連載小説
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勇者レベル100、状態:ふつう、所持金:2,401,856ゴールド
勇者レベル100、状態:ふつう、所持金:2,401,856ゴールド
装備品:勇者の剣、聖なる鎧
大切な物:勇者の割符


「見間違いじゃない・・・蜃気楼の町は本当に実在したのか」

小高い丘から見下ろした先、その眼差しがしっかりと捕えたその先に、小さな町が確かにあった。距離にしてここから歩いても1時間はかからないだろう距離、空を見上げれば日も沈み始めるころ・・・男は思わず安堵の溜息をついた。

何故ならば魔王の城までは現在地から歩いて後2日かかる見込み、今来た道を3日程戻れば直近に立ち寄った町に戻ることが出来る。そして肝心な水に食料の残りは3日と少し・・・あの町で補給を出来なければ、いざ魔王の城で魔王を討つという責務を果たそうとも、帰りの道で干乾びる定めとなるだろう。

水に食料の補給は必須項目なれど、夜襲の心配なく宿で眠ることが出来るというのは、一人旅では何にも代えがたい魅力的な判断材料である。

「よし、あの町で十分に準備を整えてから、魔王の城へと出立しよう」

そう決断し、眼下の町へと歩き始めた男の名は“ハロルド・カーライル“・・・主神の名のもとに祝福を受けた一人の勇者である。


――――――――――――――――――――


―――――見知らぬ顔を見たと思えば!旅人さんじゃないか!ようこそ旅人さん、ここはユメハツカの町だよ!

空もだいぶ夕暮れ模様、ハロルドは無事に蜃気楼の町“ユメハツカ”へと辿り着いた。

ユメハツカ・・・それは別名として蜃気楼の町と噂されている謎多き町の名である。その町がなぜ蜃気楼の町として有名なのかを簡単に説明すれば、そもそもこの町は地図に書かれていないのだ。その町に滞在していたという旅人の証言もあれば、付近を通ったが何もなかったという商人の証言もある。

まるで蜃気楼のように在ったり無かったり・・・しかし、運よくその町にたどり着くことが出来たのならば、その町は魔王の城の直近にある“最後の町”として拠点にできるだろうね・・・と酒場の女将が教えてくれたのだ。

もう今日は夕暮れ時、物資の補給は明日にするとして、ひとまず宿を取ろう・・・ハロルドは町の入り口で出会った町人に宿屋の場所を訪ね、案内された先・・・この町で唯一の宿屋へと歩を進める。

程なくして目に見えてきたその宿屋は、町の表通りから少し外れた、小さな石畳の路地の奥にひっそりと佇んでいた。決して大きくはないが、どっしりとした木造二階建ての建物で、屋根は使い込まれた濃い藍色の瓦で覆われている。所々苔むしているのが、この場所でどれほどの時が流れてきたかを物語っていた。

宿屋の扉を開き、カランコロンと来客者を知らせるベルが鳴り響く。さほどの間もなく宿のフロント奥から現れた・・・1人の女性から発せられた定型文ともいえる言の葉が・・・勇者ハロルドの堕落の始まりだった。

「いらっしゃいませ、旅のお方・・・ここは旅の宿屋です」

鼓膜を揺らしたのは女性にしては低めの声質ながら、それでいてこもらずに透き通るような響き・・・思わずうっとりと聞き惚れてしまい、来店者に向けての決まり文句も右から左にスルリと吹き抜けてしまう。

そして真っ先に目を惹かれたのは身にまとっている水色のローブの胸元・・・ついつい不躾な視線で眺めてしまうのは男の性・・・まさしく豊満な果実と評するにふさわしい、巨大な存在感を放つ胸元。しかも上半分が大きく開け広げられているから上半球の谷間の深さたるや、間に挟めば確実に手の平いっぱい余裕で包み込むことが出来るほどの、ズクンと欲望を促すかのような魅惑の谷間が広がっていた。

どこを見ているのですか?と尋ねるかのような視線を感じ、慌てて見上げた先・・・ミステリアスで儚げな雰囲気をまとい、ふわりと滑らかに揺れ動くボブカットの銀髪が何とも彼女に似合っていて、目と目が合った瞬間に深みのある茶色・・・いや、琥珀色の瞳から目を離せなくなってしまう。

極めつけに薄く差された紅の唇がもう・・・直視できない程に艶やか。たかが唇一つで初心過ぎる反応をしてしまうのは彼女の魔性とも言っていい美しさがなせる業なのだろうか。

ハッキリ言って絶世の美女。自分に勇者としての責務が無ければ、二の句は彼女に対する口説き文句になりかねなかった・・・一目惚れといってもなんら差支えがない程に、まだ名も知らぬ彼女に魅了されてしまっていた。

「改めまして、旅人の宿へようこそ・・・1晩夕食付きで32ゴールドです」
「は・・・?32ゴールド・・・だと?」
「はい、1晩夕食付きで32ゴールドです」

思わず聞き返した32ゴールドという値段。それはあまりにも安すぎる値段だったからだ。参考までに比較するが、子供向けのジュース1本50ゴールドあたりが相場であろう・・・宿屋の値段にしてはあまりにも安すぎると思わざるを得なかった。

「その・・・失礼ながら、安すぎないか・・・?1晩32ゴールドとは・・・」
「・・・?そうでしょうか・・・?十分なお代は頂いているつもりですのでお気になさらずとも大丈夫ですよ?」

そう言って小首をかしげた彼女の可愛らしさに、思わず心臓がキュッと高鳴り、いやそれならいいんだ・・・とそれ以上の追及をせずに懐から財布を取りだして、きっちり32ゴールドを支払った。残りの路銀からすればたかが32ゴールドぽっち・・・あと何回払えるかだなんて、そんな計算する気も失せる程には財布は重たいのだから。

「確かに、ではこちらの帳簿にお名前を頂けますか?」

フロントのテーブル越しに前屈みに差し出された帳簿よりも、彼女の深すぎる胸元の谷間に目が吸い寄せられそうになりながら、慌てて目を逸らしてペンを走らせる。先ほどから自分はどうかしてしまっている、いくら目の前の彼女が絶世の美女であろうとも、不躾に舐め回すように見過ぎである。

「お名前ありがとうございます・・・ん・・・?ハロルド・・・ハロルドと言えば・・・まさかあなたは勇者ハロルド様・・・?」
「ん・・・たしかに勇者としての祝福を受けたハロルドは自分だが・・・それが何か?」

懐から主神教団から認められた勇者の証である、主神教団の刻印が為された割符を見せる。それをみた彼女は大きく納得が言ったかのように頷き、その拍子で揺れ動く胸元に目が吸い寄せられて・・・慌てて目を逸らす。

「この辺境の町にも勇者ハロルドの名声は聞こえてきます、こんな小さな宿屋を営む私の耳にも・・・恥ずかしながら、一度でいいからお会いしてみたいと夢見ていたのです」
「それは光栄なことだが・・・何だか少々くすぐったい気分だな」

そう言いながら少しだけ肩をすくめて見せる。確かに今まで訪れた町で勇者様だと祀り上げられたことは少なくなかった。こんなことを言うのも俗っぽくて何だが、麗しき女性たちにどうか一晩だけでも夢を見させてほしいと言い寄られたこともある。それでも彼女に勇者として称えられるのは別格だと言えた。今までに経験したことのない程の言葉にできない愉悦感が込み上げてきて、思わず頬が緩みかけてしまって慌てて引き締める。

「こちらがお部屋の鍵です、“コレは1つしか”ありませんので失くさないように気を付けてくださいね?」

帳簿をしまった彼女が、代わりに部屋の鍵を皮のお盆に乗せて差し出してくる。それはすべすべとした手のひら大程の大きさの黒い角のような装飾に、銀のチェーンで鍵がぶら下がっていた。しかしその鍵はただの鍵ではないのだと言いようのない感覚を覚えた。それは何とも説明のつかない感覚で、この角飾りの鍵は凄く貴重で価値のある物のような、妙に大切な物だと感じてしまうのだ。

「お部屋は2階の一番奥、202号室です・・・ところで、一つ提案をよろしいでしょうか?」
「む・・・?なんだろうか?」

手に取ってしげしげと眺めていた黒い角から彼女へと向きなおす。ミステリアスな表情ながら、ほんの少しだけ微笑みを浮かべた様子・・・そう、何故だかは分からないが、この角に夢中になっていたことが彼女にとってとても誇らしいようなそぶりに感じられる。

いったいどういうことかと思案する前に、彼女からの問いかけがその疑念をかき消した。

「せっかくですから、お客様の事をハロルド様とお呼びしても良いですか?」
「あぁ・・・それは構わないが・・・」
「ふふ・・・ありがとうございます・・・ハロルド様」

肯定の返事を受けて、彼女が嬉しそうに微笑みかけてくる。只の客としては1歩踏み込んだ関係となったことが、何故だか自分も嬉しく感じてしまう。

「申し遅れました、私はミシェーラ・・・この宿の主人なのですが、唯一の従業員でもあります・・・普段はこのフロントか1階の厨房にいますので、なにか要件がございましたら、私をお探しくださいませ」
「ああ、よろしく・・・ミシェーラ」
「では、お部屋までご案内しますね」

そう言ってミシェーラがいったんフロント奥へと下がり、横の従業員入り口からこちらに歩み出てきた。当然、フロントの机越しには伺えなかったミシェーラの全身があらわになる。

ミシェーラは見立て自分よりも少しだけ身長が低く、先ほどはフロント越しに全てを見ることは叶わなかった、腰回りからすらりと伸びる健康的にむっちりと肉のついた太ももに目が吸い寄せられる。

それにしても・・・ミシェーラの身にまとったローブは下半分にかかっての裾がかなり詰められていて短い。流石に下着が丸見えにはならない程度の長さはあるが、これではまるで娼婦が身に着けるようなネグリジェ一歩手前のデザイン。しかし彼女から感じられる気品のようなものが不思議と下品さだとかふしだらさというものを感じさせなかった。

「階段はこちらです、どうぞこちらに・・・」

先導するミシェーラの後姿、その魅惑的な曲線を描く大きなヒップにググっと目線が吸い寄せられて立ち惚けてしまう。・・・情けないことに、ミシェーラが階段を4段程上った辺りでこちらですよ?と振り返るまで全く動くことが出来なかった。ああすまないと慌てて一言謝ってから、ハロルドは床に置いた荷物を抱え、急ぎ後ろを追いかける。

そして階段を上ろうとするや否や、またもやハロルドの目線が釘付けにされる事態が起こる。

―――――あっ・・・見えそう

男性ならば・・・いや、ミシェーラを相手にすれば同じ女性であろうとも、誰もが理解できるシチュエーション。たった4段下ながら、それでも見上げる先はミシェーラの魅惑のヒップが真正面から少し上。そしてたった4段下からなれど、その高低差は十分な余裕をもって、その奥の絶景をハロルドは拝むことが出来てしまう訳で・・・

―――――うっ・・・ぐ・・・

ドキリと心臓が裏返りそうになり、目の前の絶景に思わず生唾を飲み込んでしまうハロルド。見えてしまったもの・・・それは大きく丸く美しい曲線を描く、ミシェーラのヒップを包み込む深い蒼の下着・・・ハロルドはその魅惑的な光景から全く目を逸らすことが出来なかった。

女性の尊厳を何だと思っているのだと頭の中の正論はあまりにも弱弱しい声量、勇者失格な最低な行為・・・それを偶然を装って階段の下から覗いてしまっているという状況も相まって、より一層の背徳感が心をかき乱してしまう。

一段一段とゆっくりとした歩みで上るミシェーラ。それは普通だったら何か足腰でも痛めているのかと思うかのような、焦れったくなる程にゆったりとした歩み。しかしその歩みの遅さは浅ましく絶景を堪能できる至福の時間でもある。

時間にして数分程度も掛けて階段を上っていることにハロルドは気が付けない。ミシェーラの下着を寸分たりとも色褪せないように、脳内の記憶領域へと刻み付けることに夢中になっていたからだ。

そしてついに辿り着いた階段の終わりでミシェーラが立ち止まる。きっかり4段下のハロルドも続けて立ち止まる。どうかしたのかと問いかける程の余裕はもうハロルドには残ってはいない。

「おっと・・・埃がこんなところに・・・少々お待ちくださいね」

そう言いながら身体を前に倒し、たっぷりと数秒の時間をかけて埃を拾うミシェーラ・・・その間当然のごとく後ろに突き出される形となった魅惑のヒップを包み込む深い蒼の下着は、ほんの気持ち少しだけローブに隠されただけの9割以上の面積を以ってハロルドの前に突き出され、視覚や記憶といったありとあらゆる記録を司る領域に焼き付けられた。

こちらですよと2階を先導するミシェーラの後をヒョコヒョコとぎこちない歩みどりで後を追うハロルド。勇者ともあろう者が体幹もへったくれもない有様なのは、言うまでもなく情けのない前屈みだから。股間はガチガチに反り返っていて、せめてその姿をミシェーラに悟られまいとする涙ぐましい努力が見えるも・・・旅路の最中で処理する機会の少ない愚息は、これほど大きく膨らむことが出来たのかと痛い程に血流を集めていた。

「お部屋はこちらです・・・ハロルド様」
「うっぁ・・・ありがとうミシェーラ」
ミシェーラが懐から宿の鍵束を取り出し扉を開くと、ハロルドは言葉少なく部屋の中に逃げ込むかのように入った・・・隠しようのない程に膨らんでいる股間を見られないようにするためだった。

「では、ごゆっくりどうぞ」

ミシェーラが一礼し、ゆっくりと扉が閉まった瞬間・・・ハロルドは情けなくその場に膝から崩れ落ちたのだった。


―――――――――――――――


のそのそとゆったりとした動作で扉の脇に荷物を置いて、腰に下げた聖剣に防具一式を外して一息つく。それらを荷物に纏めて立て掛けてから、靴を脱いでベッドに仰向けに倒れ込んで大きく脚を開け広げてリラックスした。

リラックスしたが故にどうしても気に付いてしまうのは、全力でズボンを押し上げようとする、いまだに小さくなる気配すら微塵も感じさせない自らの愚息だった。恐らくこのままではいくら時間をかけようとも収まりがつく気がしなかった。

「・・・・・・はぁ・・・・・・」

ハロルドからつい零れ落ちたこの溜息は、非常に様々な思いのこもった溜息である。

いったい自分はどうしてしまったのだろうか、ミシェーラを一目見た時から彼女に対してこうも夢中になってしまうとは。確かにミシェーラは絶世の美女・・・今まで旅の最中に見てきた女性の中でも美人はいたが、それとは比べ物にもならない魅力的な女性・・・だからと言って偶然にかまけて、彼女の尊厳を全くもって無視をして、時間たっぷりと彼女の下着を拝み倒してしまった。

勇者失格・・・どころか男性としても欲に溺れ切ったあまりにも浅ましい行為だった。そう自分に言い聞かせながら、ぎゅっと目を閉じれば・・・つい先ほどたっぷりと拝んだミシェーラの深い蒼の下着が目に浮かぶ有様。

今まで欲望を処理する機会など二の次三の次だったから、自分は少々溜まっているのだと・・・ここまで欲望まみれな行為をしてしまったのはきっとそのせいだと、そう希望的観測をしながら、ハロルドは随分と久しぶりの自慰行為をすべくズボンの縁に手を掛けようとした瞬間・・・

部屋のドアが3度、控えめな力加減でノックをされた。

「お休み中失礼します、ミシェーラです・・・差し支えなければ少々お部屋に入ってもよろしいでしょうか?」
「っっああ・・・どうぞ」

素っ頓狂な声になってしまいながら返事して、仰向けに寝転んでいた身を起こし、身近な枕で膨らんでいる股間を隠しながら、ベッド脇に腰かけたと同時にミシェーラが扉を開いて中へと入ってきた。

その瞬間に心が大きく高鳴った。

感動の再会と言うにはあまりにも短い、まだ別れてからほんの数分程度しかたっていないというのに随分と心が歓喜に震えてしまう。本当に・・・自分はいったいどうしてしまったのだろうか・・・自分で自分の事が全く分からなかった。

「いろいろと確認すべき事や伝えるべき事を失念しておりました・・・何卒ご容赦を願います」

そうミシェーラが頭を下げる。その出で姿はいたって普通な水色の絹のローブにもかかわらず、まるで気品に満ち溢れていて・・・そう、どこかのお姫様かのようだと例えるのが正しいとすら思えてしまう。

「ああ・・・別に気にしてはいないさ・・・で、確認すべき事や伝えるべき事とは?」
「はい、夕食の準備についてなのですが、ハロルド様は魔界産の食物に抵抗はございますか?」
「いや、特に何もない」

“魔界産の食物は口にしない“・・・主神教団の教えに従う者の中で偶に見かける主義の事である。自分にとってその主義は否定しないが、だからと言って自分も真似をするつもりもなかった。あくまで食物は食物である・・・というのが自分の考えだった。

「かしこまりました、夕食は準備が出来次第お部屋までお呼びに参りますね・・・で、もう一つ大切な確認がございます」
「・・・何だろうか?」

真剣な面持ちでミシェーラが言うものだから、こちらも佇まいを整えるかのように背筋が伸びる。ミシェーラの言う大切な確認とは何だろうか・・・?

「ハロルド様さえよろしければ、僭越ながらこの身を以って、貴方の夜伽を願い出たいのです」
「よ・・・夜伽・・・だと?」
「はい、叶う事ならば・・・私はハロルド様に抱いていただきたいのです」

一瞬聞き違いかと思い、聞き直したが間違いなかった。夜伽・・・それは男女が寝床を共にして、そのまま“お互い同意の上で情事を行いませんか”というお誘いの言葉である。しかも相手はミシェーラ・・・絶世の美女にて絶賛自分の心を激しくかき乱す件の女性である。

「生憎私は独り身ですからお気になさらず・・・この小さな町では出会いも少なく、毎晩この身を持て余しているのが正直なところなのです」

二の句に詰まっていた自分に対し、ミシェーラが外堀を埋めるかのように夜伽に対する懸念点を解消してゆく。

「うっ・・・だからって・・・そんな今日出会ったばかりの俺に抱かれたいだなんて・・・」
「ええ、確かに勇者ハロルドは憧れの存在ではありましたが、少しばかりお話しできたこともあって、噂通りの素敵な殿方だと分かりましたから」

心配せずとも大丈夫、だから問題ないのだと、諭すかのようにミシェーラが微笑みかけてくる。もう・・・何のしがらみもない、互いの同意の上での情事になることは明らかだった。後は自分が同意の返事を返すだけ・・・カラカラに乾いていた唇を舐めるようにして潤し、いざ、肯定の返事を返そうとした瞬間、ミシェーラがダメ押しの誘惑を試みてきた。

「ふふ、それとも私の身体はハロルド様のお眼鏡に叶わないものでしょうか?」
「あっっ?!ミシェーラ?!何を・・・っつ・・・」

そう言いながらミシェーラはミステリアスな表情の奥、ほんの少しだけの羞恥心を感じさせながら、その手でローブの裾を上へと捲り上げてゆく・・・ぐぐっとハロルドの視線の先が、下を向いた・・・否、向かざるを得なかった。

「ふふふ・・・いかがでしょうか?ハロルド様のお眼鏡に叶うと良いのですが」

たくし上げられたローブの中から、ミシェーラの身に着けた深い蒼の下着・・・今度はその前半分がハロルドの目の前に露わになる。藍色をベースとした下地により深いダークブルーの糸で編みこまれた装飾が、まるで咲き誇る花々の様に美しい。下着の縁を彩る1つ1つが丁寧な手作業で編みこまれたレースがとてもセクシーで、引き絞られたサイドに止まった紺色の蝶がセクシーさだけではないエレガントさとなって全体的な雰囲気を引き締めていた。

「どうやらお気に召したご様子ですね、先程の階段でも熱心にご覧になっておりましたから・・・」
「うっ・・・バレて・・・すまないミシェーラ、許して欲しい」
「構いませんよ?むしろ光栄に思っております・・・では、ハロルド様・・・夜伽の許しは得られたものとしてよろしいですね?」

コクリと頷くしか出来なかった。それどころかもう・・・自分は我慢の限界に達しつつあるとすら感じられた。夜が待ちきれない程にハロルドの股間はそそり勃ち、ドクンドクンと高鳴る心臓がうるさく聞こえる程だった。

そして遂にミシェーラの視線がハロルドの股間へと落とされる・・・挙動不審であからさまに何かを隠している様子にミシェーラが気が付かない訳が無かったのだ。

「・・・ハロルド様、その枕の下は・・・まさか?」
「・・・っっ・・・すまないミシェーラ旅の最中で処理する機会なんてなくて・・・その・・・」
「いえ、むしろ光栄です・・・私も誘うかのように下着を見せましたが・・・それほど興奮していただけるだなんて」

しどろもどろに言い訳が飛び出すところをミシェーラがすかさず肯定し受け入れてくれる。おずおずと枕を横にどけ、ガチガチに膨らんでいる股間をミシェーラの目の前に晒す。その心はミシェーラからの更なるお誘いを待ちわびているからこその行為であり・・・

「ふふ・・・ハロルド様、少々早いですが・・・夜伽の時間にしましょうか?」

その一言が鼓膜を揺さぶった瞬間、気が付けばハロルドはミシェーラを抱き締めていた。言葉にできない色香・・・彼女生来の香りが鼻をくすぐり、温かく柔らかな女体を力いっぱい抱き締められる幸せが、どんな上等な酒よりも甘く脳を陶酔させる。

「ふふ、ハロルド様に無我夢中で求められるなんて身に余る光栄ですね・・・しがない宿屋の女主人の身体ですが、どうぞ貴方のお望みのまま・・・私を抱いてくださいませ」

もはや何も言うまでもない・・・是が非でもないお誘いだった。


―――――――――――――――


ベッド脇に手をつくようにして、ミシェーラがこちらに背を向けながら大きくお尻を突き出した。三度目の前に広がる深い蒼の下着がハロルドの心をカッと燃え上がらせて、震える手付きで自らの下履きごとズボンを引き下ろす。

むにゅりと指先を柔らかく受け入れる彼女の股間辺り・・・深い蒼の下着の股布を横にずらすと、薄桃色の花園の入り口が既に濡れそぼっているように見えた。

「ハロルド様に熱心に見つめられてしまいましたから・・・指一本たりとも触れられていないというのに、お恥ずかしい限りです」
「あ・・・その・・・構わないさミシェーラ・・・自分だってもう・・・こんなになってしまっているから」

奇妙な慰め合いもそこそこに、ミシェーラの腰元に手を当てて、濡れそぼったヴァギナめがけてハロルドが大きく反り返った肉身を差し当てる。

「じゃあ・・・挿れるからな・・・ミシェーラ・・・」
「はい、何時でも構いませんよハロルド様」

やや心が急いてしまい表面を2度程滑らせてから、どうにか先端がミシェーラを捉え、にゅぷ・・・ずむにゅ・・・とゆっくりと差し込まれてゆく。

「うくっっっはぁぁぅ・・・くっっ」
「んぅっ・・・挿入って・・・きます・・・」

ハロルドの亀頭がミシェーラのナカへと沈み込む。温かくヌメついた心地よい感触が、優しくペニスの先端を包み込み、思わず恍惚とした溜息までもがこぼれ落ちてしまう。まだ先端しか挿入されていないのに、このままでも油断すれば暴発しかねない・・・ひとまずの射精感と息を整えたハロルドは腰を突き出し、ミシェーラの秘所をさらに征服しにかかる。

ずにゅるる・・・にゅむっ・・・にゅるるっ・・・続けて亀頭からカリ首が沈み込む・・・そこでハロルドは再び突き込む腰を止め、歯を食いしばる羽目になった。それは亀頭からカリ首を、ふんわりと優しく包み込まれるような肉ヒダが、優しく舐めしゃぶるかのように絡みついてきたから。

「くぉっっっ・・・だ・・・ダメだ・・・これは・・・気持ち・・・良すぎるっっ・・・」
「んぁんっ・・・ふふ、ハロルド様ったらそんなに褒めないでくださいな・・・嬉しくなってしまいます」

まだ奥まで突き込んですらいないというのに、途方も無い気持ち良さに股間がヒクンヒクンと甘く脈打ち、ぴゅるりと先走る感覚に背筋が震えた。中々引いていかない射精感に焦りを覚える。本当にこのままでは道半ばで射精してしまいかねない・・・元々長くは持たないだろうと覚悟はしていても、想定以上の昂りが判断を誤らせた。

このまま中途半端に暴発してしまうよりかはと、ハロルドは無理やりにでもペニスの残り半分を、ミシェーラの奥底目掛けて突き込んだのだ。

そしてあまりにも無謀な行軍は、然るべき結末へと至る。

にゅむむっ・・・にゅっっとん・・・ぐにゅっ

「おっ・・・ぐっっぉぉ・・・奥まで・・・あっ・・・もう・・・」
「はい、ハロルド様のおちんちん・・・私の1番奥まで届いておりますよ・・・あっ・・・ハロルド様っ・・・うあっ・・・」

びちゅっ・・・びゅるるるっ、びゅるるるるっ、どぷっ・・・どぷぷ・・・

途方も無い放出感、腰がガクガクと勝手に震えながら、ハロルドの目の前が真っ白に明滅する。ミシェーラのナカに・・・ぬめぬめとして心地の良い、温かく包み込んでくれる腟内へと、溜まりに溜まっていた白濁が吐き出されてゆく。

前後不覚、時間間隔もとっくに消失していて、脳髄が下半身からひっきりなしに襲い来る悦楽に蕩けてゆく。溜まりに溜まっていたハロルドの性欲が、今後一切塗り替えられることの無い最高記録となって満たされてゆく。

ハロルドはミシェーラの最奥にグリグリと押し付けながら、幸せな脈打ちが収まるまでたっぷりと・・・男の幸せに溺れ切ってしまうのだった。


―――――――――――――――


ぐしょ濡れ状態の膣口と自分の股間がピッタリと重ね合わさっている感触が分かる。目で見えてこそいないが、あの放出感は溜まりに溜まった玉袋の中がもう空っ欠になるほど出したとすら思う。荒く呼吸を繰り返しながら、ようやく状況判断が出来る程度には余裕が出来たのはいったいどれほどの時間がかかったことやらだ。

「す・・・すまないミシェーラ・・・自分ばかり・・・その・・・突き入れただけで出してしまって」
「いえ・・・私も・・・ハロルド様の熱い子種をたっぷりと頂けて・・・はしたなくも喜んでいましたから」

しかしハロルドのペニスは力を失うどころか、未だにガチガチに硬く反り返り、凄まじい絶頂の余韻に浸るかのような幸せな脈打ちを繰り返していた。

まだまだ出せる・・・まだまだミシェーラを抱ける・・・そう力強くて雄々しく、先程までは余韻に震えていた癖に、いつの間にか我が身のペニスは武者震いに震えていた。

「ハロルド様・・・まだ・・・物足りないご様子ですね?」
「・・・あぁ、ミシェーラさえ良ければ・・・まだ・・・」
「ええ、喜んでお相手いたしましょう」


―――――――――――――――


同じベッドで身を寄せ合うように、ハロルドとミシェーラは仰向けに寝転び、くたびれ果てていた。結局ハロルドとミシェーラが満足がいくまで交わりあい、名残惜しくもその身を離しあったのは、とっぷりと日も暮れ落ちきった夜遅くとなってしまったのだ。

それほどまでに燃え上がった営み、それほどまでに愛し合った仲ともなれば・・・ハロルドの心が彼女の手に中に堕ちるのも無理はなく。ミシェーラの心もまた、ハロルドの手の中にへと捧げられたのだと悟るのも当然の帰結だと言えた。

「ふふふ・・・ハロルド様・・・お慕いしております・・・」
「ああ・・・ミシェーラ・・・俺も君の事を・・・愛している」

もうお互いに照れもなく、歯の浮くような甘ったるい愛の言葉を囁き合う・・・ピロートークとはこれ程までに心躍るものだったのかと、幸せ過ぎて勇者としての責務すらも忘れてしまいそうになる。

「嬉しい・・・でも貴方は勇者の責務があるのでしょう?・・・明日の朝にはこの宿を出立してしまう・・・そうなのでしょう?」
「ああそうだ・・・でも勇者の責務が果たされたのならば・・・俺はまたこの宿に戻ってくると約束しよう・・・そうだな、その時はここの宿屋の従業員として雇ってくれるかい?」
「ええもちろん・・・そうしたら貴方は勇者から宿屋の主人になってしまいますね・・・うふふ・・・それもまた・・・幸せな事なのでしょう」

甘えるかのようにミシェーラが頬擦りをして、ぎゅっと抱きしめながら温かな幸せをかみしめる。

―――――勇者の責務が果たされて、この身が自由になれたのならば・・・必ずや彼女と共に生きるのだ・・・

そんな甘く、幸せな未来予想をしてしまうくらいには、ハロルドはもうミシェーラに夢中になってしまっていたのだった。





勇者ハロルドはミシェーラに夢中になってしまった・・・!
勇者ハロルドはミシェーラとの婚約の約束をした・・・!
勇者ハロルドは勇者レベルが99にさがってしまった・・・!
勇者ハロルドは魔界勇者レベルが1にあがった・・・!
25/07/06 07:28更新 / たっぷりとしたクリーム
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■作者メッセージ
書きたいなと言う欲望は、筆が走る最高のスパイスと燃料になりますね・・・!

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