努々忘れる事なかれ。
『僕、大きくなったらおねーちゃんと結婚する!』
そんな、他愛もない言葉。
勿論その言葉は子供の言う事であったし、その場の気持ちに突き動かされた、親愛を愛情と履き間違えた言葉である事は火を見るより明らかな事で。
けれど、ああ、何故だろう。
なんだか、その言葉にとても心を打たれたのを覚えている。
子供の言う事だ。中身なんて無いのだろう。
けれど、ああ、あるいは。
彼も、子供なりに、真剣なのではないのだろうか。
そう思うと、途端に自分の顔が熱を上げたのが理解出来た。
……子供相手に期待している。
そんな自分に、何だかとても嫌気が差して。けれどそれより大きな、何かが胸の中を埋めていく。
きっと、私は今、嬉しいのだ。
蔑みの視線でも、侮蔑の言葉でもなく。告げられた言の葉は、直球の愛だった。
だから、信じてみる事にした。
その言葉を。その気持ちを。
所詮、子供の言う事だ。
けれど、ああ、そうだ。誰よりも素直な、子供の言葉だ。
故に、信じよう。その言葉に偽りなど無いと。
『……そう。なら、きっと。貴方が大人になり、私を貰ってくれるなら。私は、ずっと、いつまでも、貴方が来るのを待っていますね?』
その事を、努々忘れないように、と。
釘を刺すように、告げる。
精通も起こっていないような子供に、念を押す。
それが、どれほど恥ずかしい事なのか。きっと、私のかつての同類は、今の私を見れば腹を抱えて笑うだろう。
けれど、それでも。
人が、人ならざる者に恋をする。それは、今の変わってしまった世界でも難しい事だろう。
でも、だからこそ。
私はこの子供の手を取りたいと、そう思う。
だから。
だから、ああ、待っている。
貴方の言葉を、信じている。いつか、私を迎えに来ると、信じている。
故に、待とう。
たとえ、人の身で生きられる時を越え、世界そのものが在り方を変えたとしても。
貴方が私の前から消えてから、既に十数年。
既に子供ではないだろう。少年と言うのも、無理がある。
もう立派な大人になっている。その、はずだ。
だから、きっと、もうすぐ。
きっと、きっと、迎えに来てくれる。
何千と夜を越え、期待がいつしか身を焦がす程の愛へと変わり。それでも現れない貴方を想い、今日も一日が過ぎていく。
『おねーちゃんには、どうして尻尾があるの?』
思い返すのは、そんな、子供だった彼の言葉。
『おねーちゃん、お日様みたいな匂いがする……』
寝惚け眼で、私の尾に顔を埋める可愛らしい少年の顔。
『おねーちゃん、おなかすいた……』
そう言って、私の耳をかじって来た事もあったっけ。
座る私の背後から、はむはむと。
あのときは微笑ましかった、その行為。
けれど、もしも。もしも、大人になった彼が、昔のように私を求めてくれるのなら。
それは、なんて幸せな事なのだろう。
子供の悪戯。それは無邪気で、微笑ましくて、可愛らしい物。
けれど、あの悪戯を、大人になった彼がもし、してくれるのなら。
そこにはきっと、男としての欲がある。
私の身体を組伏せて、熱い吐息を吹き掛けて、甘い言葉を囁いて。
身体が溶けてしまうような、甘味な行為。
大人になった彼は、きっと私に、それをくれる。
ああ、ああ。それは、なんて幸せな事だろう。
「……んっ……ふぅ、はぁ…ぁ、んっ」
吐息が零れていく。いつか訪れる幸福を夢想して、身体が熱を帯びていく。
指先は、首筋、鎖骨。薄い生地に包まれた乳房へと這い回り、その先端に触れないように、優しく円を描いていく。
きっと、たぶん、彼は、こうしてくれる筈だ。
優しい指使いで、焦らす様に。さわさわと、熱を帯びた身体をなぞる。
熱い身体を、少し冷えた指先がなぞっていく。
ぞくり、と背筋に鳥肌がたつような、感覚。
『……ここが良いのか?』
そんな、聞こえない筈の言葉が聞こえた気がして。
優しく弧を描く指先が、まるで自分の物でないように強く、激しく蠢いた。
先端を、強く、痛いくらいに摘まむ指先。遠慮なんて、そこにはなくて。
ジンジンと痺れるような感覚と、まるで細かく針を指したような小さな痛みが、乳首に走る。
けれど、指先は止まらない。きっと、これは彼の指。
子供だった頃の小さな掌はなくて、代わりに、逞しい男の掌が、そこにはあった。
……そんな、妄想。
けれど、そう考えると。不思議と、痛みであるはずのその行為が、狂おしい程の快感へと変わっていて。
「…ん…ふぅ……は、ぁ…ぁ、あっ」
指を離す。服の上からの刺激では、物足りない。
もっと、激しく。もっと、強く。
身体に走る電流を、もっと、感じたい。
……けれど、それは、彼が与えてくれる物ではなくて。
虚しい。なんだか、胸が苦しい。
けれど、服の内側へと滑らせた指先が止まる事はなくて。
「……あ、あぁ…ぅ…んっ……も、っと…もっとぉ……!」
甘い声が出る。雌が、雄に媚びる声。
彼だけに、媚びる声。
彼だけを、求める声。
頭に浮かぶのは、幼い彼の笑顔だけ。
……ああ、わたし、こどもに、欲情してるんだぁ……
そう思うと、とたんに恥ずかしくなる。
けれど、そんなことがどうだってよくなるほど、気持ちが良い。
ぐにぐにと、指先で先端を押し潰す。摘まむ。引っ張って、捻って。
ジンジンとする感覚が心地よくて、切なくて、もっと強く。もっと、激しく。
「…んっ…じゅるっ……ん、あぁっ…れろ、じゅる…んん…っ」
左手の、人差し指と中指。
その二本を、彼に見立てて口の中へ押し込んで、ねぶる。
舌先に当たる指が、擦れる口内が、くすぐったいような快楽につつまれていく。
もどかしい。けれど、気持ちが良い。
……きっと、彼も、感じてくれるはず。
そう思うと、頭の中で小さな火花が弾けるような感覚がして。
気がつけば、乳房を虐めていた右手が下腹部へと伸びていた。
つー、っと。肋を伝い、臍の周りで弧を描いて、そのまま、下へ。
彼だけに見せるために手入れを欠かしていない恥丘を優しくなぞり、その先へ。
ぞくり、と。蜜の溢れたそこに触れた瞬間、強烈な快楽が全身に走った。
彼だけを受け入れる場所。彼だけが、触れていい場所。
妄想の中で、秘肉を掻き分けているのは私ではなく、彼だ。
優しく、激しく。
二本の指で、蜜を掻き出す様に。くちゅくちゅと、いやらしい音が響く。
「あっ…あ、んぁ…ぁあっ! あぁ、んぅ……んんっ」
ぞくぞくと、快感が身体を駆ける。
びくびくと、身体が快楽に跳ねる。
吸い付くような粘膜をかき混ぜて、固くなった淫核を摘まんで、弾いて、捏ね回して。
大切な、彼に貫いてもらう場所には、触れずに。
浅い場所を、私の、彼の指が、激しく蠢く。
気持ちが良い。気持ち良い。きもち、いい……っ!
「…んっ…ふっ、あ、あぁ…ん……ぅうぅん…ッ…あ、ぁ……んッ」
頭の中が真っ白になって、身体中の快感が下腹部へと集まり、爆発するような、快感。
無意識に四肢を丸めて、身体中に入った力が全部、抜けていく。
それがとても心地よくて、気持ちよくて、脱力感に任せて、瞼を閉じる。
すると、さっきまで私を求めてくれていた彼が、そこに居ない事に気がついて。
……いや、最初から、そこに彼はいなかったのだけれど。
けれど、なんだかそれが、とても悲しくて、虚しくて。
ここに、私をつつんでくれる温もりはない。
ここに、私を求めてくれる彼は、居ない。
それどころか。
もしかしたら、彼はもう、私の事なんて、覚えてなど……。
そう思うと、少し、涙が出た。
身体を丸めて、嗚咽を溢す。
十数年もたったというのに、抱き寄せた自分の尻尾から、幼い彼の匂いがした気がして。
『おねーちゃんの尻尾、あったかいなぁ……』
そう言って、尻尾を枕にして昼寝していた少年の顔が頭に浮かぶ。
気が付けば、無意識に流れた涙の量は少なくなく。
誰も居ない、小さな部屋の隅で、ただ一人、泣いて、泣いて。
彼は、会いに来てくれない。
彼は、迎えに来てくれない。
彼は、彼は。
『僕、大きくなったらおねーちゃんと結婚する!』
でも、彼は、そう言っていた。
だから、私は貴方を待っている。
その言葉を信じている。
子供の言葉だから、なんて、言ってやるものか。
だって。
約束とは、守るもの。
たとえ、それがただの口約束だとしても。
約束とは言わば、契約なのだ。
だから。
その事を、努々、忘れぬ様に。
そんな、他愛もない言葉。
勿論その言葉は子供の言う事であったし、その場の気持ちに突き動かされた、親愛を愛情と履き間違えた言葉である事は火を見るより明らかな事で。
けれど、ああ、何故だろう。
なんだか、その言葉にとても心を打たれたのを覚えている。
子供の言う事だ。中身なんて無いのだろう。
けれど、ああ、あるいは。
彼も、子供なりに、真剣なのではないのだろうか。
そう思うと、途端に自分の顔が熱を上げたのが理解出来た。
……子供相手に期待している。
そんな自分に、何だかとても嫌気が差して。けれどそれより大きな、何かが胸の中を埋めていく。
きっと、私は今、嬉しいのだ。
蔑みの視線でも、侮蔑の言葉でもなく。告げられた言の葉は、直球の愛だった。
だから、信じてみる事にした。
その言葉を。その気持ちを。
所詮、子供の言う事だ。
けれど、ああ、そうだ。誰よりも素直な、子供の言葉だ。
故に、信じよう。その言葉に偽りなど無いと。
『……そう。なら、きっと。貴方が大人になり、私を貰ってくれるなら。私は、ずっと、いつまでも、貴方が来るのを待っていますね?』
その事を、努々忘れないように、と。
釘を刺すように、告げる。
精通も起こっていないような子供に、念を押す。
それが、どれほど恥ずかしい事なのか。きっと、私のかつての同類は、今の私を見れば腹を抱えて笑うだろう。
けれど、それでも。
人が、人ならざる者に恋をする。それは、今の変わってしまった世界でも難しい事だろう。
でも、だからこそ。
私はこの子供の手を取りたいと、そう思う。
だから。
だから、ああ、待っている。
貴方の言葉を、信じている。いつか、私を迎えに来ると、信じている。
故に、待とう。
たとえ、人の身で生きられる時を越え、世界そのものが在り方を変えたとしても。
貴方が私の前から消えてから、既に十数年。
既に子供ではないだろう。少年と言うのも、無理がある。
もう立派な大人になっている。その、はずだ。
だから、きっと、もうすぐ。
きっと、きっと、迎えに来てくれる。
何千と夜を越え、期待がいつしか身を焦がす程の愛へと変わり。それでも現れない貴方を想い、今日も一日が過ぎていく。
『おねーちゃんには、どうして尻尾があるの?』
思い返すのは、そんな、子供だった彼の言葉。
『おねーちゃん、お日様みたいな匂いがする……』
寝惚け眼で、私の尾に顔を埋める可愛らしい少年の顔。
『おねーちゃん、おなかすいた……』
そう言って、私の耳をかじって来た事もあったっけ。
座る私の背後から、はむはむと。
あのときは微笑ましかった、その行為。
けれど、もしも。もしも、大人になった彼が、昔のように私を求めてくれるのなら。
それは、なんて幸せな事なのだろう。
子供の悪戯。それは無邪気で、微笑ましくて、可愛らしい物。
けれど、あの悪戯を、大人になった彼がもし、してくれるのなら。
そこにはきっと、男としての欲がある。
私の身体を組伏せて、熱い吐息を吹き掛けて、甘い言葉を囁いて。
身体が溶けてしまうような、甘味な行為。
大人になった彼は、きっと私に、それをくれる。
ああ、ああ。それは、なんて幸せな事だろう。
「……んっ……ふぅ、はぁ…ぁ、んっ」
吐息が零れていく。いつか訪れる幸福を夢想して、身体が熱を帯びていく。
指先は、首筋、鎖骨。薄い生地に包まれた乳房へと這い回り、その先端に触れないように、優しく円を描いていく。
きっと、たぶん、彼は、こうしてくれる筈だ。
優しい指使いで、焦らす様に。さわさわと、熱を帯びた身体をなぞる。
熱い身体を、少し冷えた指先がなぞっていく。
ぞくり、と背筋に鳥肌がたつような、感覚。
『……ここが良いのか?』
そんな、聞こえない筈の言葉が聞こえた気がして。
優しく弧を描く指先が、まるで自分の物でないように強く、激しく蠢いた。
先端を、強く、痛いくらいに摘まむ指先。遠慮なんて、そこにはなくて。
ジンジンと痺れるような感覚と、まるで細かく針を指したような小さな痛みが、乳首に走る。
けれど、指先は止まらない。きっと、これは彼の指。
子供だった頃の小さな掌はなくて、代わりに、逞しい男の掌が、そこにはあった。
……そんな、妄想。
けれど、そう考えると。不思議と、痛みであるはずのその行為が、狂おしい程の快感へと変わっていて。
「…ん…ふぅ……は、ぁ…ぁ、あっ」
指を離す。服の上からの刺激では、物足りない。
もっと、激しく。もっと、強く。
身体に走る電流を、もっと、感じたい。
……けれど、それは、彼が与えてくれる物ではなくて。
虚しい。なんだか、胸が苦しい。
けれど、服の内側へと滑らせた指先が止まる事はなくて。
「……あ、あぁ…ぅ…んっ……も、っと…もっとぉ……!」
甘い声が出る。雌が、雄に媚びる声。
彼だけに、媚びる声。
彼だけを、求める声。
頭に浮かぶのは、幼い彼の笑顔だけ。
……ああ、わたし、こどもに、欲情してるんだぁ……
そう思うと、とたんに恥ずかしくなる。
けれど、そんなことがどうだってよくなるほど、気持ちが良い。
ぐにぐにと、指先で先端を押し潰す。摘まむ。引っ張って、捻って。
ジンジンとする感覚が心地よくて、切なくて、もっと強く。もっと、激しく。
「…んっ…じゅるっ……ん、あぁっ…れろ、じゅる…んん…っ」
左手の、人差し指と中指。
その二本を、彼に見立てて口の中へ押し込んで、ねぶる。
舌先に当たる指が、擦れる口内が、くすぐったいような快楽につつまれていく。
もどかしい。けれど、気持ちが良い。
……きっと、彼も、感じてくれるはず。
そう思うと、頭の中で小さな火花が弾けるような感覚がして。
気がつけば、乳房を虐めていた右手が下腹部へと伸びていた。
つー、っと。肋を伝い、臍の周りで弧を描いて、そのまま、下へ。
彼だけに見せるために手入れを欠かしていない恥丘を優しくなぞり、その先へ。
ぞくり、と。蜜の溢れたそこに触れた瞬間、強烈な快楽が全身に走った。
彼だけを受け入れる場所。彼だけが、触れていい場所。
妄想の中で、秘肉を掻き分けているのは私ではなく、彼だ。
優しく、激しく。
二本の指で、蜜を掻き出す様に。くちゅくちゅと、いやらしい音が響く。
「あっ…あ、んぁ…ぁあっ! あぁ、んぅ……んんっ」
ぞくぞくと、快感が身体を駆ける。
びくびくと、身体が快楽に跳ねる。
吸い付くような粘膜をかき混ぜて、固くなった淫核を摘まんで、弾いて、捏ね回して。
大切な、彼に貫いてもらう場所には、触れずに。
浅い場所を、私の、彼の指が、激しく蠢く。
気持ちが良い。気持ち良い。きもち、いい……っ!
「…んっ…ふっ、あ、あぁ…ん……ぅうぅん…ッ…あ、ぁ……んッ」
頭の中が真っ白になって、身体中の快感が下腹部へと集まり、爆発するような、快感。
無意識に四肢を丸めて、身体中に入った力が全部、抜けていく。
それがとても心地よくて、気持ちよくて、脱力感に任せて、瞼を閉じる。
すると、さっきまで私を求めてくれていた彼が、そこに居ない事に気がついて。
……いや、最初から、そこに彼はいなかったのだけれど。
けれど、なんだかそれが、とても悲しくて、虚しくて。
ここに、私をつつんでくれる温もりはない。
ここに、私を求めてくれる彼は、居ない。
それどころか。
もしかしたら、彼はもう、私の事なんて、覚えてなど……。
そう思うと、少し、涙が出た。
身体を丸めて、嗚咽を溢す。
十数年もたったというのに、抱き寄せた自分の尻尾から、幼い彼の匂いがした気がして。
『おねーちゃんの尻尾、あったかいなぁ……』
そう言って、尻尾を枕にして昼寝していた少年の顔が頭に浮かぶ。
気が付けば、無意識に流れた涙の量は少なくなく。
誰も居ない、小さな部屋の隅で、ただ一人、泣いて、泣いて。
彼は、会いに来てくれない。
彼は、迎えに来てくれない。
彼は、彼は。
『僕、大きくなったらおねーちゃんと結婚する!』
でも、彼は、そう言っていた。
だから、私は貴方を待っている。
その言葉を信じている。
子供の言葉だから、なんて、言ってやるものか。
だって。
約束とは、守るもの。
たとえ、それがただの口約束だとしても。
約束とは言わば、契約なのだ。
だから。
その事を、努々、忘れぬ様に。
16/04/14 15:21更新 / Re.nard