〜泣いた青鬼〜第二幕
〜スミレが訪ねてきた翌日〜
早朝、店主は外に出て霞と冬の空気を胸いっぱいに吸い込んだ
少し湿った冷たい空気を吸い込んで一気に目が覚める
「んん〜良い朝だ〜」
伸びをしながら一人つぶやく店主、そんな店主の前に霞とは違う灰色の煙が帰ってくる
「おかえり煙鬼、それでどうだった?」
そう煙に店主が尋ねると煙は店主の周り飛び回った
はたから見ればただ不思議な光景でそこに煙との意思疎通があるとは感じられない
しかし、店主は飛び回る煙からの情報をよみとったようで
いつもの明るい笑顔に困ったように眉間に皺を寄せた
「そうかやはり恋に恋する乙女って奴かぁ〜厄介だな〜」
そう店主が式神を放って調べたのは相手の男ではなくスミレ本人だった
それをどうしたものかと考えていると店の中から少しだらしない格好の辰巳と
完全に寝ぼけ眼のタマが出てきた
「「おはよう(にゃ〜)(ございます)」」
「うん、おはよう顔あらってご飯食べたら煙鬼のもってきた話をするからね」
その言葉を聞いても未だに二人は目を擦っていた
そんな二人の様子に微笑ましい笑顔を浮かべて店主は二人の頭をなでた
するとタマは気持ちよさそうな顔をして
辰巳は顔が真っ赤になった
----------------------------------------------------
〜朝食後〜
三人とも寝間着から着替え、目もしっかり開いている
「じゃあ煙鬼の調べてきたことを確認するよ。」
「はいっ」「にゃ〜」
店主は二人に煙鬼から聞いたスミレのこと話し出した
「スミレさんだが,どうやら彼女,すでに何回か例の役者に告白しているそうだ、しかも、・・・その、なんだ・・・かなりしつこく迫っているようだ・・・・。」
外で小鳥がさえずる長閑な空気とは違う、重たい空気が店の中にながれた
「それは・・・その・・どの程度なのですか?」
辰巳が少々反応に困ったような顔をした
「それがぁ〜、ん〜凄いみたいなんだよな〜(汗)」
額を描きながら、なんとも話ずらそうに店主が話ていく
「最初は恋文程度の実に可愛らしいものだったらしいんだが、その後、直接告白してからがねぇ〜。
なんでも、役者の彼は自分のことをひいきにしてくれてる上客ってことで、やんわり断っているらしいんだが、彼女はそれをまったく気にしてないみたいなんだ。
おまけに、贈り物に服や、南蛮品、お金までも送っているそうなんだ
最近では自分の髪の毛なんてのもあったらしい・・・」
「もはや、呪術みたいな重さニャ、ぶっちゃけドン引きニャ(汗)」
タマがおもわず口にする。
「し、しかし、そこまでされて役者の彼は未だにハッキリした態度をとらないのですか?」
辰巳のもっともな意見に店主が答える
「何とも言えないが、その役者が彼女の贈り物に味をしめたとかで無ければいいんだけどね〜。煙鬼にそっちの方も今調べてもらっている。夕暮れには、帰ってくるだろう」
そこで店主がひとまず話をしめた
「さぁて、夕暮れまではこの話は置いておいて他の仕事だ。辰巳は家事を、タマは草むしりが終わったら遊びに行って良し。」
「はい」「ニャ〜」
「僕は今日の分の薬を白澤(ハクタク)先生のとこに届けてくるよ。そのついでに、町で劇団の噂も聞いてくる。」
「いってらっしゃい(ませ)(ニャ〜)」
「いってきます。」
明るい笑顔の二人を背に背負子を肩にぶら下げて、店主は出かけた
・
・
・
・
・
・
・
そして夕暮れ時、うっすらと暮れ始めた街並みはどこか寂しさと不安の色をしていた
三人がお茶をすすりながら今日の出来事を話していると戸の隙間から煙鬼が大慌てで帰ってきた
と、言っても普通の人から見れば煙の塊が凄い勢いで飛んできただけにしか見えないだろう
煙鬼は店主のまわりで飛び回り今の状況を彼に伝えた
「それは、本当かい!?」
焦りの混じった店主の声に辰巳が振り返る
「どうしたのですか!?」
その様子にタマが飛んでくる
「なんにゃなんにゃ?」
店主は顔に焦りの色を浮かべて二人に向き直った
「煙鬼の話だと、あの役者は裏でいろいろ汚いことをしていて町のごろつきどもと裏で繋がっているらしい。しかも、これからそのゴロツキとスミレさんを攫いに行くそうだ。」
話しを聞いたタマと辰巳も焦りが色濃く出始めた。
「し、しかし、どうして役者の彼はいきなりそのようなことを!?
「どうやら、送り物が不味かったらしい。スミレさんの高価な贈り物に味をしめていた彼だが、とうとう贈り物だけでは飽き足らず、彼女を攫って身代金をゆすろうとしているみたいだ。」
「うわ〜、ベタベタな悪人にゃ〜^^;」
「まったくだよ、だけど事実な以上急がなきゃだよ。二人とも急いで支度を!」
「わかりました!」「了解ニャッ!」
二人に準備を促した店主の肩の横で煙鬼が漂っていた
表情の無いはずの煙鬼だが何故かとても心配そうな、不安そうな、そんな印象を受ける光景だった
店主は先ほどまでの焦りを落ち着けて煙鬼にやさしく語りかけた
「スミレさんが心配かい?でも、大丈夫きっと何とかするからさ」
「・・・・・・・・」
煙鬼はただいつものように店主の横を漂うだけだった
夕暮れ時だったはずがもう薄らと夜が空を覆い始めた
煙鬼は店主の周りをぐるぐる回り自分の意思を店主に伝えた
「本当にいいのかい?」
店主は煙鬼の意思を再確認した
煙鬼はもう動かなかった
「わかったよ、契約だからね。」
夜に染まる夕暮れ決心を決めた煙鬼
空に一番星が輝く
――――――――――第二幕_完_第三幕に続く――――――――――――
早朝、店主は外に出て霞と冬の空気を胸いっぱいに吸い込んだ
少し湿った冷たい空気を吸い込んで一気に目が覚める
「んん〜良い朝だ〜」
伸びをしながら一人つぶやく店主、そんな店主の前に霞とは違う灰色の煙が帰ってくる
「おかえり煙鬼、それでどうだった?」
そう煙に店主が尋ねると煙は店主の周り飛び回った
はたから見ればただ不思議な光景でそこに煙との意思疎通があるとは感じられない
しかし、店主は飛び回る煙からの情報をよみとったようで
いつもの明るい笑顔に困ったように眉間に皺を寄せた
「そうかやはり恋に恋する乙女って奴かぁ〜厄介だな〜」
そう店主が式神を放って調べたのは相手の男ではなくスミレ本人だった
それをどうしたものかと考えていると店の中から少しだらしない格好の辰巳と
完全に寝ぼけ眼のタマが出てきた
「「おはよう(にゃ〜)(ございます)」」
「うん、おはよう顔あらってご飯食べたら煙鬼のもってきた話をするからね」
その言葉を聞いても未だに二人は目を擦っていた
そんな二人の様子に微笑ましい笑顔を浮かべて店主は二人の頭をなでた
するとタマは気持ちよさそうな顔をして
辰巳は顔が真っ赤になった
----------------------------------------------------
〜朝食後〜
三人とも寝間着から着替え、目もしっかり開いている
「じゃあ煙鬼の調べてきたことを確認するよ。」
「はいっ」「にゃ〜」
店主は二人に煙鬼から聞いたスミレのこと話し出した
「スミレさんだが,どうやら彼女,すでに何回か例の役者に告白しているそうだ、しかも、・・・その、なんだ・・・かなりしつこく迫っているようだ・・・・。」
外で小鳥がさえずる長閑な空気とは違う、重たい空気が店の中にながれた
「それは・・・その・・どの程度なのですか?」
辰巳が少々反応に困ったような顔をした
「それがぁ〜、ん〜凄いみたいなんだよな〜(汗)」
額を描きながら、なんとも話ずらそうに店主が話ていく
「最初は恋文程度の実に可愛らしいものだったらしいんだが、その後、直接告白してからがねぇ〜。
なんでも、役者の彼は自分のことをひいきにしてくれてる上客ってことで、やんわり断っているらしいんだが、彼女はそれをまったく気にしてないみたいなんだ。
おまけに、贈り物に服や、南蛮品、お金までも送っているそうなんだ
最近では自分の髪の毛なんてのもあったらしい・・・」
「もはや、呪術みたいな重さニャ、ぶっちゃけドン引きニャ(汗)」
タマがおもわず口にする。
「し、しかし、そこまでされて役者の彼は未だにハッキリした態度をとらないのですか?」
辰巳のもっともな意見に店主が答える
「何とも言えないが、その役者が彼女の贈り物に味をしめたとかで無ければいいんだけどね〜。煙鬼にそっちの方も今調べてもらっている。夕暮れには、帰ってくるだろう」
そこで店主がひとまず話をしめた
「さぁて、夕暮れまではこの話は置いておいて他の仕事だ。辰巳は家事を、タマは草むしりが終わったら遊びに行って良し。」
「はい」「ニャ〜」
「僕は今日の分の薬を白澤(ハクタク)先生のとこに届けてくるよ。そのついでに、町で劇団の噂も聞いてくる。」
「いってらっしゃい(ませ)(ニャ〜)」
「いってきます。」
明るい笑顔の二人を背に背負子を肩にぶら下げて、店主は出かけた
・
・
・
・
・
・
・
そして夕暮れ時、うっすらと暮れ始めた街並みはどこか寂しさと不安の色をしていた
三人がお茶をすすりながら今日の出来事を話していると戸の隙間から煙鬼が大慌てで帰ってきた
と、言っても普通の人から見れば煙の塊が凄い勢いで飛んできただけにしか見えないだろう
煙鬼は店主のまわりで飛び回り今の状況を彼に伝えた
「それは、本当かい!?」
焦りの混じった店主の声に辰巳が振り返る
「どうしたのですか!?」
その様子にタマが飛んでくる
「なんにゃなんにゃ?」
店主は顔に焦りの色を浮かべて二人に向き直った
「煙鬼の話だと、あの役者は裏でいろいろ汚いことをしていて町のごろつきどもと裏で繋がっているらしい。しかも、これからそのゴロツキとスミレさんを攫いに行くそうだ。」
話しを聞いたタマと辰巳も焦りが色濃く出始めた。
「し、しかし、どうして役者の彼はいきなりそのようなことを!?
「どうやら、送り物が不味かったらしい。スミレさんの高価な贈り物に味をしめていた彼だが、とうとう贈り物だけでは飽き足らず、彼女を攫って身代金をゆすろうとしているみたいだ。」
「うわ〜、ベタベタな悪人にゃ〜^^;」
「まったくだよ、だけど事実な以上急がなきゃだよ。二人とも急いで支度を!」
「わかりました!」「了解ニャッ!」
二人に準備を促した店主の肩の横で煙鬼が漂っていた
表情の無いはずの煙鬼だが何故かとても心配そうな、不安そうな、そんな印象を受ける光景だった
店主は先ほどまでの焦りを落ち着けて煙鬼にやさしく語りかけた
「スミレさんが心配かい?でも、大丈夫きっと何とかするからさ」
「・・・・・・・・」
煙鬼はただいつものように店主の横を漂うだけだった
夕暮れ時だったはずがもう薄らと夜が空を覆い始めた
煙鬼は店主の周りをぐるぐる回り自分の意思を店主に伝えた
「本当にいいのかい?」
店主は煙鬼の意思を再確認した
煙鬼はもう動かなかった
「わかったよ、契約だからね。」
夜に染まる夕暮れ決心を決めた煙鬼
空に一番星が輝く
――――――――――第二幕_完_第三幕に続く――――――――――――
13/05/27 03:10更新 / 北極@todo
戻る
次へ