そのじゅうろく
「旦那さんよ、水くれ水」「こっちも頼む」
手足の生えた球根とか芋とかが口々に水分補給をねだってきた。
先に言っておくがこれは幻覚ではない。夢でもない。あくまで現実だ。
新婚旅行中、ずっとガーデニングをほったらかしにしていたら
こんなやつらが地中から這い出てきたのだ。もう手のつけようが無いので
そのガーデニングは放棄してある。
「ほれ」
俺は水を待ちわびている正体不明のクリーチャーに
じょうろの中身をかけてやった。
シャアアアアアアッ……
「生き返るわー」「ごくらくごくらく」「たまらんぜよ」
どことなくユーモラスでありながらも強烈にグロテスクな何かが、
熱い湯に浸かったおっさんみたいな感想を述べている。
これが最近ではごく当たり前の光景なのだが、マリナ達はいまだに慣れないのか
身を寄せ合ってこちらを遠巻きに見ていた。
『なにこれこわい』
というのが彼女らの総意だ。魔物娘と化していても未知への恐怖はあるらしい。
一匹一匹が成人男子の拳くらいのサイズという微妙な大きさが
さらに不気味さに拍車をかけているようだ。
ちなみに、この光景を俺たちが初めて見たときには
プリメーラとサーシャ姉が腰を抜かしてロリ二人が絶叫した。
(あのデルエラでさえ引きつった悲鳴をあげたのには驚かされた)
「あー、これでゆっくりできる」「んだんだ」
水を充分に吸えたらしく、こいつらは自分達の寝床である
旧ガーデニングのところまで歩いていって、そのまま土をかきわけ潜っていった。
「さて、それじゃ新ガーデニングのほうを手入れするか」
苦行を乗り越えた先にあった桃源郷――医の楽園。
そこで購入した薬剤が無事に効いてまともな作物が育ち始めたことへの
喜びを噛みしめながら、俺はウキウキしてきびすを返した。
「待ってお願いどうか待ってストップストップ」
マリナが俺の前に立ちはだかってきた。
「さっきのあれ……どうにかならないの?」
顔をしかめて、魔界も裸足で逃げ出す謎の立入禁止ゾーンを弱々しく指差す。
「まさか、食いたいのか?」
「死んでもイヤ」
じゃあ何だよ。
「あんな汚物は消毒すべきってことだよ。ねえ、おにいちゃんってばぁ」
毒舌魔女っ子の語尾が伸びてない。本当に嫌なようだ。
「やっても構わんが、下手なことして祟られても知らんぞ」
ぐっ、とミミルが息を呑んだ。
「それはそれで遠慮願いたいですわね……
……どうしましょう」
フランツィスカ様が腕組みしながら触手で頭を抱えて悩みはじめた。
水を欲しがるだけの無害な存在なんだから
そっとしておけばいいのに、わざわざこの世から排除することもなかろう。
「だからといって放置してても不運を呼び寄せそうなんだけど」
心配性な狼さんだな。
「呼んだところでたいした不運じゃあるまい。っていうか
俺を人類の敵にしたお前らのほうがよっぽど俺に不運招来させてる」
「それは私たちの膨大な愛の副作用みたいなものだから多少は仕方ないわよ」
流石にカチンときたので色ボケサキュバスの喉に抜き手かました。
ところで、例のリークの件であるが、嫁達には
『デルエラが弾けそうならヘリィに裏から密かに伝える』としか言ってない。
度合いに個人差こそあるものの、九人全員が
教団に対して嫌悪や侮蔑の感情を持っているので、俺がミニ王子ルートで
そちらにもネタを流すとなれば反対は必至だからだ。
ちんこパワーで無理やり同意させるのは可能だが、仲直りセックスならともかく
圧倒的な快楽の波でねじ伏せ強引に従わせるということは極力したくない。
無論、抜き差しならない事態になれば躊躇なく抜き刺しをやるが。
…我ながら面白いギャグである。
「そういえば、貴方にさんざん弄ばれたあの男の子と、その子の
お兄さん……いや、今はもうお姉さんでしたね。貴方と仲がよいみたいですけど
いつの間にそんな親しくなったのですか?」
「俺のカリスマ」
「何をおっしゃられているのか皆目わかりません」
女王様は相変わらず手厳しいコメントを返してくれますね。
「冗談はともかく、男同士、気が合うんだよ。元男でもそれなりに。
それに向こうは俺になんとなく感謝しているようだし」
これが人徳というものかもしれない。
「人徳だと思ってはるんなら大間違いってやつやで」
今宵も言うようになったな。
尻尾の数に比例してツッコミの頻度も増している。けど基本的には
しっとりふんわりしているので愛くるしい。
「今宵は可愛いなあ」
「なにその受け答えおかしくない!?
私だって可愛いでしょ!?尻尾だってあるんだよ、ほらっ!?」
「おねーちゃんおちついておちついて」「尻尾はたぶんかんけいないよー」
仰天したマリナがテンパりだしてダクプリ幼女二人になだめられている。
とても元勇者とは思えない醜態だ。だいたい尻尾なら九人中七人が生えてんだろ。
だが、機嫌をそこねてヒステリーこじらせても困るので頭を撫でておく。
「にゅふふふ」
鼻から抜けているような甘え声をだしてマリナがご満悦状態になった。
毎度毎度思うのだが、こいつはうちの嫁達の中でも抜きん出て
感情の揺れ幅がおかしい。教団の勇者育成や家庭内での教育方針に
何らかの重大な問題があったとしか考えられない。
『あなたと強引に別れさせられて死ぬほどヘコんだけど
それでも世のため人のために一生懸命がんばって勇者やってたら
偶然またあなたに再会したと思ったらお互いに他人行儀な会話しかできなくて
ストレスたまって頭がパパパパーンしかかってたらデルエラ様に救われた。
デルエラ様は素晴らしい。あの方のおかげで私はあなたと愛し愛され
ハッピーエンドな人生を歩むことができた。どれだけ感謝してもし足りない。
貧富の差がありありと見えていたレスカティエも今では笑いと嬌声の絶えない
理想の都市となって嬉しい。あのまま教団の支配下に置かれていたら
弱者を食い物にする腐敗した権力者がどこまでも増長していって
この国は不幸の生産都市と化していたところだった。教団って最低』
というのが彼女いわく自分の情緒不安定さの原因らしい。長い。
馬の心境で例えるとするなら『一度は取り上げられたはずのニンジンが
口の届かないところに吊るされていて空腹にイライラしてたら
親切なおばさんが取ってくれた。しかも牧場の整備もしてくれた』という感じか。
ニンジンの意見も考慮してほしかったものだ。
チョイチョイ
「んっ?」
俺の側でとぐろを巻いて座り込んでいた教官が腕をつついてきた。
「……あーはいはい、そういう事ですね」
髪の毛の感触を楽しむように教官の頭を撫でると
やっぱり嬉しいらしく、長い尾の先がぴこぴこと左右に揺れていた。
「んふー」
「にゅっふっふっ」
「………………」
珍しく嫉妬の色を瞳に宿らせたサーシャ姉が
無言で床に膝をつき、こちらをじっと見て、ナデナデ争奪戦に参加してきた。
「あはは、おにーちゃんも大変だねー」「ごくろうさまー」
やっぱりいい子だなぁ二人は。後でねっとりとメス穴をほじってあげよう。
「あっちのガーデニングの手入れはアタシらがやっとくから」
「旦那さまは彼女らの気ぃすむまで撫でてあげたらええよ」
ほう、今宵はともかく、プリメーラにしては気が利いてるな。雪が降るかもしれん。
「……だから、ご褒美……お願いね」
耳元でボソッと報酬を要求して、プリメーラは含み笑いをした。現金なやつだ。
ま、いいだろう。
その後、俺がロリっ子×2のおまんこ食べ比べをしていたところに
ハアハア言いながら駆けつけてきたプリメーラにご褒美として
フリスビーを渡したらマジギレされた。
「…………それは怒っても当然でしょ」
最近ではフランクな口調になったミリュスの部屋に俺は逃げていた。
プリメーラの怒りが覚めるまでここにいるつもりである。
「笑ってすますなり皮肉で返すなりしてきたのが昔のプリメーラなんだよな。
これだから発情してる魔物娘は冗談が通じないから困る」
「なに渋い顔して古臭いこと言ってるんだか。
通じないのが既にわかってるなら冗談かますのやめればよかったのに」
「それは決してできん」
俺は断じた。
「なんで!?」
「こだわりだよ、こだわり。ところでミー君、尻穴のほうは使ってるのか?
なんなら、二人っきりの時にぬっぷり突き刺してやってもいいぞ?」
「そうですね、じゃあ近いうちにでもお願いしようかな」
お互いフフッと笑うと、俺とミリュスは紅茶の入ったカップに口をつけた。
「私がここにいるのになんでそんな会話ができるんだ!!?」
テーブルに両手をバン!と叩きつけるティネス。
その反動でクッキーが飛び上がり、彼女のカップが中身をぶちまけながら横転した。
「あ、もしかして姉さんも混ざりたかった?」
「それも悪くはないが、そういう問題ではない!」
おい本音がしょっぱなから出てるぞ。
「生涯の伴侶でもある実弟が目の前で男に肛虐されるとか、
そういうの好きな女性には最高に萌えるシチュだというではないか」
「わっ私は、そ、そういう性癖はない、からっ」
いいから鼻血ふけ。身体は正直だなまったく。
「姉さんも、そこまで動じなくてもいいじゃない。
僕のお尻まんこの初めてをもらってるのに」
少年とは思えない魅惑的な流し目をくれながらミリュスが姉をなだめる。
「…これで動じない魔物娘なんて、たぶんこの世にいないぞ」
「何にでも例外は存在する」
「君はちょっと黙っててくれ。落ち着いた気分がまた荒れてしまいかねない」
「うわぁんミー君あの人こわいよぉ」
見せつける様に俺はミリュスに抱きついてみると
「おーよしよし」
ミリュスも乗ってきた。うむ、この少年にもトリックスターの素質がある。
「貴様ら…………」
――やがて日も暮れ、ティネスが胃薬を飲み始めた辺りで
彼女をいじるのにも飽きてきたので、俺は玉座の間へと帰ってみた。
「ただいま……ああっ!?」
「ばううっ!?」
大扉を開けて中の様子を伺おうとした俺と、誰かが投げたプリスビーを
口でダイビングキャッチしたプリメーラの目と目が合った。
手足の生えた球根とか芋とかが口々に水分補給をねだってきた。
先に言っておくがこれは幻覚ではない。夢でもない。あくまで現実だ。
新婚旅行中、ずっとガーデニングをほったらかしにしていたら
こんなやつらが地中から這い出てきたのだ。もう手のつけようが無いので
そのガーデニングは放棄してある。
「ほれ」
俺は水を待ちわびている正体不明のクリーチャーに
じょうろの中身をかけてやった。
シャアアアアアアッ……
「生き返るわー」「ごくらくごくらく」「たまらんぜよ」
どことなくユーモラスでありながらも強烈にグロテスクな何かが、
熱い湯に浸かったおっさんみたいな感想を述べている。
これが最近ではごく当たり前の光景なのだが、マリナ達はいまだに慣れないのか
身を寄せ合ってこちらを遠巻きに見ていた。
『なにこれこわい』
というのが彼女らの総意だ。魔物娘と化していても未知への恐怖はあるらしい。
一匹一匹が成人男子の拳くらいのサイズという微妙な大きさが
さらに不気味さに拍車をかけているようだ。
ちなみに、この光景を俺たちが初めて見たときには
プリメーラとサーシャ姉が腰を抜かしてロリ二人が絶叫した。
(あのデルエラでさえ引きつった悲鳴をあげたのには驚かされた)
「あー、これでゆっくりできる」「んだんだ」
水を充分に吸えたらしく、こいつらは自分達の寝床である
旧ガーデニングのところまで歩いていって、そのまま土をかきわけ潜っていった。
「さて、それじゃ新ガーデニングのほうを手入れするか」
苦行を乗り越えた先にあった桃源郷――医の楽園。
そこで購入した薬剤が無事に効いてまともな作物が育ち始めたことへの
喜びを噛みしめながら、俺はウキウキしてきびすを返した。
「待ってお願いどうか待ってストップストップ」
マリナが俺の前に立ちはだかってきた。
「さっきのあれ……どうにかならないの?」
顔をしかめて、魔界も裸足で逃げ出す謎の立入禁止ゾーンを弱々しく指差す。
「まさか、食いたいのか?」
「死んでもイヤ」
じゃあ何だよ。
「あんな汚物は消毒すべきってことだよ。ねえ、おにいちゃんってばぁ」
毒舌魔女っ子の語尾が伸びてない。本当に嫌なようだ。
「やっても構わんが、下手なことして祟られても知らんぞ」
ぐっ、とミミルが息を呑んだ。
「それはそれで遠慮願いたいですわね……
……どうしましょう」
フランツィスカ様が腕組みしながら触手で頭を抱えて悩みはじめた。
水を欲しがるだけの無害な存在なんだから
そっとしておけばいいのに、わざわざこの世から排除することもなかろう。
「だからといって放置してても不運を呼び寄せそうなんだけど」
心配性な狼さんだな。
「呼んだところでたいした不運じゃあるまい。っていうか
俺を人類の敵にしたお前らのほうがよっぽど俺に不運招来させてる」
「それは私たちの膨大な愛の副作用みたいなものだから多少は仕方ないわよ」
流石にカチンときたので色ボケサキュバスの喉に抜き手かました。
ところで、例のリークの件であるが、嫁達には
『デルエラが弾けそうならヘリィに裏から密かに伝える』としか言ってない。
度合いに個人差こそあるものの、九人全員が
教団に対して嫌悪や侮蔑の感情を持っているので、俺がミニ王子ルートで
そちらにもネタを流すとなれば反対は必至だからだ。
ちんこパワーで無理やり同意させるのは可能だが、仲直りセックスならともかく
圧倒的な快楽の波でねじ伏せ強引に従わせるということは極力したくない。
無論、抜き差しならない事態になれば躊躇なく抜き刺しをやるが。
…我ながら面白いギャグである。
「そういえば、貴方にさんざん弄ばれたあの男の子と、その子の
お兄さん……いや、今はもうお姉さんでしたね。貴方と仲がよいみたいですけど
いつの間にそんな親しくなったのですか?」
「俺のカリスマ」
「何をおっしゃられているのか皆目わかりません」
女王様は相変わらず手厳しいコメントを返してくれますね。
「冗談はともかく、男同士、気が合うんだよ。元男でもそれなりに。
それに向こうは俺になんとなく感謝しているようだし」
これが人徳というものかもしれない。
「人徳だと思ってはるんなら大間違いってやつやで」
今宵も言うようになったな。
尻尾の数に比例してツッコミの頻度も増している。けど基本的には
しっとりふんわりしているので愛くるしい。
「今宵は可愛いなあ」
「なにその受け答えおかしくない!?
私だって可愛いでしょ!?尻尾だってあるんだよ、ほらっ!?」
「おねーちゃんおちついておちついて」「尻尾はたぶんかんけいないよー」
仰天したマリナがテンパりだしてダクプリ幼女二人になだめられている。
とても元勇者とは思えない醜態だ。だいたい尻尾なら九人中七人が生えてんだろ。
だが、機嫌をそこねてヒステリーこじらせても困るので頭を撫でておく。
「にゅふふふ」
鼻から抜けているような甘え声をだしてマリナがご満悦状態になった。
毎度毎度思うのだが、こいつはうちの嫁達の中でも抜きん出て
感情の揺れ幅がおかしい。教団の勇者育成や家庭内での教育方針に
何らかの重大な問題があったとしか考えられない。
『あなたと強引に別れさせられて死ぬほどヘコんだけど
それでも世のため人のために一生懸命がんばって勇者やってたら
偶然またあなたに再会したと思ったらお互いに他人行儀な会話しかできなくて
ストレスたまって頭がパパパパーンしかかってたらデルエラ様に救われた。
デルエラ様は素晴らしい。あの方のおかげで私はあなたと愛し愛され
ハッピーエンドな人生を歩むことができた。どれだけ感謝してもし足りない。
貧富の差がありありと見えていたレスカティエも今では笑いと嬌声の絶えない
理想の都市となって嬉しい。あのまま教団の支配下に置かれていたら
弱者を食い物にする腐敗した権力者がどこまでも増長していって
この国は不幸の生産都市と化していたところだった。教団って最低』
というのが彼女いわく自分の情緒不安定さの原因らしい。長い。
馬の心境で例えるとするなら『一度は取り上げられたはずのニンジンが
口の届かないところに吊るされていて空腹にイライラしてたら
親切なおばさんが取ってくれた。しかも牧場の整備もしてくれた』という感じか。
ニンジンの意見も考慮してほしかったものだ。
チョイチョイ
「んっ?」
俺の側でとぐろを巻いて座り込んでいた教官が腕をつついてきた。
「……あーはいはい、そういう事ですね」
髪の毛の感触を楽しむように教官の頭を撫でると
やっぱり嬉しいらしく、長い尾の先がぴこぴこと左右に揺れていた。
「んふー」
「にゅっふっふっ」
「………………」
珍しく嫉妬の色を瞳に宿らせたサーシャ姉が
無言で床に膝をつき、こちらをじっと見て、ナデナデ争奪戦に参加してきた。
「あはは、おにーちゃんも大変だねー」「ごくろうさまー」
やっぱりいい子だなぁ二人は。後でねっとりとメス穴をほじってあげよう。
「あっちのガーデニングの手入れはアタシらがやっとくから」
「旦那さまは彼女らの気ぃすむまで撫でてあげたらええよ」
ほう、今宵はともかく、プリメーラにしては気が利いてるな。雪が降るかもしれん。
「……だから、ご褒美……お願いね」
耳元でボソッと報酬を要求して、プリメーラは含み笑いをした。現金なやつだ。
ま、いいだろう。
その後、俺がロリっ子×2のおまんこ食べ比べをしていたところに
ハアハア言いながら駆けつけてきたプリメーラにご褒美として
フリスビーを渡したらマジギレされた。
「…………それは怒っても当然でしょ」
最近ではフランクな口調になったミリュスの部屋に俺は逃げていた。
プリメーラの怒りが覚めるまでここにいるつもりである。
「笑ってすますなり皮肉で返すなりしてきたのが昔のプリメーラなんだよな。
これだから発情してる魔物娘は冗談が通じないから困る」
「なに渋い顔して古臭いこと言ってるんだか。
通じないのが既にわかってるなら冗談かますのやめればよかったのに」
「それは決してできん」
俺は断じた。
「なんで!?」
「こだわりだよ、こだわり。ところでミー君、尻穴のほうは使ってるのか?
なんなら、二人っきりの時にぬっぷり突き刺してやってもいいぞ?」
「そうですね、じゃあ近いうちにでもお願いしようかな」
お互いフフッと笑うと、俺とミリュスは紅茶の入ったカップに口をつけた。
「私がここにいるのになんでそんな会話ができるんだ!!?」
テーブルに両手をバン!と叩きつけるティネス。
その反動でクッキーが飛び上がり、彼女のカップが中身をぶちまけながら横転した。
「あ、もしかして姉さんも混ざりたかった?」
「それも悪くはないが、そういう問題ではない!」
おい本音がしょっぱなから出てるぞ。
「生涯の伴侶でもある実弟が目の前で男に肛虐されるとか、
そういうの好きな女性には最高に萌えるシチュだというではないか」
「わっ私は、そ、そういう性癖はない、からっ」
いいから鼻血ふけ。身体は正直だなまったく。
「姉さんも、そこまで動じなくてもいいじゃない。
僕のお尻まんこの初めてをもらってるのに」
少年とは思えない魅惑的な流し目をくれながらミリュスが姉をなだめる。
「…これで動じない魔物娘なんて、たぶんこの世にいないぞ」
「何にでも例外は存在する」
「君はちょっと黙っててくれ。落ち着いた気分がまた荒れてしまいかねない」
「うわぁんミー君あの人こわいよぉ」
見せつける様に俺はミリュスに抱きついてみると
「おーよしよし」
ミリュスも乗ってきた。うむ、この少年にもトリックスターの素質がある。
「貴様ら…………」
――やがて日も暮れ、ティネスが胃薬を飲み始めた辺りで
彼女をいじるのにも飽きてきたので、俺は玉座の間へと帰ってみた。
「ただいま……ああっ!?」
「ばううっ!?」
大扉を開けて中の様子を伺おうとした俺と、誰かが投げたプリスビーを
口でダイビングキャッチしたプリメーラの目と目が合った。
12/08/19 22:30更新 / だれか
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