連載小説
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ジャイアントアントの寵愛
この世界じゃ栽培できない天然の薬草は目が飛び出るほど高価なのだが、それにはそれ相応の理由がある
希少かと言われれば特にそうでもなく群生している森には大量にある
しかし決まってそう言うところは魔物がうろついていて人間が近づけないのだ。
数時間前に薬草を売りに来る商人の話を盗み聞きしたのがことの始まりだった
商人「馬鹿言え!俺たちだって命がけさ!高いって言ったって俺たちが危険な目に会わなけりゃ手に入らんシロモノばっかりだろ!」
男「そりゃ判るが隣町の裏庭の森でちょっとくすねてるだけだろ?それをあの値段で売るって言うのはねぇ…」
商人「じゃあアンタが行ってみな!そりゃ群生もしてるさ!だがハニービーやらホーネットやらジャイアントアントが根城にしてて十分に訓練を積んでフェロモンの匂いを嗅ぎ分けられる能力や対処法を持った俺達ですら…」
少年はその事を聞いてすぐさま走り出した。
フェロモン?匂いに釣られる程マヌケでも無いし、ハニービーやホーネットだって近づいてくれば羽音がするから一目散に逃げれば何とかなる!
それは少年特有の浅い考えから来る無謀さだった…

しばらく走るとその村が見えて来た。その裏手には例の森があり森に着いて見ると驚いた。
薬草売りの言葉にウソは無かった。確かにあれほど高価な薬草が群生してるじゃないか!
しかも森から村までの距離もそれほど離れていないし、何よりココまで一度も魔物を見ることも無かったのが更なる自信に拍車をかけた。
夢中になりながら薬草を採りカゴがいっぱいになる頃、フと甘い香りが鼻を撫ぜた。
「あれ?あ、イイ匂い…」
フェロモンに釣られた訳では無い、少年はその匂いを更に高価で希少な香薬と思い匂いを手繰りながら歩いた。
当然警戒をしなかった訳ではなかったが、少年の頭には必死に走って逃げれば何とかなる!と言う考えしかなかったのが災いだった。
そして匂いを辿れば辿るほど濃くなり思考が薄れていく…これこそがジャイアントアントのフェロモンの効果なのだが大丈夫と過信し切っている少年には抗いようも無かった。
複数の足音にハッ!と気がつけば自分のスグ後方にジャイアントアントの姿が!逃げようと我に返った時には既に遅く左右は高い谷の様になっており前にしか進めない
無理に後ろに逃げようにも抵抗すればどうなるかを考えると恐ろしくてタダタダ行列に任せて歩く以外選択肢は無かった。
そしてとうとうジャイアントアントの住み家の洞穴が見えてくる頃になって初めて体が凍り付き歩みを止めた…しかしその非力な抵抗も虚しく後方からどんどん押し寄せるアント達に押し切られ洞穴の内部に押し込まれてしまう。
内部は意外にも小奇麗で明るく整理されている様子だったが少年にはそれらを見る余裕も無く、恐ろしさのあまりに震え畏縮していた少年は門番の案内に従い彼が最初に辿ったフェロモンの匂いの部屋に押し込められ外から閂をされてしまった…

?「あはは〜それでね…アレ?ドアに変な棒があるよ?あれれ?」
アント1「え!?ウソっ!それってアレじゃないの!?」
アント2「あ!ホントだぁ〜最近見なかったけどやっぱりアレだよ〜」
?「え!?ウソやだ…本当に中に誰か居る!」
開けてみると…明らかに若い可愛らしい少年が泣き疲れて眠っている
?「うわぁ…か、可愛い!」
友人らしきよく似た(あるいは同じ顔の)アント達がヒョコッとドアの向こうから部屋を覗き込んで
アント1「あら、また可愛らしい子ねぇ…寝てる?」
アント2「うわ〜女王様に見つかったら寄こせって言われそう〜」
?「あ〜可愛いなぁ…泣いてたのかな?ヨシヨシ…」
アント2「あ〜羨ましいんだ〜も〜!ちょっとアタシにも抱かせてよ〜!」
アント1「ちょっと!ねぇって!あ〜私達の話聞いてないな、もうイイや今日はお邪魔虫は消えましょう…じゃあまた明日ね…」
そう言ってゆっくりと扉を閉めた。
2日目10/03/26 03:21
3日目10/03/27 18:18
4、5日目10/04/02 01:51

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