読切小説
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『あー、俺勇者になっちゃったよー』
「・・・はい?」

『ん?聞き取れなかった?んじゃもう一回いうぞ。俺勇sy』

「いやいや、そういうことじゃなくて。お前が勇者?」

『ああ、勇者になっちまった』

「勇者!?お前が!?自由奔放で唯我独尊で舌先三寸で他力本願で勝手気儘なお前が!??」

『・・・そこまでいいますか』

「そりゃお前とは長い付き合いだし・・・あ、そうかこれはおまえの得意な」

『嘘じゃないからね!!マジだから!!嘘だったらもっとましな嘘つくから!!』

「・・・んまあそうか。・・・妄想ってオチでもないよな」

『ヒドス・・・まあ俺自身もあんま信じられないんだけど』

「んで、なんで勇者だと?頭の中で声でも響いたか?」

『・・・・・・・・・』

「?」

『こっからが本題なんだけどさ・・・実は俺の家に女が降ってきてさ』

「はあ!?女だと!!このやr・・・・え、もしかしてそいつ羽生えてる?しかも白い・・・」

『ああ・・・しかも・・・』

「しかも?」

『鎧付き』

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ヴァ、ヴァルキリー!!????」






「ちょ、それかなりやばいんじゃ・・・一応ここ建前は反魔物領だけど」

『もうほぼ親魔物領だものねえ・・・』

「交通の要になってる町だから入ってくる情報も多くって、おかげで町のみんな既に魔物の真実知っちまってるし」

『そして魔物の住民もポツポツ増えてきているというね・・・』

「教団に睨まれないように反魔の体裁をとって、魔物達にも人間に化けてもらってはいるけど」

『そのせいで町役場はかなり大変そうだね。そこに勤めてる君、やっぱり大変?』

「ああ、情報操作や口止め、魔物達の偽戸籍作り・・・これ本当に役所の仕事かと何度思ったか・・・ってそんな話してるんじゃなああああい!!
やばいだろ!つーかタイトルにもなってるあの軽いセリフは何だ!!事態はめちゃくちゃ重いじゃねえか!!」

『いやメタ発言やめれ!!それと理由をいうなら勇者云々はどうでもよかったからだよ!さっきも言ったように本題こっちだから!!』

「・・・ああ、そうだな。しかし勇者云々がどうでもいいって・・・」

『当たり前じゃん。今の世界で勇者やってもなんにもならないし。魔物娘達相手に剣向けるとかできるわけないし・・・はあ、天から誰も来ずに君の言うように頭に声、とかだったらそんなもの無視して今まで通り過ごしてたのに』

「・・・なあ、そのヴァルキリーやっぱり・・・」

『ああ、やる気まんまん。「この下界にはびこる汚らわしき魔を駆逐する為、我とともに来るがよい」とか言ってご立派な剣振りかざしてたし』

「うわあ・・・ん?じゃあそのヴァルキリーと一緒にお前がここから出ていけば・・・」

『ちょ、勘弁してよ・・・それに俺「まだこの町でやることがある」とか言っちゃって・・・あいつも「ならばそれが終わるまで待とう」とか言い出しちゃて』

「おい」

『うう、でも住み慣れた町出たくないし、勇者とかやりたくないし・・・』

「・・・はあ、仕方ない。しかし下手したら町の住民が殺されるってことだよなあ。魔物だけでなく人間も。魔に堕ちてるぅー、とかで」

『だから君に言いに来たんだよ。君の手で住民たちにこのことをこっそり伝えてくれないか?なるべく僕の家付近に近づかないように、魔物達はヴァルキリーと鉢合わせしないようにって』

「(こいつ真剣だな・・・こんな姿今まで見たことねえや)
ああ分かった。他にもいろいろ手回ししておく。
しかしなあ・・・魔物が住民として入ってきてる昨今、いつかお前も所帯持っちまうのかと思ってたが」

『そんな甘い話じゃないってこれ。・・・はあ、どうにかして魔物のこと分かってもらわないと。直接言っても信じそうにないし』

「もし普通に嫁ができてたら一発ぶん殴るつもりでいた」

『おい』










「・・・・・・・・・・・・・・・よぉ・・・・・」

『やあ・・・ってちょっと、声怖いんだけど!?』

「・・・なんでもずいぶんと楽しそうに一緒に町歩いてたそうじゃねえか」

『だからそんな甘い話じゃないって!街に出る際「お前が何をしてるのか知っておく必要がある」とか言い出してくっついてきただけだよ!!
魔物に出くわさないかヒヤヒヤしたし、いろいろ誤魔化すの大変だったんだから!!』

「・・・喫茶店でなかよく食事してたとか」

『いや、喫茶店の前通ったらあの子ショーケースのスイーツに思いっきり目奪われちゃって、「食べたいの?」とか聞いたら「て、天の使いたる我が甘いものに心奪われるはずなどないだろう!」とか言いつつもチラチラ見てるものだから「あーもう、食べる位いいでしょ」って言って奢っただけだけど・・・』

「・・・・・・・・・・・・・・・なかよくショッピングもしてたとか」

『うん、なんか必死に隠してるみたいだけど無類のかわいい物好きっぽくてね・・・かわいい物を見かけるたびに、足を止めては名残惜しそうに去る事をたびたび繰り返してたものだから買ってあげたくなっちゃって』

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

『まあ天の使いとかいっても結局女の子なんだよね。「欲しくなどないが、で、でも勇者殿がくれるというなら・・・」とか言って顔真っ赤にしてそむけたりして』

「・・・・・・・・・・・・・・・・ (#^ω^)ピキピキ」

『しかし自分本当に勇者になっちゃったんだなあ・・・本来ならとても持てないほどの量の荷物も持てるようになっちゃったんだもの。それでも重く感じるくらい買っちゃったけどあの子あきらかに喜んでたs』

べきっ・・・・

『ん、今の何の音?あれ、なんで君の手に持ってるペン折れてるの?』












『いやはや、どうなる事かと思ったけど杞憂だったかな』

「まあな、ワーキャットが『大変にゃ!魔物の時の姿をヴァルキリーに見られちゃったにゃ!!』と駆け込んできた時には、めちゃくちゃ肝が冷えたけどよ」

『かわいい物好きのあの子には、もふもふの猫娘が自分を見て怯えて逃げられたのがよほどこたえたみたいでね。魔物討つ気が一気に萎えたようで』

「それで、魔物の事は・・・」

『ああ、いい機会だと真実を教えたよ・・・図鑑も見せた。
ショックうけて少し混乱してるみたいだけど、もう魔物は討てないと思う』

「そうか・・・」

『さてと、早く帰らなきゃ。あの子を支えてあげないと』

「・・・・・・・・アア、ソウデスカ」












『あれ、君のほうから来るなんて珍しいね』

「おう、いつのまにかそんなとこまで行きやがって」

『うん、天の声が全く聞こえなくなって不安がってた彼女を慰めてるうちにね。』

「おーおー、お熱いこって」

『えーっと・・・君まだ相手いないの?この町だいぶ魔物入ってきたでしょ?』

「おかげで仕事量も増えてなあ・・・出会いの機会がない」

『あ、あはは・・・・』

「さて、その忙しい間をぬってここに来たのはだ。かねてから決めていた事をやっとこうと思ってな」

『え、決めていた事?』

「一発殴る」

『き、君それまだ覚えt・・・ってちょっと待って?なにその腕!!?』

「お前からののろけ話を聞くたびに、壁を殴るのが習慣になってなあ・・・おかげでこんなにぶっとくなっちまった」

『な、なにそれっ!!いや太くなりすぎでしょ!!!』

「さあて全力でいくぞお・・・覚悟はいいかあ・・・勇者なんだから大丈夫だよなあ・・・」

『ま、まって!たしかに身体能力もあがったし魔力もついたけど、耐久力は別に・・・』

「問答無用!歯を喰いしばれぃ!!!」





し   あ   わ   せ   に   な   ぁ   !   !















ドゴォ





「 完 」







14/06/29 13:46更新 / popopo

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