連載小説
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異世界勇者は・・・・
終わった。

何もかもが終わった。

魔王を討った。それに伴い魔物達も姿を消し、人々の恐怖は消え去った。

めでたしめでたし、のはずなのだ。

なのに

なのに

何故

俺は

絶望に包まれているのだ・・・。


勇者を目指したのは故郷の村が魔物の群れに滅ぼされたのがきっかけだった。人々の叫び、悲鳴。魔物の咆哮、狂笑・・・今でもしっかりと耳に焼き付いている。ただひとり生き残った俺は復讐を胸に勇者を目指した。だがその試練の最中、復讐で剣をふるうものは勇者になれないといわれ、俺は復讐の心を捨て去った・・・捨て去った、つもりだった。

勇者になってからは魔王の住処めざしての冒険を始めた。だがその道は栄光の道、とはとても表現できないものだった。奮戦むなしく結局救えなかった人々や村、犠牲になった仲間たち、守るべき人々からの嘲笑やまさかの裏切りにすらあった。

だが、俺は魔王打倒を胸にひたすら進み続け、残った仲間達もついてきてくれた。そして激闘の末、ついに魔王を倒せた、倒すことができた・・・。


そして、俺の心も倒れた。


『ひたすら進み続け』・・・違う、ただ余計なものを必死で見ないようにしてただけだ。絶望も悲壮もすべて魔王への復讐心で上塗りしてただけだ・・・そう、結局俺は復讐で動いていたのだ。


そして、最大の目標を失った俺には、何も残らなかった。







今、俺は自室の机の上に突っ伏している。おそらく民衆達は自分を祀り称える準備をしているのだろう。しかし俺にそれを受ける気力はもう残っていない。
突っ伏している俺の心には次から次へと負の感情が湧いて出てくる。冒険中に必死に無視し続けていたものが今になって湧き上がり始めているのだ。それが何の負の感情なのかもすら俺にはよく分からない。ごちゃごちゃになった俺の心は、判別する力すら失っていた。






俺は・・・俺は・・・




「力」は強くても・・・・





「心」はこんなにも弱かったのか・・・。










そして、うつろな俺の目は、一つの魔方陣が書かれた紙に向けられていた。

これは旅の途中で見つけたもので、仲間の僧侶が解析した結果、別世界への入り口を開くゲート用の魔方陣らしい。そのときは別世界にいっても意味がない、とただ回収してそのまま放置していたのだが、今の俺には意味のあるものに見えてきた。



・・・そうだ。戦おう。

戦いの中に身を置いて、何もかも忘れよう。

この世界にはもう魔物はいない・・・だったら、別の、別の世界で・・・。


浮ついた思考のまま、俺は魔方陣に魔力をこめる。魔方陣が光を発し、入り口らしきものを展開し始めるのをわき目に俺は準備をすませ、そしてゲートへと向き直る。



行こう・・・別の魔物のいる世界へ・・・
















そして





また別の「物語」が始まる・・・
14/07/03 11:21更新 / popopo
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■作者メッセージ
・・・作者、誰だてめぇ、とか思わないでください。
処女作とまったく雰囲気違いますけど、これ最初、最初だけですから!これからギャグとかも入っていく予定ですから!!

は、早く次書こう・・・絶対ドン引きされてる・・・。

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