クリスマスに起きたこと…の二年目だね。
『さぁ、癒し系チームが一歩リードしております!!グラマーチーム、バトルチーム…他のチーム達は逆転となるのでしょうか、目が離せません!!』
「ムグムグ…多分だけど癒し系が勝つわねこれは…ゴクン。」
今横でテレビを見ながらクリスマスチキンを頬張っているのは去年のクリスマス(詳しくは作品、クリスマスに起きたことを参照)に出会ったベルゼブブだ、名前が分からないのでとりあえずベルと呼んでいる。
主「なぁベル、俺たちが会ったのも確か去年だったよな?」
ベル「そういえばそうね…意外と早かったわ。」
主「お前という存在でちょっと麻痺しているが実際考えればこの状況かなりすごくないか?」
ベル「それどういう意味よ?」
主「まず一つにだな…。」
そう言って俺は視線を下に向けると膝下にちょこんと鎮座した黒いワーキャットの少女と目があった。
「ミ〜。」
主「こいつだな。」
この少女は兄上によって自宅に送られてきた少女(詳しくは第十六話あとがきを参照)でとりあえず面倒を見ることになったのだが今思えばすごいことだ。
ワーキャットが居ること自体すごいのにそれを送ってくる兄者とは…さすがミミックを送ってくるだけはあるな…うん。
ちなみに名前はルーンという名前だ。
ベル「でもその子は云わばペットみたいなもんでしょう?」
主「ペットとはなんだ同居人と言えっ、これでもちゃんとした魔物なんだからな。」
ベル「な、なにあんた…そんな幼い娘を…引くわー。」
主「するわけないだろう?!俺はこの娘を真っ当に育てるからな。」
ベル「真っ当て…魔物なんだからいずれはそうなるのよ。」
主「…この娘はせめて純粋に生きて欲しいな。」
ルーン「ミ〜♪」(首をくすぐられてゴロゴロと喉を鳴らす)
ベル「この娘は…ってどういう意味よ?!」
主「まぁ落ち着け、まだルーンは問題じゃない、俺が一番疑問に思ってるのは、だ…。」
そしてとうとう俺は向かいで座っている?人物に話を振った。
全員の視線が気になったのかその人物がテレビからこちらへと振り返る。
「…なによ?」
そう言ったのはせっかく出したこたつを一人で占領するメドゥーサであった。
最近では挨拶する程度だったのに気がつけば家に居座りついていた。
主「なんであなたがここにいるんですかねぇ…。」
「別にいいじゃない、どうせあんたもクリスマス寂しいだろうから忙しいけどあたしが来てあげたのよ、ちょっとは喜びなさいよ。」
ベル「あんた『も』ってことは結局あんたも寂しかったんでしょ、メイ?」
メイ「よ、余計なこと言うな!…というかメイってあたしのこと?!」
主「あぁ〜、名前知らないからな…俺が勝手に名前つけた。」
メイ「何余計なことしてくれてんのよ?!!」
主「流石に…嫌だったか?」
メイ「い、嫌も何も…付けられちゃったらしょうがないじゃない…が、我慢してあげるわよ。」
ベル「あら、その割には頭の蛇はすごい嬉しそうだけどね?」
メイ「うるさい!!」
とまぁこんな感じで俺の生活は凄いことになっている。
魔物娘は本当にいたんだっ!!…と言って喜んでいた頃が懐かしい。
今じゃ逆にこの世界の女性が全員魔物になってしまうんじゃないかとヒヤヒヤしているところだ。
それはそれとして…。
主「なぁメイ、そろそろ寒くなってきたからこたつを返してくれ。」
メイ「嫌よ、ここから出たらあたし眠くなっちゃうじゃない。」
ベル「さすが蛇ね、早く冬眠しないかしら。」
メイ「聞こえてるわよ、ハエ女。」
主「じゃあ仕方ない、俺もそっちに入れさせてもらおうかな。」
メイ「それなら別に良いけど…入るスペースなんてあるの?」
主「ここしかないからここに入る。」
メイ「ちょ、ちょっとあんた?!」
俺が無理やり空いているところに足を入れると何故かメイはあたふたとし始めた。
主「なんだよ、もともとこのこたつは俺のだから拒否は認めんぞ!!」
メイ「だからって…な、なんで隣に入ってくるのよ?!」
主「別に減るもんじゃないし良いだろ、文句言いなさんな。」
メイ「あ、あんたみたいなのがあたしの隣に来るなんて百年早いのよ!!」
主「だったらその頭の蛇を何とかしろっ、こっちにやたらチュッチュしてくるぞ!!」
メイ「ち、ちち、違うわよ、これはあたしの意志なんかじゃ?!!」
ベル「なにあんたたちあたしの目の前でイチャイチャしてるの?!…その男はあたしのなんだからね!!」
ルーン「ミー!!」
主「うおっ、何だお前ら急に?!」
三人が俺を巡っていきなり争いを始めた。
なんだこのギャルゲーのお約束みたいな展開は…。
このままでは俺がリア充みたいじゃないか…いや嫌じゃないけどね。
結局の所、三人ともくっ付いて過ごすことにしたらしくルーンは俺の膝下に、メイは俺の隣、ベルは俺の背中から抱きついている状態だ。
…先程まで嫌がってたはずのメイがなぜか今は腕を組んできている。
腕に大きく柔らかいものがあたっているのは意識しないでおこう…うん。
メイ「…こんなはずじゃなかったのに。」
主「ん、何か言ったか?」
メイ「何にもないわよっ、バカ!!」
主「なんだよ一体…。」
ベル「前から思ってたけどあんた人から鈍感って言われたことない?」
主「空気は読める方だぞ?」
ベル「いやいいわ、なんでもない…。」
主「???」
ルーン「ミュゥ♪」
わけのわからないことを言われたがとりあえず気にしないでおこう。
ルーンが遊んでほしそうにしてたので適当に指で突っついて遊んでみる。
時折、この娘は俺の指を甘噛みをしてくるのだがそれが妙に色めかしいのでやっぱり魔物なんだなと実感する。
メイやベルもそうなのだが、なぜか俺の近くには魔物娘が意外と多くいるようだ。
この前も意を決してそのことを仕事先の店長と先輩達に相談してみたところ…。
店長「あらそうだったの?…なら隠すこともなかったわね。」
といってその場にいた全員が魔物だったということがあった、あの時は本当に心臓を吐き出すかと思った。
ちなみに店長はリリム、先輩がワーシープと妖狐で社長はエキドナである。
前の方でも言ったが…この世界はもう終わりなんじゃないかな?
ベル「ちょっとあんた、聞いているの?」
いつの間に呼ばれていたのか三人が俺の顔をじっと見つめていた。
俺は考えをやめて彼女たちの方へと意識を戻した。
主「ごめんごめん、なんだっけ?」
メイ「だから、私たちお腹すいたのよ。」
ルーン「ミィ…。」
ベル「だから、早くなんか買ってきなさいよ。」
主「お腹空いただと?…メイやルーンならわかるがお前さっきあんなに食ってたじゃないか?」
ベル「もうお腹すいたの、なんでもいいから何か買ってきなさいよ!!」
主「なんで家主の俺がパシられにゃならんのだ…。」
ベル「あら、面倒なら別にいいわよ、そのかわり―」
主「え?」
チュッ。
主「?!」
ベル「んっ…こっちの方を貰うから♪」
主「な、何考えてるんだお前?!!」
メイ「そ、そうよっ、あ、あんた、あたしも手をつけてないのに目の前でそんな羨ましいことしてんじゃないわよ!!」
主「おい、お前もか?!!」
ルーン「ミィミィ!!」
主「あ、ルーンやめろっ、ズボンに入ってくるな、お前をそんな風に育てた覚えはないぞ!!」
ベル「さ、去年みたいにホワイトクリスマスにしよっか♪」
主「さ、三人はやめてくれ〜!!」
明日も仕事だってのに…今年のクリスマスも眠れそうにないや…。
12/12/25 00:06更新 / ひげ親父