街道から少し離れた森の中、一人の男がたき火を前に座っていた。
刺繍で模様の施されたマントを羽織り、水晶の飾りがついた杖を手にするその姿は、旅の魔術師か何かのようだ。
事実、彼は精霊使いであった。そして彼の精霊使いとしての腕前は、彼の傍らに腰を下ろす一人の美女が示していた。
透き通った体の美女。一見するとスライムのようにも見えるが、その理知的な顔立ちと、身に帯びた清浄な気配が彼女がウンディーネであることを示していた。
「ウンディーネ、水をくれないか？」
男が、木製の器を出すと、ウンディーネはその上に人差し指をかざした。
すると、彼女の指先から水があふれだし、器を満たしていく。
「ありがとう」
「･･･」
男の礼の言葉に、彼女は無言で微笑んだ。
男は、器の水に唇をつけると、器を傾けた。
すっきりとした雑味のない、冷えた水が喉を潤していく。
ウンディーネは、器の水を男が飲んでいくのを、じっと見ていた。
男は彼女の視線に、気恥ずかしさを覚えた。ウンディーネの一部を飲んでいるかのような気分になるからだ。
だが、それは違う。彼女の指先から滴った水ではあるが、当たりの空気が含んでいる水分を凝結させたものだ。
だから、彼女自身を構成する水を飲んでいるわけではない。
しかしそれでも･･･
「･･････」
「･･･？」
男がちらりと横目でウンディーネを見ると、彼女は少しだけ照れくさそうに首を傾げて見せた。
「ぷは･･･」
器の水を飲み干し、男は息をついた。
そして、自身の気恥ずかしさをごまかすように、空を見上げた。
木々の間から夜空がのぞいている。
男は、星の位置を確かめると、目的地までもうすぐであることを実感した。
「もうすぐだな･･･」
「？」
男の言葉に、ウンディーネは空を見上げ、男の顔を見、首を傾げた。
「ああ、ごめんごめん。もうすぐで目的地、ってことだよ」
男は、ウンディーネに説明した。
「契約するとき、言ったよね？僕は困っている人を助けるために、君と契約したいって」
ウンディーネは頷いた。
「あれには、もう少し続きがあるんだ。僕には、どうしても助けたい人がいるんだ。その人を助けられるよう、精霊使いとして修行して、君と契約したんだ。そして、その人のいる場所まで、もうすぐってこと」
「･･････」
「ああ、確かに精霊との契約の目的には、その人のことがあったけど、君と契約したのは君のことが好きになったからだよ」
不安そうな表情を浮かべたウンディーネに、男はそう言った。
「君と会う前まで、僕はいろんな土地の水の精霊と会ってきたんだ。だけど、目的のために利用したいって心を見抜かれていたからかな、誰も契約してくれなかったんだ。そして、流れ流れて君と出会って･･･僕は初めて目的のためではなく、君のために契約したくなったんだ」
初めて出会ったとき、契約のため幾度も住処に足を運んだとき、そして契約したとき。
わずかな沈黙の間に、二人の馴れ初めが男の脳裏をよぎった。
「本当に、君に会えてよかった。君と会っていなければ、僕は精霊使いになり切れていなかったんだから」
「･･････」
「僕と契約してくれて、ありがとう」
男は手を伸ばすと、ウンディーネの手を取った。
水で構成された肌が、ひんやりと彼の手のひらに触れる。だが、指はそのまま水に沈まず、弾力を備えた彼女の肌に受け止められた。
男が握ろうとし、ウンディーネが握られようとしなければなし得ない触れ合い。
ウンディーネの心地よい冷たさと、男の手の温もりを、二人は感じていた。
「･･････」
ウンディーネは、するすると尻を構成する水を操り、腰を浮かすことなく男のそばに移動した。
手を握ったまま、男と彼女の肩が触れ合い、太腿が接する。
男は、彼女の手を持ち上げると、そのまま二人の太腿がふれ合う場所におろした。そして、ウンディーネの瞳を見つめた。
当たり前のことだが、彼女の瞳は濡れていた。ただ、その瞳は普段以上に潤んでいるように見えた。
男は、そっと彼女に顔を近づける。すると、ウンディーネは目蓋をおろして待った。
一瞬の間をおいて、彼女の唇と男のそれが重なりあう。
「･･････」
パチパチと、薪のはぜる音を背景に、二人は静かに接吻した。
男の唇をウンディーネの唇がぬらし、わずかな水分が彼の校内に入り込んでいく。
ウンディーネを成していた水は、男の唇を軽くなでると、歯の間から舌へと移った。
唾液に濡れる軟らかな肉を、小さな水の滴がくすぐっていく。
「ん･･･」
口内を転がる水滴に、男はウンディーネの意図を悟ると、彼女の唇により強く自分の唇を押し当てた。
二人の口が開き、男はウンディーネの唇をしゃぶるように吸った。ウンディーネは男の吸いつきに、彼の口内に多くの水を送ることで答えた。
彼の口内で水が凝縮し、舌を構成する。そして、舌と舌が絡み合った。
舌にふれる、清浄な水の味わい。
舌にふれる、男の唾液の感触。
互いの水分が混ざっていく実感に、二人の興奮は高まっていった。
いつしか二人は、唇だけでは飽きたらず、空いている方の手で互いの体に触れ始めていた。
男の手が、ウンディーネの体を抱き寄せるように、彼女の二の腕に触れ、優しくさすっている。
ウンディーネの手が、男の愛撫を二の腕に受けながらも、お返しのように彼の太腿へと延びている。
互いの輪郭を確かめ、体温を手のひらで感じ、温もりを伝えようとするかのように、二人は互いに触れ合った。
相手がこの場所、自分の傍らにいる。その実感が、互いに安心感をもたらし、もっと相手を感じたいという衝動をもたらす。
「･･･！･･･！」
「･･･ん･･･！」
いつしか二人の手は、太腿と二の腕から、胸と股間に移っていた。
男の手が、彼女の脇から乳房の片方を優しくつかみ、弾力を楽しむようにもんでいる。
ウンディーネの手が、男の内腿を擦りながら、時折ズボンを下から盛り上げる肉棒に触れる。
だが、それでも二人はもう一方の手を握りあっていた。
乳房に指を沈めると、ウンディーネが時折全身に軽く力を込めた
屹立に触れ、擦ると、ウンディーネにふさがれた唇から、男が小さく息をもらした。
そして、男の肉棒がズボンの下で脈打ち始めたところで、ウンディーネは手を止め、唇をはなした。
「･･･ぷはっ･･･！」
口内に取り残された水が、男の喉を滑り落ちていく。
「どうし･･･うわっ！？」
不意にキスを絶たれた男が、彼女にそう問いかけようとするが、ウンディーネは一度全身の輪郭を曖昧にして、男の上にのしかかった。
そして輪郭を、男の腰の上にまたがるような姿勢で、再度構成した。
「な、なに･･･！」
不意のウンディーネの動きを問いただそうとすると、男の腹に不意に熱が生じた。強い酒でも呷ったときのような熱だ。
しかし、、今夜は酒を飲んでいない。飲んだものと言えば、ウンディーネが大気から抽出した水と、キスの残滓であるウンディーネの一欠片だ。
「ウンディーネ･･･」
腹の熱と、理知的な顔立ちを興奮の色に染めた水の精霊に、男は彼女の意図を悟った。
彼女も、もう我慢できないのだ。
「わかった。おいで」
「･･･！」
男の一言に、ウンディーネは表情を明るくした。
そして起こしていた上半身を倒し、男の胸に飛び込んでいく。
彼はウンディーネの体を受け止めると、地面に背中をつけた。
地面は冷たかったが、ウンディーネの重みと、彼女の興奮による温もりが感じられるため、不快感はなかった。
「ふふ」
男は自分の胸に顔を押し当て、頬ずりするウンディーネの頭を軽くなでた。
頭髪を模した水が、男の指を柔らかく受け止める。
すると、ウンディーネは、男の愛撫に応じるように、体を蠢かせた。
体全体をくねらせるのではない。体表面に波を起こして、男に抱きついたまま彼の肌を撫でるのだ。
衣服越しのさざ波は、いつしかウンディーネ自身が布地に染み込むことで、直接の愛撫となっていた。
ズボン越しに、水の精霊の重みを楽しんでいた屹立も、彼女自身に包まれていく。
「う･･･」
肉棒を包み込み、優しく撫でる水の感触に、男は声を漏らした。
ただでさえ、先ほどまでのキスと愛撫により高まっていた興奮が、さらなる高みへ上っていく。
ウンディーネは、脈打つ肉棒を包み込む水の粘りを強めた。すると、男は屹立を包む感触が柔らかくなったのを悟る。
肌や手のひらよりも柔らかい、ウンディーネ自身の内側の感触。模擬的なものとはいえ、彼女に挿入している感触である。
ウンディーネが、男の腰の上に乗せた自身の腰を、軽く動かした。腰の動きにあわせて、屹立を包む水が少しだけ圧力を増し、膣の動きを再現する。
衣服を隔てているのに、男には彼女自身に挿入しているかのように感じられた。
「うぅ･･･」
男はうめき声を漏らしながら、胸中で否定した。
これは挿入しているかのように感じているのではない。本当に彼女に挿入しているのだ。
粘り気を落とし、微細なさざ波を起こしてウンディーネが作り上げた、男のためだけの場所。彼女にとって特別な場所に挿入しているのは、女陰に突き入れているのと同義であった。
「ん･･･！」
男は声を小さく漏らしながら、跨るウンディーネを持ち上げるように、軽く腰を突き上げた。
ウンディーネにとっては、刈る区からだが上下するだけにしかすぎなかったが、それでも彼女を心地よくしようという、男の心が伝わった。
「･･･！」
ゆっくりゆっくり、男のもたらす振動を味わいながら、彼女は『膣』の圧力を高めた。
屹立が軽く締められ、男の分身が大きく脈打つ。
そして、男に限界が訪れた。
「ぐ･･･ぅ･･･！」
男が小さくうめき声を漏らし、彼女の膣内に精液を放つ。
白濁が勢いよくウンディーネに叩きつけられ、その衝撃に膣奥を成す水と混ざりあう。
「･･･！」
ウンディーネは、自身の水と男の白濁が混ざりあう感触に、ぎゅっと目をつぶって震えた。
苦痛の震えではない。喜びのあまりのわななきだ。
男の一部が、自分に流れ込んでいく。本当に一つになっているという喜びが、彼女の透き通った胸中を満たしていく。
そして、男がたっぷりと精を放ったところで、彼女は落ち着きを取り戻した。
「はぁはぁはぁ･･･」
射精が終わり、荒い呼吸を重ねながら、男は落ち着きを取り戻した。
胸の上のウンディーネの頭を撫でながら、彼は夜空を見上げる。
冷静になってみれば、彼はズボンの内側で精液を漏らしたのだ。そう大変ではないが、片づけなければ。
そんなつまらないことを考えていると、ウンディーネは身を起こした。男の腰の上に跨るような姿勢のまま、衣服の内側に染み入らせた水を操る。
肉棒を包む水が、放たれた白濁を細かく分割していく。一塊の白濁が二つに、四つに、八つに。粘液に含まれる精子一つ一つになるまで、割られていく。
そして彼女は、男の子種を一粒ずつ、下着とズボンの布地をくぐらせた。液体ぐらいしか通らないはずの布の目を、水と同じぐらい細かに分かれた精液が通っていく。
やがて、男のズボンの内側から白濁が通り抜け、腰の上に跨るウンディーネに吸い上げられていった。
「･･････」
下腹を透かして見える、白い濁りを見ながら、彼女は微笑んだ。
まるで、そこに精液を注がれたことが、嬉しくてたまらないと言った様子だ。
「ふふ･･･」
彼女の微笑みにつられて、男も笑みを浮かべた。

■作者メッセージ
無言ヒロインいいよね。無言だけど無表情無感情じゃなくて、ころころ表情の変わる感情豊かな無言ヒロイン。
あと、一見するとクール系だけどべたべたに甘えるの大好きとかだとなおいいよね。
もちろん若干長身の黒髪ロングストレートで、縁の細いめがねーだといい。
中学、高校とクラスの委員長を務め、穏やかな人生を送っていたけど、どこか物足りなさを感じているんだ。
でも、ある日恋と言うものに出会い、彼女の人生は一変するんだよ。
平々凡々であった日々が楽しくてしょうがなくなり、想い人と会うのが待ち遠しくなるんだ。
普段は前と変わらないクールを装っているけど、恋人と二人きりだとベタベタの甘々で、もう手とか恋人つなぎしちゃうんだ。
そしてクリスマスにはトチ狂って、セクシー下着＋リボンで「私がクリスマスプレゼント」とか言っちゃって、後から恥ずかしくなるんだよ。

そういうウンディーネさん、誰か紹介してください。