街道の傍らに、小さな宿場町があった。
大きな町と町の間、夜を明かすにはちょうどいいというだけで栄えた、特産品があるわけでもない宿場町だ。
軒を連ねる宿屋の一つの酒場に、一人の男と一体の精霊がいた。杖を携えた男と、ウンディーネだ。
二人は八人掛けのテーブルの一角に、腰を下ろし、何かを待っているようだった。
すると、酒場の入り口で来客を知らせるベルが鳴り響いた。
男とウンディーネが入り口に目を向ける。そこに立っていたのは、刺繍の施されたマントを羽織り、杖を手にした男と、股間と胸元を燃え上がらせる赤髪の精霊だった。
イグニスを引き連れた男は、店員と二言三言交わすと、ウンディーネ達の座るテーブルに向かってきた。
すると、マントを羽織った男の姿にウンディーネが目を見開き、席に腰を下ろす男の顔をイグニスが凝視した。
「やあ、エド」
「久しぶりだな、ウェス」
ウンディーネを連れた男と、イグニスを連れた男、まるきり同じ顔の二人が、言葉を交わした。
「ショウとニルは･･･まだだな」
「うん、僕が一番だった」
ウンディーネを連れた男、ウェスがそう頷くと、イグニスを連れた男、エドは彼の向かいに腰を下ろした。
「･･･？･･･？」
「イグニスも座るといい」
パートナーとまるきり同じ顔の人物に、若干困惑する火の精霊に向け、エドはそう促した。
するとイグニスは、彼の隣の席に腰を下ろした。
「それで、何年ぶりだ？」
「えーと･･･三年ぶりだね、うん」
エドの問いにウェスは答えると、軽く頷いた。
「三年か･･･あっと言う間だったな」
「そうだね。特にウンディーネと契約してからは早かった」
「俺も、イグニスと出会ってからは早かったなあ」
しみじみとした様子で、二人はため息をついた。
すると、再び店の入り口でベルが鳴り響いた。
「いやー兄貴は変わってないなあ！実は三年前から直接ワープしてきたとか？」
「ならばこのシルフはどう説明する？」
イグニスとウンディーネが、聞き覚えのある声を交わしながら入ってきた客に目を向けると、表情を凍り付かせた。
店に入ってきた新たな四人、シルフとノームを引き連れた二人の男の顔が、パートナーのそれと完全に同じだったからだ。
「お、ウェスとエド！」
「久しぶりだな、二人とも」
困惑顔のノームと、不安げなシルフを連れた二人が、ウェスとエドの座るテーブルに歩いてきた。
「三年ぶりだね、ショウ」
「うむ。元気そうでなによりだ」
「ショウとはどこで合流したんだ、ニル？」
「ついさっき、店の外でだよ」
同じ顔の四人が、口々に言葉を交わしながら、一つのテーブルについた。
そしてそれぞれの傍らに、それぞれが契約している精霊が腰を下ろした。
男達の顔に浮かんでいるのは、懐かしさめいた表情で、精霊達の顔には戸惑いが浮かんでいた。
「さて･･･僕たち四人は久しぶりだけど、精霊達は初対面だと思う。だから、最初に自己紹介からしようと思うんだけど･･･」
「ああ、それはいいな！」
「俺も賛成だ」
「私も」
ウェスの提案にノームを連れた男が声を上げ、残る二人が頷いた。
「じゃあ僕から。僕はウェス。隣のウンディーネと契約している精霊使いだ。よろしく」
ウンディーネはウェスの言葉に、三人の同じ顔の男と三体の精霊に向け、小さく会釈した。
「俺はエドだ。こっちのイグニスと仲良くやらせてもらっている」
エドの紹介に、イグニスは照れくさそうに小さく頭を下げる。
「私はショウ。シルフの彼女と契約しているのだが･･･すまない、少し緊張しているらしい」
シルフはショウの袖をつかみ、三体の精霊とよく見知った三つの顔を見回していた。
「それじゃ、トリを勤めるのはオレ、ニルだ。こっちのノームと一緒に、あちこち回ってた。兄貴と全く同じ顔で新鮮味はないだろうけど、まあよろしくぅ」
微動だにしないノームを紹介して、ニルはそう締めくくった。
「これで、互いに名前もわかったね」
ウェスは精霊達を見回すと、続けた。
「もう気がついてるとは思うけど、僕たちは四つ子だ」
ウェスの言葉にエドが頷く。
「顔も同じで性格も同じ」
エドの言葉の途中で、ショウが割り込む。
「違うところと言えば」
「名前と口調ぐらいかーしらー？」
そして、ニルがそう締めた。
「うん、三年ぶりだというのに完璧だな」
「そりゃあ、なあ？」
「うむ」
「オレたち四つ子だもんな、ワハハ」
互いの顔を見ながら、四人は笑った。
服装と口調、そして座る位置が違うおかげで、どうにか区別が付いているが、ともすれば見分けがつかないほど、四人は似ていた。
「さて･･･久々に兄弟ジョークも炸裂したところで、本題に入りましょーか、っと」
ニルは笑い声を鎮めると、そう切り出した。
「兄貴達も話したとは思うけど、オレ達が旅を始めた理由は･･･聞いたかしらん？」
「言ったよ」
「言った」
「何度か言ったな」
ニルの問いに、三人が頷き、精霊達もそのことを思い出した。
「とある人を助けに行く」
「そう教えたよ」
ショウの言葉に、ウェスが続いた。
「まあ、今となってはその人への気持ちより、俺達のパートナーへのその、なんだ･･･」
「オレとノームの愛情の方が深いけど、初心忘れるベカラズってことよ、エド」
少しだけ口調に恥じらいを滲ませたエドに、ニルは言った。
「それで、その僕たちが助けようとしているのがポローヴェの大精霊使い」
「縁結びゴッデスことスピリカさんだ」
ウェスの言葉にショウは頷き、マントの内側から本を一冊取りだした。
「これは、私が旅の間に購入したスピリカさんの著書だが･･･」
「ああ、僕持ってるよ」
「俺も買った」
「オレもオレも」
「･･･とにかく、ここをみてほしい」
話の腰を折られそうになりながらも、ショウはページをめくった。
「この記述だ。一見すると、本文中に唐突に挿入された募集広告でしかないが、ここに重要な意味が込められている」
「まあ、知っているとは思うけど、スピリカさんって独身なんだよね」
ウェスはそうショウの言葉を引き継いだ。
「だから、こうやって著書に広告を入れ、男手を求めているわけだ。まあ、実質上のお婿募集だな」
エドがショウの本の広告を指し、どこか哀れみを含んだ声を紡ぐ。
「本人はポローヴェを魔界化して、数多くのカップルを生み出し、今も不用意に近づく男と魔物をくっつけているのに･･･」
やれやれとばかりに、ショウが顔を左右に振った。
「スピリカさん、かわいそう！」
そして最後に、ニルが泣きまねをした。
「というわけで」
「三年前」
「私たちが」
「スピリカさんの婿になろうと決心したのでしたマル」
ニルの泣きまねを遮るようにウェスが口を開くと、残る三人が流ちょうに続けた。
綿密な打ち合わせの上での芸のようであったが、四体の精霊は感心するより先に、彼らの言葉に緊張を走らせた。
ウンディーネが目を見開き、イグニスが口をあんぐりと開け、シルフがパートナーの顔を見上げ、ノームが硬直する。
事実上の浮気、もしくは二人目の妻を迎え入れる宣言。
それに加え、四人の言葉は、四人で一人の妻を迎えようと言うかのようであった。
「あーそうだ。重婚の心配してるんだろうけど、オレたちもその辺は調べてるから大丈夫よん」
「うむ。私たちは四つ子だからな」
「俺たちは顔も同じで性格も同じ、考え方も同じだ」
「それなら、僕たち四人で一人みたいなものでしょ？ねえ？」
「うん」
「うむ」
「イェア」
四人は言葉を連ねると、互いに同意しあった。
四人の言葉に、精霊達は顔を見合わせた。ほぼ初対面のはずなのに、四体は互いに自分と同じ気持ちであると、何となく察しているようだった。
「･･･？」
ウンディーネが、本当にいいの？と残る三体に目で問いかける。
「･･･？」
イグニスが、四人で一人なんだからええと･･･？と考えをまとめようとして、思考の迷路に迷い込む。
「･･･！！」
シルフが、パートナーをとられるのはヤだ！と首を振る。
「･･････私が一番なら、ニルが他の誰を好きになってもいい」
そしてノームが、自分が一番なら他の誰を好きになってもいい、と落ち着いた様子で言った。
「！？」
「！？」
「！？」
ノームのぼそりと漏らした呟きに、三体の精霊は驚いた様子で彼女をみた。
「お、ノーム。よく言ったなあ！」
ノームの傍らに座っていたニルが、にこにこ顔で彼女の頭を撫でた。
「オレはお前のことが大好きだ。それは保証する。確かにスピリカさんの婿にはなりたいが、それ以上にお前の夫でいたい」
「そうだよ。僕もウンディーネのことが･･･うん、大好き」
ニルに触発されたように、ウェスがウンディーネの髪に触れた。
「俺もイグニスと会ってから･･････スピリカさんのことは二番目になってしまったなあ」
言葉に間を置いて、エドがそう口にする。
「だから安心するんだ、シルフ。私はお前が一番だ。絶対に離さない」
先ほどから袖を握るシルフの指を、ショウはそっと手で覆った。
「私たちはそれぞれのパートナーが一番だ」
「だけど、スピリカさんがいなければ、僕はウンディーネと会うこともなかった」
「俺は、イグニスと出会わせてくれたきっかけを作ってくれた彼女に、恩返しもしたいんだ」
「それに、スピリカさんかわいそうだしね」
四人はパートナーの動揺を落ち着かせながらも、言葉を続けた。
「故郷の為に青春を犠牲にし」
「色恋いと無縁のまま精霊使いとして研鑽し」
「ついに自身をダークマターにして、故郷の活性化を行った」
「しかーし！ふと気がついてみれば彼女の周りは夫婦とカップルばかり！」
「身の回りに異性がいないことに焦りを感じ、積極的に行動しようとする彼女」
「だがスピリカさんはダークマター」
「彼女が身動きすれば魔力が飛び散り、移動すれば魔界が広がる」
「魔力の影響で人や魔物はエロエロハッスル。スピリカさんの移動した後に童貞はおらず、ただカップルか夫婦がいるばかり」
「ポローヴェに近づけば魔物に襲われゴールイン」
「嫁を手に入れたと思えば、半分の確率でもう一人嫁が現れる」
「これがポローヴェ近辺の結婚率150%の秘密なのだ」
「スピリカさんかわいそう！マジかわいそう！」
そう、ニルが締めくくった。
「と言うわけで、僕たちはかわいそうなスピリカさんのため、婿入りしようと思います」
「まあ、スピリカさんに向けてる感情は、正直俺がイグニスに向けてる気持ちの半分ぐらいしかない」
「だが、私一人では半分の気持ちでも、四人分を集めれば･･･」
「実質二人分の想い！愛が重い！」
「･･･？」
「････････････？」
「･･･！･･･？」
「･･･････････････」
四人の言葉に、精霊達は納得がいったような、いまいち納得し切れていないような、複雑な表情を浮かべた。
「それと、スピリカさんに向けている感情は、パートナーに向けているものとは違うからね」
ウェスはウンディーネの髪を模した水を撫でながら、続けた。
「うん、僕はウンディーネが好きだ。このぷにぷにした肌も、つやつやの髪の水も、彼女の立ち振る舞いも全部好きだ。でも、時々さらさらの一本一本分かれた髪の毛に触れたいときもあるんだよ。でも、ウンディーネに言っても再現できないでしょ？だから僕は無理を言わない。僕の欲望だけを解消するような真似はイヤだからね。だから僕は、スピリカさんのサラサラヘアーで、髪の毛でいろいろしたい衝動をどうにかしたいんだ」
「･･････」
前半の、立ち振る舞いがどうのこうののあたりでほだされたのか、ウンディーネはウェスの言葉にどこか嬉しげな表情を浮かべていた。
「じゃあ、俺だ。俺はイグニスが好きだ」
「っ！？」
改めての宣言に、火の精霊が驚いたような表情を浮かべる。
「この顔つきも、ベッドの中での表情も、抱きしめると温かいところも、中が熱々なところも全部好きだ。でも、たまにはひんやりとした身体もいいと思う。もちろん、イグニスに体温下げろなんてむちゃくちゃは言わない。そんなことしたらイグニスのいいところがなくなっちまう。それどころか、イグニスが俺のために体温下げようと無茶するところは見たくもないし、させたくもない。だから俺は、スピリカさんの若干体温低そうな身体を抱いて、ひんやりを堪能したいんだ」
「･･････」
イグニスは、改めて紡がれたエドの気持ちに嬉しげではあるものの、どこか複雑な表情を浮かべていた。
「今度は私だな。私にとって、シルフは･･･何だろう」
袖にすがりつく風の精霊を撫でながら、ショウはゆっくりと続けた。
「妻のような、妹のような、娘のような･･･そんな、保護し守られるべき存在として、私は彼女とともにここまで来た。うん、羽のように軽い体も、力を込めればどうにかなってしまいそうな華奢さも、全部が愛おしい。実際、軽いおかげでいろいろ楽しめた。だがその一方で、でかくて重い尻に押し潰されたいという衝動もあるのだ。まあ、シルフに頼めば疑似的に可能なのかもしれないが･･･それは若干違うと思う。それに、シルフには今のシルフのままでいてほしい。下品なケツデカはお断りだ。だから私は我慢する。我慢してきた。だけど見給え、スピリカさんのデカケツを！男を求める尻が一つと、プレスされたい私が一人！ならばやることは決まっている！シルフ！お前は軽くてかわいいなあ！」
ショウは不意にシルフを抱えあげると、自分の桃の上に座らせた。
ショウの言葉に、シルフは若干戸惑いを顔に浮かべていたが、彼に抱いてもらったことでおおむね満足なようだった。
「んじゃ、ラストオレね」
んー、とニルは天井を見上げて続けた。
「うん、ノームに不満はないね。むしろ満足してる。上になるとき、オレを潰さないように気をつけてくれるところも嬉しいし、抱きしめると柔らかいところも大好き。でも、でかいボインに埋まりたくなる時ってあるよね？もちろん、ノームのおっぱいは小さくないよ。むしろ大きい。だけど、もっと大きな胸に埋まって、よしよしされたいっていうのもあるのよ。そりゃあ、ノームにいえばおっぱいぐらい膨らませてくれるだろうけど、それは違うでしょ？ノームは今のノームでベストなんだから。だから、フリーで手つかずのゴックンボディの持ち主であるスピリカさんで、おっぱい分をどうにかしようと思うの。うん、以上」
「･･････」
ニルの傍らで、ノームは無表情のまま固まっていた。正確に言えば、彼女の乳房が微妙に膨れては萎みを繰り返していたが、実質動きはなかった。
「まあ、これで僕たちの気持ちが理解してもらえたと思う」
「スピリカさんの婿にはなりたいが、一番はそれぞれの精霊だ」
「スピリカさんとしても、合計二人分の愛情が向けられるから、まあ悪い話ではないはずだ」
「みんなニコニコのベストな解答、いいよね」
四人の言葉に、精霊たちはだんだん彼らの考えが、とてもいいものであるかのように思えてきた。
「だが、最後に聞いておきたい。もしイヤならイヤだとはっきり言ってほしい」
「俺たちはパートナーが一番だからな。パートナーの意見を尊重する」
「どう？誰か反対の精霊、いる？」
ウェスガそう四体に問いかけると、彼女たちは互いに目を見合わせた。
他人に相手をとられるのはイヤだが、彼らは自分たちが一番だといってくれた。それに、自分では彼らの抱えた欲望を満たせない。
ここでイヤだといえば、彼らはあきらめてくれるだろう。だが、抱え込んだ衝動が消えるわけではない。
ならば、彼らのためにも、二番目の存在を認めてもいいのではなかろうか。
「･･･」
「･･･」
「･･･」
「･･････」
四体の精霊は、ゆっくりと頷いた。
「決まったようだね」
精霊たちの合意に、ウェスはそう口を開くと、咳払いを挟んで続けた。
「というわけで」
「俺たちは」
「ポローヴェに向けて」
「出発する！」
四兄弟の高らかな宣誓が、酒場に響いた。


その後、ポローヴェを目指す道すがら、精霊たちが魔力に侵され、「やっぱり二番目なんてダメ！一番も二番も三番も私だけを好きでいて！」という考えの下に襲われてしまうが、もはや別の話である。
縁結びゴッデスの力によってポローヴェの郊外に夫婦で精霊使いな四組のカップルが移り住み、スピリカさんの貞操はこうして守られたのであった。
メデタシ！

■作者メッセージ
スピリカさんいいよね。
なにがいいかって、ダークマターなのに性的衝動にとらわれず、比較的理性的に生活できているあたりがいい。
それに肉体的にはエロエロの熟しきった豊潤ボディにも関わらず、その火照りと疼きを鎮めてくれるのが触手しかいないであろうというところがいい。
本だとかで広告は出しているんだけど、スピリカさんは積極的に街に出てハンティングしてないと思う。
だってポローヴェは夫婦とカップルばっかりだもん。
家を出れば、ご近所さんが夫婦で散歩や買い物していて、独り身の自分が辛くなるだろ。
大通りに進めば、カップルが手を握りあって楽しそうに語らいながら歩いていて、自分の手を握ってくれるのがもう片方の自分の手しかないことに気がつくだろ。
店に入って買い物しようとすれば、おそらく夫婦か恋人であろう店長と店員が、接客の合間にイチャイチャしているのを見てイラっとするだろ。
帰りはそういうのを避けて裏通りを進むんだけど、建物の合間の路地でヌプヌプしてるカップル見て、身体の火照りに気がつくだろ。それで野外ふぁっく中の二人を見てたら、男の方が昔の知り合いであることに気がつくだろ。
走って家に帰って一発オナって、後は家に引きこもっているしかないじゃない！
ポローヴェは辛すぎる。独身者には辛すぎる街です。
だけどスピリカさんはダークマターだから、ポローヴェを出ても魔力が行く先を浸食するから、結局ポローヴェと代わりのない環境になるのよ。
向かう先にフリーの男性はおらず、魔力に侵されて魔物化した身近な女性とヤってるばかり。
「スピリカさんのおかげで思いを遂げられました！」
「魔物化したおかげで後押しされ、彼と結ばれました！」
「ありがとう！」「スピリカさんありがとう！」
スピリカさんの下には、そんな感じで感謝の言葉が届くのよ。
おかげでスピリカさん縁結びの神様扱いよ。
本人は独身なのに。
スピリカさんかわいそう！マジかわいそう！
だけど、スピリカさんってたぶん、スケベエだけど本質はヘタレ処女だから、いざ男性と出会う機会があっても何もできないんじゃないかなあ。
こう、うまいこと文通でデートの約束取り付けても、デートするには何着ていけばいい？どんなこと話せばいいの？お化粧とか大丈夫よね？髪型このままでいいかしら？辛気くさいとか思われないかしら？いきなり押し倒されたらどうしよう？そもそも来てくれるのかしら？ドッキリとか悪ふざけじゃないわよね？とか色々考えて、だんだんデートするのが怖くなって約束すっぽかしそうな気がするのよ。
それに、いざ待ち合わせ場所に行って相手と出会ったとしても、ガチガチに緊張しちゃって碌に話しもできず、ふと目を離したすきに他の魔物に男の人連れ去られてそうな気がする。
これはもう、デルエラさんにでも泣きつくしかないよね。
デルエラさんはスピリカさん酒場のテーブルを挟んで、スピリカさんがグズグズ泣きながらグチを漏らすのを「あーうんうん、そうねー」って聞き流しているのが最高に似合うと思う。
でもデルエラさんも話の二割ぐらいは聞いているから、「もう少し積極的に行ってみたら？」とかアドバイスしてくれるのよ。
それで飲んでいるうちにだんだんスピリカさんもどうでもよくなって、「結婚が何よー。独り身でいいじゃないのー。独り身最高じゃない！ねえ、デルエラ？」「私、結婚してるんだけど」とかやりとりするんだよ。
そしてその後、デルエラさんと分かれて、ふらつきながらも自宅までまっすぐ帰って就寝。
そんなデルエラさんかわいいよね。