酒と肴と雪解け水
冬空を見上げ、何時しか止んだ雪を待つ。 辺りは積雪に包まれ。 音すらも、彼らはその柔らかい身体で包み込む。 彼らは何十何兆と、何重何層に積み重なり。 その冷たい身体で、冷え切った大地を暖めるかの如く、己が白でこの土地を包み込む。 嗚呼。彼らは何と大きい事か。 それらを邪魔せぬよう、最小の足跡だけで歩く私。 私とはなんと小さい者か。 そんな私の小さきすら、彼らは包み込んで消していく。 小さな私の足跡など。明日の朝には消えて無くなる。 嗚呼。私とは何と小さいのだろう。 冬空を見上げ、何時しか降りだした雪を眺める。 空は綿雪に包まれ。 彼らは、白煙になってしまった彼女の身体を包み込む。 私の幾日幾夜の悲しみは、幾重幾等と積み重なり。 その冷たい身体に触れて、虚しくもそれを暖めようと、手を握り続けた、届かぬ思い。 嗚呼。彼女は何と不幸な者か。 そんな彼女の帰幽すら、引き止めようとする私。 私とは何と罪深い者か。 そんな私の罪すら、彼らは許すと囁いた。 些細な私の想いなど。千年の後には消えて無くなる。 嗚呼。人生とは何と短いのだろう。 |
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