furagumento_
綺麗な満月が辺りを照らしていた。 彼女は満月をバックにしていて表情は読み取れなかった。 「──ちゃん、これから、どこに行くの?」 僕はそう尋ねると彼女は嬉しそうに答えた。 「この世界では無い場所に行くよ。」 「この世界では無い場所?」 そう返すと彼女はどこか名残惜しそうだった。 「今は──君を連れて行けないよ、家族が心配するだろうからね。」 「分かってる、でも、またいつか会えるの?」 「会えるよ、──君が好きだから、いつか──君を私の世界に連れてってあげる。」 彼女は血のついた両腕で僕を抱きしめた。 幾つもの血肉が辺りに散らばっている。 腕や頭、内臓や腸などがぶちまけられていた。 「……遊び足りないなぁ。」 彼女は辺りを見渡し、つまらなそうに呟いた。 バラバラになった人達は彼女の玩具になって壊されたのだろう。 僕もいずれは彼女の玩具になって壊されるか? 「本当なら、──君の四肢を切り取って一生大事にしたいけど、まだ子供だから、最後の楽しみに取っておくよ。」 月光に映し出された薄い色素の肌。 血のついた両腕に返り血を浴びた白いワンピース。 僕はそんな彼女に見惚れていた。 「──君とは、しばらく会えないのは名残惜しいけど、そろそろ行くね。」 きっと、彼女は人間では無いのだろう。 「ほんのちょっとだけ、バイバイ──君。」 彼女は優しく手を振り、そして彼女は闇夜に溶けて消えてしまった。 僕の記憶が彼女に関するページのみ破り捨てられたように消えてしまった。 彼女との記憶の断片はどこにあるのだろう? 記憶や想いの断片〖furagumento〗を拾い集めた先に何があるのか? そう、これは俺と何かが欠けた少女達の物語…… |
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