連載小説
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愛しい彼女と楽しいデート、勝負下着はフリル付き!
8月9日、晴れ、朝―――――


「起きるッスよ〜❤起きるッスよ〜私の大好きな人〜〜❤愛しい眠りの王子様〜〜❤起きなきゃ目覚めのキスがねちっこさを増すだけッスよ〜〜❤」
「んんぅっ・・・ジョアンヌ・・・どうしたの・・・今日は土曜日のはず・・・」

僕が滞在しているブレイブハート・アカデミーの授業日は月〜金曜日と学校と一緒であり、土日祝日は基本お休み・・・剣の稽古やらは自主練程度と定められているのだ。だから今日はせっかくのお休みな訳で、寝ぼけ眼にもっと眠らせてくれというささやかな抗議を込めて、ジョアンヌへと向き直る・・・寝具に巻き込まれて寝ころんだまま。

「土曜日なのは間違ってないッスけど、実は良いお知らせがあるッス♪」
「良いお知らせ・・・んんぅっ・・・ぷはぁぁっ!!!・・・よし・・・聞かせてもらおうかジョアンヌさん?」

ジョアンヌの楽しげな声に気合一閃、寝具ごと眠気を吹き飛ばすようにムクりと起き上がる。壁掛けの時計は午前7時前・・・早朝も早朝だが、それでもジョアンヌが僕を起こそうとしたその訳とは・・・?

「一日外泊申請が降りたッス♪時間たっぷりとデートするっきゃないッスよ♪」

デート・・・ジョアンヌとデートする・・・・・頭の中でリフレインする嬉しいお誘い。満面の笑みで微笑みかけてくる美少女の顔に見惚れたまま、僕は首を縦に振った。嬉しそうにジョアンヌがガッツポーズするのがまた心を撃ち抜かれてしまう。

「ちなみに帰りは明日のお昼までッス!今日はいっぱい・・・遊び回るッスよ♪」


8月9日、晴れ、午前中―――――


プシュッという空気の抜ける音と共に秩序正しく降車する列ができて、ゆさゆさとバスが左右に揺れ動く。思った以上に乗客が込み合っていたのは、今日が夏休み期間の中でも土曜日の日だったからなのだろう。ちょっぴりと冷房の足りていなかった車内から、サンサンと照り付ける太陽の下へと出てみれば一気に熱波が襲い来る。顔を想わずしかめながら恋しく思うブレイブハート・アカデミー・・・あそこはどこも空調が効いていて快適な環境だったのだと外に出て初めて気が付かされた。

そう、今僕は・・・ブレイブハート・アカデミーの外にいる。別にあの塾に監禁されていた訳ではないし、居心地だって最高だったのだが・・・変な気持ちになるのは、ジョアンヌと四六時中一緒にいたあの生活とのギャップに、頭がまだ追いついていないからなのかもしれない。

そう、僕らはデートらしく、待ち合わせをすることにしたのだ。だから今僕は一人きり・・・僕の隣にジョアンヌは居ない。正直言って酷く寂しい・・・その事実が、僕がどれだけジョアンヌに対してメロメロに駄々惚れしていたのかを物語っていた。

現在地にして新幹線の止まる様な大きな駅の、ロータリー前。コンクリートジャングルのど真ん中・・・夏の日差しの照り返しがなおの事キツイ。直ちにどこか涼しい場所へと退避すべき暑さではあるのだが・・・それよりも優先すべきことがあるのだと周囲を見渡す、なんてったってここがデートの待ち合わせ場所なのだから。

実を言えば夏の暑さから逃げることよりも、今なお心を苛む寂しさのほうが余程に苦しい。だからこそ、早く探し出そうと目を閉じて、修行を重ねた心眼までもを使って愛しい探し人を求めてしまう。

瞼を閉じた闇の中、街行く人々の色とりどりのオーラの中に・・・いた、愛しき彼女が。街行く人々の中でも見間違えるはずがない、ひときわに光り輝く魅力を放つ、僕の大好きな彼女が。それはもちろん、僕の愛しいヴァルキリー、ジョアンヌ・クレジオだ。ちょうど彼女も僕を見つけたのだろう、ぶわっとジョアンヌのオーラが歓喜に大きく瞬き、こちらに向かって走り寄ってくるのが見えて・・・ようやく瞼を開いた。

心眼ではなく己が眼で見つめる彼女はいつも見慣れたヴァルキリーの制服ではなく、この日のために選んだという私服姿で僕を待っていた。

「マコト〜!遅いッスよ!もう私、待ちくたびれちゃったッス〜!」

待ちくたびれたって言われても、今は待ち合わせ時間の30分以上は前である。なんて言い訳なんてどうでもよくなる・・・満面の笑みでぶんぶんと手を振るジョアンヌの姿に、僕は瞬きすら忘れて立ち尽くす。



まず、目に入ったのは上半身だ。

真っ白で薄手のサマーニットのノースリーブ。その繊細な生地は光を浴びてわずかに肌の滑らかさを透かし、ジョアンヌのしなやかながらもヴァルキリーらしい、鍛えられた肩のラインを惜しげもなく露出している。そして何よりも、ニットはKカップの圧倒的なボリュームに内側からぐぐっと押し上げられ、胸元には何重ものシワがくっきりと刻まれていた。制服の時とは違い布が柔らかな分、その弾力と肉感がよりダイレクトに伝わってくるようで、何ならその感触を知っているが故にリアリティ高く空想してしまうから下腹部が熱くなってしまう・・・あわてて視線を別に移先は下半身だ。

こちらもこちらで非常に魅力的、ミントグリーンのプリーツミニスカート。涼しげなシフォン素材が風に揺れて、健康的な太ももの中間ほどのラインを強調している。ジョアンヌがこちらへと歩み寄るたびに、その細かなプリーツがヒラヒラと開き、内側のむっちりとした曲線が一瞬だけ顔を覗かせて・・・男性というよりも女性目線ですらも残念なことながら、スカートの中は下着ではなく見せても構わない白いベールのようなペチコート、ふしだらさを爽やかさへと見事に昇華させていた。

足元は今日はたくさん歩くのだと分かっているからこそのスニーカー、されど日焼けとは無縁の白い脚がすらりと伸びており、ミニスカートとの相乗効果でその脚線美は完璧。そしてそのすべてをまとめ上げるのはアッシュブロンドの髪に映える山吹色の麦わら帽子、頭頂部から足の指先まで全面的に隙の無い、お洒落さとジョアンヌらしい活発さを内包させる完璧なコーディネート・・・プロのモデルさんだって顔負け、お洒落をしたジョアンヌはこんなに光り輝いて見えるものだろうかと、驚きすらも通り越してしまう。

「どうッスかマコト!この日のために張り切って選んだんスよ!似合ってるッスか?」

小首を傾げて感想を求めるジョアンヌ。彼女は全身から「マコトに褒めてほしい」という熱意を放っており、それがフルソウルリンクを通して僕の心に直接響いてくる。

「っ・・・あ・・・ごめん、遅くなって・・・その、似合ってるよ、ジョアンヌ・・・すっごく、似合ってる」

僕の口から出たのは、それだけだった。全く持って情けないことながら、あまりにも目の前の美少女の破壊力がありすぎて、言葉を失ってしまったのだ。けれどもジョアンヌは満面の笑み、小学生以下の語彙力での誉め言葉ながら、心の底から嬉しそうに微笑みかけてくれている。

「えへへ、嬉しいッス!じゃあ、早く行こうッスよ!楽しい楽しいデートの始まりッス♪」

ジョアンヌは僕の腕に自分の腕を絡めると、そのKカップの柔らかな肉感を僕の腕に強く押し付けてきた。夏の熱波に包まれた街中で、僕の夏休みが再び、そして最高潮にヒートアップするのを感じた。

腕に絡みつくジョアンヌのナマの温もり。薄いニット越しではあるが、その膨大な質量と弾力が逃げ場のないほどに僕の腕に食い込んでいる。彼女が少し身を乗り出すたび、Kカップ全体がぐにゅりと形を変える感触が鮮明に伝わってきて、僕は目的地へと歩き出す前から意識が朦朧としそうになる。断じて熱中症ではないのだが、ジョアンヌの溢れんばかりの魅力でクラクラしてしまいそうになる。

「あ、ありがとうジョアンヌ・・・どこへ行こうか?この暑さじゃ、一刻も早く涼しい場所に退避しないと・・・」

今更ながら、今日のデートプランは事前に何も決まっていない。一応ジョアンヌと僕の水着を買う事、そして最後はラブホテルでしっぽりとエッチする・・・以外は全てその場任せのフリープランなのだ。

「そうッスね、ひとまず『セントラル・ファンタジア』に行くッスよ!ここからすぐそこの白亜の建物ッス!」

ジョアンヌはバス降り場のロータリーから一本道を進んだ先にある、白亜の巨大なビルを指差した。そのビルの壁面に大きく描かれたその名は、セントラル・ファンタジア・・・つい先日オープンしたばかりの7階建て、超大型総合商業施設である。

このままではせっかくのデートが汗まみれのドロドロになってしまうから、大急ぎで白亜のビルへと向かう。道中、ジョアンヌは僕の腕に絡ませた手を離すことなく、そのどたぷんと豊満な爆乳を僕の脇腹にぎゅうぎゅうと押し付けながら歩く。みんな目指す先は一緒だからこそ、同じ道を行く他の人々の羨望の眼差しが突き刺さる。誰もが見てわかる絶世の美少女、その子が心底楽し気に腕に抱き着いているのだ・・・これ見よがしに。

「ちょジョアンヌ・・・人目が、人目が気になるよジョアンヌ・・・」
「むむむ・・・周りの視線が気になって私に集中できていないッスね・・・?これは由々しき自体ッス!もっともっとくっつくッスよ❤」

ジョアンヌの全身から溢れる熱意と、押し付けられる柔らかさは圧迫感は増すばかり、通り過ぎる人々の舌打ちすらも聞こえてきそうな中、ようやくセントラル・ファンタジアの入り口エントランスに入ることが出来た・・・といってもここは正面西口の光の広場入口というらしい、こんなだだっ広い施設だから帰り道として覚えておかねばと心の中で3度唱えた。

エントランス内は色んな意味で外の地獄のような暑さから一転、天国のような冷気が満ちていた。されど右も左もお客さんがたくさんいて、大盛況・・・あちこちで賑やかな話声が聞こえてくる。僕は人酔いはしない方だがジョアンヌは・・・と伺いみても、満面の笑みが返ってくるだけ・・・大丈夫そうで何よりだ。

「まずはパーッと遊んでから、最後に水着を買う?」
「それが良いッス!お楽しみは取っておくッス♪」
「それじゃあ・・・遊べそうな所は・・・ってまずはゲームセンターかな?」
「おおっ・・・こりゃまたデカいゲーセンッスねえ・・・早速行ってみるッス!」

インフォメーションで手に取った館内のマップ、その4階フロアのほぼ半分の広さを占めるゲームセンター「ファンタジア・アリーナ」およびフードコートの「ファンタジア・キッチン」をひとまずの目的地に定め、再びジョアンヌを腕に侍らせながら歩く。

混雑したロビーを抜け、僕らはエレベーターホールへと向かう。到着したエレベーターも人が多めだったが、ジョアンヌはそれをチャンスとばかりに僕の身体にさらに密着してきた。むにゅうっっと押し付けられる胸の柔っこさに顔がだらしなく緩んでしまいそうになり、必死にどうにか引き締めなおす。

「ぐぐぐっ・・・ちょっ・・・もうジョアンヌってば・・・」
「もう気がついてるかもしれないッスけど、今日はいっぱいぎゅーーーってマコトに抱き着いちゃうッスからね❤」

僕らが目指す階ではないがエレベーターの到着したチャイムが鳴り、階数を知らせるアナウンスが「3階、レディース・ランジェリー・シーズンフロア」と告げた。そのアナウンスに嫌な予感を感じてしまう、もしかして今日水着を選ぶ場所ってここなのではなかろうかと。僕らと同じようにイチャツキながら降りてゆくカップル達を見送りながら見えた景色は、四方八方がセクシーなランジェリーしか目に入らなかったのだから。

「お気づきの通り、水着選びはここの階ッス!あ・え・て・・・言い忘れてたッスけど、今日はマコト好みの下着も調達するッスからね❤今夜はそれを着けてイチャラブエッチしてあげるッス❤」
「あ・・・あはは・・・もうどうにでもなれだぁ・・・飛び切りエッチな奴を選んでやるっっ!!!」
「おっ!やる気満々ッスねマコト♪お楽しみにしておくッス♪」

なんておしゃべりもそこそこに、エレベータは4階へ到着、アナウンスが「フードコート・ゲームセンターフロア」と告げてくる。ぞろぞろと子供連れの家族一向の後に続いて僕らもエレベータを降りる。流石はフロアの半分ずつをフードコートとゲームセンターが占めているだけあり、子供の楽しそうなはしゃぎ声と食欲をそそる色々な料理の香りが舞い込んでくる。

「ははは・・・この階だけでもデートが成立しそうな利便性だね・・・」
「どうもそうらしいッス、この施設の創立者曰く、休みの日の家族サービスから学生カップルまで楽しめる、最高のアミューズメントフロア・・・らしいッス」
「その言葉に一切の偽りなしだね・・・じゃあ行こうかジョアンヌ!思いっきり遊ぼう!」

僕らは賑やかな声と音をかき鳴らす「ファンタジア・アリーナ」へと足を踏み入れる。本当に様々なゲーム筐体やらメダルゲームのタワーやらが目白押し、さて最初に選ぶべきゲームは・・・・・・

「アレにするッス!バンバンゾンビパニック!」
「へぇ・・・VRホラーシューティングゲームって売りだけど、カップルシートなんだ・・・ゾンビのはびこる地下研究所から脱出せよ・・・いいね、やってみようか!」

夜に一人でトイレに行き辛くなる・・・だなんて僕一人だけなら正直怖気づいてしまうような内容のゲームだが、まぁジョアンヌと一緒なら大丈夫だろうと浮かれた気持ちで財布からお金を取り出した。筐体のカップルシートに身を寄せ合い、筐体にお金を入れてからVRゴーグルを被る。キャー怖いッス〜〜❤だなんて黄色い声を上げるジョアンヌにこっそりと呆れながら、いよいよゲームが始まる。

流石はVRの最新技術を生かしたゲーム・・・ゲーム説明のチュートリアルから迫力満点、さぁいよいよゲーム本番、ゾンビの群れが僕らめがけて襲い掛かってきたところで・・・

「やらせるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!」
「ちょっ!ジョアンヌ?!?!」

開始早々にしてジョアンヌ渾身の雄叫びが轟いた。画面を2人で半分に分担しながら効率的にゾンビを撃とうという説明もどこ吹く風か、僕の担当区画を優先的に敵にジョアンヌは攻撃し続けている。画面内に溢れんばかりのゾンビたちを的確に、迅速に排除し続けている。

「うぉぉぉぉぉ!!!!!私の大切な人に触れるなぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!あっ、強化アイテムッス!マコト!遠慮せずに取るッスよ!!ぬおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!マコトに色目を使って群がるなぁぁああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」

このゲームに敵として登場するゾンビたちは、当然のことながら男性もいれば女性もいる。理性なく襲い来るだけの存在にときめくことは無いのだが、それでもジョアンヌは女性型のゾンビは特に迅速に始末していた・・・ゾンビにヤキモチ焼かなくったっていいだろうに・・・

「あっ・・・ははは・・・あ、ジョアンヌ!火炎放射器だってさ、今度の強化アイテムは君が取りなよ・・・」
「うっひょおおおおおおお!!!!マコトからの贈り物ッス!!!!!!これで後10年は戦えるッス!!!!!おお!!!!!!!!これは圧倒的な火力ッス!!!マコトからの愛の炎で灰塵と化せええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!!!!!!!!!」

ジョアンヌの獅子奮迅の大活躍によって、僕らはまさかのノーダメージでエンディングへとなだれ込んだ。リザルト画面のスコアはひいふうみい・・・と数えることをめんどくさくなる程の桁の数、画面に輝くSSSランクという表記が何とも眩しい勲章だ。

「ふぅ・・・ちょっぴり本気を出しちゃったッス!」
「あははは・・・うん、すごかったよジョアンヌ」

爽やかな汗をジョアンヌがハンカチで拭い、ササっと片付けてから筐体の外へ・・・這い出た僕らを迎えていたのは大歓声だった。

―――――すごかったぞ嬢ちゃん!まさかあの超難易度をノーダメージでクリアだなんて!!
―――――お兄ちゃんお姉ちゃんカッコいい・・・!!!!!
―――――難攻不落のゲームが・・・陥落した・・・!!!!!

「あははは・・・ど・・・どうも・・・」
「皆の者!この偉業はこの隣におわす勇者の力だ!だからこのカッコいい勇者を褒め称えるのだ!!!!」

らしくもない大業なセリフをジョアンヌが言い、ギャラリーの熱はヒートアップするばかり、ひとしきりの賛美と羨望の眼差しを背後に受けながら、そそくさと次のゲーム機は・・・

「私たちの大勝利の記念に、プリクラ撮るッス!」

ジョアンヌに手を引かれ、ゲームコーナーの奥にあるピンク色のエリアへ。 『カップル専用・激甘LOVEモード搭載』と書かれた最新機種のカーテンをくぐると、そこは2人も入るには少し狭いように狙われて設計された密室空間だった。

「わぁ・・・狭いッスね❤ これじゃあ、くっつくしかないッスね〜❤」
「ジョアンヌ、顔が近い、近いってば」

―――――最高にラッブラブなショット・・・撮るよ〜〜〜!2枚撮るからね!

機械のアナウンスが、容赦なく僕らを煽ってくる。というか最高にラッブラブなショットっていったい・・・

―――――『まずは彼氏が彼女を後ろからハグしてね! 5、4、3・・・』

後ろからハグって・・・しかもカウントダウンが短い!心の準備が一切できないままにあたふたとしてしまう。

「ほらマコト! 指示通りにするッス!」 「わ、分かったよ・・・こう?」

僕は恐る恐る、ジョアンヌの背中から抱きしめるように腕を回す。もちろん手はお腹周りに差し当てているものの・・・胸板越しにでもしっかりと伝わる薄手のサマーニットの体温と柔らかさ、プリクラ筐体という密室の中でジョアンヌの甘い香りを至近距離から吸い込んでしまい、ゲームの興奮とは違う種類の熱が身体を駆け巡る。

パシャリ!と撮影された音とフラッシュが一閃、多分・・・相当に顔を真っ赤にした情けない顔が撮られてしまったのは気のせいじゃないだろう。

―――――『2枚目はぁ〜、見つめ合って・・・・・・チューしちゃおっか❤』

「えっ!? チューって、ここで!?」
「機械がそう言ってるんスから、従うしかないッスよマコト❤ さぁ、カモンッス〜❤」

ジョアンヌが逃がさないとばかりに、僕の首に腕を絡めてくる。至近距離で見つめるグレイの瞳。期待に潤んだ唇・・・逃げ場のない狭い個室で、僕は覚悟を決めて―――――

ちゅうっ・・・❤
パシャリ!

―――――OK!2人のラブラブっぷり・・・バッチリ撮ったよ!外のモニタで綺麗にデコっちゃおう!!

あれやこれやと撮られた写真が写るモニタに、デコデコと文字やら何やらを書き込んでゆくジョアンヌ。正直こういうのは何処までデコったらいいのやらと見守る事しか出来ない、ひとしきりジョアンヌがデコり終わって、カシャーンと軽快な音を立てて取り出し口にプリントシールが吐き出された。

「うっひょ〜〜〜!見るッスよマコト!!バッチリ撮れてるッス!!!」

ジョアンヌが拾い上げたシールには、思っていたよりもマシな表情でジョアンヌを後ろから抱きしめている1枚目、そして互いの唇を重ね合わせる2人の姿が鮮明に印刷されていた。

『ラブラブすぎるッス〜❤』『末永く爆発しろ❤』といったジョアンヌが書き込んだ落書きも相まって、どこに出しても恥ずかしくないバカップル写真の完成だ。

「これは私のスマホケースの裏に貼って、魔除けならぬ『虫除け』にするッス! 悪い虫がつかないように見せびらかすッスからね!」
「あはは・・・僕も財布の奥に大事にしまっておくよ」
「ぬっふっふっふ〜♪時すでに遅しッスよマコト・・・スマホの画面の裏を見るッス!」
「えっ?!嘘っ?!いつの間に?!」

慌ててスマホを取り出して裏を見る・・・が、何も貼られていない・・・?

「隙ありッス!」

ペタリ・・・スマホの裏には僕とジョアンヌのキスショットが貼り付けられてしまう。一拍遅れてジョアンヌの策に思いっきり引っかかったのだと気が付いて、してやったりと満面の笑みを浮かべるジョアンヌに思わず釣られ笑い。

「あははははっ♪もうマコトってば素直すぎッス♪」
「ははははっ・・・良くもやったなジョアンヌ・・・!!!」
「キャーーー♪許してほしいッス〜〜♪」

プリクラ筐体群の中、周りのカップル達の視線も忘れてジョアンヌと笑いあう。もうここまで来たら・・・もういい加減に段々と吹っ切れてきた。こうなったらジョアンヌと一緒に思いっきりイチャツキながらデートするのだ。

「あぁ・・・ふぅ・・・じゃあジョアンヌ、他のゲームもしようか!」
「そうするッス!お昼時までもう少しあるッスからね!」

賑やかなゲームセンター内をぶらぶらと歩く、ジョアンヌは当然のように腕にぎゅうっと抱き着いてきながら。その柔っこさにとうとうデレデレとしてしまいそうになりながら立ち止まったのはクレーンゲームの筐体群の1つだった。

「ああっ! マコト! あれ可愛くないッスか!?」

ジョアンヌが足を止めたのは、クレーンゲームの筐体の前。ガラスケースの中に積み上げられているのはピンク色のリボンをつけた、ふわふわで巨大なウサギのぬいぐるみだ。

「随分と大きなウサギだねぇ」
「むぅ・・・あのつぶらな瞳、私に『連れて帰って』と訴えかけている気がするッス!」

ガラスに張り付かんばかりに見つめるジョアンヌ。ここで何もせずに「じゃあ行こうか」なんて言うつもりはない、ここは一肌脱ぎ所ってやつだろう。

「よし、任せてよ。僕が取ってあげる!」
「本当ッスか!? マコト、カッコいいッス!!」

ジョアンヌの期待に満ちた眼差し背中越しに感じながら、僕は硬貨を投入する。1プレイ2回の挑戦権があるタイプの筐体だ。狙うは一番手前、バランスを崩せば落ちそうなあの子だ。ウィーン・・・とアームが動き、位置を調整してボタンを離す。伸び行くアームがぬいぐるみに向かってゆき―――――

・・・スカッ、マコトの攻撃は外れた。

「ぐぬぬ・・・もうちょっと右だったか」
「惜しいッス! もう一回ッス!」

気を取り直して2回目・・・またしてもアームはウサギの耳を撫でるだけで、無情にも戻ってくる。3回、4回・・・中々上手く行かないなとちょっぴり焦りが滲んでくる。

「くそぅ・・・次こそは・・・!」

なんて意地になる僕の背中に、ふわりと温かい感触が覆いかぶさった。

「マコト、ちょっと力み過ぎッスよ♪2人でやるッス❤」

ジョアンヌが僕の背後から覆いかぶさるようにして、操作ボタンに置いた僕の手の上に、自分の手を重ねてきたのだ。背中全体に押し付けられる、サマーニット越しのKカップの弾力。もうちょっと右・・・だなんて耳元で囁かれる甘い吐息、クレーンゲームのBGMがかき消されるほど、僕の心臓が早鐘を打つ。

「呼吸を合わせて一緒に取るッス!ほら、狙いはあそこッス・・・右にちょい・・・ストップ!!」

ジョアンヌに操られるがまま、僕らは同時にボタンを離す。狙い通りにアームが下がり、ガッチリとウサギの胴体を掴む。持ち上がり、揺れ、そして・・・ゴトン!ぬいぐるみは見事に取り出し口へと吸いこまれたのだった。

「やったぁぁぁぁ!!取れたッス!!!」
「おぉぉ・・・!本当に取れた・・・!」

取り出し口からウサギを抱き上げ、ジョアンヌは満面の笑みで頬ずりをする。払ったお金だって元をたどればウン十万単位で持っているYGP(ユーシャ・ガンバッタ・ポイント)だから実際には痛くもかゆくもない出費なれど、その笑顔が見られたのならば頑張った甲斐があったというものだ。

「ありがとうマコト!お礼に・・・今夜はたっぷりと御褒美あげるッスからね❤」 「あははは・・・楽しみにしてるよジョアンヌ」

無事にぬいぐるみが取れたところで、次は身体を動かすゲームへ。選んだのはこれまた定番のゲーム、エアホッケー・・・凝ったギミックなどはあえて無し、10点先取のガチンコタイプな筐体のようだ。

「ここは真剣勝負ッスよマコト!私が勝ったら今夜はローションガーゼしちゃうッスからね!」
「ちょっジョアンヌ?!頼むから手加減を!!!!お願いだから手加減してよね?!?!?!」

カンッ!カンッ!パックが盤面を滑り、互いのマレットが激しくぶつかり合う。言うまでもなく、ヴァルキリーたるジョアンヌに手加減なんてしている余裕はない。必死の思いでジョアンヌに食らいつき、試合中盤までは互角の勝負だった。しかし、試合が進むにつれて、僕はある「重大なハンデ」を背負っていることに気づいてしまった。

「そぉれ!スマッシュッス!」

ジョアンヌが腕を振るう。 そのたびに、薄手のニットの中で、Kカップの爆乳がたぷんっ、ぼよんっ、と激しく上下左右に暴れ回るのだ。重力に逆らい、あるいは従い、変幻自在に揺れ動くその「魅惑の爆乳」に、僕の視線は吸い寄せられて離れない。

「うわっ、すごい揺れ・・・って、あぁっ!」

ガンッ! パックが僕のゴールに吸い込まれる。得点にして8-9、ジョアンヌがマッチポイントに手を掛けた。

「ぬっふっふ〜マッチポイントッスよ〜♪さて動きに精彩が欠けてきているマコト選手、どこ見てるッスかね〜?脇見運転は事故の元ッスよ〜❤」
「くっ・・・だってジョアンヌの胸が・・・その、迫力が凄すぎて・・・」
「やっぱりスケベな敗因ッス!揺れるおっぱいに惑わされるようじゃ、まだまだ修行不足ッスよ!!それトドメッス〜!!!」

結局、エアホッケーはジョアンヌの勝利・・というより僕の自滅で終わった。心地よい疲労感と空腹感。時計を見れば、ちょうどお昼時だ。

「ふぅ〜、遊んだ遊んだ!お腹ペコペコッス!」
「そうだね、そろそろお昼にしようか・・・すぐ隣がフードコートだしホント便利だね」
「ホントッス!たっぷりエネルギー補給して・・・午後の『水着選び』に備えなきゃッスよ❤」

ジョアンヌが悪戯っぽくウインクをする。そうだった、午後のメインイベントはあの「3階」なのだ。戦利品のウサギを右腕に抱え、残る左手はジョアンヌに抱き着かれながら、香ばしい匂いの漂う「ファンタジア・キッチン」へと足を向けた。まだメインイベントに達してすらいないというのに、本当に心の底から楽しいなと思える時間・・・ジョアンヌとのデートはまだまだここからなのだ。


8月9日、晴れ、昼間―――――


「うわぁ〜!良い匂いッス〜♪何食べるか迷っちゃうッスね!」

フードコート、ファンタジア・キッチンはまさにお昼時のピークを迎えていた。和洋中、様々な料理の香りが混ざり合い、空腹の胃袋を強烈に刺激してくる。僕らは運よく窓際の二人席を確保し、セルフサービスの水を取ってからそれぞれ食べたいものを注文して席に着いた。

「ジョアンヌは何にしたの?」
「やっぱり勝負の後は肉ッス!『メガ盛りローストビーフ丼・温玉乗せ』ッスよ!」 「僕は『ベーコンたっぷりカルボナーラ』にしたよ、あと別にたこ焼きも買ったからシェアしようね」

なんておしゃべりをしている内にあっという間にお互いの呼び出しのベルが鳴る。料理を受け取って席に戻ったら一足先にジョアンヌが待っていた・・・30センチは下るまいという超巨大な肉の塔を目の前にして。

「うわぁ・・・ジョアンヌ、それ結構な量だけど大丈夫?」
「ペロリといけちゃうッスよ!デートにはスタミナが必要ッスからね❤」

目の前に置かれた肉の塔のようなローストビーフ丼を見て、ジョアンヌは幸せそうに手を合わせる。いただきます、と唱えてから彼女は豪快に、しかし女の子らしく上品に肉の塔を切り崩していく。

「んん〜っ! お肉柔らかいッス〜❤マコトも一口どうッスか?あ〜ん❤」

ジョアンヌがスプーンにたっぷりのご飯とお肉、そしてとろりと崩した温玉を乗せて差し出してくる。周囲は家族連れや他のカップルで賑わっているが、今の僕らにとっては関係ない。僕は素直に口を開け、彼女からの1口を受け入れた。

「んむ・・・っ!美味しい!お肉の旨味が凄いねコレ!」
「そうッスよね♪じゃあマコトのカルボナーラも食べさせてほしいッス〜❤
「もちろんだよ・・・はい、あ〜ん」

僕も自分のフォークでパスタを巻き取り、厚切りのベーコンを刺してジョアンヌの口元へ。パクり、と彼女がそれを頬張ると、花が咲いたような満面の笑みがこぼれる。

「んふふ〜❤これも美味しいッス〜❤マコトのチョイスも中々良い所突いてるッス〜❤」

こうして僕らは甘い雰囲気と美味しい料理の力で、午後の「メインイベント」への活力をチャージしたのだった。


――――――――――――――――――――


「ごちそうさまでしたッス! お腹いっぱい、幸せいっぱいッス!」
「ううん、本当に美味しかった・・・さて、それじゃあ次は」

トレイを返却し、エレベーターホールへ。目指すフロアは「3階」、レディース・ランジェリーのフロアだ。

「いよいよッスねマコト、向かうは男子禁制の乙女の園ッス!私の傍から離れたら一巻の終わりッス!心の準備はいいッスか?」
「お・・・おうともさ!・・・お願いだから手を離さないでね?」
「フロア一面ランジェリーまみれッスけど、今日は『ヴィーナスの勝負下着』ってお店に行くッス!フロアの一番奥にあるみたいッス・・・逃げ場無しッスねえ♪」

エレベーターが3階に到着すると、そこは先ほどのゲームコーナーやフードコートとは明らかに空気が違っていた。甘い香水の香り、パステルカラーやシックな色合いのディスプレイ。行き交う人々もどこか浮足立っているカップルや、真剣な表情の女性客が多い。ジョアンヌと恋人つなぎをしながら、彼女に先導されるようにフロアの奥へと目指して歩く。

「うわぁ・・・凄い数の下着達だね・・・」
「確かに圧巻の光景かもッスけど、マネキン相手に嫉妬したくはないッスねぇマコト君?」

フロア一面に並ぶ、色とりどりの下着たち。レース、シルク、サテンといった様々な素材・・・清楚な純白に情熱的な赤、大人びた黒。男一人では絶対に入れない聖域に、僕はドギマギしながらジョアンヌの手に引かれ、フロアの一番奥へと辿り着いた。

「ここッスね・・・さてさて・・・マコトをメロメロにさせちゃう奴を選ぶッスよ?・・・もちろん一緒に❤」
「あっ・・・う・・・うん・・・そうしよう・・・」

美の女神ヴィーナスの名を使うだけあって、陳列されている下着達は皆どれも大人びてセクシーなデザインな物ばかり。挙句の果てにはスケスケだったり紐だったり局部を露出するようなものまでも並んでいる。なんというか・・・想像以上に過激すぎて、クラクラしてしまいそうだ。

ノックアウト寸前の僕はジョアンヌの手に引かれるがままに歩くだけの状態・・・そして先行くジョアンヌが足を止めたのは、淡いピンク色を基調としたコーナーだった。彼女は真剣な眼差しでいくつかの商品を手に取り、吟味し、そして「これだ!」と一つのハンガーを高く掲げた。

「どうッスかマコト!今回の私の勝負下着は・・・コレにするッス!」

ジョアンヌが選んだのは、ほとんど布のない紐でも、透け透けのレースでもなかった。それは、彼女が普段好んで着けているピンク色の下着を、さらに可愛らしく、そして少しだけ大胆にグレードアップさせたものだった。

上品なベビーピンクの生地・・・けれど、その縁にはふわりとした白いフリルが贅沢にあしらわれていて、動くたびにヒラヒラと揺れる。ブラジャーの中央と、ショーツの両サイドには小さな赤いリボンが結ばれていて、可愛らしさの中に大人びた色気を煽るアクセントになっている。

「えへへ・・・・・・❤マコトはやっぱり、こういうのが一番好きかなって思ったッスけど・・・どうッスか?」

上目遣いで僕の反応を伺うジョアンヌ。正直大正解だった、いや、正解以上の回答だった。過激すぎるデザインも刺激的かもしれないけれど、僕にとってのジョアンヌの魅力は、この「ハツラツとした可愛さ」と「健康的な色気」の融合にある。いつものピンク色でありながら、特別な日のためのフリルとリボン。それが僕の性癖のド真ん中を見事に射抜いていたのだ。

「・・・その、最高だよ、ジョアンヌ・・・すっごく可愛いし、僕の好みど真ん中すぎてヤバいかも・・・」
「やったぁ!マコトにそう言ってもらえるのが一番嬉しいッス!」

ジョアンヌは嬉しそうにその下着のセットを商品カゴの中へ入れる。それを名残おしく目で追いかけてしまうのは・・・情けないことに僕がその下着を身に纏ったジョアンヌの事を空想してしまうからだ。

「それじゃあ次は、お隣の水着コーナーへ行くッスよ! 魔法の泉のための、とっておきを選ぶッス!」

ジョアンヌは上機嫌で僕の手を引き、ランジェリーコーナーからそのまま繋がっている水着エリアへと移動した。しかし僕の足取りはフワフワとしていて、地面を踏んでいる感覚が全くない。僕の脳内は、先ほどの光景―――――ベビーピンクの生地、白いフリル、そしてあの扇情的な赤いリボンで完全に埋め尽くされていた。網膜に焼き付いたその残像が、瞼を開けていても閉じていても、フラッシュバックのように繰り返される。魅惑的な下着を身に纏う・・・ジョアンヌの空想が止まらないのだ。

「マコト、マコトってば!!見て欲しいッス!このパレオ付きのブルー、爽やかで良くないッスか?」

ジョアンヌが鮮やかな青色の水着を身体に当てて、くるりと回って見せる。活発な雰囲気をクールさで包み込む、青い水着はとても似合いそうだ・・・そのはずなのだが。

「・・・うん・・・ピンクに白のフリルが・・・」
「マコト? 全然色が違うッスよ?これはブルーっスよ?」
「あ、そっか・・・でも、そのリボンがまた大人びて見えて・・・」
「これにリボンなんて付いてないッスよ・・・もしもーし?マコトさ〜ん?意識あるッスか〜?」

ジョアンヌが僕の目の前で手を振るが、僕の視点は定まらない。 今の僕には、どんな水着を見せられても、その上に幻覚の「ピンクのランジェリー」がオーバーレイ表示されてしまっているのだ。

「むぅ・・・完全に上の空ッスね・・・じゃあ、こっちはどうッスか?着るのも勇気が必要になる黒のマイクロビキニ!」

彼女が次に手に取ったのは、局部を隠すギリギリしか布地のない黒い水着。海水浴になんて着けていけば周囲の視線が釘付け間違いなしの圧倒的なセクシーさを誇るマイクロビキニである。

・・・なのだが。

「・・・黒いマイクロビキニもいいけど・・・やっぱり薄いピンクが・・・ジョアンヌには似合ってるかなって・・・」
「あははは!こりゃダメッス!マコトの脳内メモリ、さっきの下着でパンクしちゃってるッス!」

ジョアンヌはケラケラと笑い、愛おしそうに僕の頬をつついた。対する僕は、頬を突かれている感触こそ感じてはいるが、実感として脳が処理できていない始末だ。

「もう・・・そんなにあの下着、衝撃的だったッスか?水着なんてどうでもよくなっちゃうくらい?」
「・・・うん、正直今の僕のキャパシティじゃ、あれ以上の情報を処理できない・・・あのフリルが、最強すぎて・・・」
「素直でよろしいッス❤マコトをそこまで骨抜きにできたなら、私は文句無しッスよ♪」

ジョアンヌは「仕方ないなぁ」と微笑むと、僕の代わりにテキパキと棚から一つの水着を選び出した。

「じゃあ、水着は私の独断で決めるッス!・・・魔法の泉は『禊(みそぎ)』の場でもあるから、清楚な白!これにするッス!」
「白・・・うん、白も・・・でもやっぱりピンクが・・・」
「まだ言ってるッス!ほら、会計行くッスよ!このままだとマコトが知恵熱出しちゃうッスからね♪」

結局、僕は水着のデザインをほとんど確認できないまま、ジョアンヌに手を引かれてレジへと向かった。けれど、彼女が選んだその「白の水着」が、後に魔法の泉で濡れ透けになった時、とんでもない破壊力を発揮することなど、今のポンコツな僕は知る由もなかったのだった。


8月9日、晴れ、夕方―――――


セントラル・ファンタジアを後にした僕らは、真夏の熱気の冷めやらぬ斜陽時、通りを2つ挟んでの裏路地へ・・・歓楽街の中にあるお城みたいな外壁をしたホテルへとへと足を踏み入れていた。重厚な自動ドアをくぐり抜けると、そこは別世界だった。 真夏の容赦ない日差しと蝉時雨は遮断され、ひんやりとした空調の冷気と、柑橘系の甘いアロマの香りが僕らを包み込む。

「建物の中は・・・涼しいッスね、マコト」
「うん・・・生き返る気分だよジョアンヌ」

言葉数が少なくなってしまうのはケンカをしたからじゃない。お互いがもう待ちきれない程に気が急いてしまっているからだ。僕らが選んだホテルの名は『ホテル・エデン』・・・その名に相応しく、ロビーには人工の小さな滝が流れ、間接照明がクリスタルのオブジェを艶やかに照らしていた。

僕らは無意識のうちに、繋いだ手をさらに強く握り締め合ったまま、部屋を選ぶパネルの前へと進んだ。

「わぁ・・・どれも凄そうッスけど・・・」

パネルに並ぶ写真はどれも豪華絢爛だ。しかしジョアンヌの視線は迷うことなく、パネルの最上段―――――『Premium & Royal』と書かれたエリアへと吸い寄せられていく。

「マコト、ここにするッス!『501号室・ロイヤルスイート』!」
「えっ、一番高い部屋・・・ってYGP支払いが出来るから大丈夫だったね」
「ちょっと贅沢し過ぎかもッスけど・・・今日くらいは特別ッス❤お姫様みたいな天蓋付きベッドでイチャラブエッチするッス❤」

ジョアンヌが悪戯っぽく微笑み、躊躇なく「501」のボタンを押した。シュルリと部屋のカードキーが出てくる音が、妙に大きく響く。もう後戻りはできない・・・いや、後戻りする気なんて最初から微塵もないのだが。

エレベーターホールへと向かう数メートル、2人だけの足音がふかふかの絨毯に吸い込まれていく。呼び出しのボタンを押して更に数秒・・・チン、と軽い音を立ててエレベーターが到着し、僕らはその密室へと滑り込んだ。もどかしい想いで5階を選択し、閉のボタンを押しこめる。安全のためにゆったりと扉が閉まり、エレベーターが動き出した瞬間―――――

「んぅ・・・っ❤マコトぉ・・・❤」

ジョアンヌが堪えきれないといった様子で、僕の胸に顔を埋めてきた。 麦わら帽子のつばが僕の肩に当たり、カサリと音を立てる。その微かなノイズに助けられた・・・さもなくば、僕らはこのままエレベーターでおっぱじめてしまいそうになっていたのだから。

「・・・ジョアンヌ、大丈夫?」
「大丈夫じゃないッス・・・❤あの時は言わなかったッスけど、マコトがスケベな妄想でメロメロになってる間、私だってフルソウルリンクでそのメロメロに晒され続けてたッス・・・❤もう生殺しなんてもんじゃ無かったッスよ・・・❤」

彼女の吐息が、フルソウルリンク越しに伝わる想いが、サマーニット越しに僕の胸板を熱く濡らす。その熱は瞬く間に体の内側まで伝播し、僕の理性をも揺さぶってみせた。手にしたショッパー(紙袋)を持つ手が、汗でじわりと湿ってしまう。

「あはは、そりゃごめんねジョアンヌ・・・でももう少し・・・もう少しだけだから・・・ね?」

5階に到着するまでの十数秒が、永遠のように長く感じられた。 ようやく扉が開き、僕らはもつれるようにして廊下を進み、一番奥にある『501号室』の重厚な扉を開けた。

―――――わぁ・・・

部屋に入った瞬間、2人そろって感嘆の声を漏らしてしまった。広々としたリビングの向こう、一段高くなったスペースに鎮座するのは、まさに彼女の望み通りの巨大な天蓋付きベッド。窓の外にはテラスがあり、西に傾く太陽の下でジャグジーがキラキラと水面を輝かせている。まさに楽園と呼ぶにふさわしい豪華絢爛な一室・・・けれど、今の僕らにとって一番の楽園は、この豪華な設備そのものではない。ここが「誰にも邪魔されずに愛し合える場所」であるという事実だ。

「さぁマコト・・・❤デートの総仕上げ・・・たっぷりとイチャラブエッチ❤するッスよ❤」
「・・・ジョアンヌっっ!!!」

ジョアンヌはくるりと振り返り、麦わら帽子をサイドテーブルに置いた。 そして、潤んだ瞳で僕を見つめ、甘く、誘うように微笑んだ。思わず衝動的にジョアンヌを抱きしめようとしてしまう。けれど彼女は少しだけ悪戯っぽい笑みを浮かべて、僕の胸をトンと軽く押し返した。

「ちょっとだけ待つッスよマコト❤イチャラブエッチしちゃう前に、さっき買った下着・・・実はさっき行ったトイレでもう身に着けているッス❤」

ジョアンヌは僕の手を引き、ベッドの端に座らせる。そして、少し離れた場所に立つと、ミントグリーンのプリーツスカートの中へと手をかけた。

「全部脱いじゃうのは、いつでも出来るッス・・・だから最初は、このデート服のまま・・・マコトに見せつけるッスよ❤」

ジョアンヌがスカートを少し捲り上げる。そこに見えたのは、今日のデートのために履いてきてくれた、白いフワフワとしたペチコートだ。ふしだらさを爽やかさに昇華させていたその白いベールに、彼女の手が伸びる。

「まずは・・・邪魔なコレ、脱いじゃうッスね❤」

ゴソゴソとスカートの中で手が動き、するりと白い布が足元に滑り落ちた。これでもう、彼女のスカートの中には、もう何の障害物もない。あの「ピンクのフリル付きランジェリー」だけが、直に隠されている状態だ。心臓がバクバクとうるさく脈打ち続ける。フルソウルリンク越しにジョアンヌの羞恥心が伝わってくる・・・これが意味する答えはただ1つ、僕のためだけのエッチなお披露目会が始まろうとしているのだ。

「マコト・・・❤準備はいいッスか?」

上気した顔で問いかけると、ジョアンヌはそのままベッドの上へと這い上がった。サマーニットのノースリーブ、ミントグリーンのミニスカート、そして麦わら帽子だけは脱いで、サイドテーブルに置く。彼女はシーツの上で仰向けになると、僕の方をじっと見つめながら、両手でスカートをたくしこむように膝裏を抱えた。見えそうで見えない・・・なんとも焦れったい光景に心が騒めいてしまう。

「とっておきの悩殺ショット・・・マコトだけにしか見せてあげないッスからね❤」

羞恥に頬を染めたジョアンヌがゆっくりと、その両足を左右に大きく広げていく。たちまちスカートのプリーツが太ももに従って広がるように捲れ上がり、今まで隠されていた「絶景」が、あられもなく僕の目の前に晒された。

「・・・ぅぁっ!!」

息を呑むとは、まさにこのことだ。 清楚で爽やかなデート服の隙間から現れたのは、あまりにも扇情的な光景だったからだ。

「ほら・・・マコトの大好きな、M字開脚ッスよ❤瞬き禁止ッスよ❤」

スカートの裾が乱れ、太ももの白い柔肌が露わになる。そしてその奥、股間には、先ほど僕の脳を焼き尽くしたあの「ベビーピンクのフリル付きランジェリー」が鎮座していた。

「でへへへ・・・❤どうッスか?清楚系コーデ服を着たまま、中身だけこんなにエッチなことになってるッスよ・・・❤」
「でへへへ・・・❤・・・さ・・・最高っ・・・❤」
「やんっ❤やっぱり何回やっても慣れないッス❤マコトの熱視線だけでドキドキが止まらないッス❤」

恥ずかしさを堪えるように、ジョアンヌが腰をくねらせる。それは却って僕の劣情を煽る動きとなり、たっぷりとあしらわれた白いフリルが、彼女の秘所を縁取るように揺れる。パンティの生地はKカップのバストと同様に、豊満な恥丘の膨らみで内側からふっくらと張り詰め、中央に走る1筋の皺がイヤらしく僕の心を搔き乱す。さらに強烈なのは、スカートの緑色とランジェリーのピンク色のコントラストだ。「清楚な彼女」と「雌の顔をしたヴァルキリー」が同居しているその姿は、全裸になるよりも遥かに背徳的で、僕の理性を根こそぎ刈り取っていく。

「でへへへ・・・❤ジョアンヌ・・・パンツ丸見え・・・❤すごい・・・エッチすぎる・・・❤」
「でへへへ・・・❤そうッスよ、丸見えッス❤さぁマコト、ぬいぐるみを取ってくれたご褒美の話・・・覚えてるッスか?」
「あっ・・・そうだったね・・・でもご褒美って・・・?」
「とびきりエッチな御褒美あげるッス❤・・・マコトのスマホで・・・私のパンチラ写真・・・いっぱい撮ってもいいッスよ❤」

ガツンと脳みそを強打された気分だった。やるやらないは別として、健全な男子が一度は夢見るスケベな行為の集大成・・・彼女のパンチラ写真を撮る・・・しかも公認の元で。

震える手付きでもどかしくスマホのパスコードを打ち込み、カメラアプリを起動する。現代技術の集大成ともいえる超小型のカメラは、全自動でジョアンヌの股間にぴったりとピントを合わせてくれる。あとは撮影ボタンを軽くタップするだけで・・・カシャリ、目の前の絶景が写し取られた。

「スケベなカメラマンさんっ❤指示をくれたら色々ポーズを変えてあげるッス❤まだまだいっぱい撮って良いッスよ❤」
「あぁぁっ❤ジョアンヌっ・・・❤次はこう片方だけ脚を立てて・・・」

カシャリ―――――カシャリ―――――カシャリ―――――

ジョアンヌの脚を様々に組み替えさせたり、ドアップでとってみたり・・・公認の元のスケベな撮影会は撮影枚数にして100枚を優に超える勢いで止まらない。しかし最初の頃の写真とは決定的に異なる点が1つだけ・・・秘裂に食い込んだ布地の中央が、愛液でじわりと濃いピンク色に染まり始めていたのだ。今のパンチラ撮影会の恥じらいで、彼女自身も限界まで感じてしまっているのだ。

「フリルも、リボンも、濡れてる染みも・・・❤マコトに見られて、嬉しくてヒクヒクしてるッス・・・❤」

ジョアンヌはM字に開いた足の間から、とろんと蕩けた瞳で僕を見上げてくる。もう今度こそ十分だった、スマホをサイドテーブルに放り投げ、ガバリとジョアンヌの上にのしかかる。もどかしくズボンのチャックを降ろし、下着の前合わせからビィンと勢いよく反り返ったおちんちんが姿を見せる。

「でへへへ・・・ガチガチッス・・・❤さぁマコト・・・イチャラブエッチするッス・・・腰へこエッチ❤おまんこの奥にスリスリエッチするッス❤」
「ジョアンヌっっっ❤おぉぉぉぉっっっ・・・・・・!!!」

その言葉が、僕の理性の最後の一線を切断した。僕は獣のように唸り声を上げ、ベッドの上の愛しい獲物へと覆いかぶさって、その最奥めがけて寸分の狂いなく腰を差し当てる。

「はぁっ、はぁっ・・・!ジョアンヌ、その下着・・・ずらすよっ・・・!」
「んぅっ・・・❤来て・・・マコトぉ・・・❤そのまま、オクまで・・・貫いて欲しいッス・・・❤」

僕は震える手で、ジョアンヌの秘所を覆うベビーピンクのクロッチに指をかけ、横へとぐいっと押し広げた。 顕わになったサーモンピンクの粘膜は、愛液でドロドロに濡れそぼり、期待にひくついている。 そこへ、限界まで硬直した僕の楔をあてがい―――――

ヌプッ・・・❤チュルンッ❤ズニュルルルッッ❤

「んぎぃっ❤入ったぁっ❤マコトの熱いおちんちん・・・入ってきたぁっ❤」
「あぁっ、すごい・・・!根元まで締め付けが・・・・・・っ!」

根元まで埋まりきった瞬間、2人同時に甘い悲鳴を上げてしまった。サマーニットも、スカートも、そして降ろしたてのパンティも着けたままの交わり。布地のテンションが僕のモノを根元でぎゅうっと締め上げ、中は中でおねだりするように吸い付いてくる。背徳感と密着感が、脳髄を焼き切るほどの快楽を生み出していた。腰を降らずとももう十分に気持ち良い・・・だがしかし、際限のない欲望が僕らの背中を力強く後押しする。

「さぁ、マコト・・・❤お待ちかねの腰へこエッチ・・・❤するッスよ❤」
「うん・・・❤ジョアンヌの一番奥、いっぱいスリスリするから・・・❤」

ジョアンヌの上に覆いかぶさり、体重を預けながら、ゆっくりと腰を揺らし始める。 激しく出し入れするピストン運動ではない・・・結合部を離さず、最奥の子宮口に亀頭を押し当てたまま、円を描くように、あるいは押し込むようにして、ネチネチと擦り合わせる―――――至高の『腰へこエッチ』だ。

グリュッ・・・❤ヌチッ・・・❤グチュッ、グチュッ・・・❤

「あぁぁぁ〜気持ち良すぎるッス❤それッス・・・❤おまんこの一番敏感なところ・・・先っぽとカリ首でスリスリされるの・・・頭おかしくなるッスぅぅ・・・❤」
「僕も・・・気持ちいい・・・っ❤ジョアンヌの中、熱くて、柔らかくて・・・溶けちゃいそうだ・・・❤」

腰を押し込むたびに、ジョアンヌの子宮が僕のモノを受け入れ、喜ぶように震えるのがわかる。スカートのフリルと、パンティのフリル、そしてジョアンヌ自身の肉襞・・・幾重もの「柔らかさ」に包まれて、幸福物質で全身が溺れてしまいそうになる。

「でへへへ・・・❤ジョアンヌの顔、すっごく可愛い・・・❤トロトロだ・・・❤」
「でへへへ・・・❤そう言うマコトも鼻の下が伸びきって、最高にスケベな顔ッスよ・・・❤でも、そんなマコトが大好きッスよ・・・❤」

至近距離で見つめ合い、だらしなく笑い合う。フルソウルリンクを通じて、互いの「気持ちいい」「大好き」という感情が奔流となって流れ込み、快感を幸せを、何倍にも増幅させる。

「んっ、んぅっ・・・❤マコト、もっと・・・もっと奥まで、押し込んで欲しいッス❤」
「うん、もっと・・・ぎゅってするよ・・・っ!!」

ズムニュッ、ズリュリュッ・・・❤オネダリされるがままに腰をさらに深く沈め、恥骨と恥骨、布と布が擦れるほどに密着する。ジョアンヌのKカップが僕の胸板に押し潰され、互いの心臓のリズムが重なり合わさる気がしてとても心地よい。

「あぁっ、すごいっ、奥っ、届いてるッスっ❤ぐりぐりって、子宮口キスされてるッス❤も・・・もうイッちゃうッス・・・❤」
「ジョアンヌっ、僕も、もう・・・・っ!!!」

とろ火で煮詰められたような濃厚な快感が、臨界点を超えようとしていた。 我慢なんて言葉は、この甘美な泥沼の中には存在しない。ただ、大好きな女の子の一番奥に目掛けて・・・たっぷりと吐き出すだけだ。

「出して・・・欲しいッス❤今日ずっとドキドキさせ続けたマコトの特濃精子っ❤ぜんぶ・・・・・・❤私の奥に、ぶちまけて欲しいッス❤」
「出すっ・・・!全部出すからねジョアンヌっ・・・あぁ・・・ジョアンヌっ……大好きだぁっ!!!!」

身体の奥底から吹きあがる感覚に身を任せ、僕はジョアンヌを力いっぱい抱きしめる。腰を最奥に固定したまま、魂の全てを注ぎ込むように、ジョアンヌの膣内へと最高の脈打ちが始まった。

ドクンッ!!ビュルルッ❤ドプッ❤ドプププッ・・・❤ビュププッ❤

「んぎぃぃぃぃぃぃぃぃっ❤熱いっ、熱いッスぅぅぅぅぅ❤」
「っおおっっ、あっっ・・・はぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

長く、重く、そして甘い射精。下腹部から放たれた熱波が、ジョアンヌの胎内を白く染め上げ、溢れんばかりに満たしていく。彼女の肉壁もリズミカルに収縮し、最後の一滴までを搾り取ろうと蠢き、更なる脈打ちへとつながってしまう。

「はぁっ、はぁっ・・・・・・❤マコト・・・❤すごい、いっぱい・・・・・・出てるッス・・・❤」
「あぁぁっ・・・ジョアンヌ・・・愛してる・・・❤」

絶頂の余韻の中、僕らは繋がったまま、泥のように重なった身体を横たえた。 ベビーピンクのパンティはすっかりとぐしょぐしょに濡れ、サマーニットは皺くちゃに、スカートは乱れ、シーツには愛の痕跡が刻まれている。けれど、そんなことすらどうでもよくなるほどの幸福感が、部屋中を満たしていた。


8月9日、晴れ、夜―――――


「はぁ・・・はぁ・・・❤抜かずの3連戦・・・❤マコトってば出しすぎッスよ・・・❤お腹の中、タプタプで温かいッス・・・❤」
「あはは・・・ごめん、ジョアンヌが可愛すぎて、つい・・・」

あれから更に2度、僕はジョアンヌのナカへたっぷりと射精してしまった。欲望をひとしきり吐き出し終わったおちんちんは力を失い半立ち程度となり、ジョアンヌの下腹部でヒクヒクと幸せそうにノックアウトされている。

そんな僕らは気怠い事後の余韻に浸りながら、それでいて重なり合ったまま荒い息を整えているところである。汗と愛液、そして大量の精子で、僕らの身体も服もぐしょぐしょに濡れてしまっている。特にジョアンヌのあの可愛らしいフリル付きパンティは、見るも無残なほどに汚れてしまっていた。

「ふふ・・・でも、これじゃあ気持ち悪くて眠れないッスね・・・マコト、せっかくだからアレ、入るッスよ♪」
「アレって・・・ああ、テラスのお風呂?」
「そうッス!お互いにぐちょぬるッスからね・・・綺麗さっぱり洗い流すッス♪」

ジョアンヌが身を起こし、僕の手を引く。よろめきながら立ち上がった僕らは、服を脱ぎ捨て―――――いや、既に半脱げ状態だったものを完全に剥ぎ取り、一糸まとわぬ姿となってテラスへの窓を開け放った。

夏の夜の空気が一糸まとわぬ素肌を優しく撫でる。事後の痕跡をササっと洗い流し、共にジャグジーの湯の中へと身体を沈める。心地良い温かさにため息を零しながらも縁に腕を預け、僕らはぼんやりと眼下に広がる景色を眺めた。空はもう完全に藍色から漆黒へと変わり、そこに都会の夜景がまるで宝石箱をひっくり返したかのように煌めいている。

「わぁ・・・綺麗ッスねぇ・・・」

ジョアンヌが感嘆の息を漏らす。ここ「ホテル・エデン」は少し高台にあるせいか、街の明かりが一望できるのだ。眼下には、この界隈特有の少し猥雑でカラフルなネオンサイン―――――ピンクや紫、極彩色の光が、夜の闇に妖しくも魅惑的な花を咲かせている。その向こうには、整然と並ぶ街灯のオレンジ色と、彼方に見える高層ビル群の白い窓明かりが、光の海となって広がっていた。

特に目を引くのは、今日僕らがデートを楽しんだ「セントラル・ファンタジア」の白亜の巨塔だ。ライトアップされたその姿は、夜空に浮かぶ白鳥のように美しく、そこから伸びる幹線道路を走る車のヘッドライトとテールランプが、まるで黄金とルビーの川のように流れている。

「あそこで遊んでたんスね、私たち・・・」
「うん・・・ここから見ると、なんだか不思議な気分だね」

遠くから聞こえる車の走行音や、街の喧騒は、夜風に乗って微かに届く程度。その静けさが、ここが地上の喧騒から切り離された「2人だけの楽園」であることを強調していた。

ジャグジーの水面が揺れるたび、水中ライトの青い光と、遠くの夜景の光が複雑に混ざり合い、ジョアンヌの濡れた肌を幻想的に彩る。彼女の濡れたアッシュブロンドの髪と、長い睫毛の先には、都会の光の粒が宿っているようで、その横顔は息が止まるほどに美しかった。

「この景色も、今日の思い出も・・・全部マコトと一緒だから、こんなに輝いて見えるッスね」

ジョアンヌが夜景から視線を外し、とろりと潤んだ瞳で僕を見つめる。 その瞳の中に映っているのは、夜景よりも、僕自身の姿だった。

「どんなに綺麗な夜景も、今の君には敵わないよ」
「わっ・・・!すっごいセリフが飛び出したッス!!!でも不思議とクサく無いッス!!」

驚くほどにスッと出てきた言葉・・・キザな台詞だと自分でも思う。男磨き塾で「男らしい男」になるはずだった僕は、今や完全に「彼女に溺れる男」になってしまった。けれど、不思議と後悔はなかった。だって僕の目の前にいるジョアンヌが、こんなにも幸せそうな顔をしているのだから。

「えへへ・・・❤マコト・・・大好きッス・・・❤」
「僕も・・・大好きだよ・・・ジョアンヌ」

お湯の中でふわりと身体を寄せ合い、僕らは夜景をバックに、今日何度目かわからない口づけを交わした。それは激しい情欲のキスではなく、互いの心を温め合うような、甘く優しいキスだった。

間違えて入った塾。状況に流されるがままに結んだ契約。けれど、この間違いこそが、僕の人生で最大の「正解」だったと確信できる。

ブレイブハート・アカデミーでの夏休みは、まだ始まったばかりだ。この先、どんな試練が待っていようとも、僕はこの愛しいヴァルキリーと共に歩んでいこう・・・そう心に誓いながら、僕はジョアンヌを強く抱きしめ返した。
25/11/23 17:11更新 / たっぷりとしたクリーム
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■作者メッセージ
長文になってしまいましたが、最後まで読んでいただきありがとうございます!
今回はマコトとジョアンヌの初デート、そして「勝負下着」回でした。 個人的にM字開脚で見せてもらえるというシチュエーションと、「ピンクのフリル付き勝負下着」の破壊力をどうしても書きたくて、気合を入れて執筆しました。

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