MCテンタクル
マインドフレイアとして生を受けて、もっと言えば現魔王の影響を受け、魔物娘となってから幾度の時が流れただろう。 数多の村と町、果ては国でさえも私の力を以てして堕としてきた。 私によって眷属へと生まれ変わったものたちは、皆幸せそうに蕩けた表情を浮かべ、交わる。 幾星霜の流浪を続ける私とは違う。確かな安住の地で、大地に根を張り、幸せを育んでいる。 幸せそうな彼女たちの顔。それを見れば、私も幸せになれるような気がした。 胸が温かくなるこの気持ち、それを幸せというのであれば、確かに私は幸せだった。 だけどその温かみのあとに残るのは空虚だけだった。 幸せになることはできた。でもそれは一過性のもの。私の胸には何も残らない。 彼らはずっと幸せになった。だけど私には、何故彼らが幸せなのか理解できないでいた。 男女の交わり。快楽に堕ち乱れる、愛するものとの淫蕩の日々。 それらが彼らを幸せとするもの。知識では知っていた。脳には刻まれていた。 でも、本能としては識らなかった。その感覚が真に私のものとして理解できなかった。 私は求めることができなかった。 だから私は今日も流浪の旅を続ける。 凍てつく胸に一瞬の小さなかがり火を灯すために。 いつか私が根ざすことのできる大地を求めて。 |
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