そろそろ時間無制限・・・行ってみようか!!!
「あぁっ!ちょっ・・・重いっ!重いです先輩!いきなり何なんですかぁ!?!?」
リビングのカーペットの上、ドンッという鈍い音と共に押し倒されたフォリア・クロバが、圧し掛かる僕の重みに悲鳴を上げる。
僕の身体はすでに彼女の上に完全に覆いかぶさり、そして何より重要なことに――僕の両手は、すでに彼女の無防備な脇の下の奥深くへと、深々と差し込まれていた。
「何って、オシオキに決まっているだろう?プリンを3つ食べた・・・こちょこちょして欲しいっていう、君の『ぐら』としての意思表示じゃないか」
僕はクロバを見下ろしながら、冷徹かつ楽しげに宣告する。
視線の先、ローテーブルの上には、無残にも空になった3つのプリンの容器が転がっていた。
「うっ・・・!そ、それは・・・その・・・今日は優しくして欲しいなっていうか・・・!」
「それは都合が良すぎるんじゃないかな?」
「ひゃうっ!?」
言い訳を遮るように、脇の下に埋没させた指先をピクリと動かす。
たったそれだけで、クロバの身体が電流を受けたようにビクンと跳ね、逃れようとジタバタともがき始める。しかし、僕の全体重がかかったマウントポジションは、彼女の華奢な力ではびくともしない。
「さて、クロバ。いつものオシオキタイムだけど・・・今日のルールは一味違うよ」
「え・・・?ルール・・・?」
不穏な空気を感じ取ったのか、クロバが涙目で僕を見上げる。
「いつもなら『30分』とか『笑ったら負け』とか時間を決めるけど、今日は無制限だ」
「む・・・むせいげん・・・?」
「そう。終了条件はただ一つ。君が自力で、上に乗っている僕をどかして脱出すること。それが出来るまで、このこちょこちょ攻撃は永遠に終わらない」
「!??!?!?」
クロバの顔色がサッと青ざめる。
生粋の「ぐり」である僕と、か弱い「ぐら」である彼女。ただでさえ体格差がある上に、くすぐられれば力が入らなくなる彼女にとって、この体勢からの脱出など不可能に近いミッションだ。
「む、無理です!無理無理無理ぃぃぃ!そんなの絶対無理に決まってますぅぅ!」
「おや?諦めるのが早いな。君はクローバースートの優秀な魔法使いだろう?」
僕はニヤリと笑い、脇肉を指の腹でゆっくりと愛でながら提案する。
「魔法を使えば簡単だろう?風魔法で僕を吹き飛ばすなり、身体強化で怪力を出すなり、なんなら精神操作で開放してって命令出来たりすれば・・・すぐに脱出できるじゃないか」
そう。彼女の魔法ならば、僕一人をどかすことなど造作もないはずだ。
しかし、クロバは首をブンブンと激しく横に振って叫んだ。
「だ、だから無理なんですってばぁ!!」
「なんで?」
「先輩のこちょこちょ攻撃を前にして!キチンと魔法の制御なんて出来るわけないじゃないですかぁぁぁ!!詠唱噛むし!集中力切れるし!暴発したらどうするんですかぁぁぁ!!」
「なるほど。まぁ、そんなことだろうとは分かっていたんだけどね?」
「あ・・・あの・・・ちょっと・・・?」
今回のお仕置きに対し、ハナからそう簡単に許しを与えるつもりがないのだという宣言を食らい、クロバが絶句する。
先に言った通り、くすぐられながらでは魔法は使えない。魔法を使わなければ脱出できない。脱出できなければくすぐりは終わらない。完璧な、地獄の無限ループ。そしてもう、自分の脇腹の下には先輩の手がガッチリと食い込んでいるのだから。
「・・・さあ、楽しい楽しい無制限こちょこちょの刑の始まりだ」
「いやぁぁぁっ!ごめんなさいっ!3つ食べたの謝りますからぁぁぁ!!待っ、指っ、動かさないでぇぇぇ!!!」
命乞いは、無慈悲な宣告にかき消された。脇の下の窪みを完全に占拠していた僕の十本の指が、一斉に、そして獰猛に暴れ始める。
こちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょ
「あっはっはっはっはっ!!んひぃぃぃっ!!わきっ、わきぃぃぃっ!!えぐらないでぇぇぇ!!」
「ほらほら、どかしてみなよ!力を入れないと一生終わらないよ!?」
「ちからっ、入らないぃぃっ!!ぬけるぅぅぅ!!指がっ、奥までっ、あーっはっはっはっはっ!!」
体重による重圧と、脇の下を直接脳髄までかき回されるような強烈なくすぐったさ。
クロバは僕の下で、釣られた魚のようにビチビチと跳ね回るが、それは抵抗ではなくただの身悶えだ。脇を締めようとしても僕の腕が邪魔をして閉じられず、むしろその圧力で指が深く食い込むという悪循環。
「んぐぐっ!くるしっ、くるしいぃぃっ!はげしっ、激しすぎますぅぅ!!」
「無制限だからね、ペース配分なんて考えないよ。最初からクライマックスだ」
こちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょ
「ひぃぃぃぃっ!!魔法っ、魔法つかうっ、がんばって魔法使うからぁぁっ!詠唱っ、詠唱させてぇぇぇ!!」
「おっ、やる気になった?どうぞどうぞ、くすぐられながら頑張って」
「『われっ、ひゃぁっ!?』・・・『風よっ、んぐぐっ!』・・・『うなりっ、あっはっはっはっ!!』・・・むりぃぃぃぃぃ!!詠唱できないぃぃぃぃ!!」
言葉を発しようとするたびに、脇の下の急所をピンポイントで弾かれ、詠唱は爆笑にかき消されていく。
声に出す詠唱が無理ならと、クロバは口を真一文字に結び、必死に笑いを堪えて無詠唱魔法での抵抗を試みた。
「んぅんっ、んぅっっひっ・・・いっひっひっひっひ!!」
魔力を練り上げようと集中するが、脇の下を駆け巡る電流のような刺激が思考を寸断する。
我慢すればするほど、その反動でくすぐったさは倍増し、溜め込んだ魔力と共に押し殺した笑い声が暴発してしまう。
「んっひっひっひっ!ぐっ、くぅぅ・・・っ!いっひっひっひっ!!あっはっはっはっは!!ダメダメダメぇぇぇ!!笑っちゃうぅぅぅ!!」
「集中力が足りないんじゃない?」
「ちがっ、ちがうぅぅぅ!!くすぐったいっ!くすぐったいぃぃっ!えいっ!えいっ!風よぉぉっ!とんでいけぇぇぇ!!」
涙目で掌を僕に向け、やけくそのように魔力を放出する。
彼女の手のひらから、僕を吹き飛ばすための突風が発生する――はずだった。しかし、現実は非情だ。くすぐったすぎて魔力の練りがまるで足りていない。
ヒュオォォ・・・
発生したのは、汗ばんだ僕の額を優しく撫でるような、爽やかなそよ風。
「おっ、涼しいね。ありがとうクロバ、暑くなってきてたから丁度いいや」
「あっはっはっはっ!!ダメダメっ、全然でないぃぃぃ!!」
「じゃあ次は肉体強化かな?ほら、僕の腕を掴んでどかしてみなよ」
「やりますっ!やってやりますぅぅぅ!!んんぅっ!!・・・いっひっひっひっ!」
「お、気合が入ってるね。でも笑ってるよ?」
「わ、わらってっ、ないですっ!んっひっひっひっ!ちからっ、こめてっ・・・いっひっひっひっ!」
クロバは涙目で僕の手首を掴み、渾身の力を込めて引き剥がそうとする。
しかし、力を込めようとすればするほど、脇の筋肉が緊張し、そこを指で抉られる刺激が鋭さを増す。
「ふぐっ、んふふっ・・・!んっひっひっひっ!」
普段なら強化魔法で怪力になれる彼女だが、脇の下をかき回されている今、その腕力は見かけ通りのか弱き少女である。
グググ・・・
「・・・ん?あれ?今、力入れてる?」
「いれてっ、いれてますぅぅぅ!!んっひっひっひっ!全力ですぅぅぅ!!あっはっはっはっ!!」
ほんのり。そう、本当に「ほんのり強いかな?」程度の腕力。
僕のくすぐりを止めるどころか、ビクともしない。むしろ、抵抗しようと腕に力を入れたことで脇が締まり、指がさらに奥へと食い込む結果に。
「残念、不合格。罰としてスピードアップだ」
「いっひっひっひっ!?むりむりむりぃぃぃ!!魔法っ、でないぃぃぃ!!先輩のいじわるぅぅぅ!!あーっはっはっはっはっ!!」
こちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょ
「あっ・・・げほっ・・・!ひゅっ・・・!」
数分間に及ぶ猛攻に、クロバの笑い声が掠れ、呼吸が追いつかなくなる。さすがに酸欠は可哀想だ。僕はピタリと指の動きを止めた。
「慈悲の休憩タイムだ」
「はぁっ・・・はぁっ・・・!げほっ、ひゅぅ・・・!ありがとう・・・ござい・・・ます・・・っ!」
激しく胸を上下させ、必死に酸素を取り込もうとするクロバ。
僕の体重に押し潰されながらも、彼女は魚のように口をパクパクとさせて荒い息を繰り返す。全身汗びっしょりで、髪は乱れ、瞳は涙で潤んでいる。
だが、僕は決して彼女の上から退かない。
それどころか、脇の下に差し込んだ両手は、指の動きこそ止めたものの、ガッチリと脇肉に食い込ませたままだ。
「はぁ・・・はぁ・・・うぅ・・・手が・・・指が・・・」
クロバが恨めしそうに僕を見る。
当然だ。この「休憩」は、彼女に反撃の隙を与えるものではない。むしろ、思考を取り戻した彼女が、隙あらば魔法を詠唱しようとすることは目に見えている。
「『我は・・・』」
ほら、きた。
呼吸が整いかけた一瞬の隙をついて、クロバの唇が小さく動く。
「おっと」
グニッ。
「ひゃぅっ!?」
僕は食い込ませていた親指を、警告代わりに少しだけ押し込んだ。それだけでクロバの身体がビクンと跳ね、紡ぎかけた魔力が霧散する。
「休憩中に魔法を使おうなんて、悪い子だね?」
「うぅ・・・っ!だって・・・!このままじゃ・・・!」
「このまま指を埋められたまま、僕の重みを感じていなよ。・・・次、変な気配がしたら、即座に再開するからね」
「そ、そんなぁ・・・!生殺し・・・!」
逃げられない重圧と、脇の下に埋まった指の熱。
いつまた動き出すかわからない恐怖に震えながら、クロバは「慈悲」とは名ばかりの、甘く苦しい拘束時間を味わい続ける。
そして、そんな時間は長くは続かない。
「よし、そろそろ呼吸は整ったかな?」
「ま、待っ・・・!まだ!まだ早いです!全然回復してないです!」
「さあ、ラウンド2だ!」
「いやぁぁぁぁぁ!!むりっ、まだむりぃぃぃ!!」
懇願も虚しく、脇の下に潜む指先が再び猛然と蠢き始めた。
こちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょ
「あっはっはっはっはっ!!んひぃっ!くっ、くすぐったいぃぃぃっ!指がっ、荒ぶってるぅぅぅっ!!」
再開された地獄。
しかし、先ほどとは少し様子が違った。クロバはもう、僕を押し退けようとも、魔法を使おうともしない。
彼女の両腕はカーペットの上にダラリと力なく投げ出され、指先ピクリとも動かない。まるで、全ての抵抗を放棄してしまったかのように、ただされるがまま、無防備な脇を晒し続けている。
「・・・あれ?どうしたの、クロバ?」
僕は手を緩めずに、不思議そうに問いかける。
「もうどかそうとしないの?このままじゃ一生終わらないよ?」
「うぅ・・・っ!あははっ・・・!だって・・・っ!」
クロバは涙と笑いがごちゃ混ぜになった、くしゃくしゃの顔で叫んだ。
「くすぐったすぎてっ・・・もう、ダメなんですぅぅ・・・!指一本っ、動かせないぃぃぃ!むりっ、もうむりぃぃぃ!!」
それは完全なる敗北宣言。
限界を超えたくすぐったさに脳も身体もショートし、脱出するという意思すらもへし折られてしまったのだ。
「あーあ、完全に心が折れちゃったか。これじゃあオシオキの意味がないなぁ」
僕は少し困ったような顔をしつつ、心の中では嗜虐的な満足感に浸る。しかし、これ以上続けても彼女が可哀そうなだけであり、必要以上な苦痛を与えることは互いのためにならないのだ。
「わかった。じゃあ、特別にルールを変更しよう」
「え・・・っ?ル、ルール・・・?」
「そう。力尽くで脱出するのはもう無理みたいだから、頭脳戦に切り替えよう」
僕は脇の下をくすぐる手を、少しだけスローダウンさせた。それでも、完全に止めることはしない。
「今から僕が『なぞなぞ』を出す。それに正解できたら、その瞬間にオシオキはおしまい。解放してあげるよ」
「ほ、ほんと、ですか・・・?なぞなぞ・・・?」
「うん。ただし、考えている間もくすぐりは止めないけどね」
「うぅ・・・っ!で、でも・・・やるしか、ないです・・・!お願いします、問題を・・・!」
クロバは藁にもすがる思いで頷く。
そんな彼女に対し、僕はとっておきの、ちょっと難しい問題を出題する。
「『海はあるけど水はない。町はあるけど家はない。山はあるけど木はない。これなぁんだ?』」
「えっ・・・?う、海・・・?水がない・・・?」
「さあ、なんだろうね?くすぐられながらよーく考えてごらん」
こちょこちょこちょこちょ・・・
思考をかき乱すように、再び指先が脇の下でダンスを踊り始める。
答えはシンプルだが、くすぐられている極限状態で、果たしてクロバはこのなぞなぞを解くことができるだろうか。
「うぅ・・・うみ・・・みず、ない・・・?んふっ・・・砂漠・・・?違っ・・・いっひっひっひっ!・・・あ、ちょっとだけ・・・余裕が・・・んふふっ・・・!」
「ブッブー、ハズレ。罰としてこちょこちょスピードアップ!」
「んっひっひっひっ!違いますっ!待ってっ!かんがえっ、んっふっふっふっ!考えさせてぇぇぇ!!」
脇の下を高速でかき回され、思考の糸がプツリと切れる。答えを探そうとする脳の働きを、強烈な快楽信号が容赦なく上書きしていく。
(水がない海・・・家がない町・・・うぅっ、わかるはずなのに・・・!頭が、揺れるぅぅっ!)
「ほらほら、地図を見ればわかるかもしれないよ?」
「え・・・?ち、ちず・・・?はっ・・・!?」
僕がわざと出した大ヒントに、クロバの目が大きく見開かれる。そうだ、答えは地図だ。彼女の頭の中に、正解の二文字が浮かび上がる。
「わ、わかりまし・・・た・・・!答えは・・・!」
「おっ、わかった?」
クロバが口を開こうとしたその瞬間、僕は意地悪く笑い、彼女の一番の弱点である、脇腹のくびれ部分を親指で思いっきり突き上げた。
「ひぎぃぃぃぃぃっ!?!?」
「答える前に、もうひと笑いしてもらわないとね!」
「あーっはっはっはっはっ!!ずるいっ!ずるいですぅぅぅ!!答えっ、言おうとしたのにぃぃぃ!!」
せっかくまとまりかけた思考は、強烈な一撃によって粉々に砕け散った。
「地図」という言葉は喉の奥に引っ込み、代わりに盛大な笑い声だけがリビングに響き渡る。
「最後の仕上げに本気を少々!ほらほら、頑張って答えて!」
こちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょ
僕は最後のとどめとばかりに、手加減なしの高速くすぐりを叩き込む。
脇の下、脇腹、二の腕の内側。指先が分身しているかのように上半身の弱点全てを蹂躙する。
「あーっはっはっはっ!!わすれっ、忘れちゃいますぅぅぅ!!くすぐったいぃぃぃ!!」
数分後。
僕は満足して手を止めた。クロバは白目を剥きかけ、口からは魂が抜け出ているような顔で、天井を見上げてピクピクと痙攣している。
「さて・・・終了。さあクロバ、正解をどうぞ」
「はひ・・・?せい、かい・・・?」
「さっきのなぞなぞだよ。答えは?」
「えっと・・・なんでしたっけ・・・?うみ・・・?やま・・・?あれ・・・?」
あまりのくすぐったさに脳が完全にリセットされ、今の今まで喉元まで出ていた答えが、綺麗さっぱり消え失せてしまったようだ。呆然とするクロバを見て、僕はニッコリと邪悪な笑みを浮かべる。
「おや、忘れちゃった?それは残念だ」
「あ、あの・・・もう一回・・・ヒントを・・・」
「ダメだよ。チャンスは一度きり。・・・ならば、お仕置き続行だね?」
「ひぃっ!?」
「第二問!『朝は四本足、昼は二本足、夕方は三本足。これなぁんだ?』」
「す、スフィンクス・・・!?にっにんげあっはっはっはっはっはっはっは!!にんっはっはっはっはっはっは!!!あっはっはっはっはっはっはっは!!!!」
再び動き出した指先が、絶望と快楽の底なし沼へクロバを引きずり込んでいく。
この甘く激しい無制限一本勝負が終わるには、まだまだ時間がかかりそうだった。
リビングのカーペットの上、ドンッという鈍い音と共に押し倒されたフォリア・クロバが、圧し掛かる僕の重みに悲鳴を上げる。
僕の身体はすでに彼女の上に完全に覆いかぶさり、そして何より重要なことに――僕の両手は、すでに彼女の無防備な脇の下の奥深くへと、深々と差し込まれていた。
「何って、オシオキに決まっているだろう?プリンを3つ食べた・・・こちょこちょして欲しいっていう、君の『ぐら』としての意思表示じゃないか」
僕はクロバを見下ろしながら、冷徹かつ楽しげに宣告する。
視線の先、ローテーブルの上には、無残にも空になった3つのプリンの容器が転がっていた。
「うっ・・・!そ、それは・・・その・・・今日は優しくして欲しいなっていうか・・・!」
「それは都合が良すぎるんじゃないかな?」
「ひゃうっ!?」
言い訳を遮るように、脇の下に埋没させた指先をピクリと動かす。
たったそれだけで、クロバの身体が電流を受けたようにビクンと跳ね、逃れようとジタバタともがき始める。しかし、僕の全体重がかかったマウントポジションは、彼女の華奢な力ではびくともしない。
「さて、クロバ。いつものオシオキタイムだけど・・・今日のルールは一味違うよ」
「え・・・?ルール・・・?」
不穏な空気を感じ取ったのか、クロバが涙目で僕を見上げる。
「いつもなら『30分』とか『笑ったら負け』とか時間を決めるけど、今日は無制限だ」
「む・・・むせいげん・・・?」
「そう。終了条件はただ一つ。君が自力で、上に乗っている僕をどかして脱出すること。それが出来るまで、このこちょこちょ攻撃は永遠に終わらない」
「!??!?!?」
クロバの顔色がサッと青ざめる。
生粋の「ぐり」である僕と、か弱い「ぐら」である彼女。ただでさえ体格差がある上に、くすぐられれば力が入らなくなる彼女にとって、この体勢からの脱出など不可能に近いミッションだ。
「む、無理です!無理無理無理ぃぃぃ!そんなの絶対無理に決まってますぅぅ!」
「おや?諦めるのが早いな。君はクローバースートの優秀な魔法使いだろう?」
僕はニヤリと笑い、脇肉を指の腹でゆっくりと愛でながら提案する。
「魔法を使えば簡単だろう?風魔法で僕を吹き飛ばすなり、身体強化で怪力を出すなり、なんなら精神操作で開放してって命令出来たりすれば・・・すぐに脱出できるじゃないか」
そう。彼女の魔法ならば、僕一人をどかすことなど造作もないはずだ。
しかし、クロバは首をブンブンと激しく横に振って叫んだ。
「だ、だから無理なんですってばぁ!!」
「なんで?」
「先輩のこちょこちょ攻撃を前にして!キチンと魔法の制御なんて出来るわけないじゃないですかぁぁぁ!!詠唱噛むし!集中力切れるし!暴発したらどうするんですかぁぁぁ!!」
「なるほど。まぁ、そんなことだろうとは分かっていたんだけどね?」
「あ・・・あの・・・ちょっと・・・?」
今回のお仕置きに対し、ハナからそう簡単に許しを与えるつもりがないのだという宣言を食らい、クロバが絶句する。
先に言った通り、くすぐられながらでは魔法は使えない。魔法を使わなければ脱出できない。脱出できなければくすぐりは終わらない。完璧な、地獄の無限ループ。そしてもう、自分の脇腹の下には先輩の手がガッチリと食い込んでいるのだから。
「・・・さあ、楽しい楽しい無制限こちょこちょの刑の始まりだ」
「いやぁぁぁっ!ごめんなさいっ!3つ食べたの謝りますからぁぁぁ!!待っ、指っ、動かさないでぇぇぇ!!!」
命乞いは、無慈悲な宣告にかき消された。脇の下の窪みを完全に占拠していた僕の十本の指が、一斉に、そして獰猛に暴れ始める。
こちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょ
「あっはっはっはっはっ!!んひぃぃぃっ!!わきっ、わきぃぃぃっ!!えぐらないでぇぇぇ!!」
「ほらほら、どかしてみなよ!力を入れないと一生終わらないよ!?」
「ちからっ、入らないぃぃっ!!ぬけるぅぅぅ!!指がっ、奥までっ、あーっはっはっはっはっ!!」
体重による重圧と、脇の下を直接脳髄までかき回されるような強烈なくすぐったさ。
クロバは僕の下で、釣られた魚のようにビチビチと跳ね回るが、それは抵抗ではなくただの身悶えだ。脇を締めようとしても僕の腕が邪魔をして閉じられず、むしろその圧力で指が深く食い込むという悪循環。
「んぐぐっ!くるしっ、くるしいぃぃっ!はげしっ、激しすぎますぅぅ!!」
「無制限だからね、ペース配分なんて考えないよ。最初からクライマックスだ」
こちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょ
「ひぃぃぃぃっ!!魔法っ、魔法つかうっ、がんばって魔法使うからぁぁっ!詠唱っ、詠唱させてぇぇぇ!!」
「おっ、やる気になった?どうぞどうぞ、くすぐられながら頑張って」
「『われっ、ひゃぁっ!?』・・・『風よっ、んぐぐっ!』・・・『うなりっ、あっはっはっはっ!!』・・・むりぃぃぃぃぃ!!詠唱できないぃぃぃぃ!!」
言葉を発しようとするたびに、脇の下の急所をピンポイントで弾かれ、詠唱は爆笑にかき消されていく。
声に出す詠唱が無理ならと、クロバは口を真一文字に結び、必死に笑いを堪えて無詠唱魔法での抵抗を試みた。
「んぅんっ、んぅっっひっ・・・いっひっひっひっひ!!」
魔力を練り上げようと集中するが、脇の下を駆け巡る電流のような刺激が思考を寸断する。
我慢すればするほど、その反動でくすぐったさは倍増し、溜め込んだ魔力と共に押し殺した笑い声が暴発してしまう。
「んっひっひっひっ!ぐっ、くぅぅ・・・っ!いっひっひっひっ!!あっはっはっはっは!!ダメダメダメぇぇぇ!!笑っちゃうぅぅぅ!!」
「集中力が足りないんじゃない?」
「ちがっ、ちがうぅぅぅ!!くすぐったいっ!くすぐったいぃぃっ!えいっ!えいっ!風よぉぉっ!とんでいけぇぇぇ!!」
涙目で掌を僕に向け、やけくそのように魔力を放出する。
彼女の手のひらから、僕を吹き飛ばすための突風が発生する――はずだった。しかし、現実は非情だ。くすぐったすぎて魔力の練りがまるで足りていない。
ヒュオォォ・・・
発生したのは、汗ばんだ僕の額を優しく撫でるような、爽やかなそよ風。
「おっ、涼しいね。ありがとうクロバ、暑くなってきてたから丁度いいや」
「あっはっはっはっ!!ダメダメっ、全然でないぃぃぃ!!」
「じゃあ次は肉体強化かな?ほら、僕の腕を掴んでどかしてみなよ」
「やりますっ!やってやりますぅぅぅ!!んんぅっ!!・・・いっひっひっひっ!」
「お、気合が入ってるね。でも笑ってるよ?」
「わ、わらってっ、ないですっ!んっひっひっひっ!ちからっ、こめてっ・・・いっひっひっひっ!」
クロバは涙目で僕の手首を掴み、渾身の力を込めて引き剥がそうとする。
しかし、力を込めようとすればするほど、脇の筋肉が緊張し、そこを指で抉られる刺激が鋭さを増す。
「ふぐっ、んふふっ・・・!んっひっひっひっ!」
普段なら強化魔法で怪力になれる彼女だが、脇の下をかき回されている今、その腕力は見かけ通りのか弱き少女である。
グググ・・・
「・・・ん?あれ?今、力入れてる?」
「いれてっ、いれてますぅぅぅ!!んっひっひっひっ!全力ですぅぅぅ!!あっはっはっはっ!!」
ほんのり。そう、本当に「ほんのり強いかな?」程度の腕力。
僕のくすぐりを止めるどころか、ビクともしない。むしろ、抵抗しようと腕に力を入れたことで脇が締まり、指がさらに奥へと食い込む結果に。
「残念、不合格。罰としてスピードアップだ」
「いっひっひっひっ!?むりむりむりぃぃぃ!!魔法っ、でないぃぃぃ!!先輩のいじわるぅぅぅ!!あーっはっはっはっはっ!!」
こちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょ
「あっ・・・げほっ・・・!ひゅっ・・・!」
数分間に及ぶ猛攻に、クロバの笑い声が掠れ、呼吸が追いつかなくなる。さすがに酸欠は可哀想だ。僕はピタリと指の動きを止めた。
「慈悲の休憩タイムだ」
「はぁっ・・・はぁっ・・・!げほっ、ひゅぅ・・・!ありがとう・・・ござい・・・ます・・・っ!」
激しく胸を上下させ、必死に酸素を取り込もうとするクロバ。
僕の体重に押し潰されながらも、彼女は魚のように口をパクパクとさせて荒い息を繰り返す。全身汗びっしょりで、髪は乱れ、瞳は涙で潤んでいる。
だが、僕は決して彼女の上から退かない。
それどころか、脇の下に差し込んだ両手は、指の動きこそ止めたものの、ガッチリと脇肉に食い込ませたままだ。
「はぁ・・・はぁ・・・うぅ・・・手が・・・指が・・・」
クロバが恨めしそうに僕を見る。
当然だ。この「休憩」は、彼女に反撃の隙を与えるものではない。むしろ、思考を取り戻した彼女が、隙あらば魔法を詠唱しようとすることは目に見えている。
「『我は・・・』」
ほら、きた。
呼吸が整いかけた一瞬の隙をついて、クロバの唇が小さく動く。
「おっと」
グニッ。
「ひゃぅっ!?」
僕は食い込ませていた親指を、警告代わりに少しだけ押し込んだ。それだけでクロバの身体がビクンと跳ね、紡ぎかけた魔力が霧散する。
「休憩中に魔法を使おうなんて、悪い子だね?」
「うぅ・・・っ!だって・・・!このままじゃ・・・!」
「このまま指を埋められたまま、僕の重みを感じていなよ。・・・次、変な気配がしたら、即座に再開するからね」
「そ、そんなぁ・・・!生殺し・・・!」
逃げられない重圧と、脇の下に埋まった指の熱。
いつまた動き出すかわからない恐怖に震えながら、クロバは「慈悲」とは名ばかりの、甘く苦しい拘束時間を味わい続ける。
そして、そんな時間は長くは続かない。
「よし、そろそろ呼吸は整ったかな?」
「ま、待っ・・・!まだ!まだ早いです!全然回復してないです!」
「さあ、ラウンド2だ!」
「いやぁぁぁぁぁ!!むりっ、まだむりぃぃぃ!!」
懇願も虚しく、脇の下に潜む指先が再び猛然と蠢き始めた。
こちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょ
「あっはっはっはっはっ!!んひぃっ!くっ、くすぐったいぃぃぃっ!指がっ、荒ぶってるぅぅぅっ!!」
再開された地獄。
しかし、先ほどとは少し様子が違った。クロバはもう、僕を押し退けようとも、魔法を使おうともしない。
彼女の両腕はカーペットの上にダラリと力なく投げ出され、指先ピクリとも動かない。まるで、全ての抵抗を放棄してしまったかのように、ただされるがまま、無防備な脇を晒し続けている。
「・・・あれ?どうしたの、クロバ?」
僕は手を緩めずに、不思議そうに問いかける。
「もうどかそうとしないの?このままじゃ一生終わらないよ?」
「うぅ・・・っ!あははっ・・・!だって・・・っ!」
クロバは涙と笑いがごちゃ混ぜになった、くしゃくしゃの顔で叫んだ。
「くすぐったすぎてっ・・・もう、ダメなんですぅぅ・・・!指一本っ、動かせないぃぃぃ!むりっ、もうむりぃぃぃ!!」
それは完全なる敗北宣言。
限界を超えたくすぐったさに脳も身体もショートし、脱出するという意思すらもへし折られてしまったのだ。
「あーあ、完全に心が折れちゃったか。これじゃあオシオキの意味がないなぁ」
僕は少し困ったような顔をしつつ、心の中では嗜虐的な満足感に浸る。しかし、これ以上続けても彼女が可哀そうなだけであり、必要以上な苦痛を与えることは互いのためにならないのだ。
「わかった。じゃあ、特別にルールを変更しよう」
「え・・・っ?ル、ルール・・・?」
「そう。力尽くで脱出するのはもう無理みたいだから、頭脳戦に切り替えよう」
僕は脇の下をくすぐる手を、少しだけスローダウンさせた。それでも、完全に止めることはしない。
「今から僕が『なぞなぞ』を出す。それに正解できたら、その瞬間にオシオキはおしまい。解放してあげるよ」
「ほ、ほんと、ですか・・・?なぞなぞ・・・?」
「うん。ただし、考えている間もくすぐりは止めないけどね」
「うぅ・・・っ!で、でも・・・やるしか、ないです・・・!お願いします、問題を・・・!」
クロバは藁にもすがる思いで頷く。
そんな彼女に対し、僕はとっておきの、ちょっと難しい問題を出題する。
「『海はあるけど水はない。町はあるけど家はない。山はあるけど木はない。これなぁんだ?』」
「えっ・・・?う、海・・・?水がない・・・?」
「さあ、なんだろうね?くすぐられながらよーく考えてごらん」
こちょこちょこちょこちょ・・・
思考をかき乱すように、再び指先が脇の下でダンスを踊り始める。
答えはシンプルだが、くすぐられている極限状態で、果たしてクロバはこのなぞなぞを解くことができるだろうか。
「うぅ・・・うみ・・・みず、ない・・・?んふっ・・・砂漠・・・?違っ・・・いっひっひっひっ!・・・あ、ちょっとだけ・・・余裕が・・・んふふっ・・・!」
「ブッブー、ハズレ。罰としてこちょこちょスピードアップ!」
「んっひっひっひっ!違いますっ!待ってっ!かんがえっ、んっふっふっふっ!考えさせてぇぇぇ!!」
脇の下を高速でかき回され、思考の糸がプツリと切れる。答えを探そうとする脳の働きを、強烈な快楽信号が容赦なく上書きしていく。
(水がない海・・・家がない町・・・うぅっ、わかるはずなのに・・・!頭が、揺れるぅぅっ!)
「ほらほら、地図を見ればわかるかもしれないよ?」
「え・・・?ち、ちず・・・?はっ・・・!?」
僕がわざと出した大ヒントに、クロバの目が大きく見開かれる。そうだ、答えは地図だ。彼女の頭の中に、正解の二文字が浮かび上がる。
「わ、わかりまし・・・た・・・!答えは・・・!」
「おっ、わかった?」
クロバが口を開こうとしたその瞬間、僕は意地悪く笑い、彼女の一番の弱点である、脇腹のくびれ部分を親指で思いっきり突き上げた。
「ひぎぃぃぃぃぃっ!?!?」
「答える前に、もうひと笑いしてもらわないとね!」
「あーっはっはっはっはっ!!ずるいっ!ずるいですぅぅぅ!!答えっ、言おうとしたのにぃぃぃ!!」
せっかくまとまりかけた思考は、強烈な一撃によって粉々に砕け散った。
「地図」という言葉は喉の奥に引っ込み、代わりに盛大な笑い声だけがリビングに響き渡る。
「最後の仕上げに本気を少々!ほらほら、頑張って答えて!」
こちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょ
僕は最後のとどめとばかりに、手加減なしの高速くすぐりを叩き込む。
脇の下、脇腹、二の腕の内側。指先が分身しているかのように上半身の弱点全てを蹂躙する。
「あーっはっはっはっ!!わすれっ、忘れちゃいますぅぅぅ!!くすぐったいぃぃぃ!!」
数分後。
僕は満足して手を止めた。クロバは白目を剥きかけ、口からは魂が抜け出ているような顔で、天井を見上げてピクピクと痙攣している。
「さて・・・終了。さあクロバ、正解をどうぞ」
「はひ・・・?せい、かい・・・?」
「さっきのなぞなぞだよ。答えは?」
「えっと・・・なんでしたっけ・・・?うみ・・・?やま・・・?あれ・・・?」
あまりのくすぐったさに脳が完全にリセットされ、今の今まで喉元まで出ていた答えが、綺麗さっぱり消え失せてしまったようだ。呆然とするクロバを見て、僕はニッコリと邪悪な笑みを浮かべる。
「おや、忘れちゃった?それは残念だ」
「あ、あの・・・もう一回・・・ヒントを・・・」
「ダメだよ。チャンスは一度きり。・・・ならば、お仕置き続行だね?」
「ひぃっ!?」
「第二問!『朝は四本足、昼は二本足、夕方は三本足。これなぁんだ?』」
「す、スフィンクス・・・!?にっにんげあっはっはっはっはっはっはっは!!にんっはっはっはっはっはっは!!!あっはっはっはっはっはっはっは!!!!」
再び動き出した指先が、絶望と快楽の底なし沼へクロバを引きずり込んでいく。
この甘く激しい無制限一本勝負が終わるには、まだまだ時間がかかりそうだった。
26/02/02 01:34更新 / たっぷりとしたクリーム
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