森の奥、人がまず足を踏み入れないほど深い場所に、川があった。
川縁には大きな岩が転がっており、その上には青いものが乗っていた。
すると、川を囲む草木ががさがさと揺れ、少年が一人姿を現した。
「おーい、遊びに来たよー」
川の水面に向かって、彼はそう声をかけた。
この川に生息する、サハギンと会うためだ。
少年がこの川とサハギンを発見したのは、ほぼ偶然だった。
村の友人たちで結成した探検隊で森に踏みいり、この川を見つけたのだ。だが少年は川に落ち、溺れているところをサハギンに助けてもらったのだった。
少年が川に落ちたおかげでこの場所は遊び場に不向きだと判断され、子供たちの興味から外れた。
しかしそれは少年にとっては幸運だった。命の恩人である、可愛らしいサハギンと二人きりになれるのだから。
まだまだ未熟な恋心とはいえ、少年を行動させるには十分だった。
そして彼は今日も、この川を訪れたのだ。
「おーい、サハー！」
少年がサハギンにつけた愛称を繰り返すが、水面は静かに流れるばかりであった。
もしかしたら出かけているのかもしれない。
これまでにも何度か彼女が留守だったことを、少年は思いだした。
「あーあ、つまんないの･･･」
少年は残念そうに、ため息を付いた。
しばらくサハギンを待ってみるか、それとも今日はあきらめて帰るか。
川の景色を見回しながら考えていると、彼は岩の上に何かが乗っているのに気が付いた。
「なんだあれ･･･？」
サハギンと並んで腰掛け、おしゃべりをするのに使っている岩の上に、なにやら青い物が乗っていた。
ぺったりと平たく、大きさは少年の胴ほどだろうか。
彼は岩の上に乗ると、その青い物を手に取った。
「なんだこれ･･･」
青く、すべすべとした手触りの、少しだけ濡れた布。それが第一印象であった。
少年から見て、上に穴が二つ、下に穴が三つ開いた構造をしていた。
「何だっけ･･･見覚え有るんだけどなあ･･･」
手に持った布を上下に持ち変えながら、少年は呟く。
いったい何だったか。記憶の底を探り、ついに彼は思いだした。
「これって、サハの･･･」
サハギンの胴を覆っていた、衣服めいたもの。
彼の手の中にあったのは、それだった。
「でも、あれって確か鱗だって聞いたけど･･･」
つまり一糸まとわぬ姿で少年と会っていると聞き、彼はしばらく悶々と夜を過ごしたことがある。
しかし、こうして彼の手の中に鱗はあった。
「･･･脱皮したのかなあ･･･」
魚が脱皮するなど聞いたことがないが、サハギンは魔物だ。もしかしたら蛇のように鱗を脱ぐのかもしれない。
「･･････」
知り合いのサハギンの体の一部分だと認識すると、少年は何となくいけないことをしているような気分になってきた。
直接、サハギンの体に触れているような、後ろめたい興奮が彼の胸に湧く。
もちろん、これがサハギンの鱗だと決まったわけではないし、鱗だとしても既に体から離れているのはわかっている。
それでも、彼にとっては彼女の体と同義だった。
「･･････」
記憶の中のサハギンを脳裏に浮かべながら、少年は手の中の鱗の、胸のあたりを撫でた。
薄い、すべすべとした布の感触しか感じられない。だが、少年は布の感触を通じて、サハギンの薄い胸を撫でているような気分になっていた。
もっと触れたい。もっと撫でたい。
少年の指は執拗に布地を擦っていく。
「･･････」
少年の鼻息が徐々に荒くなり、腹の辺りにもやもやとした感覚が芽生える。
触れるだけでは足りない。もっと、もっとサハギンを感じたい。脳裏に、表情の変わらない魔物の少女の姿を浮かべながら、彼は布地に顔を近づけた。口を開き、震える舌を突きだして、濡れた布地をなめる。
「･･･！」
水の味しかしない。だが、それは彼女の肌を一度ぬらした水だ。
少年は彼女の体を直接舐めているような気分になりながら、手の中の布の上で舌を動かし続けた。
やがて舌が乾き、口を開けていたためか顎が痛みだした。
「はぁ、はぁ･･･」
少年は舌を布地から離すと、荒く呼吸を重ねた。
間接的かつ想像の中とはいえ、サハギンの少女の肌を舐め回したためか、彼の興奮は高まっていた。
だが、想いを満たすには至らず、むしろ彼の欲が強まるばかりだった。
だんだん、一人きりでいるのがつらく、胸に穴が開いたような切なさが沸き起こってくる。
「く･･･う･･･！」
少年はサハギンの鱗をぎゅっと両手で抱きしめると、小さくうめいた。
抱きしめたい。抱きしめられたい。サハギンの彼女と、一緒にいたい。
この場に一人でいることが、ただただ辛かった。
「サハ･･･！」
少年は思わず彼女を呼ぶが、応える者はいなかった。
ただ、そうしていれば腕の中の布が抱き返してくれると信じているかのように、じっと布を抱くばかりだった。
「･･･うぅ･･･あ･･･」
胸の奥の痛みに耐えていると、ふと少年の頭に一つの考えが浮かんだ。
彼女を感じ、彼女に抱かれたいという欲を満たす方法だ。
「･･･！」
少年はもどかしげにシャツのボタンをはずすと、脱ぎ捨てた。
ベルトを緩め、ズボンを下ろし、肌着を放り捨てる。
そして、一糸まとわぬ姿で、少年は青い布を広げた。
サハギンの少女の体に生えた鱗は、まるで衣服のようだった。こうして、おそらく彼女が脱皮した物を広げてみると、衣服にしか見えなかった。造りがしっかりしているため、少年でも身につけられそうだった。
「･･･っ」
少年は三つ並ぶ穴のうち、真ん中に足を通した。
布の筒の中を彼の足が抜け、二つ開いた穴の片方からつま先がでる。
もう片方の足を、もう一方の穴に通し、少年は布を引き上げた。
太腿を穴の縁が擦り、屹立した肉棒が布の下に入る。
「あ、あぁ･･･！」
湿り、すべすべとした肌触りの布地と肉棒が擦れて、少年は上擦った声を漏らした。
このままへたりこんでしまいそうなほど、背筋をゾクゾクと快感が上っていった。
しかし少年は手を止めず、ゆっくりと布を引き上げていく。
へそが、薄く肋骨の浮かぶわき腹が、薄い胸板が、青い布に覆われていく。
そして、少年は両腕を布の上部の左右の穴にそれぞれ通し、肩の上で布の位置を整えた。
「はぁー･･･はぁー･･･」
少年は、ゆっくり深く呼吸を重ねながら、自分の体を見下ろした。
そこには、サハギンの少女が纏っているのと同じ布が、少年の体を覆っていた。
まだ未発達なため、腕も細く体つきも華奢なせいか、少年自身がサハギンとなったように思えた。
だが、それは違った。
サハギンと異なり、手足の末端は人のそれだ。尻からも魚のそれめいた尾は生えていない。
そして、少年が見下ろす体には、股間のあたりにサハギンにはない膨らみがあった。
「はぁー･･･はぁー･･･」
呼吸を意識的にゆっくりと重ね、少年は自分を落ち着けようとした。
しかし、青い布の下の膨らみは、少年の心拍に合わせてびくびくと脈動を繰り返していた。
「はぁー･･･っ･･･はぁー･･･」
脈拍の度、布地の締め付けが強まり、肉棒が擦れる。
サハギンが、抱きしめてくれている。そんな錯覚を、少年は覚えた。
彼は、自身を覆う青い布に指を触れさせた。少しだけ濡れた、すべすべとした生地の下から、少年の体が指を押し返す。
それは、サハギンの少女に触れるようで、脳裏に浮かぶ彼女の姿をより鮮明にした。
「はぁ･･･あぁ･･･！」
青い布越しの圧迫感と、指先に伝わる体温。少年は、自らの指でサハギンに触れ、サハギンから触れられている想像をしながら、吐息に喘ぎを混ぜていた。
しかし、彼がもう少しで達することができるというところで、小さな水音が彼の耳を打った。
「はぁ、あぁ･･･？」
魚でも跳ねたのかと、川に目を向けると、水面に黒い物が浮かんでいた。
黒く長い、糸のような物が無数に生えた、半球状の何か。
少年の意識がその正体にたどり着こうとする寸前、水面が割れた。
大きな水音をたてながら、水中から岩の上に、影が一つ飛び乗る。
全身を水に濡らし、白い肌に黒髪を張り付かせた、サハギンの少女だった。
胴を覆う鱗が、いつもより艶めいて見えるのは、水に濡れているからだろうか。
「･･････」
「あ、その･･･これは･･･」
じっと、自分とお揃いの青い布を身につける少年を見つめるサハギンの瞳に、彼は罪悪感が胸中で膨れていくのを感じた。
「･･････」
「ご、ごめん･･･これが岩の上にあって･･･じゃなくて、勝手に着て、ごめん･･･」
「･･･続けて･･･」
謝罪と言い訳を交互に繰り返す少年に、サハギンの少女はぼそりと言った。
「え･･･？」
「さっきの続き･･･して･･･」
言われた言葉の意味が分からないと言った様子の彼に、彼女は繰り返した。
だが、そういわれても先ほどまでの行いは、妙な熱に浮かされた上での、譫言のようなものだ。
彼女の目がある中、サハギンの少女の出現によって正気に返った頭では、自分の体を彼女に見立てて触れることなどできなかった。
「･･･できないの･･･？」
いつまでももじもじとしている少年に、彼女はそう問いかける。
「だったら･･･私が手伝う･･･」
サハギンの少女はそう続けると、少年の肩に手を触れ、軽く押した。水の中にいたためか、少しだけひんやりとした指が彼の体を岩の上に押し倒す。
「え、ええ･･･？」
仰向けに横たわった少年の上に、サハギンが身を乗り出した。
白い肌を水の粒が伝い、鼻先や顎、髪の毛の先端から玉の滴となって滴り落ちていく。
肌や胴を覆う青い布に滴が叩きつけられ、軽い衝撃と妙なくすぐったさを彼にもたらした。
だが、少年が水滴の感触に身をくねらせる間もなく、サハギンの手のひらが、彼の胸に触れる。
「あ、ああ･･･！」
薄い胸板の上を滑り、乳首を布越しになでていく彼女の白い指に、少年は声を漏らした。
サハギンは無言のまま、彼の体をしばしなでる。少年の体のラインを確かめるように、だ。
線が細い上童顔なためか、一見すると少年は少女のようにも見えた。
そして、彼の胸板の薄い膨らみは、見ようによっては起伏のなだらかな乳房のようにもとれる。
サハギンの少女は、下手すれば自分よりも膨らみがあるようにも感じられる胸板を、繰り返しなでていた。
「さ、サハ･･･もう･･･やめ･･･！」
胸板から生じ、むずむずと意識に届く刺激に、少年はうわずった声を漏らした。
サハギンの指は心地よい。だが、どこかもどかしさの残る心地よさだった。
焚き火の熱があまり及ばぬ場所におかれ、じわじわと乾いていく魚のように、少年の心が淡い快感に炙られていく。
「･･････」
サハギンの少女は、少年の求めに彼の胸から指を離した。
だが、離したとはいっても布地の上で手を滑らせて離したまでだ。
少年の腹を彼女の指が這い、布越しに膨らむ下腹に至った。
「あぅ･･･！」
布地に締め付けられ、胸への刺激によって屹立し切っていた肉棒が、彼女の指が触れてびくんと震え、少年の口から声を漏らさせた。
不意の刺激に驚きつつも、どこか甘い物を含んだ声だった。
サハギンの少女は、下腹の膨らみを撫で始めた。
「サハ･･･！そこ･･･や･･･！」
言葉が途切れ、合間に吐息と喘ぎが挟まれ、意味をなさなくなっていく。
だが、サハギンは少年の屹立を撫でるのに没頭しており、仮に意味をなしていたとしても、聞いてくれそうにはなかった。
膨らみを横切るように、右に左に指を滑らせながら、先端から根本の方へと手を移していく。
根本に至ったところで彼女は指を止め、今度は肉棒に沿って指を滑らせていく。
根本から先端へ、膨らんだ裏筋を布越しに緩く圧迫しながら、亀頭へと指が這いあがっていく。
「うぁ･･･ぁ･･･ぁあ･･･！」
ぞくぞくと、少年の背筋を甘い快感が這い上っていく。
目をぎゅっとつぶり、必死に体奥で膨らんでいく感覚に抵抗しようとするが、彼女の指は彼の股間ごと、少年の意識を溶かしていくようだった。
「あぁ･･･っ･･･！」
少年は、体を溶かしていくような性的な快感に、思わず目を開いた。
自分の体が本当は溶け崩れていないことを確かめるため。そしてサハギンの少女の目を見て、もうやめるよう訴えるためだった。
だが、彼の瞳がサハギンの少女の姿をとらえた瞬間、彼の口から紡がれるべき言葉は消えた。
白い肌を赤らめ、瞳を興奮に潤ませ、濡れた髪の毛を頬やうなじ、肩口に張り付けたまま、一心に少年の股間をさするサハギンの姿。
その姿に、見蕩れてしまったからだ。
サハギンの少女に、少年はかわいいとも美しいとも違う、感動めいた感情を覚えた。だが、少年がその感情を抱いた瞬間、少年の意識の押さえつけが外れた興奮が、彼の脳裏で荒れ狂った。
一瞬のうちに、彼の体の奥底でたぎっていた肉欲が、白濁の形で彼の股間から迸った。
「っ！」
青い布地と、少女の手のひらを押し返し、少年の肉棒がひときわ大きく膨れる。
一瞬の膨張と、肉棒の内を駆け抜けていく粘液の感触に、サハギンの少女は彼の腹に顔を近づけた。
既にそこでは少年の射精が始まっており、屹立から青い布地と腹の間に何かがそそぎ込まれていた。
サハギンの少女は肉棒の先端付近の布地に唇を寄せると、布を軽くすった。
すると、布地の目を通して、白濁が滲み出す。射精の勢いを殺され、熱もいくらか冷めたように感じる精液だ。
だが、少年の肉棒から迸った物に違いはなく、その仄かな苦みをたたえた甘美な味わいに、サハギンの少女は両足の付け根が湿り気を帯びるのを感じた。
「あぁ･･･サハ、やめて･･･きたな、い･･･！」
少女が自分の腹に顔を寄せ、肉棒から出た物を啜っている。
少年の意識は恥じらいを覚えていたが、少年の本能は彼女の放つ魔力の効果もあってか、喜びに打ち震えていた。
そして、射精の勢いがますます増していく。
白濁の粘りが強く、サハギンが布地越しに吸い上げるだけでは追いつかず、徐々に布地と腹の間を温もりが満たしていく。
そして、そのまま腹部から精液が溢れ、両足を出す穴から白濁が漏れ出すのではというほど放ってから、少年の射精は止んだ。
「はぁ、はぁ･･･」
長く、大量に続いた射精に、少年は全身を弛緩させて荒く息をついていた。
すると、サハギンの少女が唇を彼の腹から離し、顔のそばに寄せた。
「ねえ･･･気持ち、よかった･･･？」
呼気にかすかな生臭い香りを混ぜながら、サハギンがそう少年に問いかける。
「･･･うん･･･」
「･･･そう･･･だったら、もっとしてあげる･･･」
少年の素直な頷きに、彼女は手のひらで彼の腹を撫でた。
すると、少年の腹を精液の残りと青い布の裏地が擦った。
「うぅ･･･！」
ぬるついた感触と、布地の締め付けに、少年は声を漏らす。
「もっともっと･･･気持ちよくなって･･･わたしの、旦那さんになって･･･」
少年にささやきながら、サハギンは彼の肌を青い布地越しに撫で続けた。
今は少年の理性が持っているが、もはや時間の問題だろう。
少年が、サハギンの少女との関係を改めるのに、そうかかりそうになかった。
友人から恋人、あるいは夫婦へ。
サハギンの顔を見たときに感じた、『ずっと彼女といたい』という感情が愛情に昇華されるまで、そうかかりそうになかった。

■作者メッセージ
お揃いの水着を着て、圧迫感による拘束されている感じを味わいながらのイチャイチャって楽しいと思うんですよ。
ほら、性行為の際に少し目隠しをしたり、手錠をつけたりすると興奮するのと同じで、行動や感覚を多少制限された方がよいのですよ。
もちろん合意の上ですよ？
全身を呼吸が辛くなるまで縄で縛り上げられるのはＯＫでも、目隠しはだめで怖くなっちゃうお嬢さんとかいますから。
でも逆に大胆になって、水着フィルター通して精液舐めたり、おしっこを飲ませ合ったり浴びせ合ったりするようなことに走るかもしれません。
水着着用したままでのおしっこの醍醐味と言えば、じわじわと広がっている温もりでしょう。
水中でのおしっこと違い、水着が徐々に濡れていく感覚は、『ああ、自分はおしっこしてるんだ』という実感をもたらすでしょう。
そしてパートナーの体をぬらせば、温もりはそのままパートナーの水着にも広がっていきます。
その結果、互いの体をマーキングな訳ですよ。
最高じゃないですか！
よし、ヤろう。