魔獣バフォメット
その日、わしとわしの側近の魔女は小さな港町に住む人間達をサバトに勧誘し、想定以上の結果に満足しながら、城に帰ろうと森の中を飛んでいた。
他の魔女やファミリアは新しくサバトに入った人間達と共に別の道を進んでいる。わしらは魔王に今回の結果を報告するため、近道になるこの森を移動していた。
「バフォさま、今回は何人勧誘出来ましたか?」
「ふむ、大体700人位かの」
小さな町だったので、ほぼ全員がサバトに入会した。残った人間達はみな、町の外に逃亡してしまったが。
......ん?
「どうしました?」
「......人間の匂いがするぞ」
「人間!?ホントですか!?」
わしら魔物娘は人間が好きだ。特に男が。
魔女もその例にもれず、人間と聞いた瞬間辺りを見回して捜し始めた。
しかし、なんじゃ?この違和感は......匂いからして男なのだが、別の匂いが邪魔して上手く確かめる事が出来ない。なんだったかの?この鉄の様な匂いは......。
___血の匂い。
「こっちじゃ!急ぐぞ!」
「えっ!?ちょっと待ってくださいよぉ!」
悪いがお主を待っている暇は無い。匂いの濃さからして、恐らく大怪我を負っている。すぐに向かわないと手遅れになってしまうだろう。
「頼む、間に合ってくれ......!」
わしらが見付けた時には、既にその青年は虫の息だった。右腕が無くなり、体内の骨や内臓も損傷していた。
彼の側にある崖に血痕付着しているので、恐らく怪我の原因は崖からの転落だろう、何者かに切り落とされたらしい右腕以外は。
「バ...バフォ様、直ぐに儀式を」
魔女が青ざめた表情で青年の服を脱がそうとシャツのボタンに手を触れた。
「いや、駄目じゃ」
「でも!このままだと!」
「今のこの男では、儀式に耐えられずに死んでしまうじゃろう」
「なっ......」
いったいどうすれば良い!?こうやって悩んでいる間にも彼の残りの時間は少なくなって行く。
儀式でインキュバスに出来たら、この様な怪我は一瞬で治るのに......魔物にすることが出来たら......!
___そうか、その手があったか。
わしはポケットにしまってあった瓶を取り出した。
「バフォ様!?やっぱり儀式を!」
「いや、違う」
「え?じゃあ......」
わしは瓶の蓋を開けながら言った。
「この男を、ファミリアに変える」
それを聴いた瞬間、魔女は驚愕の表情をした。そして、すぐに首を横にふった。
「無理ですよ!ファミリアは人工的に作られた存在で、人間を......それも男をファミリアにするなんて、不可能ですよ!」
「解っておる!じゃから、これが最後の賭けなんじゃ」
「でも!」と言う魔女を無視して、わしは青年に話かけた。
「お主、やり残した事はあるか?」
わしに青年が生きる意思があるか問いかけた。もし、彼が死を望むのならば、わしは止めない。
しかし、青年は答えずに、ただ虚ろな目で空を見上げている。
「それとも、このまま朽ち果てるか?」
やはり反応が無い。もう、手遅れなのか?と思った瞬間、青年が僅かに口を開いた。
「ふ......く、しゅう」
復讐?自分をこんな目にあわせた相手にか?......あまり誉められた行為じゃないが、生きる意思が有るならいい。
「それで、良いのだな」
「あ、ぁ」
「解った。後悔してもしらんぞ」
わしはファミリアの元となる液体を口に含み、口移しで青年に飲ませた。
それと同時に、青年の体が鈍く光り、収まったころには、一匹の可愛らしいファミリアになっていた。
怪我も殆ど回復していたが、右腕だけが再生しない。彼の腕を切り落としたのは聖剣かなにかだろう。
わしは彼.....否、彼女を背中に担ぎ、城に帰る為に再び森を進んだ。
___間に合うと良いんじゃが。
他の魔女やファミリアは新しくサバトに入った人間達と共に別の道を進んでいる。わしらは魔王に今回の結果を報告するため、近道になるこの森を移動していた。
「バフォさま、今回は何人勧誘出来ましたか?」
「ふむ、大体700人位かの」
小さな町だったので、ほぼ全員がサバトに入会した。残った人間達はみな、町の外に逃亡してしまったが。
......ん?
「どうしました?」
「......人間の匂いがするぞ」
「人間!?ホントですか!?」
わしら魔物娘は人間が好きだ。特に男が。
魔女もその例にもれず、人間と聞いた瞬間辺りを見回して捜し始めた。
しかし、なんじゃ?この違和感は......匂いからして男なのだが、別の匂いが邪魔して上手く確かめる事が出来ない。なんだったかの?この鉄の様な匂いは......。
___血の匂い。
「こっちじゃ!急ぐぞ!」
「えっ!?ちょっと待ってくださいよぉ!」
悪いがお主を待っている暇は無い。匂いの濃さからして、恐らく大怪我を負っている。すぐに向かわないと手遅れになってしまうだろう。
「頼む、間に合ってくれ......!」
わしらが見付けた時には、既にその青年は虫の息だった。右腕が無くなり、体内の骨や内臓も損傷していた。
彼の側にある崖に血痕付着しているので、恐らく怪我の原因は崖からの転落だろう、何者かに切り落とされたらしい右腕以外は。
「バ...バフォ様、直ぐに儀式を」
魔女が青ざめた表情で青年の服を脱がそうとシャツのボタンに手を触れた。
「いや、駄目じゃ」
「でも!このままだと!」
「今のこの男では、儀式に耐えられずに死んでしまうじゃろう」
「なっ......」
いったいどうすれば良い!?こうやって悩んでいる間にも彼の残りの時間は少なくなって行く。
儀式でインキュバスに出来たら、この様な怪我は一瞬で治るのに......魔物にすることが出来たら......!
___そうか、その手があったか。
わしはポケットにしまってあった瓶を取り出した。
「バフォ様!?やっぱり儀式を!」
「いや、違う」
「え?じゃあ......」
わしは瓶の蓋を開けながら言った。
「この男を、ファミリアに変える」
それを聴いた瞬間、魔女は驚愕の表情をした。そして、すぐに首を横にふった。
「無理ですよ!ファミリアは人工的に作られた存在で、人間を......それも男をファミリアにするなんて、不可能ですよ!」
「解っておる!じゃから、これが最後の賭けなんじゃ」
「でも!」と言う魔女を無視して、わしは青年に話かけた。
「お主、やり残した事はあるか?」
わしに青年が生きる意思があるか問いかけた。もし、彼が死を望むのならば、わしは止めない。
しかし、青年は答えずに、ただ虚ろな目で空を見上げている。
「それとも、このまま朽ち果てるか?」
やはり反応が無い。もう、手遅れなのか?と思った瞬間、青年が僅かに口を開いた。
「ふ......く、しゅう」
復讐?自分をこんな目にあわせた相手にか?......あまり誉められた行為じゃないが、生きる意思が有るならいい。
「それで、良いのだな」
「あ、ぁ」
「解った。後悔してもしらんぞ」
わしはファミリアの元となる液体を口に含み、口移しで青年に飲ませた。
それと同時に、青年の体が鈍く光り、収まったころには、一匹の可愛らしいファミリアになっていた。
怪我も殆ど回復していたが、右腕だけが再生しない。彼の腕を切り落としたのは聖剣かなにかだろう。
わしは彼.....否、彼女を背中に担ぎ、城に帰る為に再び森を進んだ。
___間に合うと良いんじゃが。
14/08/03 23:15更新 / 水まんじゅう
戻る
次へ