読切小説
[TOP]
幼き王女の気ままな異世界旅行

真夜中のテントの中にて。

といっても内部にはスイッチを押すだけで熱を発するプレートやら、電灯、冷蔵庫が配備、大人が2人は寝れるベッドが6台も備わっている高性能テント。
更にはトイレとシャワールーム、クローゼットも6人分、キッチンやダイニング付きといった高級ホテル顔負けの性能となっている。

そんな豪華な空間の中で男女四人、その中の魔物二人…ワーシープの『サマリ』、リリムの『アメリ』はベッドで抱きしめるようにして寝ていた。

「…スー。」
「フフ…寝ちゃったか。」

楽しそうに今日あったことを話しているうちにどうやら疲れて眠ってしまったようだ。
サマリはアメリの髪を撫でながら微笑ましく彼女の寝息を聞いていた。
アメリはサマリのモコモコの柔らかい毛皮を抱きしめ、時折気持ちよさそうな声を上げる。

「やっぱり可愛いな〜、アメリちゃん。…私も眠くなってきたしそろそろ寝ようかな?」

朝ごはんも作らなくてはならないので実際あまり夜ふかしは出来ない。
彼女曰くずっとアメリの寝顔を見ていたいという願望はあるが彼女も睡魔には勝てなかったようだ。

次第に目が閉じ始め、眠りかけようとした時だった。

「う〜ん…。」
「あ、起こしちゃったかな?」

一瞬アメリが起きたような声を上げたので起こしてしまったかと顔を覗き込んだが、アメリは目を瞑ったまま呟いた。

「ライム…ちゃん、また、遊ぼう…?」
「…。」

サマリにはその名前は聞き覚えがあった。
それは以前、旅をしてる途中に偶然に遭ったスライムの子供だ。
アレスという父親と共に別世界から来た親子、短い時間だったがアメリはそのライムととても仲良しになっていた。

「また…会いたいよぅ…ライムちゃん、アレスお兄ちゃん…。」
「アメリちゃん…。」

(ライムちゃんとお別れした後、表には出してなかったけどやっぱり寂しかったんだ…私やユウロ、ツバキがいるけど…同い年か年下の友達ってアメリちゃんからあまり聞いたことなかったし…。)

急に愛おしくなり、サマリはそっとアメリを抱きしめた。
彼女のこの願いをサマリは叶わせることが出来ないと知っていたからだ。
サマリはただ…今の言葉を胸にしまったまま眠りについた。

…彼女が睡魔に意識を取られた後、二人の身体がぽうっ…と白く光り出した。



――――魔王城、近くの草原にて―――――。

視点アレス


「でやぁぁぁ!!!」

カンッ!!

木製の剣が乾いた音を周囲に響かせる。
リザは交差した剣を切り返し、更に二撃…三撃と俺に攻め立てる。

「はっ、たぁっ…でやぁ!!!」
「どうした、動きが単調になってきているぞ?」

リザを挑発しながらも一つ一つ剣を交わしていく。
とは言うものの彼女の剣は相変わらず正確に狙ってくる、隙を見せれば確実に打ち取られるだろう。
だがそこが欠点でもある。

「ぐっ…。」
「隙ありっ!!!」

俺がよろめいたのを察し、瞬時に剣を持ち直してリザは鋭く強力な突きを出した。
身体めがけて直進する剣はそのまま俺の身体へと突き刺さる…筈だった。

カンッ!!

「なっ?!」

俺はリザの突きをいとも簡単に払い除け、持っていた剣は空高く上空へ舞い上がった。
剣が落ちてきて虚しく乾いた音を立てる頃には、俺はリザの首元に剣を向けていた。

「あからさますぎる隙は罠だと思え、そうでなくてもお前は馬鹿正直なんだ…剣を交わしてる際にも相手がどんな性格かを見極めれるようにしておけよ。」
「くっ…まだ勝てないか…。」

悔しそうに呟いたあとリザが膝をつき、拳を震わせる。
それを見ていたスライムのスラミーとサキュバスのサラは目を丸くしたまま二人の戦いを見ていた。

「え〜、そんなことないよ〜、リザちゃんもすごいよ〜?」
「いや、私はまだまだだよスラミー…もっと強くならなくては。」
「まぁ、一番はアレスが強すぎるんだと思うけどね?」
「ならお前も見ているだけではなくやってみたらどうだ、サラ?」
「遠慮しとくわ、私は魔法主体だから動くのは苦手なのよ。」
「また太っても知らないぞ?」
「誰かさんよりも胸は大きいからいいのよ。」
「ほぅ…、よくも言ったなっ!」
「ちょ、ちょっと、それ本物じゃない?!!やめなさいよ!!」

ブンブンと剣を振り回すリザと飛んで逃げるサラ。
この二人も相変わらずだな…。

「面白いね〜ライム?…あれ?」

スラミーが可笑しそうにライムに話しかけたがそこにライムはいなかった。
すると突然…。

「てやぁ〜♪」
「うおわっ?!」

後ろからライムがのし掛ってきて思わず地面に倒れてしまった。
俺の背中の上でライムが嬉しそうに飛び跳ねる。

「やた〜、お父さんを倒した〜♪」
「ほんと〜、ライムすごいね〜?」
「えへ〜♪」
「ははは、こいつはやられたな…すごいぞライム。」
「わ〜い♪」

仕返しに背中にいたライムを高い高いしてやるとライムは嬉しそうに笑った。
後ろの方で喧嘩していたはずの二人だったがいつの間にかこちらを見つめていた。

「はぁ…いいわね〜、あたしも早く子供が欲しいわ?」
「私もだ、ある程度の歳になったら稽古をつけてやってそれで―」
「はいはい…あたしはそういうのはないから、そのためにもアレスには頑張ってもらわないとね♪」
「それに至っては…同感だな。」

…聞こえない振りをしておこう。
だが…彼女たちの子供も見てみたいかな?
そんなふうに思っていた時だった。

「ん?」
「あら?」

一瞬、微かにだが魔力を感じた。
気のせいかとも思ったがサラにも感じたらしく、こちらを見ていた。

「どうしたんだ、一体?」
「なんなの〜?」
「ほえ?」

リザとスラミー、ライムには分かっていないらしく首を傾げている。
そして丁度のタイミングでイヤリングが光り出した、ヴェンからの交信の合図だ。
俺はイヤリングを通してヴェンと交信する。

「どうした?」
「アレスか、今君たちの付近で強力な転移魔法を感知した!」
「転移魔法?…誰か来たってことか。」
「だが様子がおかしい、転移魔法にしても魔力が強すぎる…まるで隠れる気が無いみたいだ。」
「それだけ腕に自信あるってことだろう?あるいは…、とりあえず様子を見てこよう。」
「もう少しで出現するはずだ…くれぐれも注意してくれよ?」
「わかってるよ。」

ヴェンの別れ際の言葉を聞き、交信を切った。

「で、魔王様はなんて?」

サラが気になるのか俺の言葉を待たずして聞いてきた。
とりあえず確かめるのが先だな…。

「この辺りに誰かが転移して来るらしい。」
「転移だと…?敵か?!」
「わからない、だから用心していこう…ここに残っててくれ。」
「駄目だアレス、私も一緒に行く!!」
「もし俺がやられたら誰がここにいる皆を守るんだ?…そのためにもお前はここで守っていて欲しい。」
「…わかった。」
「くれぐれも気を付けてよ?」
「お父さん…。」
「大丈夫だ、行ってくる。」

俺は魔力の感じる場所へと近づいていった。


…。


しばらく歩いていると、目の前でその予兆が現れた。

ぽうっと白い光が空中に現れ、ゆっくりと草原へ落ちていく。
地面に触れる頃には光は小さくなっていき…そして音も無く弾けた。
無意識に構えをとったが…そこには誰もいなかった。

「待て待て待て…転移してきて何もないというのはありえないだろう、何処に行ったんだ?」

もっとくまなく探そうと近づいていくとそこに二人、誰かが倒れているのが分かった。
俺は少し用心しながら二人の顔を覗き込んでみた。

「おい…冗談だろ?」

そこには見知った顔があった…。




――――――――――。



「…ん、あれ?」
「お、気がついたか。」

目の前で寝ていたワーシープがむくりと起き上がった、寝ぼけているのかキョロキョロと辺りを見回している。
多分、元いた場所と違うから混乱しているのだろう、因みにここは空いていた部屋の一室のベッドだ。

「ここ何処…って、アメリちゃんは?!」
「まぁ、とりあえずは落ち着け…な?」

飛び起きようとする彼女を引き止めようとして目が合ったとき、彼女は呟いた。

「あ、アレス…さん?」
「その声、やっぱりサマリだったか…人間やめちまったんだな。」

アメリと一緒にいる時点でそうじゃないかと思ってはいたが、まさかワーシープになっているとは思わなかった。
こういうのは初めて見るがちょっとすごいな…。
目を白黒させてサマリが質問してきた。

「あの…どうしてここに?」
「それはこっちのセリフだ、お前たちが転移してきたのをここまで連れてきたんだ、眠っていただけだから良かったがな?」
「眠ってた…?それに転移って?」
「なんだ、覚えてないのか?…俺はてっきり二人で遊びにでも来たかと思ってたぞ?」
「いやいやいや全然知らないですよ!!一体どういうことですか?!訳の分からないこと言わないでくださいよ!?」
「だから落ち着け、俺にも分からないしアメリに聞いても知らなかったからお前に聞いたんだ。」
「え…アメリちゃんもいるんですか?」
「アメリは既に起きてるよ、今はライムに城を案内して貰ってるところだろう。」
「ちょ、ちょっと待ってください…ライムちゃんがいる?…城?…そしてアレスさんもいる?」
「それだけじゃない、俺の妻たちもヴェンもいるぞ?」
「じゃあ…ここは…。」
「察するとおり、『俺たちの方』の世界だ、あの時とは逆になるな。」
「あ…そうなんですか…へぇ〜…。」

ひとつずつ分かっていく現状にサマリは少しずつ青ざめていく。
そして半ば放心状態でまた俺に聞いてきた。

「それで…一応聞いておきますけど…帰る方法とかは?」
「…今ヴェンが調べてはいるが、どうやってここに来たかも分からないようじゃ難しいだろうな。」
「えっと…マジで?」
「俺はこんなジョークは思いつけない。」

俺を見つめたまま固まるサマリ、何かを叫ぼうとして口をパクパクさせている。
俺はそれを察知して両方の耳を塞ぎながら止めの一言を言った。

「あぁ…その…、別世界へようこそ。」
「…。」






「いゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」






城中にサマリの叫び声が響きわたった…。


…。


「気は済んだか?」
「…はい。」

あらかた叫んだあとにげんなりしてしまったサマリ。
まぁ、無理も無いか…いきなり別世界に飛ばされればな。
まだアメリがいるという面ではお前の方が余程恵まれてるぞ?

「あの…。」
「それより固い言葉は無しで頼む、話しにくい。」
「あ、うん…その、私たち、これからどうしたらいい?」
「どうするも何も帰る方法が分かるまではここにいるしか無いな。」
「それって…どのくらいかかる?」
「…さぁ?」
「な、なんでそんな冷たいこと言うの?!!ユウロもツバキも私たちを心配しているかもしれないしアメリちゃんとの旅もまだ終わってないし私もまだまだいろんなところ旅してみたかったしジパング旅行にも行ってないしとにかくなんとかしてよお願いだから〜!!!!!」
「よ、よせ抱きつくな?!」

ぶんぶんと俺の頭を揺さぶったり抱きしめたりしながらサマリは錯乱状態になった。
こんなとこ誰かに見られたら絶対誤解される…。
そう思っていた矢先のことだった。

バンッ!!

「どうした?!ものすごい叫びだったがいったい―」
「ちょっと、今のは誰の…声…だ?」
「アレス…?」

扉が勢い良く開かれ、そこにはヴェンと運悪くワーウルフのルーとサラがいた。
サマリが半泣きになった状態で俺を抱きしめている最中の事だった。
心無しか何か眠たく…?

「あ、アレス…?」
「アレス、お前はまさか嫌がる女性を無理やり…。」
「い、いや待て…誤解…だ…?」

慌てて二人に駆け寄ろうとしたとき急にすごい眠気に襲われた。
立っていることさえできず…そのまま地面へと…。

「おいアレス―、アレ―!!」
「―!!―!!」

誰かが何かを言ってるがもう聞こえない。
俺はそのまま深い眠りについた。


…。

視点変更…ヴェン。

「ま、魔王様…!!」
「いや大丈夫だ、アレスは眠っているだけだな…恐らくワーシープの毛皮のせいだな。」
「ご、ごめんなさい!!私気が動転して…すみませんでした!!!」
「い、いや…大した怪我もないし気にすることじゃない、二人も彼女を許してやってくれ。」
「私の夫はこれぐらいで怪我をする男じゃない、それより…気になるんだが。」

ルーが一歩前に出てワーシープへと近づいていった。
真剣な表情で何を言い出すかと思えば…。

「私はアレスの妻の一人…ルーだ、お前の名前はなんというのだ?」
「あ、はい…サマリです。」
「ではサマリよ、…お前はアレスの妻か?」
「…は?」

ワーシープの女性、サマリは一瞬何を聞かれているのか分からなかったようだ。
いや、私もルーの聞きたいことがよくわからないのだが…。
それでもルーは真剣に問い詰める。

「…どうなんだ?」
「えっと…断じて違います。」
「ではアレスの愛人か?」
「…はぁ?!なんで?!!」

あぁ…そういうことか。
以前リリムがここに来た時のことをまだ根にもっているようだな。
見ると後ろで見ているサラも真剣な表情をしている、彼女たちにヤキモチを焼かせるとは…君も随分罪な男になったな?アレス。

「いやいやいやいや!!無いです無いです間違ってもないです!!!」
「…本当だな?」
「はい…まぁ嫌いじゃないけど…そもそも住む世界も違うし…。」
「…ならいいんだ、脅かしてすまなかったな。」
「いえいえ!!こちらこそ。」

先程の真剣な表情とは一変してルーは優しい笑みを浮かべた。
とりあえず私も一安心だ、わざとらしく咳払いを一つする。

「コホン、では改めて自己紹介をしようか…私は魔王のヴェン、それにサラとルーだ。」
「よろしくね、サマリ?」
「よろしく頼む。」
「あ、はい、サマリです…って魔王様!!?」

サマリは私が魔王だと言うことにとても驚いていた。
…まぁ、無理もあるまい、いつものことだ。

「魔王を見るのは初めてかな?」
「あ、はい…ちょっとイメージと違ってて…。」
「よく言われるよ…私もここでは特殊な部類に入るからね、私だけ特別だと思ってくれればそれで良い。」
「あ、そうなんですか…。」

あまりしっくりこないという顔でサマリは頷いていた。
やはり…私は魔王という柄ではないらしい。
これでも努力はしているのだが…。

「まぁそれはさて置き、帰る方法が分かるまでここでゆっくりするといい、この部屋も使ってくれて構わないし必要なものがあれば用意しよう。」
「あ、すいません…何から何まで…。」
「気にすることはない、困ったときはお互い様だ。」
「じゃあ、私とサラがここを案内しよう、付いてきてくれ。」
「え、でもアレスは?」
「それは心配ない…私が彼の部屋まで運んでおこう、サマリ君は二人に案内してもらってくれ。」
「ほら行こう?サマリ♪」
「あ、はい!!」

二人に連れられてサマリは楽しそうに部屋から出ていった。
魔物というのは種族が違っても心が通い合えばすぐに仲良くなれるものだ、だから私は彼女たちを愛して止まない。
それは人間も同じだと私は信じている。

「さて、私もアレスを連れていってから彼女の帰る方法を探すか…。」

…。

視点変更…三人称


「ねぇねぇ、サマリってさ?もしかして最近魔物になってたりする?」
「えぇ?!なんで分かったんですか?!」
「立ち振る舞いを見てるとわかるわよ、どう?魔物も悪くないでしょ?」
「はい、おかげで怪我も治ったし…ちょっと胸も大きくなりましたしね、…二人ほどじゃないですけど。」
「私としてはアレスが喜ぶのならあってよかったと思う程度だ、普段は肩が凝って仕方がない。」
「私も辛いわぁ、最近また大きくなってきたからね〜♪」
「くそ、羨ましい…。で、ちょっと気になったんですけど…?」
「そんなに固くならなくていい、どうしたんだ?」
「あ、えっと…アレスって何か変わりました?」
「変わった…?」
「うん、前見たときは何も感じなかったけど…魔物になってからかな、なんか違うんだよね…?」
「あ、それ解る…他の男と違うんでしょ?」
「やっぱりそうなんですかね…?魔物になったからだと思ってたんですけど…。」
「安心しろ…私もだ。…何故かアレスは他の男とは違うんだ、だからこんな一夫多妻制でも許せてしまうんだろうな。」
「私はちょっと嫌だな…やっぱり好きになるなら一人の方がイイし。」
「結構いいもんよ?略奪愛みたいなこと出来るし♪」
「それで喜ぶのはお前だけだ。」
「ははは…。」

三人はそのまま楽しそうに話した。


…。

視点変更…ヴェン


「待ってよ〜!!」
「アメリちゃんはやくはやく〜!!」
「おや?」

アレスを自室で寝かせ、自分の部屋へと戻る途中に向こうから二人の子供が走ってきた。
一人はライムだがもう一人は確か…?

「あ、まおうさまだ〜!!」
「え、魔王…?」

私に気づいたライムがこっちへ駆け寄ってきた。
後ろにいた少女もライムに付いてくるようにしてこちらに来た。
私は話しやすいように彼女達の目線に合わせるようにしゃがんで声をかけた。

「やぁライム、お友達を案内してるのかい?」
「うん!!アメリちゃんっていうの、わたしのお友達なの〜!」
「そうかそうか…、良かったねライム?」
「えへ〜♪」

ライムの頭を撫でてやるとくすぐったそうに笑った。
私も子供がいればこんなふうにしていたのだろうか…?
と、横にいたアメリと目があった。
容姿からして…リリムか、通りで魔力が高いわけだ。

「初めまして、ここの”城の主”のヴェンだ、よろしくねアメリ?」

私はアメリに手をさしだしてみたが、アメリはそれをじっと見たまま手を交わそうとはしなかった。

「どうしたの〜アメリちゃん?」
「あ、うん…えっと…ヴェン…さん?」
「どうしたのかな?」

彼女はなにか言葉を考えながら話そうとしていた。
…なんだろうか?私はなにか変なことを言ってしまったのだろうか?

「えっと…ヴェンさんは、アメリのお父さんなの?」
「あ…あぁ、ややこしいけど少し違うかな?親戚のおじさんってところだね。」
「えっと…そうじゃなくて…その…ヴェンさんはほんとに『まおう』なの?」
「え…?」

突然、真剣な表情で目の前のアメリはそう言った。
少し戸惑ったが先にライムが声を荒らげた。

「アメリちゃん!!まおうさまにしつれいだよっ!!」
「あ、ごめんねライムちゃん…でも、どうしても気になって…。」
「…。」

なるほど、そういうことか…。
やはりリリムであれば分かってしまうものなのだろう。
だが私はそれでも…。

「はははっ、良いんだよライム、アメリの言っていることは半分正しいからね?」

ライムを宥めながら私はアメリに脅かさない程度で真剣に話した。

「アメリ、君の考えていることは恐らく正しい、だがそれでも私が魔王であることに変わりはない、いや…私でなくてはならなかったんだ。」
「…?」
「ちょっとわからないかな?…でも分かって欲しいのは、私は君たち魔物を愛している魔王だということ、救おうとしていることは信じて欲しい。」
「…。」
「でなければ、私もアレスも…なんのためにここまできたのかわからないからね…。だから今はそのことは胸にしまっておいてくれないか?」

アメリは言葉を聞いてじっと私の顔を見た。
赤い二つの瞳が私の心を見透かすように覗いている。

そして…。

「うん、わかった!!…しつれいなこと言ってごめんなさいっ、ヴェンおじさん!!」

彼女は疑いもなく地面に付く勢いで私に頭を下げてきた。
本当に礼儀正しい子だ…それだけ良い親なのだろう。

「ありがとう…アメリ。いい友達を持ったね、ライム?」
「うん!!」

すこし緊張もとれてホッとした時だった。

ぐうぅぅぅぅぅ…。

「ん、なんの音だ?」
「あ、もしかしてこの音…そうなのアメリちゃん?。」
「…うぅ〜。」

恥ずかしそうに頬を赤く染めるアメリを見て私はハッと気づいた。
そういえばこの歳ぐらいの魔物は精による補給が出来ないから代わりに食物で魔力を補うんだったな…?
それに今はお昼ごろだし、丁度いいだろう。

「アメリ、良ければ皆と一緒に昼食はいかがかな?」
「え、いいの?!」
「あぁ、ライム、食堂へ案内してあげなさい。」
「わ〜い♪ご飯だ〜、アメリちゃん行こう!」
「うん!!」

二人とも余程お腹が空いてたのだろう、手をつないですぐさま行ってしまった。
まぁ、リリム程の膨大な魔力の持ち主ならすぐに空腹を感じてもおかしく―

「…ん?待てよ…、膨大な魔力???」

食堂に向かう途中で彼女たちが帰れる唯一の方法が浮かんだ気がした。

「…可能性は高いな、ならば準備をしなければ!!」

私は空腹を忘れ、食堂に行く足を反転させて自分の研究室へと駆け込んでいった。



視点変更…三人称。



「ここだよ〜?アメリちゃん。」

二人は食堂の扉を見つけるとその大きな二枚扉を開けて中へと入っていった。
中へ入った時、二人の鼻にとても良い匂いが入ってきた。

「うわ〜、とってもいい匂い♪」
「この匂い…もしかして?!」

急にアメリが走り出して隣の厨房の方へと走っていった。
勢いよく扉を開けた先には白いモコモコの見知った背中があった、その背中にアメリは叫んだ。

「サマリお姉ちゃん!!」
「え、あ、アメリちゃん!!」

アメリがサマリの所へ駆け出して彼女の白いモコモコの中へと飛び込んだ。
アメリは嬉しそうな笑みを浮かべてサマリを抱きしめる。

「ごめんね、アメリちゃん?これが終わったら迎えに行こうと思ってたの。」
「ううん、いいよ!!アメリ、サマリお姉ちゃんが寝たままだったからちょっと心配だったの、でも元気そうで良かった〜!!」

抱き合う二人を見て隣にいたルーとサラ、そしてケンタウロスのレイと雪女のユキノは目を丸くして二人の様子を見ていた。
しばらくしてアメリはサマリがエプロンを着けているということに気が付いた。

「あれ?サマリお姉ちゃん、ごはん作ってたの?」
「あ、うん、私も何か手伝えないかなっと思って。」
「ねぇ?サマリ、そのアリスは知り合いなの?」
「あぁ、えっとサラ、この子は「アメリはリリムなの!!」」

アメリが間違えられて頬っぺを膨らませて怒ると隣にいたルーとレイが一瞬で青ざめた。

「え、いま…なんて?」
「サマリ…今のは本当か?」
「あ、うん…アメリちゃんは正真正銘リリムだよ?」

サマリの言葉を聞いて確信を得た二人はお互い顔を見合わせた後、頷いた。
そしてすごい勢いでサラを地面に叩き伏せ、自分たちも地面に伏せた。

「失礼を致しました!!!ご無礼をお許しください!!!!」
「え?!」
「ふぇ?!」

あまりに大きい叫びで当のアメリも驚いてしまっていた。
サラは地面に頭を抑えられじたばたともがいた。

「ちょ、ちょっと…なんのつもりよ?!」
「お前がなんのつもりだ?!王女様に向かってなんて失礼なことを!!」
「別に異世界だから良いじゃない?!」
「そんな問題か?!!…どうも失礼をお許しください!!」
「い、いやいいよ、アメリ気にしてないもん。」

傍を見ると同じようにユキノも膝を付いて礼儀正しく頭を下げていた。
初めて見る光景に自分も本当はこうしなくてはならないのではないかとサマリは錯覚を覚えてしまうほどだった。
サマリは気になってそっとアメリに耳打ちする。

「ねぇ、アメリちゃん?こういうことってよくあるの?」
「ううん、似たようなことはあったけどここまでじゃなかったよ?」
「…そうだよね?」

ここでは上下関係がしっかりしてるんだなぁ…と思わず感心したサマリだった。


…。



「やべぇ!!うまいぜこれ、最高だ!!」
「ほんと…サマリは料理の天才ね。」
「お母さん、おいしいね〜?」
「ねぇ〜、すごいね〜♪」
「いや、そんなに大したことないですよ?!」

食卓に並べられた料理をガバガバと食べていくミノタウロスのレジーナや旅館を営んでいた女郎蜘蛛のアサギが絶賛するほどにサマリの料理は美味しかった。
ライムも母親のスラミーと一緒に仲良く食べている。
そんな様子をみて、サマリはまんざらでもないように照れてポリポリと頬を掻いた。

「私たちも手伝ったんだから少しは褒めなさいよね?」
「…お前はじゃがいもの皮むきしかしてなかっただろう。」
「だが本当にサマリの料理はすごいな…私も驚いたよ。」
「なぁなぁ?!サマリとか言ったっけ?お前ここで飯作ってくれよ!!なんならアレスを旦那にしてさ!!」
「え?!それはちょっと…というか私料理担当?!!」
「レジーナさん、アレスをダシに使っちゃ駄目ですよ〜!!」
「ほんと美味しいわ♪」
「ふむ、なかなかのものじゃな。」

「あの、アメリ様は今おいくつなのですか?」
「様なんていらないよ、アメリは今8さいだよ?」
「8歳…後二年ぐらいか、目当ての人とかは?」
「う〜、まだ良くわかんないかな?」
「よかったらアレスはどうですか?彼は優しいですよ?」
「う〜ん、アレスお兄ちゃんはちょっとちがうかな?たくましい身体はしてるけど…。」
「脱いだらすごいですよ?引き締まったあの身体が堪んないです!!」
「クロエ…お前そんな趣味があったのか?」
「へ?…やだなぁ、ほんの言葉の例えでして…。」

サマリはレジーナや他の魔物たちに無茶を言われあたふたとする中、アメリはアメリで他の魔物たちと仲良くしていた。
食堂が賑やかになっていく中、扉が勢い良く開かれた。
皆が扉の方へと向くと、ヴェンが慌てた様子で皆に話した。

「サマリ、アメリ、二人とも…帰る方法が見つかったぞ!!」
「え?!ほんとですか?!!」

立ち上がって驚くサマリにヴェンは答えるように大きく頷いた。

「あぁ、二人とも準備ができたら私の研究室へ来てくれ、待っているぞ?」

ヴェンがその黒いマントをなびかせて食堂から出ていくと、緊張の糸がとれたかのように皆がどっと話し始めた。

「よかったわね、サマリ!!」
「マジかよ?!もうこの飯食えねえのか?!」
「仕方ないだろう、サマリ…ありがとうな。」
「いえいえ、私も料理ぐらいしか出来てないし…ねぇアメリちゃん?」
「え、あぁ…うん。」

喜ぶ皆を他所に当の本人の一人であるアメリはどこか浮かない顔をしていた。
その先には、こちらに笑いかけるライムの姿があった。

「アメリちゃんよかった〜帰れるんだよ〜♪」
「…うん。」
「アメリちゃん?」
「ライムちゃん、アメリちゃんはお別れするのが寂しいんだよ〜?」

ライムの後ろから抱きしめるようにしてボブゴブリンのプリンが話に割って入ってきた。
彼女は相変わらずほのぼのとした様子でアメリに話しかけた。

「大丈夫だよ〜アメリちゃん、きっとまた会えるよ〜♪」
「そうかなぁ…?」
「うん、奇跡が起きればまた皆に会えるよ〜♪」
「プリンそれ、フォローになってないんじゃ…。」
「うにゅ?そうかな〜?」

ふわふわと笑いながら話すプリンに何故かしんみりとした空気が和んだ雰囲気になってしまった。
それからサマリがアメリの顔をのぞき込むようにして話しかける。

「アメリちゃん、ユウロもツバキも待っているし、アメリちゃんもお姉ちゃんを探さないと駄目なんだよね?」
「…うん。」
「じゃあ、ちゃんと皆にお別れしよう、ね?」
「…うん!!」
「皆、今までありがとう、ライムちゃんまた遊ぼうね!!」
「また遊ぼ〜♪」

アメリは寂しさを吹き飛ばすように笑顔を作り、そしてヴェンの待つ部屋へサマリと一緒に手を繋いで歩いていった。


…。



「失礼しまーす…。」
「おぉ、待っていたぞ?」

フラスコやらビンやら本が沢山散らばった部屋にヴェンはいた。
彼は二人が来ると、待っていましたかのように色々と準備を始める。
なにやら装置やら大きい大砲やらを用意していた。

「あ、あの…ヴェンさん、それは一体?」
「ふふ、よく聞いてくれた…これが君達を元の世界に送る装置だ!」

ばっと手を広げ紹介されたそれは、明らかに機械と何かの線が繋がれた大砲があった。
見るとヴェンの横にはない胸を張るゴブリンのルカと腕を組む白衣姿のアオオニのアオイがいた。

「ふふーん、これは私たちが作ったんだよ〜すごいでしょ!!」
「まぁ、理論上問題はないですね…計算に狂いはないです。」
「す、すごいね、サマリおねえちゃん!!」
「いやどう見ても危なっかしいんですけど…。」

サマリは何か危険を感じ取ったのか首を横に振って否定した、対してアメリはかなり興味ありげにルカの説明を聞いていた。

「原理は大砲の出力をバネにして最大速度になったところを、この装置にアメリちゃんの膨大な魔力を入れて転移魔法を作動させるの、魔方陣を通して異世界をくぐり抜けて、気づく頃には元の世界に着いているってわけ。」
「え、えーっと…つまりアメリ達は大砲でドカーンって飛ばされるの?」
「大丈夫です、衝撃は殆どありませんし―」
「た、大砲で撃たれる?!冗談じゃないですよ!!それにどこに飛ばされるかもわからないし、無事に着けたとしてもどうやって飛んでる状態で着地するんですか?!!」
「安心したまえ、テストではちゃんと柔らかい海に出ると証明されているし第一アメリは飛べるのだろう?」
「いやいやいや私は飛べないですよ!!」
「貴方の場合はその白い毛皮が守ってくれるでしょう、悪くても重症で済みます。」
「な、何言ってんですかあなたは?!!」

だんだん不安になってきた二人にヴェンは気にせず装置の蓋を開けた。
その中は薄暗くまるで地獄の入口のようにサマリには見えた。

「さぁ、遠慮はいらないぞ…早kいだあだだだだだだだっ!!!!!」

サマリの背中を押そうとしてたヴェンが後ろで急に悲鳴を上げた。
驚いて見るとヴェンは後ろから誰かに耳を引っ張り上げられていた。
その後ろには…。

「あ、アレスお兄ちゃんだ!!」
「アレス!?起きたんだ?」
「よぅ、随分寝かせてもらったぞ?サマリ。」

耳を引っ張ったまま二人と普通に話すアレス。
引っ張られているヴェンはたまったものではなく膝をついてしまった。
見るとルカはガタガタと装置の後ろに隠れ、アオイはサマリの後ろに隠れていた。
そしてヴェンの方へと向けるアレスの顔は笑っているものの何処か恐ろしく見えた。

「ヴェン、お前まさかこれを使って二人を元の世界に返そうとしてないだろうな?」
「い、いやいやこれが一番正確でかつ効率のいい方法であって―」
「そいつで俺がどんな目にあったか忘れたのか?飛ばされた挙句、何もない大海原へ投げ飛ばされたんだぞ?」
「え”、そうなんですか…?」
(テストってアレスのことだったんだ…。)
「だ、だからその失敗を踏まえて改良を重ねてだな…?」
「まずあの大砲を使うのをやめろ…それにテストならお前がすればいいだろう?」
「いい、いかん!!そんなことしたら私が異世界に行ってしまうではないか?!!」
「その前に無事に着けるかどうかもわからねえだろうが、今ここでこいつの中に入るか違う方法を言うか今すぐ選べ。」
「分かった分かった!!もう一つある、もう一つあるんだ、だから手を放してくれ!!」

ようやく開放されたヴェンが息をゼハゼハと言いながら膝を付いていた。
その横ではアレスが仁王立ちして睨んでいる。

「いたたたた…もう一つの方法としては、アメリ自身の力で戻る方法だ。」
「アメリ自身の力でか?」
「そうだ、恐らくアメリの魔力で君たちはここへ来たと私は予測しているのだ。」
「え?!そうなの、アメリちゃん?!」
「アメリ何にもしてないよ?!!」
「それなんだが、君たちは確か転移したとき眠っていたのだろう…もしかしたら無意識に使ったのかもしれないぞ?」
「無意識にか…サマリ、何か思い当たることはないか?」
「えーっと…あ!!」
「なにかあるんですね?」
「はい、アメリちゃんが寝言でライムとアレスに会いたいって言ってました。」
「アメリ、そんなこと言ってたの?」
「どこかで二人に会いたいと願ってしまったんだろう…そして魔法が暴発した、そう考えるのが一番自然だな。」
「ということは、戻る方法ってのは―」
「アメリ自身が元の世界へ帰りたいと強く願えば帰れるってわけか。」
「アメリ…うまくできるかな?」
「大丈夫だよアメリちゃん、意味ないかもしれないけど私も手伝ってあげるから!!」
「サマリお姉ちゃん…。」
「そうだ、それならこれを飲んでおくといい。」

そう言ってヴェンは懐からゲル状の液体が入ったパックをアメリに渡した。

「ヴェンおじさん、これなぁに?」
「魔力を回復させる特効薬だ、主成分として―」
「ちょちょちょちょちょっと待てヴェン!!!それまさか“アレ“じゃないだろうな?!!」
「え?!ちょ、そうなんですかヴェンさん?!というか本人の前でアメリちゃんに飲ませるなんて変態でしょ?!!」
「へ、変態とはなんだ?!!」

何故かそのパックを指さしてアレスは目を白黒とさせていた。
その反応を見てサマリも気がついたのか急に顔を赤くしてあたふたとした。
他の者はなんのことだか分からず、アメリも首を傾げていた。

「何を言っているかは分からないがこれは主成分としてウシオニの血液をベースとして作った薬だと言いたかったんだ。」
「へ…?それってシオンのか?」
「そうだ、彼女の血液には人間を魔物に変えるほどの高濃度の魔力が確認されているからな。」
「そうか…ホッとした。」
「君たちは一体何を連想して―」
「知らないほうがいい、それよりそんなものアメリに飲ませて大丈夫なのか?」
「アメリ…血を飲むのやだなぁ…。」
「それは問題ない、あくまでベースに作ったのだからな…それに特別にこれは『いちごオーレ』の味にしてある。」
「アメリ、それ飲むっ!!!」

すごい勢いでアメリはヴェンの持っていたパックをひったくって飲み始めた。

「お前…人の血液を…。」
「細かいことは良いではないか、さぁアメリ…どうかな?」
「うん、すごくおいしいよ!!」
「いやそうじゃなくてだな…。」
「まぁまぁ、大丈夫だろ?アメリ、自分の元の世界を思い出してみろ。」
「元の世界…?」
「そうだ、そこでサマリやユウロ、後ツバキだったか?その仲間達と旅をしたことや楽しかった思い出、それらを思い出して強く念じるんだ。」
「…うん、わかった、アメリやってみるね!!」
「アメリちゃん、頑張って!!」
「ふぬぬぬぬぬぬぬぬぬ〜!!!」

アメリは目を瞑りながら必死にイメージを膨らませ力んだ。

(いや、ホントはイメージだけでいいはずなのだが…。)
(本人が頑張ってるんだから余計なことは言わないほうが良い。)
(それもそうか…。)

ヴェンとアレスが小声で話してる間にアメリの身体に変化が起き始めた。

「あ、光が…。」
「良いぞ、転移魔法の光だ、ではサマリ君…アメリに密着して一緒に転移するんだ。」
「あ、はい!!」

サマリがアメリに抱きつくとアメリを包んでいた白い光がサマリを巻き込んで強く大きくなっていった。

「もう…お別れだな。」
「あの…、短かったけどいろいろお世話になりました!!」
「あぁ、それじゃ元気で―」

バンッ!!!

別れの挨拶の最中に、後ろの扉が勢い良く開かれた。

「アメリちゃ〜ん!!」
「ライムちゃん?!」

見ると何かを持ったライムがアメリへと近づいていった。
慌ててアレスがライムを抱きとめる。

「ライム、また別世界へ行っちまうぞ?」
「違うの〜お父さん、アメリちゃんにどうしても渡したい物があるの〜!!」
「アメリに?」

白い光に触れない程度にアメリにライムは何かを手渡した、それは―

「これは…コマ?」
「アメリちゃんとあそんだコマをライム作ってみたの〜アメリちゃんにあげる〜。」
「すごい、とってもきれい…ありがとうライムちゃん!!!」
「えへ〜♪」

触れられなくても二人は柔らかい顔で微笑みあった。
そして光は強くなり…。

「またな…サマリ。」
「うん、またね!!アレス!!」




光が弾けた後…二人は元の世界へと帰っていった。





「…行ってしまったな。」
「あぁ…ライム?」

見るとライムは少し顔を伏せて肩を震わせていた。
何も言わずアレスが肩を抱くと、ライムは顔を上げた。

「お父さん…。」
「ん?」
「アメリちゃんは、私のはじめての親友だよ〜。」
「…そうだな。」

アレスはライムの頭を撫でてやると、ライムは嬉しそうに笑った。



12/05/10 15:55更新 / ひげ親父

■作者メッセージ

はい、大変長らくお待たせいたしました。
いろいろ就職したり忙しかったりとなかなか時間が取れず、滞ってしまったのを深くお詫びいたします。

今回、コラボを協力していただいたマイクロミー様の「幼き王女の気ままな旅」は大変面白い作品でして、ひげ親父も大変絶賛する作品となっております。
私では二人の良さをあまり引き出せてなかったと思いますが原作の二人はもっと可愛らしく面白いです。

ぜひご覧ください。

では次回はやっと本編に進みます。
いつ投稿できるかはわかりませんが…よろしくお願いいたします!!!

ここまで見ていただいてありがとうございました!!

TOP | 感想 | RSS | メール登録

まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.33