンターが不用意に彼女らに近づき、餌食となってしまう。しかしいくらそのことを知っていても、こうも向ってこられては何の意味もない。
「はぁはぁはぁ」
（ここはどこだ？出口はどっちだ？）
かさかさかさかさ、という擦過音に押しつぶされそうになる中、彼は必死に脳裏で問いかけた。几帳面に距離を測りながら作った地図は、とうの昔にどこかで落としてしまった。彼に残されたのは、僅かな空気の流れで出口を探る方法だけだ。
やがて男は通路の分岐に至った。一瞬動きを止め、頬に意識を向ける。すると彼の右ほおが少しだけ涼しく感じられた。右側の通路から風が吹いているのだ。
一瞬のうちに判断を下すと、彼は通路を右に曲がり、全力で駆けて行った。風向きを調べるための一瞬の静止により、ケプリ達の音が背後まで迫っていたからだ。
しかし、数十歩と進む間もなく、彼の足は止まった。彼の前方に日の光が差し込んでいたからだ。砂の上に露出した外壁が破れ、青空がのぞいている。先ほどの風は、あの穴から吹き込んだ物だろう。男は正しい道を選んでいたわけだ。
穴の大きさが、男の手のひらほどでなければ完璧だったのだが。
「あ…あぁぁ…」
差し込む日の光に完全に絶望し、男は声を漏らした。すると彼の背後にかさかさかさという音が一気に迫る。
衝撃が男を襲い、砂の積もった遺跡の床に彼は倒れ伏した。
「つかまえた！」
「おうさま！」
「おうさまつかまえた！」
幼い少女の声がいくつも響き、トレジャーハンターの手足を固いものが掴む。
「や、やめろ…！」
魔物に捕えられた。遅れて現実を受け入れた男は、手遅れながらももがいて逃れようとした。しかし彼の腕や足をがっしりと掴む、硬い甲殻に覆われた手の感触は、彼を逃そうとしなかった。
「おうさまのおへやにごあんなーい！」
「ごあんなーい！」
「やめろ、放せ！」
男の声をよそに、ケプリ達は「わっしょいわっしょい」と調子を合わせながら、男を運んで行った。
「とうちゃーく！」
遺跡の一室に男を運び込むと、ケプリ達はそう言いながら男を放り投げた。地面への墜落を覚悟するが、男を受け止めたのは柔らかな何かだった。
ベッドだ。柔らかなベッドが男を痛みもなく受け止めたのだった。
「ここは…」
「おうさまのおへやー！」
不自然に柔らかいベッドの感触に疑問を感じていると、ケプリ達が初めて男の言葉に応じた。
彼が顔を向けると、そこには三人のケプリが立っていた。金色の甲殻に四肢を包み、背中には羽のようなものを背負っている点は同じだが、身長と髪形が違っていた。
一番背が低いおかっぱのケプリに、一番背が高い腰まで届くような長髪のケプリ、そして真ん中は、背中の半ばに届きそうな髪を一本に結い、後頭部でまとめていた。
「おうさまがかえってきたから、おもてなしするの」
「おもてなしー！」
「おかえりなさいおうさまー！」
三人のケプリは口々にそう言うと、股間を覆う僅かばかりの金色の装身具を一息に下ろした。羞恥心が無いのか、その動きに一切の躊躇いは無く、彼女らは無防備に両脚の付け根をトレジャーハンターの男に向けて晒した。
「な、何を…」
褐色の肌に刻まれた小さな亀裂と、無毛の下腹に一瞬目を奪われつつも、彼はそう問いかけた。するとケプリ達は、男の横たわるベッドに歩み寄り、乗りながら言った。
「おふろだよ、おうさま」
「おそとあつかったでしょ？」
「わたしたちがきれいにしてあげるね」
そして彼女らは金色の甲殻に包まれた手で男の手や足を抑え込むと、衣服を力任せに剥ぎ取っていった。
「や、やめろ…！」
「だめ！おそとからかえったらきれいきれい！」
「おうさまもきれきれいしないとだめ！」
彼女たちは男の言葉にそう返しながら、丈夫な生地で作ってあるはずの探索用衣装を引き裂き、床へと放り捨てた。そして一糸まとわぬ姿になった男の腹の上に、おかっぱのケプリが跨った。
「ごしごし、ごしごし」
ケプリはそう言いながら小ぶりの尻を前後に揺らし、無毛の股間を男の腹に擦り付けた。
「な、なにを…」
「おふろだよ」
「こうしてたらおみずがでてくるんだよ」
長髪と髪をまとめたケプリが、おかっぱの代わりに応じる。事実、二人の説明通り、おかっぱケプリの両足の付け根は湿り気を帯び、男の肌の上に跡を残しつつあった。だがそれがただの水などではないことは、上気しつつあるケプリの表情を見るだけでもあきらかだった。
「はぁ…ん…はぁ…」
全身を使いながらの運動のためか、おかっぱケプリの呼吸は徐々に乱れ、時折呻きが挟み込まれた。トレジャーハンターの男からしてみれば、外見的には一回り以上年下の小娘でしかないというのに、彼女はその身に色気を纏っていた。大人の女が放つ色気とはことなる、微かな毒を含んだ色気だった。
「ん…んぅ…」
ケプリの動きが徐々に強まり、男の腹の上を撫でる陰部の感触が大きくなる。ぬるぬると腹部を濡らす粘ついた液体の向こうに、柔らかな肉の感触があった。小さく、片手ですっぽりと覆い隠せそうな領域でのマッサージは、男の胸を高鳴らせ、肉棒をそそり立たせていった。
「あしあらいまーす！」
「うであらいまーす！」
おかっぱケプリの献身に男が大人しくしていると、残る二人が声を上げた。そして二人のケプリは宣言の後、男の手と足を跨ぎ、陰部を擦り付けてきた。
やがて腕や太ももに触れる柔肉の感触に、ぬめりが加わる。
「よいしょ、よいしょ…」
「ん…はぁ、はぁ…」
「うーん、んんー…」
三者三様、掛け声や呻き、あるいは喘ぎを混ぜながら、男の体を『洗って』いく。魔物とは言え、外見的には歳幼い褐色の少女にしか見えないため、男の抱いていた恐怖はいつしか弱まり、代わりに劣情が膨れ上がっていた。
「あ、おうさまのおちんちんおおきくなってる！」
男の太ももに股間を擦り付けていたケプリが、彼の肉体の変化に声を上げた。
「ほんと？」
「ほんとだ！」
「おふろ、きもちいいんだね！」
確かに気持ちよくはあるが、ケプリ達の意図する気持ちよさとは違う。男は年端もいかぬ外見の魔物に勃起を指摘される羞恥を覚えながらも、屹立を脈打たせていた。
「ああ、気持ちよかったから、もう…」
「だめー！」
「もっとおふろするのー！」
男が満足した旨を伝えようとすると、三人はその言葉を遮って、身体を揺すり始めた。遺跡の一角に濡れた音がぬちゅぬちゅと響き、男の腕や足、腹の上で愛液が泡立つ。
きゅっと一文字を描いていたケプリ達の女陰は、擦り付けられるうちに熱を帯び、薄く口を開いていた。そして未発達な陰核を包皮越しに、男の肌に擦り付けて、三人とも快感を味わっている様だった。
「はぁはぁはぁ…！」
ケプリの一人が小さく声を漏らして身体を震わせる。絶頂に達したのだ。すると仲間の絶頂に合わせるように、残る二人もまた動きを止めて身体を痙攣させた。
三人の少女が、自分の体で達した。その事実に、男の屹立は何の刺激も受けていないにもかかわらず、びくびくと痙攣していた。
「はぁ、はぁ…」
「おうさまー…おふろ、きもちよかった？」
絶頂の余韻にいくらか呆然としながらも、長髪のケプリが尋ねる。
「あ、あぁ…」
男は彼女の問いに頷いて答えた。
「よかったー」
「おもてなし、だいせいこうだね」
「やったやった」
三人のケプリは、口々にそう言いながら嬉しそうに顔を見合わせた。
どうやら三人の相手はこれでひと段落らしい。
「つぎはおうこくふっかつだね」
男が内心ほっと息を吐いていると、髪をまとめたケプリが口を開いた。
「くににはこくみんがいないとだめだから」
「わたしたちがこくみんをうんであげるね」
「お、おい何を言って…」
まるで、ケプリ達が男との間に子を設けてくれるとでもいうかのような言葉に、彼はその真意を問いただそうとした。しかし、男が問いを紡ぎ終える前に、おかっぱのケプリが行動でもって答えた。
小ぶりな尻を男の胴から離し、そそり立つ彼の肉棒に女陰を押し当てたのだ。
「ん…！」
男の腹に擦り付けて一度絶頂を迎えたため、あるていどこなれていたためか、屹立は彼女の胎内にもぐりこんでいった。しかし内側は体格相応に狭く、膣壁の柔肉が肉棒の圧力によって押し広げられている。
胎内に加えられる屹立の熱と圧力に、おかっぱのケプリは目元に涙をにじませながら、目を見開いた。
「は…ぁ…！」
「だいじょうぶ？」
「いたいの？」
口から吐息を漏らしながら軽く仰け反る仲間の姿に、二人のケプリが声を掛ける。しかし、そこにあるのは仲間への気遣いではなく、おかっぱケプリがどれほどの刺激や快感を得ているのかと言う好奇心だった。
「ねーえー、おうさまのおちんちんどうなの？」
「おしえてくれないと…ほら！」
「きゃう！？」
不意に乳首を抓まれたおかっぱケプリが、声を漏らした。その瞬間、彼女の膣肉が収縮し、男の屹立をきつく締め上げた。
「うぉ…！」
「あれ？おうさまがきもちよかったの？」
「へんだねーわたし、こっちをこーげきしたのにー」
男の反応に二人のケプリはくすくすと笑う。そして、髪をまとめたケプリがおかっぱに背後から抱きついて動きを制限し、長髪のケプリがその薄い胸に顔を近づけた。
「ちゅー」
長髪のケプリが、口でそう言いながらおかっぱの乳首に吸い付く。桜色のつぼみが桃色の亀裂の内側に消え、おかっぱケプリの身体がびくん、びくんと断続的に震えた。
「くひ…かは…！」
ケプリの吐息が乱れ、身体が震える。そして彼女の胎内では、四肢の痙攣に合わせるように、膣壁が波打ち、収縮して屹立を責めたてていた。
「うぉ…！」
ケプリ三人分の愛液を体にまぶされ、精神的にも肉体的にも興奮しきっていた男が、低いうめき声とともに屹立を脈打たせた。膣壁に押しつぶされた尿道を粘液が押し広げながら駆け上り、解放感とともにケプリの胎内に迸る。
「あ、つ…！」
おかっぱケプリが胎内の熱に、歯を食いしばりながら漏らした。腰の奥から湧き出てくる快感と幸福感が、彼女の背筋をゾクゾクと震わせ、目元に涙さえ滲ませていた。
「ん…！おうさまの、いっぱい…！」
「いいなあー」
おかっぱケプリの漏らした言葉に、髪をまとめたケプリがうらやましそうに呟く。
「ほらほら、つぎわたしー」
男の放った白濁の熱を味わうおかっぱケプリを、長髪のケプリが引っ張った。男の屹立がぬめった音を立てながら、おかっぱケプリの女陰から引き抜かれる。そして二種類の体液にまみれた肉棒に、長髪のケプリはなんのためらいもなくまたがった。
「ん…はいったぁ…」
長髪のケプリは、かすかに声を震わせながら、膣内を押し広げる肉棒を根本まで受け入れた。三人のケプリの中でもっとも体が大きいためか、男の分身への締め付けは軽いものだった。しかし、彼女の膣壁には柔らかな襞が並んでおり、屹立ににゅるにゅると絡みついてくるようだった。
「ん…よいしょ…よいしょ…」
長髪のケプリが、ゆっくりと腰を揺する。肉棒を根本まで飲み込んだまま、前後左右に体をゆすって、膣壁を屹立に擦りつけた。軟らかな肉の感触は、男の分身に優しく絡み、その表面を撫でるようであった。
「あ…うぉ…！」
「おうさまきもちいい？」
髪をまとめたケプリが、男の顔をのぞき込みながら問いかける。
「つぎわたしだからはやくー」
「じゅんばんだからまってよー」
髪をまとめたケプリのせかすような言葉に、長髪のケプリは腰を動かしながら応じた。彼女の胎内は屹立と膣壁によって愛液が泡立てられていた。ゆるやかな刺激ではあるが、一度絶頂を迎えた男にとってはほどよい刺激であった。軟らかな肉の感触は、敏感な屹立をなだめつつも、再度高ぶらせていく。
「うぅ…」
長髪のケプリの腰の動きにあわせて音を立てる肉壷の感触に、男は低くうめくような声を漏らした。一度の絶頂を経た肉棒が、再び脈打ち始めたからだ。腹の奥で、男の情欲が渦巻くように形を成していく。
「んぅ…！」
大きく脈打つ屹立の感触に、長髪のケプリが小さく声を漏らした。
「ビクってしたの？」
「う、うん…ん…！」
おかっぱケプリの問いかけに、長髪のケプリは頷く。
「それ、おうさまがきもちいいっていみだよ！ほら、おうさまをもっときもちよくしてあげないと！」
おかっぱのケプリの言葉に、長髪のケプリは無言で頷いた。そして彼女は、腰の動きをいっそう大きくした。砂漠の国に伝わるという舞踊のように、腰だけが揺れ、くねる。
「うぉ…お、おぉ…！」
屹立を包む粘膜のうごめきに、男は声を漏らした。長髪のケプリの膣襞の一枚一枚が、肉棒をなめるかのように動いたからだ。あふれる愛液と膣の蠢きは、あめ玉など数秒の内に溶けて消え去りそうなほどであった。そして、男の分身もまた、長髪のケプリの『口』の前に、あっと言う間に溶かされてしまった。
「う、あぁぁ…！」
男が声を漏らしながら体をふるわせ、長髪ケプリの胎内に白濁を迸らせた。びくり、びくりと男の腰が跳ね、腹の奥からケプリの胎内へ絶頂の証をそそぎ込んでいく。
「ああ…ん、んぅ…！」
へその裏ほどを灼くような熱に、長髪のケプリは腰の動きを止めてうめいた。だが、硬直はごく短いもので、ぎこちないものの右に左にと腰を揺らし始めた。男の射精を少しでも長いものにしようと言うかのように、迸る精を一滴残らず腹の奥に納めようとするかのようにだ。
「はぁ…はぁ…は、ぁ…っ…！」
男はあえぐような吐息とともに、白濁を一滴残らず絞り出した。そして、背中が反り返るほどに腰を突き上げていた全身が、一気に弛緩した。
男の背中がベッドに深々と沈み、早い調子で出入りする呼吸が再開される。
「あは…いっぱい…」
長髪のケプリは、目元にうっすらと涙を浮かべながら、褐色の腹を愛おしげに撫でた。彼女のへその裏ほどには、熱を帯びた粘液の感触が残っており、男から精を授かったという実感があった。
「つぎわたし！わたしー！」
ようやく順番の回ってきた、髪をまとめたケプリが声を上げた。そして、半ば突き飛ばすような勢いで、長髪のケプリを男の腰から退かせた。
「こんどはわたしー…あれ？」
だが、髪をまとめたケプリが目にしたのは、粘液にまみれたまま弛緩した肉棒だった。無理もない。立て続けに二度も射精したのだ。十代の頃ならまだしも、今の男には三連続は荷の重い話だった。
「や、やすませてくれ…」
男は髪をまとめたケプリに乱れた呼吸でそう懇願した。男の内側から、ケプリたちに対する恐怖感はいつの間にか消えているようだった。
「もー、おうさまはだらしないなー」
髪をまとめたケプリは、腰に手を当てながら、軽く怒っているようなふりをした。そして、彼女はどこからともなく黒い玉を一つ取り出した。
「はい、これで元気になるよ」
性的絶頂の疲労でいくらか意識がぼやけていたものの、男は麻痺していた危機感が蘇るのを感じた。あの黒い玉は危険だ。
「や、やめて…」
男が身をよじりながら逃れようとするが、彼の手足はおかっぱと長髪のケプリによって押さえ込まれていた。身じろぎする男に跨りながら、髪をまとめたケプリは手にしていた球体を一口かじった。
「ん…んむ…」
唇を閉じたまま顎を動かし、口内の玉の破片をかみ砕いてく。そして、顎の動きがかなり小さくなったところで、彼女は男に顔を寄せてきた。
「んーんんー」
「や、やめ…！」
声を上げ、顔を背けようとするが、男の抵抗もむなしく頬に添えられたケプリの手が、彼を完全に拘束した。
「んー」
「…！」
男とケプリの唇が重なり合い、よくかみ砕かれた黒い破片と唾液の混合物が移される。男が最初に感じたのは、甘みだった。いつかどこかで食べた砂糖をふんだんに使った菓子どころか、野山で自然と生えていた果物のそれよりも淡い甘みだ。だが、その優しい甘みは男から抵抗する気力を奪い取り、口内からのど奥へと浸入を果たした。そして、のどを抜けた混合物が胃袋に消えたところで、男は体内が燃え上がるのを感じた。
「…！」
唇を重ねているため声は出ないが、それでも男は目を見開き、身体の奥底からわき起こる熱のままに叫んでいた。
熱い、熱い、熱い！
胃袋のあたりで生じた熱は血の流れに乗って全身へと行き渡り、男の活力を蘇らせた。
心拍が加速し、呼吸が激しくなる。全身が暴れ出そうとしている。力を発散したい。動きたい。
そんな欲求が後から後からわき起こる男の鼻を、ふとほのかな香りがくすぐった。ケプリの発する香りだ。
その瞬間、男は全身にみなぎる衝動と欲求の正体と、その発散のさせ方に気がついた。
「……っ！」
「きゃ！」
「わぁ！」
両手両足の拘束を振り払い、髪をまとめたケプリを押し倒した瞬間、残る二人のケプリが声を上げた。だが男はほかのケプリたちに気を向けることなく、自身の身体の下の女体に全神経を向けていた。男と唇を重ねたまま、驚いたように目を見開いているまとめ髪のケプリ。そんな彼女に、男はいつの間にか全力で屹立していた肉棒を押し当てた。
にゅるり、と先走りがケプリの内腿に塗り付けられ、屹立が褐色の肌の上を滑った。女陰への挿入どころか、そもそも秘裂から見当違いの場所に押し当てられていた肉棒であったが、男にはケプリの体温と皮膚の質感だけで十分興奮できた。
「…！…！…！」
声もなく、荒く呼吸を乱しながら腰を前後に揺すり、男は肉棒をまとめ髪のケプリの内腿や下腹に押し当て、擦った。時折屹立がケプリの女陰をかすめるが、普段はきつく閉じられているであろうそこはしとどに濡れており、熱を帯びていた。
「おうさまーぜんぜんちがうよー」
「ここだよ、ここー」
突然興奮した男にはね飛ばされたケプリたちが、そう声をかける。だが男も、男に組み敷かれているケプリも、二人の言葉に応じることはなかった。
「しかたないなー」
長髪のケプリが、男が腰を引いた瞬間に手を伸ばし、屹立を握った。そして角度を調整し、まとめ髪のケプリの女陰へと導いてやる。火傷しそうなほどの熱を帯びた肉棒は、彼女の誘導に従って、ケプリの膣内へとようやく入り込んだ。
「…！」
組み敷かれていたケプリが目を見開き、背を小さくそらした。同族と男の交尾を見せつけられ、屹立で下腹や内腿を幾度も擦られて、彼女の胎内は十分に準備が出来ていた。だがそれでも、活力を取り戻した男の一突きは、容赦なく彼女の膣奥まで入り込み、内蔵の位置を変えようとばかりに突き上げていた。子宮から体内を伝わり、脳髄へと突き抜ける衝撃に、まとめ髪のケプリは気を失いそうになった。
だが、彼女の意識が脳裏の闇に没する前に、男は腰を引いて再度突いた。再びの衝撃が、ケプリの脳髄を揺らして失せかけていた意識を取り戻させる。
「…っ…！…っ…！」
男の身体の下、まとめ髪のケプリは何度も突き上げられながら、意識をぐらぐらと揺らしていた。すでに彼女は最初の挿入の時点で絶頂に達しており、もはや幾度も意識を失うほどの快感と、目が覚めるような刺激に反応しているだけにすぎなかった。
そして男は過剰なまでの興奮によって、勃起した肉棒からの刺激に対し、かなり鈍感になっていた。肉棒をしゃぶる膣襞の蠢きや、裏筋やカリ首をくすぐる粒々とした突起の感触も、体温を帯びた肉の穴という感触に一緒くたにされていた。それでも、柔らかな何かで肉棒を扱くという行為は、男を徐々に高ぶらせ、ついには興奮の果てに追いやった。
「…っ…っ…！」
男が不意に動きを止め、まとめ髪のケプリを力強く抱きしめる。瞬間、がっちりと固定されたケプリの体内に、煮えたぎった白濁が迸った。子宮口をたたく粘液の衝撃は、ケプリの体奥から頭蓋の内へ直接伝わったように思われた。そしてまとめ髪のケプリは、頭の奥底にじんわりと温もりが広がるような錯覚を覚えながら、意識を消失させた。
「…ふぅ…ふぅ…！」
男はぐったりと力を抜いたケプリから唇を離し、荒々しいながらも穏やかな吐息を重ねた。
「おうさまぁ…」
男を、ケプリが呼んだ。顔を向けてみると、ベッドの上で長髪とおかっぱのケプリが仰向けに横たわっていた。
「おうさまぁ…つぎ、わたし…！」
「もっと、いっぱぁいちょーだい…！」
褐色の肌を紅潮させ、両足を大きく開いた二体のケプリは、自身の陰部を指先でかき回しながら男にねだった。一度は注ぎ込まれた体液が、ケプリ自身の分泌した愛液と一体となり、膣内から溢れだしていた。しかし、二人ともそのことに対してもったいない、といった感情は抱いていないようだった。無理もない。目の前で同族が荒々しく種付けされるのを見てしまったのだ。多少こぼれても、また注いでもらえばいい。
そんな考えが、二人の内にあったのだ。
「ねぇ…」
「はやくぅ…」
二体のケプリの求めに男は、王としてのつとめを果たすべく、その小さな肉体にのしかかっていった。
無理もない。もっと恐ろしいものが背後から迫っているからだ。
「はぁはぁはぁ…！」
男が呼吸も荒く、遺跡の中を進む。すると彼の足音に紛れて、背後からいくつもの音が響いた。
かさかさかさかさ。
軽く、硬いもの同士がこすれ合う音。虫の立てる音に似ていたが、トレジャーハンターは音の主が虫などでないことを知っていた。
「はぁはぁ…！」
通路を曲がる瞬間、彼は首をひねり来た道を振り返った。すると通路の闇の中に、黄金色の輝きがいくつも並んでいるのが見えた。
一瞬だけ見えた金色の光は、ケプリと呼ばれる魔物の甲殻の色だ。財宝に似た色のため、物をよく知らない冒険者やトレジャーハンターが不用意に彼女らに近づき、餌食となってしまう。しかしいくらそのことを知っていても、こうも向ってこられては何の意味もない。
「はぁはぁはぁ」
（ここはどこだ？出口はどっちだ？）
かさかさかさかさ、という擦過音に押しつぶされそうになる中、彼は必死に脳裏で問いかけた。几帳面に距離を測りながら作った地図は、とうの昔にどこかで落としてしまった。彼に残されたのは、僅かな空気の流れで出口を探る方法だけだ。
やがて男は通路の分岐に至った。一瞬動きを止め、頬に意識を向ける。すると彼の右ほおが少しだけ涼しく感じられた。右側の通路から風が吹いているのだ。
一瞬のうちに判断を下すと、彼は通路を右に曲がり、全力で駆けて行った。風向きを調べるための一瞬の静止により、ケプリ達の音が背後まで迫っていたからだ。
しかし、数十歩と進む間もなく、彼の足は止まった。彼の前方に日の光が差し込んでいたからだ。砂の上に露出した外壁が破れ、青空がのぞいている。先ほどの風は、あの穴から吹き込んだ物だろう。男は正しい道を選んでいたわけだ。
穴の大きさが、男の手のひらほどでなければ完璧だったのだが。
「あ…あぁぁ…」
差し込む日の光に完全に絶望し、男は声を漏らした。すると彼の背後にかさかさかさという音が一気に迫る。
衝撃が男を襲い、砂の積もった遺跡の床に彼は倒れ伏した。
「つかまえた！」
「おうさま！」
「おうさまつかまえた！」
幼い少女の声がいくつも響き、トレジャーハンターの手足を固いものが掴む。
「や、やめろ…！」
魔物に捕えられた。遅れて現実を受け入れた男は、手遅れながらももがいて逃れようとした。しかし彼の腕や足をがっしりと掴む、硬い甲殻に覆われた手の感触は、彼を逃そうとしなかった。
「おうさまのおへやにごあんなーい！」
「ごあんなーい！」
「やめろ、放せ！」
男の声をよそに、ケプリ達は「わっしょいわっしょい」と調子を合わせながら、男を運んで行った。
「とうちゃーく！」
遺跡の一室に男を運び込むと、ケプリ達はそう言いながら男を放り投げた。地面への墜落を覚悟するが、男を受け止めたのは柔らかな何かだった。
ベッドだ。柔らかなベッドが男を痛みもなく受け止めたのだった。
「ここは…」
「おうさまのおへやー！」
不自然に柔らかいベッドの感触に疑問を感じていると、ケプリ達が初めて男の言葉に応じた。
彼が顔を向けると、そこには三人のケプリが立っていた。金色の甲殻に四肢を包み、背中には羽のようなものを背負っている点は同じだが、身長と髪形が違っていた。
一番背が低いおかっぱのケプリに、一番背が高い腰まで届くような長髪のケプリ、そして真ん中は、背中の半ばに届きそうな髪を一本に結い、後頭部でまとめていた。
「おうさまがかえってきたから、おもてなしするの」
「おもてなしー！」
「おかえりなさいおうさまー！」
三人のケプリは口々にそう言うと、股間を覆う僅かばかりの金色の装身具を一息に下ろした。羞恥心が無いのか、その動きに一切の躊躇いは無く、彼女らは無防備に両脚の付け根をトレジャーハンターの男に向けて晒した。
「な、何を…」
褐色の肌に刻まれた小さな亀裂と、無毛の下腹に一瞬目を奪われつつも、彼はそう問いかけた。するとケプリ達は、男の横たわるベッドに歩み寄り、乗りながら言った。
「おふろだよ、おうさま」
「おそとあつかったでしょ？」
「わたしたちがきれいにしてあげるね」
そして彼女らは金色の甲殻に包まれた手で男の手や足を抑え込むと、衣服を力任せに剥ぎ取っていった。
「や、やめろ…！」
「だめ！おそとからかえったらきれいきれい！」
「おうさまもきれきれいしないとだめ！」
彼女たちは男の言葉にそう返しながら、丈夫な生地で作ってあるはずの探索用衣装を引き裂き、床へと放り捨てた。そして一糸まとわぬ姿になった男の腹の上に、おかっぱのケプリが跨った。
「ごしごし、ごしごし」
ケプリはそう言いながら小ぶりの尻を前後に揺らし、無毛の股間を男の腹に擦り付けた。
「な、なにを…」
「おふろだよ」
「こうしてたらおみずがでてくるんだよ」
長髪と髪をまとめたケプリが、おかっぱの代わりに応じる。事実、二人の説明通り、おかっぱケプリの両足の付け根は湿り気を帯び、男の肌の上に跡を残しつつあった。だがそれがただの水などではないことは、上気しつつあるケプリの表情を見るだけでもあきらかだった。
「はぁ…ん…はぁ…」
全身を使いながらの運動のためか、おかっぱケプリの呼吸は徐々に乱れ、時折呻きが挟み込まれた。トレジャーハンターの男からしてみれば、外見的には一回り以上年下の小娘でしかないというのに、彼女はその身に色気を纏っていた。大人の女が放つ色気とはことなる、微かな毒を含んだ色気だった。
「ん…んぅ…」
ケプリの動きが徐々に強まり、男の腹の上を撫でる陰部の感触が大きくなる。ぬるぬると腹部を濡らす粘ついた液体の向こうに、柔らかな肉の感触があった。小さく、片手ですっぽりと覆い隠せそうな領域でのマッサージは、男の胸を高鳴らせ、肉棒をそそり立たせていった。
「あしあらいまーす！」
「うであらいまーす！」
おかっぱケプリの献身に男が大人しくしていると、残る二人が声を上げた。そして二人のケプリは宣言の後、男の手と足を跨ぎ、陰部を擦り付けてきた。
やがて腕や太ももに触れる柔肉の感触に、ぬめりが加わる。
「よいしょ、よいしょ…」
「ん…はぁ、はぁ…」
「うーん、んんー…」
三者三様、掛け声や呻き、あるいは喘ぎを混ぜながら、男の体を『洗って』いく。魔物とは言え、外見的には歳幼い褐色の少女にしか見えないため、男の抱いていた恐怖はいつしか弱まり、代わりに劣情が膨れ上がっていた。
「あ、おうさまのおちんちんおおきくなってる！」
男の太ももに股間を擦り付けていたケプリが、彼の肉体の変化に声を上げた。
「ほんと？」
「ほんとだ！」
「おふろ、きもちいいんだね！」
確かに気持ちよくはあるが、ケプリ達の意図する気持ちよさとは違う。男は年端もいかぬ外見の魔物に勃起を指摘される羞恥を覚えながらも、屹立を脈打たせていた。
「ああ、気持ちよかったから、もう…」
「だめー！」
「もっとおふろするのー！」
男が満足した旨を伝えようとすると、三人はその言葉を遮って、身体を揺すり始めた。遺跡の一角に濡れた音がぬちゅぬちゅと響き、男の腕や足、腹の上で愛液が泡立つ。
きゅっと一文字を描いていたケプリ達の女陰は、擦り付けられるうちに熱を帯び、薄く口を開いていた。そして未発達な陰核を包皮越しに、男の肌に擦り付けて、三人とも快感を味わっている様だった。
「はぁはぁはぁ…！」
ケプリの一人が小さく声を漏らして身体を震わせる。絶頂に達したのだ。すると仲間の絶頂に合わせるように、残る二人もまた動きを止めて身体を痙攣させた。
三人の少女が、自分の体で達した。その事実に、男の屹立は何の刺激も受けていないにもかかわらず、びくびくと痙攣していた。
「はぁ、はぁ…」
「おうさまー…おふろ、きもちよかった？」
絶頂の余韻にいくらか呆然としながらも、長髪のケプリが尋ねる。
「あ、あぁ…」
男は彼女の問いに頷いて答えた。
「よかったー」
「おもてなし、だいせいこうだね」
「やったやった」
三人のケプリは、口々にそう言いながら嬉しそうに顔を見合わせた。
どうやら三人の相手はこれでひと段落らしい。
「つぎはおうこくふっかつだね」
男が内心ほっと息を吐いていると、髪をまとめたケプリが口を開いた。
「くににはこくみんがいないとだめだから」
「わたしたちがこくみんをうんであげるね」
「お、おい何を言って…」
まるで、ケプリ達が男との間に子を設けてくれるとでもいうかのような言葉に、彼はその真意を問いただそうとした。しかし、男が問いを紡ぎ終える前に、おかっぱのケプリが行動でもって答えた。
小ぶりな尻を男の胴から離し、そそり立つ彼の肉棒に女陰を押し当てたのだ。
「ん…！」
男の腹に擦り付けて一度絶頂を迎えたため、あるていどこなれていたためか、屹立は彼女の胎内にもぐりこんでいった。しかし内側は体格相応に狭く、膣壁の柔肉が肉棒の圧力によって押し広げられている。
胎内に加えられる屹立の熱と圧力に、おかっぱのケプリは目元に涙をにじませながら、目を見開いた。
「は…ぁ…！」
「だいじょうぶ？」
「いたいの？」
口から吐息を漏らしながら軽く仰け反る仲間の姿に、二人のケプリが声を掛ける。しかし、そこにあるのは仲間への気遣いではなく、おかっぱケプリがどれほどの刺激や快感を得ているのかと言う好奇心だった。
「ねーえー、おうさまのおちんちんどうなの？」
「おしえてくれないと…ほら！」
「きゃう！？」
不意に乳首を抓まれたおかっぱケプリが、声を漏らした。その瞬間、彼女の膣肉が収縮し、男の屹立をきつく締め上げた。
「うぉ…！」
「あれ？おうさまがきもちよかったの？」
「へんだねーわたし、こっちをこーげきしたのにー」
男の反応に二人のケプリはくすくすと笑う。そして、髪をまとめたケプリがおかっぱに背後から抱きついて動きを制限し、長髪のケプリがその薄い胸に顔を近づけた。
「ちゅー」
長髪のケプリが、口でそう言いながらおかっぱの乳首に吸い付く。桜色のつぼみが桃色の亀裂の内側に消え、おかっぱケプリの身体がびくん、びくんと断続的に震えた。
「くひ…かは…！」
ケプリの吐息が乱れ、身体が震える。そして彼女の胎内では、四肢の痙攣に合わせるように、膣壁が波打ち、収縮して屹立を責めたてていた。
「うぉ…！」
ケプリ三人分の愛液を体にまぶされ、精神的にも肉体的にも興奮しきっていた男が、低いうめき声とともに屹立を脈打たせた。膣壁に押しつぶされた尿道を粘液が押し広げながら駆け上り、解放感とともにケプリの胎内に迸る。
「あ、つ…！」
おかっぱケプリが胎内の熱に、歯を食いしばりながら漏らした。腰の奥から湧き出てくる快感と幸福感が、彼女の背筋をゾクゾクと震わせ、目元に涙さえ滲ませていた。
「ん…！おうさまの、いっぱい…！」
「いいなあー」
おかっぱケプリの漏らした言葉に、髪をまとめたケプリがうらやましそうに呟く。
「ほらほら、つぎわたしー」
男の放った白濁の熱を味わうおかっぱケプリを、長髪のケプリが引っ張った。男の屹立がぬめった音を立てながら、おかっぱケプリの女陰から引き抜かれる。そして二種類の体液にまみれた肉棒に、長髪のケプリはなんのためらいもなくまたがった。
「ん…はいったぁ…」
長髪のケプリは、かすかに声を震わせながら、膣内を押し広げる肉棒を根本まで受け入れた。三人のケプリの中でもっとも体が大きいためか、男の分身への締め付けは軽いものだった。しかし、彼女の膣壁には柔らかな襞が並んでおり、屹立ににゅるにゅると絡みついてくるようだった。
「ん…よいしょ…よいしょ…」
長髪のケプリが、ゆっくりと腰を揺する。肉棒を根本まで飲み込んだまま、前後左右に体をゆすって、膣壁を屹立に擦りつけた。軟らかな肉の感触は、男の分身に優しく絡み、その表面を撫でるようであった。
「あ…うぉ…！」
「おうさまきもちいい？」
髪をまとめたケプリが、男の顔をのぞき込みながら問いかける。
「つぎわたしだからはやくー」
「じゅんばんだからまってよー」
髪をまとめたケプリのせかすような言葉に、長髪のケプリは腰を動かしながら応じた。彼女の胎内は屹立と膣壁によって愛液が泡立てられていた。ゆるやかな刺激ではあるが、一度絶頂を迎えた男にとってはほどよい刺激であった。軟らかな肉の感触は、敏感な屹立をなだめつつも、再度高ぶらせていく。
「うぅ…」
長髪のケプリの腰の動きにあわせて音を立てる肉壷の感触に、男は低くうめくような声を漏らした。一度の絶頂を経た肉棒が、再び脈打ち始めたからだ。腹の奥で、男の情欲が渦巻くように形を成していく。
「んぅ…！」
大きく脈打つ屹立の感触に、長髪のケプリが小さく声を漏らした。
「ビクってしたの？」
「う、うん…ん…！」
おかっぱケプリの問いかけに、長髪のケプリは頷く。
「それ、おうさまがきもちいいっていみだよ！ほら、おうさまをもっときもちよくしてあげないと！」
おかっぱのケプリの言葉に、長髪のケプリは無言で頷いた。そして彼女は、腰の動きをいっそう大きくした。砂漠の国に伝わるという舞踊のように、腰だけが揺れ、くねる。
「うぉ…お、おぉ…！」
屹立を包む粘膜のうごめきに、男は声を漏らした。長髪のケプリの膣襞の一枚一枚が、肉棒をなめるかのように動いたからだ。あふれる愛液と膣の蠢きは、あめ玉など数秒の内に溶けて消え去りそうなほどであった。そして、男の分身もまた、長髪のケプリの『口』の前に、あっと言う間に溶かされてしまった。
「う、あぁぁ…！」
男が声を漏らしながら体をふるわせ、長髪ケプリの胎内に白濁を迸らせた。びくり、びくりと男の腰が跳ね、腹の奥からケプリの胎内へ絶頂の証をそそぎ込んでいく。
「ああ…ん、んぅ…！」
へその裏ほどを灼くような熱に、長髪のケプリは腰の動きを止めてうめいた。だが、硬直はごく短いもので、ぎこちないものの右に左にと腰を揺らし始めた。男の射精を少しでも長いものにしようと言うかのように、迸る精を一滴残らず腹の奥に納めようとするかのようにだ。
「はぁ…はぁ…は、ぁ…っ…！」
男はあえぐような吐息とともに、白濁を一滴残らず絞り出した。そして、背中が反り返るほどに腰を突き上げていた全身が、一気に弛緩した。
男の背中がベッドに深々と沈み、早い調子で出入りする呼吸が再開される。
「あは…いっぱい…」
長髪のケプリは、目元にうっすらと涙を浮かべながら、褐色の腹を愛おしげに撫でた。彼女のへその裏ほどには、熱を帯びた粘液の感触が残っており、男から精を授かったという実感があった。
「つぎわたし！わたしー！」
ようやく順番の回ってきた、髪をまとめたケプリが声を上げた。そして、半ば突き飛ばすような勢いで、長髪のケプリを男の腰から退かせた。
「こんどはわたしー…あれ？」
だが、髪をまとめたケプリが目にしたのは、粘液にまみれたまま弛緩した肉棒だった。無理もない。立て続けに二度も射精したのだ。十代の頃ならまだしも、今の男には三連続は荷の重い話だった。
「や、やすませてくれ…」
男は髪をまとめたケプリに乱れた呼吸でそう懇願した。男の内側から、ケプリたちに対する恐怖感はいつの間にか消えているようだった。
「もー、おうさまはだらしないなー」
髪をまとめたケプリは、腰に手を当てながら、軽く怒っているようなふりをした。そして、彼女はどこからともなく黒い玉を一つ取り出した。
「はい、これで元気になるよ」
性的絶頂の疲労でいくらか意識がぼやけていたものの、男は麻痺していた危機感が蘇るのを感じた。あの黒い玉は危険だ。
「や、やめて…」
男が身をよじりながら逃れようとするが、彼の手足はおかっぱと長髪のケプリによって押さえ込まれていた。身じろぎする男に跨りながら、髪をまとめたケプリは手にしていた球体を一口かじった。
「ん…んむ…」
唇を閉じたまま顎を動かし、口内の玉の破片をかみ砕いてく。そして、顎の動きがかなり小さくなったところで、彼女は男に顔を寄せてきた。
「んーんんー」
「や、やめ…！」
声を上げ、顔を背けようとするが、男の抵抗もむなしく頬に添えられたケプリの手が、彼を完全に拘束した。
「んー」
「…！」
男とケプリの唇が重なり合い、よくかみ砕かれた黒い破片と唾液の混合物が移される。男が最初に感じたのは、甘みだった。いつかどこかで食べた砂糖をふんだんに使った菓子どころか、野山で自然と生えていた果物のそれよりも淡い甘みだ。だが、その優しい甘みは男から抵抗する気力を奪い取り、口内からのど奥へと浸入を果たした。そして、のどを抜けた混合物が胃袋に消えたところで、男は体内が燃え上がるのを感じた。
「…！」
唇を重ねているため声は出ないが、それでも男は目を見開き、身体の奥底からわき起こる熱のままに叫んでいた。
熱い、熱い、熱い！
胃袋のあたりで生じた熱は血の流れに乗って全身へと行き渡り、男の活力を蘇らせた。
心拍が加速し、呼吸が激しくなる。全身が暴れ出そうとしている。力を発散したい。動きたい。
そんな欲求が後から後からわき起こる男の鼻を、ふとほのかな香りがくすぐった。ケプリの発する香りだ。
その瞬間、男は全身にみなぎる衝動と欲求の正体と、その発散のさせ方に気がついた。
「……っ！」
「きゃ！」
「わぁ！」
両手両足の拘束を振り払い、髪をまとめたケプリを押し倒した瞬間、残る二人のケプリが声を上げた。だが男はほかのケプリたちに気を向けることなく、自身の身体の下の女体に全神経を向けていた。男と唇を重ねたまま、驚いたように目を見開いているまとめ髪のケプリ。そんな彼女に、男はいつの間にか全力で屹立していた肉棒を押し当てた。
にゅるり、と先走りがケプリの内腿に塗り付けられ、屹立が褐色の肌の上を滑った。女陰への挿入どころか、そもそも秘裂から見当違いの場所に押し当てられていた肉棒であったが、男にはケプリの体温と皮膚の質感だけで十分興奮できた。
「…！…！…！」
声もなく、荒く呼吸を乱しながら腰を前後に揺すり、男は肉棒をまとめ髪のケプリの内腿や下腹に押し当て、擦った。時折屹立がケプリの女陰をかすめるが、普段はきつく閉じられているであろうそこはしとどに濡れており、熱を帯びていた。
「おうさまーぜんぜんちがうよー」
「ここだよ、ここー」
突然興奮した男にはね飛ばされたケプリたちが、そう声をかける。だが男も、男に組み敷かれているケプリも、二人の言葉に応じることはなかった。
「しかたないなー」
長髪のケプリが、男が腰を引いた瞬間に手を伸ばし、屹立を握った。そして角度を調整し、まとめ髪のケプリの女陰へと導いてやる。火傷しそうなほどの熱を帯びた肉棒は、彼女の誘導に従って、ケプリの膣内へとようやく入り込んだ。
「…！」
組み敷かれていたケプリが目を見開き、背を小さくそらした。同族と男の交尾を見せつけられ、屹立で下腹や内腿を幾度も擦られて、彼女の胎内は十分に準備が出来ていた。だがそれでも、活力を取り戻した男の一突きは、容赦なく彼女の膣奥まで入り込み、内蔵の位置を変えようとばかりに突き上げていた。子宮から体内を伝わり、脳髄へと突き抜ける衝撃に、まとめ髪のケプリは気を失いそうになった。
だが、彼女の意識が脳裏の闇に没する前に、男は腰を引いて再度突いた。再びの衝撃が、ケプリの脳髄を揺らして失せかけていた意識を取り戻させる。
「…っ…！…っ…！」
男の身体の下、まとめ髪のケプリは何度も突き上げられながら、意識をぐらぐらと揺らしていた。すでに彼女は最初の挿入の時点で絶頂に達しており、もはや幾度も意識を失うほどの快感と、目が覚めるような刺激に反応しているだけにすぎなかった。
そして男は過剰なまでの興奮によって、勃起した肉棒からの刺激に対し、かなり鈍感になっていた。肉棒をしゃぶる膣襞の蠢きや、裏筋やカリ首をくすぐる粒々とした突起の感触も、体温を帯びた肉の穴という感触に一緒くたにされていた。それでも、柔らかな何かで肉棒を扱くという行為は、男を徐々に高ぶらせ、ついには興奮の果てに追いやった。
「…っ…っ…！」
男が不意に動きを止め、まとめ髪のケプリを力強く抱きしめる。瞬間、がっちりと固定されたケプリの体内に、煮えたぎった白濁が迸った。子宮口をたたく粘液の衝撃は、ケプリの体奥から頭蓋の内へ直接伝わったように思われた。そしてまとめ髪のケプリは、頭の奥底にじんわりと温もりが広がるような錯覚を覚えながら、意識を消失させた。
「…ふぅ…ふぅ…！」
男はぐったりと力を抜いたケプリから唇を離し、荒々しいながらも穏やかな吐息を重ねた。
「おうさまぁ…」
男を、ケプリが呼んだ。顔を向けてみると、ベッドの上で長髪とおかっぱのケプリが仰向けに横たわっていた。
「おうさまぁ…つぎ、わたし…！」
「もっと、いっぱぁいちょーだい…！」
褐色の肌を紅潮させ、両足を大きく開いた二体のケプリは、自身の陰部を指先でかき回しながら男にねだった。一度は注ぎ込まれた体液が、ケプリ自身の分泌した愛液と一体となり、膣内から溢れだしていた。しかし、二人ともそのことに対してもったいない、といった感情は抱いていないようだった。無理もない。目の前で同族が荒々しく種付けされるのを見てしまったのだ。多少こぼれても、また注いでもらえばいい。
そんな考えが、二人の内にあったのだ。
「ねぇ…」
「はやくぅ…」
二体のケプリの求めに男は、王としてのつとめを果たすべく、その小さな肉体にのしかかっていった。
14/04/02 22:00更新 / 十二屋月蝕
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