聖夜贈物
「つーわけで、クリスマスパーティーやるぞ野郎どもー!!」
『おぉぉぉぉぉぉぉ!!』
僕の所属するクラスの教室。
何故かテンションの高いミノタウロスの副委員長が叫び、皆が雄叫びをあげた。
今日は12月24日。
クリスマスイブだ。
たぶん、皆今年こそは彼氏彼女を作って素敵なクリスマスを……とか思ってるんだろう。
僕こと方丈 正孝(ほうじょう・まさたか)は、机に頬杖をかいてそんな白熱した皆を冷めた目で見ていた。
まぁ、だからと言って僕がリア充であるかと訊かれると、答えはNOだ。
彼女なんて全くないし、クリスマスの予定なんか白紙だ。
でも、僕は皆みたいに白熱しない。
正直、彼女が手に入るなんて思ってない。
ていうか、手に入らないだろう、普通?
と言うことで、僕はそう言った色恋事情は諦めました。
……あいや、一個だけ。
好きな人がいるっていうのは、別か。
「おいマサ!何ぼ〜っとしてんだよ!早く行こうぜ!?」
「うん?あ、ああ。そうだね」
友人に引っ張られ、僕はパーティーに連行されるのであった。
……ちなみに、このパーティーの立案者は委員長。
カラオケで予約取って、皆で騒げるようにしたらしい。
ちなみに種族はアヌビス。
いや、けっこう意外だよな、まさか真面目一筋の委員長がこんなことを立案するなんて。
「ん?あれ?イインチョ?どしたの?」
噂をすれば、というやつだろうか?
委員長がちょうど僕達を見ていた。
「あ、いや。少し気になったことがあってな」
「うん?どうしたの、委員長。気になること?」
「あ、いや。その……なんというか……方丈君が、あまり面白そうな顔をしなかったから、こういうのは嫌いなのか、と思ってしまって……」
「ああいや。大丈夫だよ。嫌いじゃない。皆でわいわいするのは、むしろ好きだよ?」
「ふぅ……そうなのか。それはよかった……」
「ありがとうね、心配してくれて」
「いや、皆に楽しんでもらいたいからな。当然のことだ」
そう言って、委員長は皆を追いかけて走って行ってしまった。
ほんと、あの人の責任感は凄いな……
遊ぶことに関しても、皆が楽しめるように考えているのか……
「……ここでさ、お前だから楽しんでもらいたいんだ、って、言われたら最高じゃね?」
「まぁ、言われないだろうけどね」
「うぅ、夢を持たないなぁ……」
「ははは……おっと、メールだ」
ポケットにあった携帯からメール着信を伝える音楽がなり、僕はすぐに携帯を開いて確認した。
メールの内容は……
差出人・レン
題名・クリスマスプレゼントは……
本文・今日はちょっと予定があるから、先にそっちの部屋に送っといたよ。
……というものだった。
「ん?誰だった?」
「いや、いつもの」
「ああ、幼馴染のレン君……だっけか?」
「まぁ、そんな感じ」
「仲がいいんだな」
「いやいや。今年は忙しいからって内容だよ。まぁ、仲はそこそこかな?」
「ふぅん……ってやべ、皆とはぐれっちまうぜ!?急ごう!」
「そうだね」
皆が信号で足止めを食らっているうちに、僕達は追いつこうと走り出したのだった。
××××××××××××××××××××××××××××××
「ああもう!寝ちゃおう寝ちゃおう寝ちゃおう!」
『寝ちゃおうぅ!!』
そして、カラオケ店内。
皆のアイドル的存在のセイレーン(ただし相手に高望みし過ぎでまだ彼氏なし)が、まるでライブのように歌い周りの連中がそれにあわせて叫ぶ。
……全く、元気だな……
「おーい、正孝、歌わないの?」
「どうしようかな?歌いたい曲が見つからないな……」
「ほう……じゃあよし!おーいゆかりーん!!マサが歌いたいっていうから“君知ら”入れて!!」
『了解!!』
「おいちょっと待て!!歌うとも言ってないし、そもそもそれ女声の歌じゃないか!?」
「まぁまぁ。歌えよ。お前歌うまいだろ?」
「ったく……」
断ろうとしたのだが、すでに曲は始まってるし、セイレーンからマイクを受け取ってしまったので、流れ的に歌わないといけないハメになった。
ったく、しょうがないな……
下手な歌でも文句いうなよ……?
「“いつも通りのある日のこと……”」
××××××××××××××××××××××××××××××
「……はぁ、緊張した……」
「お疲れさんっ!」
「お前な……後から後から曲入れんなよ……10曲連続で歌うハメになったじゃんか……」
「いや、すまんすまん。予想外に上手かったもんでな。いやまじで。なんでカラオケ誘っても来なかったんだってレベルで」
「いや、まぁ、なんとなく。人前で歌うのは恥ずかしいからね」
「……いや、恥ずかしくねーよ、誇れよそれ」
「別に。誇ってなんかなるわけじゃないし。いいよ」
「うわ、マジで夢持たないのな……」
「まぁね」
『それじゃあ次、また正孝君にいってもらおう!!』
『イェェェェェェェェェ!!』
「はぁ!?ちょっと待っt……マジでか!?」
数人に引っ張られ、僕はまたマイクを持たされる。
まぁ、いろいろと弄られたけど、なかなか楽しいパーティーだったかな?
××××××××××××××××××××××××××××××
「ただいまー」
大体11時までカラオケで歌った後、一部のやつらは二次会だ!とか言ってどこぞの居酒屋に向かって行った。
まぁ、たぶんさらに二三件はよってくだろうな……
全く、高校三年だというのに、あんなにハメはずしていいんだろうか……?
まぁ、気持ちはわかるけれど。
で、僕はその二次会には行かず、直で家に帰ってきた。
「あら、お帰り。遅かったわね」
「メールで伝えたでしょ?クリスマスパーティーやってたの」
「……ああ、そうだったわね。夕飯は食べたかしら?」
「うん。向こうで食べたよ」
居間に行くと、母親がいたので、軽く話す。
「あ、そうそう。正孝宛に何か荷物が届いてるわよ?」
「ん?……ああ、レンからのプレゼントか……」
「レンちゃんも律儀ねぇ、毎年毎年プレゼント渡してくるなんて……」
「まぁ、そうだね。……あ、お返しのプレゼントは何がいいかな……?後で訊いてみよう」
じゃあ、二階にいるねと母親にいい、僕は二階にある自室に入った。
机にソファ、ベットにコンポにテレビという、ごくごく普通の僕の部屋の中央、正確には中央にある机の上に、レンからのプレゼントが置いてあった。
「……これか……ふむ、珍しいな、梱包してしてあるなんて……」
大きさは縦横高さ全て40cmくらいの少しだけ大きめの箱。
いつもなら、買ったままの状態であいつはプレゼントを渡してくる。
……おかしい。何か悪戯でもしてあるのか?
なんというか、違和感があるので、僕は注意して箱の封を開ける。
開けた中にあったのは、一個の箱。
……怪しい……
まぁ、あいつの悪戯だからビックリ箱とかそんな感じかな?と思い、僕は自分に向けないように箱の蓋の位置を調整してからパカ、と蓋を開けた。
「なんとプレゼントは私でにゅっ!?」
「……え?レン?」
箱を開けると、いきなり幼馴染のレンが真横に飛び出してきて……床に落ちた。
ちなみになんで真横だったかと言うと、僕が蓋の位置を調整したからだ。
僕がいる方向から真逆にものが出るようにしてから箱を開けたため、レンが真横に飛び出してきて床に落ちた、というわけだ。
というか……
「どうやって箱の中に入ってたんだろう……」
「イテテテ……あ、マサ!酷いよ!折角準備したのに、引っかかってくれないなんて!」
と呟いていると、プンプン!という擬音が似合いそうにレンは怒りだした。
そういえば、学校が違うから、久しぶりにあったかな?
家はそんなに遠くないけど、いろいろと忙しかったし、メールぐらいでしか話してなかったな……
まぁ、それはともかく……
「いや、そしたら自分が飛び出してくるなんて悪戯しなきゃいいじゃないか……で、どうやって箱の中に入ってたの?」
「え?いや、私ミミックだし……?」
「あ、そうだった」
そう、彼女こと逆井 恋歌(さかさい・れんか)は、僕の幼馴染であり、魔物娘、“ミミック”だった。
だから、箱から飛び出して来れたのか。
なるほどなるほど。
で……
「プレゼントは私って、どういう意味?」
「え……あ……!?」
僕が訊くと、レンは少しだけ固まってから、ボンッ!!と顔を真っ赤にした。
「どうしたの?」
「うう……マサが何も考えないで箱を開けてくれたら何も説明しなくて良かったのに……」
「え?どういうこと?」
「むぅ……だから!!」
「え?ちょっとうわっ!?」
突然、レンが突進してきて、僕は倒されてしまう。
やばい。これは態勢的に非常にまずい。
女の子にマウントを取られている……これは……なんというか、我慢が……
離してと僕はレンに言おうとして、顔を見る。
何故か、レンは赤面して……少し、切なそうな顔をした。
「今だから……クリスマスだから、これは、私へのプレゼントだから、言うね……?」
「………………」
まるで言い訳をするように、レンは言い、そして言葉をつなげる。
「私は、マサのことが好き」
その言葉に、僕は困惑する。
だってそうでしょ?
「えと、突然過ぎて、状況に追いついて来てないんだけど……?」
「……本当はね、箱から出たら誘惑の術使ってすぐに既成事実を……って思ったんだけど、マサが予想を裏切ってああなったから、今私は告白してるんだよ……?」
危なっ!?
僕の貞操危なっ!?
なんて、ふざけてる場合じゃないか。
「……なんで、僕なの?レンは可愛いし、他にいい人なんていっぱいいるでしょ?」
「さぁ、わからないよ。でも、いつも一緒にいて、ずっと一緒にいて、高校になって、初めて離れ離れになって、そしたら、会いたくなって……とても会いたくなって、切なくなって……会えないのが、辛くて……ああたぶん、マサのことが好きだったんだなって……思ったんだ」
…………僕達は、保育園も、小学校も、中学校もいつも同じだった。
休みの日には暇なら出かけて、正月なんかは家族で集まって、まるで兄妹みたいに……
それが、高校になって初めて離れ離れになって、忙しくて、会えなくて……
なんだ……
「僕と一緒か……」
「え……?」
「高校も楽しい。友達は面白いやつばっかだし、授業は大変だけど、充実してる。でもね、何か足りないんだ。それが誰かわかったのは、結構前からなんだ。その時から、僕も、君に会いたかった。いつも会えなくて、寂しかった。痛いくらい、ずっと会いたいって思ってた」
そこまで言って、僕は一拍おき、そして言う。
「僕も、君が好きだったから……」
「え……?」
僕からも告白してから、僕はレンを抱きしめる。
突然のことで驚いたからか、レンは抱きつかれた瞬間はビクッと体が硬くなったが、少ししたら、安心したように、身体の力を抜いた。
「私で……いいのかな?」
「それは僕のセリフ」
「……私は、君じゃないとやだよ」
「……それも、僕のセリフ」
「ふふふ……全く同じこと考えてたんだね……」
「そうだね……」
「もっと早くに告白してれば良かったな……」
「まぁ、いいんじゃないの?だって……」
「“これはある意味では僕へのクリスマスプレゼントなんだから”、でしょ?」
「……そうだね。でも、一言付けたし忘れてるよ」
「ん?何かな?」
「ただのクリスマスプレゼントじゃない。最高のクリスマスプレゼント、だよ」
「っ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!?」
僕の言葉に、レンは顔をさらに真っ赤にした。
……そして、その夜、レンは僕の部屋にそのまま泊まっていった。
何がおきたかは、また別の話……
いや、たぶん、最高の幸せだから、もう誰にも語らないだろうな……
××××××××××××××××××××××××××××××
「おーい、マサ〜!!」
大学の庭のベンチで座っていると、レンが走って来て、僕に抱きついて来た。
「お疲れ様、レン。もう今日は講義はないよね?」
「もっちろん!!これで心置きなく遊べるよ!」
「よし、じゃあ行こうか」
「うん!!」
……あれから一年、僕達は無事、大学に進学することが出来た。
この学校は、家から相当離れているため、わざわざアパートの一部屋を借りて互いに一人暮らしをしながら僕らは通ってる。
僕もレンも、同じ学校に進学した。
理由は、もう離れたくないから。
今は、二人で、時間が空いた時には遊びにいって、夜はいつもどちらかの部屋に泊まっていって……
高校の時よりも、充実している気がする。
それもこれも、全部レンのおかげだ。
「ねぇ、レン」
「何かな?」
隣で歩く愛しい人に、僕はもう一度、あのセリフを言う。
「大好きだよ」
「うんっ!!私も!!」
僕の言葉に、レンはとびきりの笑顔で答えてくれた。
『おぉぉぉぉぉぉぉ!!』
僕の所属するクラスの教室。
何故かテンションの高いミノタウロスの副委員長が叫び、皆が雄叫びをあげた。
今日は12月24日。
クリスマスイブだ。
たぶん、皆今年こそは彼氏彼女を作って素敵なクリスマスを……とか思ってるんだろう。
僕こと方丈 正孝(ほうじょう・まさたか)は、机に頬杖をかいてそんな白熱した皆を冷めた目で見ていた。
まぁ、だからと言って僕がリア充であるかと訊かれると、答えはNOだ。
彼女なんて全くないし、クリスマスの予定なんか白紙だ。
でも、僕は皆みたいに白熱しない。
正直、彼女が手に入るなんて思ってない。
ていうか、手に入らないだろう、普通?
と言うことで、僕はそう言った色恋事情は諦めました。
……あいや、一個だけ。
好きな人がいるっていうのは、別か。
「おいマサ!何ぼ〜っとしてんだよ!早く行こうぜ!?」
「うん?あ、ああ。そうだね」
友人に引っ張られ、僕はパーティーに連行されるのであった。
……ちなみに、このパーティーの立案者は委員長。
カラオケで予約取って、皆で騒げるようにしたらしい。
ちなみに種族はアヌビス。
いや、けっこう意外だよな、まさか真面目一筋の委員長がこんなことを立案するなんて。
「ん?あれ?イインチョ?どしたの?」
噂をすれば、というやつだろうか?
委員長がちょうど僕達を見ていた。
「あ、いや。少し気になったことがあってな」
「うん?どうしたの、委員長。気になること?」
「あ、いや。その……なんというか……方丈君が、あまり面白そうな顔をしなかったから、こういうのは嫌いなのか、と思ってしまって……」
「ああいや。大丈夫だよ。嫌いじゃない。皆でわいわいするのは、むしろ好きだよ?」
「ふぅ……そうなのか。それはよかった……」
「ありがとうね、心配してくれて」
「いや、皆に楽しんでもらいたいからな。当然のことだ」
そう言って、委員長は皆を追いかけて走って行ってしまった。
ほんと、あの人の責任感は凄いな……
遊ぶことに関しても、皆が楽しめるように考えているのか……
「……ここでさ、お前だから楽しんでもらいたいんだ、って、言われたら最高じゃね?」
「まぁ、言われないだろうけどね」
「うぅ、夢を持たないなぁ……」
「ははは……おっと、メールだ」
ポケットにあった携帯からメール着信を伝える音楽がなり、僕はすぐに携帯を開いて確認した。
メールの内容は……
差出人・レン
題名・クリスマスプレゼントは……
本文・今日はちょっと予定があるから、先にそっちの部屋に送っといたよ。
……というものだった。
「ん?誰だった?」
「いや、いつもの」
「ああ、幼馴染のレン君……だっけか?」
「まぁ、そんな感じ」
「仲がいいんだな」
「いやいや。今年は忙しいからって内容だよ。まぁ、仲はそこそこかな?」
「ふぅん……ってやべ、皆とはぐれっちまうぜ!?急ごう!」
「そうだね」
皆が信号で足止めを食らっているうちに、僕達は追いつこうと走り出したのだった。
××××××××××××××××××××××××××××××
「ああもう!寝ちゃおう寝ちゃおう寝ちゃおう!」
『寝ちゃおうぅ!!』
そして、カラオケ店内。
皆のアイドル的存在のセイレーン(ただし相手に高望みし過ぎでまだ彼氏なし)が、まるでライブのように歌い周りの連中がそれにあわせて叫ぶ。
……全く、元気だな……
「おーい、正孝、歌わないの?」
「どうしようかな?歌いたい曲が見つからないな……」
「ほう……じゃあよし!おーいゆかりーん!!マサが歌いたいっていうから“君知ら”入れて!!」
『了解!!』
「おいちょっと待て!!歌うとも言ってないし、そもそもそれ女声の歌じゃないか!?」
「まぁまぁ。歌えよ。お前歌うまいだろ?」
「ったく……」
断ろうとしたのだが、すでに曲は始まってるし、セイレーンからマイクを受け取ってしまったので、流れ的に歌わないといけないハメになった。
ったく、しょうがないな……
下手な歌でも文句いうなよ……?
「“いつも通りのある日のこと……”」
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「……はぁ、緊張した……」
「お疲れさんっ!」
「お前な……後から後から曲入れんなよ……10曲連続で歌うハメになったじゃんか……」
「いや、すまんすまん。予想外に上手かったもんでな。いやまじで。なんでカラオケ誘っても来なかったんだってレベルで」
「いや、まぁ、なんとなく。人前で歌うのは恥ずかしいからね」
「……いや、恥ずかしくねーよ、誇れよそれ」
「別に。誇ってなんかなるわけじゃないし。いいよ」
「うわ、マジで夢持たないのな……」
「まぁね」
『それじゃあ次、また正孝君にいってもらおう!!』
『イェェェェェェェェェ!!』
「はぁ!?ちょっと待っt……マジでか!?」
数人に引っ張られ、僕はまたマイクを持たされる。
まぁ、いろいろと弄られたけど、なかなか楽しいパーティーだったかな?
××××××××××××××××××××××××××××××
「ただいまー」
大体11時までカラオケで歌った後、一部のやつらは二次会だ!とか言ってどこぞの居酒屋に向かって行った。
まぁ、たぶんさらに二三件はよってくだろうな……
全く、高校三年だというのに、あんなにハメはずしていいんだろうか……?
まぁ、気持ちはわかるけれど。
で、僕はその二次会には行かず、直で家に帰ってきた。
「あら、お帰り。遅かったわね」
「メールで伝えたでしょ?クリスマスパーティーやってたの」
「……ああ、そうだったわね。夕飯は食べたかしら?」
「うん。向こうで食べたよ」
居間に行くと、母親がいたので、軽く話す。
「あ、そうそう。正孝宛に何か荷物が届いてるわよ?」
「ん?……ああ、レンからのプレゼントか……」
「レンちゃんも律儀ねぇ、毎年毎年プレゼント渡してくるなんて……」
「まぁ、そうだね。……あ、お返しのプレゼントは何がいいかな……?後で訊いてみよう」
じゃあ、二階にいるねと母親にいい、僕は二階にある自室に入った。
机にソファ、ベットにコンポにテレビという、ごくごく普通の僕の部屋の中央、正確には中央にある机の上に、レンからのプレゼントが置いてあった。
「……これか……ふむ、珍しいな、梱包してしてあるなんて……」
大きさは縦横高さ全て40cmくらいの少しだけ大きめの箱。
いつもなら、買ったままの状態であいつはプレゼントを渡してくる。
……おかしい。何か悪戯でもしてあるのか?
なんというか、違和感があるので、僕は注意して箱の封を開ける。
開けた中にあったのは、一個の箱。
……怪しい……
まぁ、あいつの悪戯だからビックリ箱とかそんな感じかな?と思い、僕は自分に向けないように箱の蓋の位置を調整してからパカ、と蓋を開けた。
「なんとプレゼントは私でにゅっ!?」
「……え?レン?」
箱を開けると、いきなり幼馴染のレンが真横に飛び出してきて……床に落ちた。
ちなみになんで真横だったかと言うと、僕が蓋の位置を調整したからだ。
僕がいる方向から真逆にものが出るようにしてから箱を開けたため、レンが真横に飛び出してきて床に落ちた、というわけだ。
というか……
「どうやって箱の中に入ってたんだろう……」
「イテテテ……あ、マサ!酷いよ!折角準備したのに、引っかかってくれないなんて!」
と呟いていると、プンプン!という擬音が似合いそうにレンは怒りだした。
そういえば、学校が違うから、久しぶりにあったかな?
家はそんなに遠くないけど、いろいろと忙しかったし、メールぐらいでしか話してなかったな……
まぁ、それはともかく……
「いや、そしたら自分が飛び出してくるなんて悪戯しなきゃいいじゃないか……で、どうやって箱の中に入ってたの?」
「え?いや、私ミミックだし……?」
「あ、そうだった」
そう、彼女こと逆井 恋歌(さかさい・れんか)は、僕の幼馴染であり、魔物娘、“ミミック”だった。
だから、箱から飛び出して来れたのか。
なるほどなるほど。
で……
「プレゼントは私って、どういう意味?」
「え……あ……!?」
僕が訊くと、レンは少しだけ固まってから、ボンッ!!と顔を真っ赤にした。
「どうしたの?」
「うう……マサが何も考えないで箱を開けてくれたら何も説明しなくて良かったのに……」
「え?どういうこと?」
「むぅ……だから!!」
「え?ちょっとうわっ!?」
突然、レンが突進してきて、僕は倒されてしまう。
やばい。これは態勢的に非常にまずい。
女の子にマウントを取られている……これは……なんというか、我慢が……
離してと僕はレンに言おうとして、顔を見る。
何故か、レンは赤面して……少し、切なそうな顔をした。
「今だから……クリスマスだから、これは、私へのプレゼントだから、言うね……?」
「………………」
まるで言い訳をするように、レンは言い、そして言葉をつなげる。
「私は、マサのことが好き」
その言葉に、僕は困惑する。
だってそうでしょ?
「えと、突然過ぎて、状況に追いついて来てないんだけど……?」
「……本当はね、箱から出たら誘惑の術使ってすぐに既成事実を……って思ったんだけど、マサが予想を裏切ってああなったから、今私は告白してるんだよ……?」
危なっ!?
僕の貞操危なっ!?
なんて、ふざけてる場合じゃないか。
「……なんで、僕なの?レンは可愛いし、他にいい人なんていっぱいいるでしょ?」
「さぁ、わからないよ。でも、いつも一緒にいて、ずっと一緒にいて、高校になって、初めて離れ離れになって、そしたら、会いたくなって……とても会いたくなって、切なくなって……会えないのが、辛くて……ああたぶん、マサのことが好きだったんだなって……思ったんだ」
…………僕達は、保育園も、小学校も、中学校もいつも同じだった。
休みの日には暇なら出かけて、正月なんかは家族で集まって、まるで兄妹みたいに……
それが、高校になって初めて離れ離れになって、忙しくて、会えなくて……
なんだ……
「僕と一緒か……」
「え……?」
「高校も楽しい。友達は面白いやつばっかだし、授業は大変だけど、充実してる。でもね、何か足りないんだ。それが誰かわかったのは、結構前からなんだ。その時から、僕も、君に会いたかった。いつも会えなくて、寂しかった。痛いくらい、ずっと会いたいって思ってた」
そこまで言って、僕は一拍おき、そして言う。
「僕も、君が好きだったから……」
「え……?」
僕からも告白してから、僕はレンを抱きしめる。
突然のことで驚いたからか、レンは抱きつかれた瞬間はビクッと体が硬くなったが、少ししたら、安心したように、身体の力を抜いた。
「私で……いいのかな?」
「それは僕のセリフ」
「……私は、君じゃないとやだよ」
「……それも、僕のセリフ」
「ふふふ……全く同じこと考えてたんだね……」
「そうだね……」
「もっと早くに告白してれば良かったな……」
「まぁ、いいんじゃないの?だって……」
「“これはある意味では僕へのクリスマスプレゼントなんだから”、でしょ?」
「……そうだね。でも、一言付けたし忘れてるよ」
「ん?何かな?」
「ただのクリスマスプレゼントじゃない。最高のクリスマスプレゼント、だよ」
「っ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!?」
僕の言葉に、レンは顔をさらに真っ赤にした。
……そして、その夜、レンは僕の部屋にそのまま泊まっていった。
何がおきたかは、また別の話……
いや、たぶん、最高の幸せだから、もう誰にも語らないだろうな……
××××××××××××××××××××××××××××××
「おーい、マサ〜!!」
大学の庭のベンチで座っていると、レンが走って来て、僕に抱きついて来た。
「お疲れ様、レン。もう今日は講義はないよね?」
「もっちろん!!これで心置きなく遊べるよ!」
「よし、じゃあ行こうか」
「うん!!」
……あれから一年、僕達は無事、大学に進学することが出来た。
この学校は、家から相当離れているため、わざわざアパートの一部屋を借りて互いに一人暮らしをしながら僕らは通ってる。
僕もレンも、同じ学校に進学した。
理由は、もう離れたくないから。
今は、二人で、時間が空いた時には遊びにいって、夜はいつもどちらかの部屋に泊まっていって……
高校の時よりも、充実している気がする。
それもこれも、全部レンのおかげだ。
「ねぇ、レン」
「何かな?」
隣で歩く愛しい人に、僕はもう一度、あのセリフを言う。
「大好きだよ」
「うんっ!!私も!!」
僕の言葉に、レンはとびきりの笑顔で答えてくれた。
10/12/25 12:55更新 / 星村 空理