海岸を歩いていると、波打ち際に巨大なクラゲが打ち上げられていた。
いや、よく見ると人っぽい格好をしている。シースライムという魔物だろうか？
僕は足を止め、遠目にその透き通った体を見た。仰向けに倒れ伏す彼女は、体と同じように半透明の衣服を身につけており、大きく膨らんだスカートが半分海に浸かっていた。
寄せては返す波に洗われているため、まだ時折見かけるかわいそうなクラゲのように干からびてはいない。
だが、これからだんだん潮が引いてくるはずだ。彼女が砂の上に取り残されるまで時間の問題だろう。
「助けるか･･･」
僕はそう呟くと、シースライムの方へ向けて歩きだした。
そして彼女の傍ら、潮に塗れた砂の上で足を止めると、まじまじとその体を観察した。
青みを帯びた透明な体に、起伏の少ない上半身と、腰のあたりから大きく膨れるスカートに、スカートを透かして見えるほっそりとした足。
目を閉ざし、穏やかな表情で眠っているように見える、その整った顔立ちと共に、まるで高価な美術品のような姿だった。
眠っているように、と表現したのは実のところ彼女の生死がわからないからだ。彼女のなだらかな胸に呼吸の上下は見えない。そもそもスライムって呼吸するのだろうか？
「ま、海に戻してやれば大丈夫だろ･･･」
海は偉大だ。全てを受け入れる。このシースライムが死んでいようと生きていようと、海は受け入れるだろう。
僕は靴を脱ぎ、ズボンの裾を膝まであげると、ざぶざぶと寄せては返す波に足を踏み入れた。ひんやりとした海水が足に触れ、細かな泡がくるぶしをくすぐる。
そして、沖を背にするように彼女の足の方に立った。彼女の足首をつかんで、海に引っ張るためだ。抱き上げてもよかったが、魔物とはいえ意識を失っている女の子にべたべた触れるのはまずいだろう。
腰を曲げて上半身を屈め、海の中に手を入れる。
「ごめんよ･･･」
少しだけ謝ってから、僕は波に揺れる彼女のスカートの裾から手を入れようとした。だが、足首をつかむより先に、僕の手首に何かが触れた。
直後、ちくりと刺すような痛みが走り、手が動かなくなる。刺されたのだ。
忘れていた。彼女は人間のような格好をしていてもやはり魔物。しかもクラゲなのだ。刺すかもしれない可能性を考えておくべきだった。
「ひへぇ･･･」
痛ぇ、と口にしようとしたが、妙に舌と唇が回らない。
それどころか、彼女のスカートの裾につっこみ掛けた手はもちろん、腕や腰、足さえもが動かない。そして全身に妙な痺れが広がっていき、ついに僕は腰を曲げた姿勢を保つことさえできなくなった。
足がぐにゃりと力を失い、シースライムの胸元に顔面から倒れ込む。
目の前に迫っていく、青く平らな胸がどんどん視野一杯に広がり、ついに柔らかな感触と共に顔が胸に埋まった。
「きゃい！？」
肋骨の感触もなく、ただ鼻先からこめかみの辺りまでをシースライムの胸、というか胸部に埋めると同時に、甲高い悲鳴が耳をたたいた。
「わ、わ、わ！？なに！？ここどこ！？え？男の人！？何で！？強姦？強姦！？」
全く状況が理解できていないのか、やたら慌てた様子でシースライムがまくし立て、僕の顔に押し当てられる柔らかな粘体が声にあわせて震えた。
弾力と柔らかさ、そして震えは僕の顔を心地よく刺激するが、それより鼻と口がふさがって呼吸できないのが苦しい。
「え？え？あ！息できないのね！麻痺毒で息ができないのね！」
彼女は胸に顔を押し当てたまま、びくとも動かない僕の状況を察した。シースライムの手が僕の肩に触れ、やや苦労しながらも彼女は傍らに、僕の体を転がした
目の前を塞いでいた半透明の青が空の青に変わり、息ができるようになる。
「･･･生きてる･･･よかったあ･･･」
ゆっくり上下する僕の胸に、シースライムは身を起こしながらほっと息を付いた。
だが、彼女が僕の手首に目をやるなり、その半透明の顔立ちに険が宿った。
「もう、寝ている女の子にいたずらしようとするから、そうなるんだぞ！」
若干プリプリと怒った様子で、彼女はそう僕に向けて指を立てた。
どうやら手首の刺され跡を目にして、彼女は何か誤解しているらしい。だが、弁解しようにも麻痺毒は僕の全身に回り、舌はおろか呼吸の調子を変えることもできそうになかった。
「動けない女の子にいたずらするような人には･･････いたずら、うん、いたずらし返すんだから！」
一瞬何かを考えたような間を挟みながら、彼女はそう宣言した。
そして、その透き通った手を僕の体にのばすと、シャツのボタンを一つずつ外し始めた。
倒れ込んだ際に湿り気を帯び、今も徐々に濡れていくシャツが開き、日の光の元に僕の胸がさらされる。潮風が濡れた胸板を撫で、すこし寒い。
「･･････」
シースライムは僕のシャツから手をはなすと、どこかドギマギとした様子でズボンに手を伸ばした。
ベルトを緩め、ズボンの前を開き、やや迷った様子で手をさまよわせてから下着を下ろす。
「わ･･･」
潮風の中に放り出された僕の股間に、彼女は小さく声を漏らした。
すると彼女は、食い入るように僕のそれを見つめながら、その透き通った手で触れる。
ぷにぷにとした弾力と、ほのかな湿り気、そして内側に骨の存在を感じさせない柔らかな手のひらが、優しく僕の肉棒を包んだ。
どこかぎこちない動きで、柔らかなペニスを彼女は揉む。すると、最初のうちは彼女の手のひらに負けぬほど柔らかかったそこが、徐々に芯を通し、シースライムの手のひらを押し返すように膨らんでいく。
やがて、僕の肉棒は屹立と化し、彼女の手の中で熱を放ちながら小さく脈打っていた。
「か、かたい･･･」
驚きを含んだ声音で、シースライムはそう呟いた。だがその言葉には、最初の頃のような緊張は含まれておらず、どこか期待するような興奮が宿っていた。
「･･････」
彼女は無言のまま肉棒から指をはなすと、ずるずると海の中からスカートを引きずりながら僕の上に跨った。スカート越しに彼女の膝が濡れた砂につき、柔らかな粘体の生地が僕の屹立に押し当てられる。
「い、いたずらだからね･･･」
そして、彼女はスカート越しに両足の付け根に屹立の先端を押し当て、ゆっくりと体を揺すり始めた。
手のひらと同じ弾力のある粘体が、途切れることなく彼女の動きにあわせて前後左右に揺れ、肉棒を包みながら擦る。
表面に滲む水分が粘体のなめらかさを増し、心地よい摩擦感を僕にもたらした。次第に、僕もその心地よさに興奮を覚え、ペニスの先端から先走りを滲ませる。
粘度の高い先走りが、彼女のさらさらとした表面の湿り気に加わり、肉棒を圧迫しながら塗り広げられていく。
「かたい、あつい･･･あ･･･」
体の一部であるスカートの感覚か、その奥の両足の付け根か、それとも両方からの刺激に、シースライムは僕の屹立のものと思しき感想を口にした。
シースライムの、人間を擬態しているにすぎないはずのその表情には、むずむずとした快感による興奮と、それを堪えようとするかのような強ばりが同居している。
あくまで、シースライムが身動きのとれない僕の体を『使って』いるだけにすぎないはずなのに、まるで僕自身が彼女を感じさせているような錯覚が胸中に芽生えた。
「あ･･･あ･･･あ、あ･･･」
彼女の体を動かすストロークが小さくなり、代わりに速度が上がっていく。
彼女のスカートはもはや僕の屹立に押し当てられているのではなく、肉棒を包み込み、間接的に彼女の股間に挿入しているかのようであった。
シースライムが上半身を屈め、砂に手を突き、快感をまぎわらそうとするかのように砂を握る。
だが、彼女のスカートはその意志に反して、包み込む屹立の形を味わおうとするかのようにうねり、僕に耐え難い快感を与えた。
麻痺毒のおかげで指一本動かせず、甘い快感から意識を逸らす余裕もなく、僕は徐々に絶頂への誘惑に導かれていった。
このまま思い切り、高まりきった興奮を放ちたい。だがもう少しこの柔らかな、彼女の粘体を味わいたい。
二つの欲望がせめぎあい、僕に跨るシースライムがそれを煽る。
そしてついに、彼女の体を味わいたいという欲求が折れ、絶頂の中に僕は身を踊らせた。
意識の奥が泡立ち、股間から熱と固さを帯びた粘液が迸り、背筋をぞくぞくと快感が駆け上る。
解放感と心地よさが意識を白く塗りつぶし、心臓と股間の脈動だけが僕の全てとなる。
「あ、熱･･･！」
シースライムが、スカートの表面で弾けた白濁に、上擦った声を漏らしながら体を震わせた。
同時に、スカートを織りなす粘体が屹立に絡みつき、放たれる白濁を漏らすまいと締め付ける。
ひんやりとしていた粘体は、僕の屹立の熱によりわずかに温まっており、今度は精液の帯びた熱を移されていた。
やがて、延々続くかと思われていた射精の勢いが弱まり、最後の一滴を吐き出してから肉棒がわずかに固さを失った。
「あ、こんなに･･･」
スカートの表面でくるみ込んでいた肉棒を解放し、へばりつく白濁を見ながら、シースライムが呟く。
すると、青く透き通ったスカートを汚していた粘液が、まるで乾いていくかのように色と形を失い、痕跡も残さず消えていった。
「･･･すごい、きもちよかったよ･･･」
彼女は僕の胸板を軽く撫でると、海の方に振り返った。
「いけない･･･帰らなきゃ･･･」
潮が引きつつあることに気が付いたのか、彼女はそう漏らすと僕の上から立ち上がった。
そして、寄せては返す波の間にざぶざぶと入っていきながら、彼女は僕の方に目を向けた。
「今度は、いたずらじゃなくて、ちゃんと･････････ううん･･･」
たっぷり野間を挟んでから、彼女は頭を振って続けた。
「今度は、お話できるといいね」
そういい残し、彼女は波の合間に頭を沈めた。
後には、痺れの残る僕だけが取り残された。

■作者メッセージ
海で出会うか浜辺で出会うか迷いました。
これからの海産物娘さんは、基本浜辺で出会うことになると思います。