連載小説
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1晩3200ゴールド、そして賽は投げられた
Tips・・・グラン・フォグリア王国

年中を通して濃ゆく霧が煙る山間部の中央に築かれた王国で、城下は堅牢な城塞都市、上層部は貴族や教団幹部たちの住まう煌びやかな街となっている。

主神教団の権力が国の政治にまでも強く影響しており、魔王を討つための勇者を養成し、祝福を授けて送り出すことを最重要の国策として取り組んでいる。レスカティエが陥落してから、長く勇者輩出量第一位であることを誉としているが、勇者育成のための資金源は国民に課せられる重い税によって賄われているのが実情である。

元は旅人だったハロルドがこの王国を訪れた折、路銀を稼ぐために傭兵として兵士の仕事をこなしてゆくうちにその実力を買われ、勇者として祝福を授かることになったことが、この物語の全ての始まりだった。

なお、勇者の剣を返却する旅の最終目的地である。


Tips・・・淫魔の大号令

力あるリリム、または魔物娘によって発令される他に類を見ない大規模なお婿さん探しの号令。

大抵の場合、号令の発令先は反魔物領の国であり、ひとたびこの号令の矛先となった国は抵抗むなしく、すべからく陥落してしまう。

当初は反魔物領だった国は魔物娘の勢力下に飲み込まれ、あっという間に国中の独身男性は皆等しく伴侶と結ばれて幸せに暮らすようになる。

反魔物領だったことなど皆すべて忘れ、目の前の愛しき伴侶へと夢中になってしまうのだ。


――――――――――――――――――――


満月の夜まであと1週間。グラン・フォグリア王国まで地図上では後1日という王国直近の町、夕暮れ空の時間帯にフォグレイブの町へとハロルドとミシェーラは立ち寄っていた。

―――――おっと旅人さん!号外の新聞をどうぞ!

野宿よりも宿をとフォグレイブへと立ち寄った2人に、町の入口で渡された号外の新聞・・・その新聞には非常に・・・とても・・・きな臭い記事が書かれていた。

「・・・ミシェーラ、この記事は一体何なのだろうか?」
「ええ、本当に・・・何なのでしょうね?」

―――――号外!勇者ハロルド・カーライル!遂に魔王を討ち取る!来る次の満月の日にて、戦勝祝賀式典を開催!

グラン・フォグリア国営新聞社から発行された号外新聞の大見出し・・・そこには“魔王を討ちとった”と大きな文字で書かれている。さらには見出し1面に大きく刷り出されているのは、勇者の剣を構えた勇ましい姿のハロルドの写真だった。この写真には覚えがある。魔王を討つ旅へと出立する前に、勇者の剣を構えた姿を記念に1枚撮っておきたいとか・・・教団が願い出てきた写真である。

つまり記事の内容はともかくとして、この号外新聞に写し刷られているのがハロルド・カーライル本人であることは明らかだった。

「これは私の女の勘なのですが、魔王はまだ討たれていないかと思います・・・真っ赤な嘘っぱちの記事ですね」
「ははは・・・何から何まで・・・きな臭さしか感じない」

やれやれと肩を落とすハロルド。ミシェーラは号外の新聞を丁寧に折り畳み、懐へとしまい込んだ。

「はぁ・・・全く勘弁してくれよ・・・厄介事の匂いしかしないじゃないか」

全く・・・教団へ勇者の剣を返却した後に、ミシェーラとグラン・フォグリアを観光してからユメハツカへと帰るつもりだったのに。予想外の陰謀の予感にハロルドはため息が止まらない。

「このまま無策でグラン・フォグリアへと辿り着けば、どうなるのか分かったものではありませんね」
「そうだな・・・とにかく情報を集めよう、ひとまずは宿を取って、酒場で情報屋に当たってみよう」

フォグレイブの宿屋は町の入口付近からも見える近場にあるようだ。気を取り直して宿へと歩こうとするハロルドの袖口を、クイクイとミシェーラが引っ張った。

「ハロルド様、大丈夫?おっぱい揉む?」
「っっと、ミシェーラいきなり魅力的な事を言わないで欲しいな?」

ミシェーラが真面目な顔つきで自らの豊満な胸元を両腕で持ち上げるように、軽く上下に揺さぶってみせる。たぷんむにゅんと魅惑的に揺れ動くその乳房・・・その柔らかさは手で揉み込んで恍惚、ペニスが挟まれて放蕩、毎日たっぷりと味わった事のある至福の柔らかさである。

「ハロルド様ったら先程からため息をたくさん着いてらっしゃいましたから・・・そんな時は、おっぱいを揉むと殿方は元気になるのだとか?」
「ありがとうミシェーラ・・・あぁ、もちろんおっぱい揉む、でも酒場で情報を聞いてからな?」
「うふふ・・・そうですね・・・今夜は久しぶりにこの胸を以て、たっぷりと貴方を甘く癒して差し上げましょう」

見上げるようにしながら胸元を揺さぶり、ゾクりとするほどの色気を持った流し目がハロルドに向けられた。予告甘やかしパイズリ・・・その甘美なる響きがハロルドの自制心に多大なる揺さぶりが掛かる。情報屋から話を聞いた後・・・いや宿につき次第・・・なんて待ちきれずに今すぐにでもミシェーラの豊満な胸元へと手を伸ばしたくなる。まだ人の往来のある道のど真ん中であろうとも関係が無いとすら思えてきた。このままでは理性が保てるのはもう一刻の猶予もないとハロルドは確信してしまう。

「よし行こうミシェーラ、急ぐから俺につかまってくれ」
「ふふふ・・・荷物ごと私を抱えてしまうおつもりですか?無茶を言わずに早歩きくらいにしておきましょう?」

早く情報を聞いて、ミシェーラの胸を思いっきり揉みしだきたい・・・そんな浅ましい欲望の一心で、早歩きを通り越して小走りになるハロルドの後ろをパタパタとミシェーラが追いかけるのだった。


――――――――――――――――――――


「ようこそ旅の宿屋へ、お2人共のご宿泊ですか?」
「あぁ、だが部屋は1つで構わない」
「であれば1晩3200ゴールドです」

懐から1000ゴールド札を4枚取り出して店主に渡すと、フロント下からお釣りを用意しようとした店主をハロルドは制止する。

「おっと釣りは良いんだ、その代わりに1つ聞きたい事がある」
「はい、なんでしょう?」
「この町で1番の情報屋に当たりたいのだが、酒場に行けば会えるだろうか?」

傍から見れば心づけを渡して手際よく情報屋へと取り次いでもらおうとしている・・・が、その実は一刻も早くミシェーラと愛し合いたいというのが本音であり、対する店主はそういう事かと合点のいった顔つきになる。何せ号外の新聞を店主だって読んでいたのだろう。恐らくだが皆が皆、ハロルドが魔王を討ったとは、素直に信じている訳でも無いらしい。謙遜な教団の信者であれば、記事の内容に疑いもしない所だろう。しかし宿屋の主人という客商売の立場では、どうしても中立的な考えにもなる。

宿の店主も記事の内容に懐疑的だったところに、当の本人と思われる勇者がやってきて、あまつさえ情報屋の場所を問うてきた・・・これが何よりの答え合わせとなった。

「勇者の割印を見せていただいても?」
「構わない、これだ」

懐から勇者の割印を取り出して店主へと渡す。もう片方の割印の移し紙と店主が合わせ比べ、本物であると認めた主人がメモ紙を1枚切り取って、何かを書き込んだ後にハロルドへと返してくる。

―――――霧の中の真実が見たい

「霧のランタン亭・・・という酒場があります、店の入り口にランタンが目印・・・そこのマスターにミルクをダブルで頼んだ後、このメモを渡してください、そうすれば情報屋と引き合わせてくれるでしょう」
「助かった、ありがとう」
「お部屋は2階の突き当たり、鍵はこちらです・・・では、ごゆるりと」


――――――――――――――――――――


宿の部屋に荷物を置いて身軽になったハロルドとミシェーラは、とっぷりと日も暮れ切ったフォグレイブの町へと繰り出していた。無論2人は旅装のフードを深く頭から被りながら・・・ハロルドは勇者ハロルド当人であるだなんてバレたら大騒ぎになるのが目に見えているから。ミシェーラはその圧倒的な美貌を町行く男が見逃すはずがなく、ほんの少しの隙あらば言い寄ってくる男達からのナンパ対策のためである。

夜の帳が落ちた町の中、頼みの月明りはいまひとつ、街灯のみが明かりな状況・・・フードを深くかぶってさえいれば、まさかここに件の人たる勇者ハロルドが誰もが振り向く絶世の美女を連れて歩いている・・・だなんて町行く人々は気が付いていないようだった。

そんな2人が目指す行先はもちろん酒場なのだが、フォグレイブの酒場は1つだけしかなく、その名を霧のランタン亭という。比較的大きな建物の入り口には目印のランタンが明るく周囲を照らしており、店内からはそれ相応の客が入り、賑やかに繁盛している様子が伺えた。

ひとまず入店すべく扉を開けたら来客者を知らせる高い音のベルが鳴り、看板娘らしき若く可愛らしい給仕係が空いている席へとどうぞ!と賑やかな店内に負けないように声を張っていた・・・とはいえもうテーブル席は満席のようだし、空いている席とはどこかと2人はしばし見渡すと、ちょうど隅っこの席が空いていることをミシェーラが見つけたようだ。

「ひとまずあのカウンターの隅が丁度2つ空いておりますね」
「あぁ、そこにしようか」

賑やかな店内と客を掻き分けるようにして、ハロルドとミシェーラはカウンターの隅の席に納まった。

―――――主神様にかんぱ〜〜い!!勇者ハロルドにかんぱ〜〜い!!!
―――――おいおいアンタ飲み過ぎだよ・・・それに昨日までは勇者なんて大っ嫌いだって言ってたじゃないか!
―――――うるせぇやい!いきなり魔王じゃなくたって、魔王の配下の1つでも討ちました!なんて成果すらも何年も無かったから、俺は勇者が大っ嫌いだったんだよ!
―――――そうそう!だいたい来月からただでさえ高かった勇者育成税がまた値増しになろうって時だったんだ・・・きっとその税の値上げも無しになるさ!なんてったって魔王が討たれたんだからな!
―――――主神様に栄光あれ!!勇者ハロルドに栄光あれ!!!

「ははは・・・現状把握の手間が省けて助かるよ」
「ええ、ハロルド様に栄光あれ・・・ですね」

聞く前から賑やかな店内に酔っ払いどもの声が響く。どうしたものかと2人で顔を見合わせているところに先ほど見た可愛らしい給仕係がメモを片手にやってきた。

「お待たせしました!ご注文はいかがなさいましょう?」
「2人分、ミルクをダブルで」
「2人分のミルクをダブル・・・かしこまりました!少々お待ちくださいませ!」

パタパタと去ってゆく給仕係を見送って、懐からメモ紙を取り出した。ミルクをダブルで頼む・・・それが合言葉のはず、何かしらの応対が向こうからやってくるのを辛抱強く待っていると、2人の前にこの酒場のマスターがやってきた。一見して強面の様相、身長も高く身体つきもがっしりと筋肉が付いている、まさに迫力満点の男性である。

「お客さん、ウチのミルクは特別製でね、“紹介状”が無ければお出しできないんだが・・・?」
「これがその“紹介状“・・・だろう?」

メモ紙をマスターに渡し、それを一瞥したマスターがメモ紙を懐に仕舞い込んだ。すると次の瞬間、大きく息を吸い込んだ大男が店中に響き渡る様な声で叫ぶ。

「悪いが今日は店じまいだ!料金は漬けといてやるからさっさと帰んな!!!」

たちまち店中が大慌てにごった返す、皆一様にまだまだ飲み足りねえぞ!だとか叫び返しながらも飲みかけのグラスを一気に呷り、ほとんど手を付けられていなかった料理を片っ端から口の中に放り込んでいる。あっという間に賑やかだった店の中はすっかりとがらんどう、ハロルドとミシェーラ以外の他は誰もいない状態となる。見送りから戻ってきた看板娘を迎え入れた後、酒場の扉が施錠された。

「内緒話を始めようか、ハロルド・カーライルさん・・・安心しな、あいつは俺の娘で口が固い」
「情報屋の場所を聞いたつもりだったんだが・・・?」
「俺がその情報屋さ・・・グラントという、よろしくな勇者ハロルド」

律儀に2人の目の前になみなみとグラスに入ったミルクが差し出された。そのグラスに苦笑しながら、2人ともおとなしく深く被ったフードを下げて、懐から勇者の割印を取り出して見せる。

「確かに・・・勇者の割印だな・・・で、何を聞きたいんだ勇者殿?」
「単刀直入に言おう、俺は魔王を討ってなどいない、そして他の勇者も含めて誰一人として魔王の城まで辿り着けていないだろう・・・・・なのにどういう訳か俺が魔王を討ったことになっている、この状況・・・何がどうなっている?」
「なるほどな・・・分かった、順を追って話そう・・・まずはグラン・フォグリアの勇者政策・・・これは覚えがあるよな?この政策は魔を討つための勇者の育成と支援とその・・・・・・」

グラントからの話を纏めると、グラン・フォグリアの勇者政策における費用・・・それらを賄うための重い勇者育成・支援税なるものが、国民の生活を苦しめ続けていることがすべての元凶のようだ。国民も何時かは勇者が魔王を討ってくれると耐えてはいたものの、待てど暮らせど勇者からのマトモな戦果は一向に報告されず、主神教団からの大発表の内容にも信ぴょう性が全くない。

それどころか勇者育成に関わる資金が足りないのだとかで更に税が重くなる始末・・・国民はみなもう勇者育成を国策として取り組んでいることに・・・それを主導している主神教団に対しての、疑いと反発の声が抑えきれなくなりつつあるのだ。

「主神教団の幹部連中は大方こう考えている、今回のアンタの大戦果・・・魔王を討ったという他にない大成果を以て、遂に抑えきれなくなってきた国民の不満を帳消しにしようとしているんだろう」
「でもそれでは少々無理がありませんか?もしもハロルド様が魔王を討ったのだと認めなければ、その企みは破綻してしまいます、むしろもっと反発を招きかねません」

もっともなことをミシェーラが問いかける。それに対しグラントは1枚の写真をハロルドに見せてきた。たちまちハロルドの身に衝撃が走る。そこには主神教団の聖堂にて、教団お抱えの兵士たちに連れられている姿が・・・見間違えるはずもない2人の男女の真正面の姿が写っている・・・その2人の人物とは・・・

「名をオーウェン・カーライルとマーサ・カーライル・・・お前さんの両親だよな?」
「あぁ・・・そうだ・・・これは・・・」
「人質・・・という訳なのですね」

渋い顔で写真を見つめるハロルド。気遣う様にミシェーラが手を握りしめてくる。

「このまま無策のままでグラン・フォグリアへと行けば、お前さんは両親を盾に主神教団への服従を強いられるだろう・・・恐らくそのまま次の満月の夜に開催されるとかいう式典まで監禁されるに違いない」
「だろうな・・・しかしどうしたものか・・・これではグラン・フォグリアへと入国したと同時に、教団側に拘束されかねない」

酒場の中を重い沈黙が包み込む。このままでは八方ふさがり・・・何も出来ないままに教団の傀儡にされてしまうなんて断じて許容できない。だが両親の事を見捨ててミシェーラと逃げる訳にもいかない。酒場の中に重っ苦しい空気が立ち込める・・・情報屋もこの状況を打破できるような情報を持ってはいないのだろうか?

「グラン・フォグリアへと忍び込む道ならある、王族がその昔、国外へと脱出するために作らせた公には秘密の坑道だ・・・だが先日大雨が降ってな・・・崩落してしまっているのを掘り起こそうとしている真っ最中なんだ・・・とてもすぐには掘り起こせそうにはないと聞いている」
「期日までには到底忍び込める見込みがない・・・か」

いよいよ本当に手詰まり、諦めたくはないが、いよいよ詰みの状態なのか・・・・・・

「・・・ハロルド様、この状況を何とかできる策が1つだけありますよ?」
「なんだって!?それはどんな策なんだミシェーラ!?」

この状況で唯一の希望を示したミシェーラにハロルドが縋りつく。そんなミシェーラは困ったような、考えを巡らせているような、躊躇っているかのような表情を見せる。

「・・・それは大変な策なのか?危険な策なのか?・・・・・・ここでは・・・言えないような策なのか?」
「はい、その・・・これ以上の話はハロルド様と2人きりでお話したいのです」
「・・・わかった、グラントさん、ひとまず情報をありがとう・・・代金は・・・」
「ははは、2人分のミルク代500ゴールドでいいさ・・・あと、勇者様がここに滞在している・・・だなんて情報は誰にも売らねえから安心しな」
「ありがとうございます・・・」

ハロルドは財布から500ゴールドを支払い、ミシェーラと共に宿への帰り道へ向かう。その帰り道すがらに2人に会話は無かった。だがしかし、その手はきつく結ばれたまま・・・ハロルドは起死回生の策も大切だが、自分が何やら重大な分岐点へと立たされつつあるのだと、言いようのない確信を持っていたのだった。


――――――――――――――――――――


宿の部屋の扉が閉まる。どこかぎこちなくミシェーラがベッドサイドに腰かけて、その隣にハロルドが腰かける。なんだかすごく嫌な感じだ・・・教団の傀儡になるなんて比にもならない程の不快感、ミシェーラとギクシャクしてしまう事のほうがハロルドにとってはよっぽどに辛い状況だと言えた。

「ミシェーラ・・・その、無理にその策を話さなくてもいいんだ・・・別にその・・・教団の言いなりになるのも・・・まぁ・・・何とかなるかもしれないじゃないか・・・な?」
「いいえ・・・これは何時かはお話しなければならない事なのです、これからも貴方へと添い遂げるためには・・・いえ、むしろ遅すぎたくらいかもしれません」

ミシェーラが恐る恐るそう告げた。不安そうに視線を彷徨わせているミシェーラが痛々しくて堪らなくて、思わずミシェーラを強く抱きしめてしまう。

「っっハロルド様・・・おやめください・・・決心が・・・挫けてしまいそうになります・・・」
「何を告げようとしているのかは知らない、だがそこまで辛そうにされていると・・・俺も辛い・・・だから・・・もう・・・」
「ふふふ・・・ハロルド様はお優しい・・・それでこそ私の勇者様、私の愛しい伴侶様、私の生涯を賭けて愛し添い遂げるお方・・・だからこそ、あんな奴らの言いなりになんてさせたくないのです・・・」

抱き締めたミシェーラが離してほしいと肩を軽く叩いてくる。おずおずとミシェーラを離したハロルドの前、ベッドサイドから立ち上がったミシェーラが決意を固めた顔つきになる。

「全てを何とかする策・・・それはグラン・フォグリア王国を攻め落とし、あの国を反魔物領から親魔物領へと作り変えてしまう事です」
「グラン・フォグリアを攻め落とす?!反魔物領から親魔物領・・・だって?!そんな・・・いったいどうやって・・・?」
「私が集合の号令を掛ければ、3日もあればこの国を攻め落とせるだけの魔物娘達が集まってくれるのです・・・私ならば・・・それが出来る」

ミシェーラの口から紡がれたのはグラン・フォグリアを攻め落とすという予想だにしない策だった。そのままミシェーラが旅装に手をかける、するりと脱ぎ落された裾の長いワンピースが重力に引かれて床にパッと舞い落ちて、上下揃いの深い蒼の下着姿になる。

この期に及んでその美しさに息を飲みかけて、イヤイヤ今はそれどころではないのだとハロルドは混乱した頭に必死に酸素を送り込まんと深呼吸を繰り返す。

「私はミシェーラ、現魔王夫妻よりし生まれた数えきれない娘たちの1人、私は・・・“リリム“と呼ばれる魔物娘だったのですよ」
「ミシェーラがリリム・・・そうか・・・だから君は・・・」
「ハロルド様、どうか私の秘密を・・・私の本当の姿をご覧くださいませ」

その瞬間ミシェーラから強い光が放たれた。思わず目を閉じたハロルドが、次にその目を開いた瞬間、目の前に像を描き始めた存在にハロルドは息を飲んだ。

「如何・・・ですか?私の本当の姿・・・貴方にとって私は・・・」
「大丈夫・・・ミシェーラはミシェーラだ・・・俺にとっての一番大切な人、俺の愛している人に違いはない!」

そこに立っているのはミシェーラである・・・それは見間違うはずがない。されどミシェーラは今までとは姿恰好が異なっていた。しかしそれでもミシェーラへの愛情は一片たりとも曇ることは無い。その愛の言葉にミシェーラがどこかホッと胸を撫でおろしていたことに気が付いて、それだけ彼女を思い詰めさせた自分の不甲斐なさに腹が立った。

姿が変わろうともミシェーラはミシェーラ、その愛おしさに一切の変わりはないのだと証明するために、今一度、ハロルドはミシェーラの事を優しく抱きしめた。腕の中に感じる愛しい温もり、愛しい香り、愛しい柔らかさ・・・愛しい気持ちを伝えたくて、頭を撫でさするところにコリっとした硬い部位・・・彼女の角だろうか・・・その感触が妙に心地良くて、その角らしき部分を丁寧に撫でさする。

「すまなかったミシェーラ・・・ずっと胸の内に秘めさせて、いよいよになって無理に告白させてしまったな・・・辛い思いをさせた、本当にすまなかった」
「いいえ・・・良いのです、姿を偽っていたのは私なのですから・・・勇者を誑かした悪いオンナは・・・私なのですから・・・」
「それでもさ・・・君と出会えたことに後悔はない・・・愛している・・・ミシェーラ」
「私も・・・ハロルド様の事を・・・心よりお慕いしております・・・」


――――――――――――――――――――


ひとしきり愛の抱擁を交し合った後、改めてリリムとしての姿のミシェーラの全身を見てほしいとねだられて、ハロルドは愛しい人との間違い探しに励むことにした。

まずは頭の上から・・・ミステリアスで儚げな雰囲気をまとい、ふわりと滑らかに揺れ動くボブカットの銀髪は変わらない、しかしその頭頂部に艶やかな黒の巻き角が2対あることに目が付いた。その片方の角はどうやらまだ生え掛けのようで、髪からほんの少しだけ顔をのぞかせる程度の短さだった。

この角には見覚えが・・・そう、ミシェーラと初めて会った時、宿の鍵に付いていた艶やかな黒い角飾りである。一目見た時から言葉にできない美しさを感じ、ミシェーラの元から旅立った時も、隙あらばその黒い角飾りを眺めてしまっていたのだ。今はハロルドの腰に帯びられている細剣の柄に移されているのだろう・・・懐の細剣と彼女の角を見比べてそれを確信した、この角は・・・ミシェーラが自分のために自ら手折って飾りにしたのだろうと。

「この角飾り・・・一目見た時から気に入ってたんだ・・・君の角なんだろう?」
「うふふ・・・嬉しい・・・私以外と結ばれることのないように、因果律操作の魔法は掛けてはいましたが・・・それでも他の魔物娘に取られないように私の匂いをずっと身に着けていてほしくて・・・手折った甲斐がありました」
「因果律操作って・・・全く君はどれだけの魔力を持っているんだか・・・あぁそうか・・・その赤い瞳は・・・」

そしてハロルドは眼差しが違う点に気が付いた。深みのある琥珀色の瞳だったのが、凄まじい魔力を秘めた赤き瞳に変わっていたことに。その目と目が合った瞬間にドキリとハロルドは胸が高鳴ってしまった。

照れ隠しのように目を背けたい気持ちをぐっとこらえて、視線が胸元へと舞い降りる。見てみる限りここは・・・特段変わってはいない。ミシェーラと何度も何度も愛し合う中で、数えきれないほどに触れて、揉んで、挟まれて・・・吸い付いたりもした豊満で魅力的なミシェーラの胸のままだった。

「この胸も・・・貴方だけの物・・・この胸をたくさん愛していただきましたし、これからもこの胸を以て貴方を愛してあげたい・・・」
「何時も夢中にさせてもらっているさ・・・また後で、いっぱい触らせてほしい」

2人でまたふにゃりと笑い合い、視線がおへそ辺りへと下がる・・・そして一番大きな変化がここに見えた。ミシェーラの背骨辺りから、彼女の髪色と同じ翼が両対に生えていたのだ。柔らかそうなその翼は妙な艶やかさを以てハロルドを魅了してきて・・・

「ミシェーラ・・・翼を・・・触っても良いか?」
「え・・・ええ、どうぞ・・・優しく・・・お願いします」

恐る恐るハロルドがミシェーラの翼に手を伸ばす。触れた指先にふにょんっ・・・と胸ともお尻とも違う摩訶不思議な柔らかさが何とも心地良い。思わず両手を使ってむにむにぐにぐにとミシェーラの翼を弄り倒すハロルド、この感触が癖になってたまらない、翼を弄り倒す手付きが段々とねちっこくなってゆきかけたところで・・・

「ひうっ・・・あの・・・ハロルドさま・・・そこはくすぐったいので・・・あまり激しく触らないでくださいませ・・・」
「あっ・・ああ、すまないミシェーラ・・・その・・・想像以上に触り心地がよくてつい・・・」

とっくに心を通い合わせて、裸だって今まで何度も見合ってきた仲だというのに、2人はなんだか可笑しくなってきて笑い合う。この笑い方も何度目だろうか・・・心の底からポカポカと温かくなるような感情、幸福感とはこういう物だと言葉に言い表せない心地よさを噛みしめる。

「ほら・・・ハロルド様・・・ここは“どう”変わっておりますか?」
「いいね・・・何とも刺激的なお尻・・・と魅力的な尻尾だね・・・」

こちらに向けてお尻を突き出すような格好を取るミシェーラ。魅惑のヒップを覆う深い蒼の下着とふっくら盛り上がった股間に目が吸い寄せられる。たちまちハロルドの下半身がズボンの中でグングンと頭角を現し始め、早くあの淫らな蜜窟に突き込めと主張を始めた。本能のまま・・・このままバックでミシェーラを貫いて、激しく腰を振りたぐりたい・・・としてしまうのが何時もの事、でも今回はこちらを魅了するかのように揺れ動く尻尾に集中しなければ。

「この尻尾・・・触っても・・・?」
「ええ、どうぞ・・・しかし翼と同じく、あまり激しく触られるとくすぐったいので・・・優しくお願いしますね?」

ふわりと優しく握ったミシェーラの尻尾は先ほど触った翼と同じく摩訶不思議な触り心地、しかし翼と違う点があるとするならば、翼は当然骨格に値する部位が存在しているのに対し、尻尾は何処までもしなやかな筋肉にも似た作りになっているところだろうか。

ふにふにと尻尾の感触を楽しむかのように優しく揉みしだくと、ミシェーラの声色がじっとりと熱を帯びてゆくのがよく分かった。

お互いに、真なる意味で裏切りも秘密もなくなった。

お互いに、真なる意味で心を通い合わせる時が来た。

下腹部をググっと押し上げるハロルドの肉棒が取り出される。ミシェーラが期待を込めた熱い眼差しでこちらを振り返り、ゾクりとするほどの流し目を使って誘惑してくる。

「防音魔法は掛けました・・・ハロルド様・・・どうぞ私を・・・抱いて・・・」
「あぁ、もちろんだミシェーラ・・・これからもずっと・・・ずっと俺たちは一緒だ!」

何時ものように深い蒼の下着の股布をズラし、何時ものように濡れそぼった魅惑の花園へと肉棒を突き入れる。

何時も、何度も、繰り返してきたその所作が・・・今日は一塩に、幸せだった。

「あぁぁぁっ・・・❤ハロルド様・・・ハロルド様のおちんちんが・・・私のナカにぃ・・・❤」
「あぁ、入っている・・・君の奥まできっちりと・・・動くぞミシェーラ・・・」

ぱちゅんっ、ずちゅっ、ずにゅるっ、ぱちゅ、ぱちゅ、ずちゅん。

リズミカルに腰を振り、ミシェーラの蜜窟を掻きまわすハロルド。突き入れる度に肉棒が幸せに蕩けて、引き抜くたびに腰が震える心地良さが背筋を駆け上る。ミシェーラの喘ぎ声も今までは艶やかなもので、どこか高貴な女性の堪え切れないような色っぽい声だったのだが・・・・・・

「あんっ❤あぁぁんっ❤んぁんっ❤ハロルド様っ❤ハロルド様っ❤ハロルド様ぁぁっ❤」
「ぐっ・・・あぁミシェーラ・・・ミシェーラっ・・・ミシェーラぁぁっっ!!!」

しかし今は違う、後ろめたかった秘密を全てさらけ出したからなのか、同じ喘ぎ声なのに心の底からの幸せが混じったかのような声だ。それは目の前のオンナを喘がせているのは自分なのだという、男心を狂おしく焚きつけるような声質・・・ハロルドは焚きつけに焚きつけられた欲望の炎・・・否、欲望の烈火に身を任せ、一心不乱に腰を振りつけ続ける。

ミシェーラの蜜窟へ抽挿を繰り返す、ミシェーラの甘ったるい喘ぎ声がハロルドの心を燃え上がらせる・・・まだまだ腰を振り続けることの体力は問題ない、しかし先に音を上げたのは何時もハロルドの肉棒の方。ハロルドの腰の奥底が甘く疼き始め、きゅうっとぶら下がった子種袋が収縮する感覚に思わず身震いしてしまう。

「あぁぁっ❤ハロルド様っっ❤何時でもお出しになってくださいっ❤ハロルド様の欲望をっ❤私のナカに一滴残らず注ぎ込んでぇぇぇっっ❤」
「っっミシェーラ・・・なんてイヤらしいことを・・・うあぁぁっっ・・・出すぞミシェーラ・・・受け取れ・・・っっ」

放出の予感をミシェーラが機敏に察知した。その最高の吐精の切っ掛けになったのは愛しい人からの種乞いによるもの。普段からあれだけ高貴な身のこなしをするミステリアスな美女から、欲望を直接殴りつけてくるかのような下品な願いに・・・ハロルドの身体は、全力の射精によって返礼する。

「ぐっっ・・・絞られ・・・ぁぁっ・・・出るっ・・・まだ・・・ミシェーラ・・・っっはぁっっ」
「あぁぁぁぁぁっ❤熱いぃっ❤オクがぁっ❤熱いぃぃぃっっ❤」

びゅるり、びゅるり、びゅるり、びゅるり・・・ミシェーラの奥底をグイグイと押し当てながら、何度も何度もハロルドの肉棒は射精の脈打ちを繰り返す。その身に待ちわびた子種の熱を受けたミシェーラもガクガクと腰を震わせ続け、女の幸せの極致へと至ったであろう甘ったるい悦楽に酔いしれていた。

その間たっぷりと数分、2人はじっくりと互いの熱に酔いしれてから、ようやくもって身を離しあうことを・・・するはずもなかった。

「まだ・・・まだまだ行くぞミシェーラっ・・・夜が明けるまで・・・君をずっとずっと・・・抱き続けてやる・・・っっ」
「あぁぁぁっ❤嬉しいっ❤嬉しいぃぃっ❤抱いてっ❤夜が明けるまでっっ❤ずっとおちんちんを挿れっぱなしにしてぇぇっ❤」

ほんの小休止、されど2人の欲望が勢いを弱めることは一切ない。ハロルドの宣言通り、ミシェーラからの願い通り・・・今夜から明日の朝にかけて、2人の愛の営みは終わることなく続けられる。

具体的なグラン・フォグリアの攻め落とし方だとかをまだ聞いていない・・・だが今はそんなものはどうでもよかった。今、一番大切なことは目の前の愛しい伴侶との熱い交わりだけ。それも明日の朝まで・・・なんて言わずに3日3晩くらいは余裕でミシェーラと交わっていられるのだとハロルドは確信している。

「あぁっ・・・また・・・出るぞミシェーラ・・・おおっ・・・出るっ」
「んやぁぁぁぁぁっっ❤ハロルド様ぁぁっ❤はぐっ・・・❤ダメっ❤奥をつぶされてしまいますっ❤潰されながら熱いの出すのだめぇぇぇぇっ❤」


旅の最終目的地たるグラン・フォグリアまで後1日。ここに来てハロルドとミシェーラの絆は完璧なまでに1つとなったのだった。







魔界勇者ハロルドはもうじゅうぶんにつよい・・・!
メインクエストの目的が「勇者の剣を返却する」から「グラン・フォグリアを攻め落とし、親魔物領へと作り変える」に変更されました・・・!
蜃気楼の町ユメハツカの宿屋の主人にして、現魔王の娘の1人、リリムのミシェーラが仲間にくわわった・・・!
ハロルドはミシェーラから大切な物、“ミシェーラからの真なる愛”を手に入れた・・・!
代わりにハロルドはミシェーラへと大切な物、“ミシェーラへの真なる愛”を贈ることにした・・・!


魔界勇者ハロルドのミシェーラへの愛情はこれ以上あがらない・・・!だがしかし、魔界勇者ハロルドは限界を超えてミシェーラへの愛情がさらに上昇した・・・!


魔界勇者ハロルドはミシェーラに言葉にできない程物凄く、心から深く深く彼女を愛し、とても強く、彼女以外の女性など眼中に入らない程に、心からミシェーラの事を愛し、今後の人生を賭けて幸せにして見せると誓い、自分のお嫁さんたるミシェーラ魅力に夢中になってしまった・・・!
25/08/24 01:21更新 / たっぷりとしたクリーム
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■作者メッセージ
他サイトへの投稿などもあり、長らくお待たせしました!!

皆さまが気にかけていらっしゃった、ミシェーラの正体を知らないままである点、全体構成では最終決戦前に知り、そして更に絆が固く結ばれる・・・というものでした!

さぁ勇者ハロルドの物語もいよいよ大詰めとなります!

ハッピーエンド確定なので安心して待っていてくださいね!!

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まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.33