王様の条件
俺がまだ幼い頃、母さんは良く俺に色々な話をしてくれた。 夢の様な楽園のお話。 そこに住む強いドラゴンのお話。 その国を作った立派な王様のお話。 どれもが夢のようなお話で。 それでも母さんはまるでそれらを見てきたかのように話してくれた。 俺は世界がその国の様になればいいと思った。 誰もが等しくみんなに優しくなれる国。 でも母さん どうしてその国は滅んでしまったのかな? どうしてその竜は封印されてしまったのかな? 母さんは言った。 「王様がいなくなってしまったから。」 なら、俺がまた王様になるよ。 そしたらその国もまた平和な国になるんでしょ? そういうと、母さんは悲しそうな顔をしてこう言った。 「あなたは自分の幸せを考えて。 母さんはリアンが幸せならそれだけで何よりも幸せなの」 母さんは優しい。 小さかった俺はそれでもい言って思った。 でも、大きくなって、街に住んで。 ここで暮らしているうちに、俺はそれだけじゃ幸せになれない。 そう思った。 だって、俺だけが幸せになったって、母さんや友達、同僚や上司や部下、みんなが不幸な世界なんて、きっと俺には幸せだなんて思えないんだ。 だから、俺はこの手で守る事が出来る全てのものを護ろうと思った。 きっと、それが出来た時、出来るようになった時、俺は幸せになれるんだ。 「と、いうわけで、俺は守備隊の入隊試験に志願したわけであります!」 「あぁ、そうなの。大した夢だね〜。まぁ〜今のところ五分五分だね〜。実技試験はそこそこだったけど、これ、君。筆記試験、これ危ないよ?入隊出来てもキャリアなんかからは程遠い下っ端働きからになっちゃうけど、それでもいいの?」 「え?そうなんですか?」 「そうだよ〜。ぶっちゃけ今、人では足りちゃってるからね〜。まぁ、運が良ければ通るかもしれないけどね〜」 「そ、そんな事言わずに、ひとつお願いしますよ〜。閣下」 「ちょっと、君、閣下はやめなさいよ」 「ほら〜。あ、肩もみますよ」 「あ、ちょっと…。あ、君、上手いね〜。なに?あんま師でもやってたの?」 「いや、俺、生まれつき人の身体を揉む才能には恵まれてまして」 「へぇ〜。そりゃいいねぇ〜。顔もそこまで悪くないし。まぁ、平凡っちゃあ平凡だけど、このテクなら女の子も一発じゃないの?」 「いえいえ、お代官様には敵いませんよ〜」 「お主も悪よのぅ〜」 「はい。あ、これ、お土産のジャーキーとまむし酒です。どっちもうちの母が作った自家製ですが、味ならどこにも負けやせんぜ」 「え?いいの?こんなの貰っちゃって?これ、わいろにならない?」 「大丈夫っすよ〜。これはただのお土産ですから〜」 「そっか、そういう事なら貰っとくよ。リアン・M・シュヴァルツィア君だね。覚えておくよ」 「いえいえ。滅相もない。ありがとうございます」 入隊試験の合格通知が届いたのはその翌日だった。 |
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