連載小説
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プロローグ、男らしい男になりたくて
季節は夏真っ盛り、8月1日。

僕の名前は園崎マコト、至って普通の高校2年生の男子生徒だ。

ごく普通の家庭に生まれ、ごく普通の成績で中肉中背、ちょっぴり撫で肩なのが玉にキズ・・・なんてこんな事を言うのも時代錯誤的かもしれないが、さらに言うならば中性的な顔付きで、更に重ねて言うのならば・・・かなりの美人寄りな顔付きだ。

本気で化粧をして女装を試みれば、あっという間にスレンダーな美人の出来上がり。街にくり出せばモデルにスカウトされても可笑しくないと皆が言う・・・自分自身でさえも即座に否定しきれない事に腹が立つ。

だから僕は変わりたかった、男らしい男になりたくて・・・時代錯誤的だなんて言わないで欲しい、僕は真剣に悩んでいるのだから。

だから僕は高校入学と同時にアルバイトを始めていた・・・土日祝日の休日全てを返上してお金を稼いでいた・・・誓って言うが、このお金稼ぎは僕のワガママを押し通すための物だ。言われるまでもなく僕の両親は愛情たっぷりに僕を育ててくれている。僕の生活費や学費やら・・・国の定めた大人としての当然の責任を果たしている。

じゃあ僕のワガママとは何なのか・・・それはこの夏休みの間どんな軟弱者であろうとも、たったの1か月であっという間に一人前の男に磨き上げてみせると噂の塾へと入る為である。

その名を“男磨き塾”・・・清々しいほどにシンプルで分かりやすいその塾へと入塾するために、塾の月謝代1ヵ月分を・・・きっかり30万という普通の高校生男子が用意するにはべらぼうな額を稼いだのだ。

そりゃあ最初は両親だって止めてきた。なにせ金額が金額であるし、男を磨くための塾だとかいう訳の分からない場所へと大切な息子が入りたいのだと言ってきたのだから。

普通だったら許可しない。それは重々承知の上・・・だけど両親がそれを認めてくれたのだ・・・自分でお金を稼ぐことを条件にして。

両親は僕の心を見抜いていたのだろう・・・僕が文字通り藁にもすがろうとしていることを・・・それ程までに変わりたかったのだという事を。

男らしい男という正解が何なのかを分からないままで、それでも何も行動しないという選択だけは、絶対に嫌だったから。女々しい自分から変わるために、男らしい自分になるために。今日という日まで必死に頑張ってきたのだ。

そして1年間を掛けて大金を稼ぎきって見せた事に、両親はお前のその決意と熱意はもう十分に男らしいよと言ってくれた、塾に入るという事も、キチンと認めてくれた。

いよいよやってきた最後の総仕上げ、件の男磨き塾へと入塾し、誰もが認める男らしい男になるために・・・僕はこの夏休みを賭けて、変わって見せるのだ・・・!!!!!
25/09/28 00:26更新 / たっぷりとしたクリーム
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■作者メッセージ
早速新シリーズですねえ

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