そのさん
流石にナイスガイの俺でも、手足が使えないうえ5対1という
数でも質でも負けてなおかつハンデつきの状況を打破することは難しく、
あわれ囚われの身となり玉座の間へと連行されたのだった。
「ねえ、今の気分はどうかな。ちなみに私は最高の気分だよ。
これから始まる宴のことを考えるだけで、子宮がうずいちゃうの。
独り占めできないのは残念だけどね……んっ、あ、ああっ……」
我慢できないのか、マリナは己の股間をいじり、うっとりとした表情で、
足取りが重くて仕方がない俺の腕にもう一方の腕を絡ませ並んで歩いていた。
他の面々もデルエラ以外はスキップしそうな面持ちだ。
…そのうち一人はスキップしようにも足がないが。
「ライオンの檻に放り込まれるブタさんの心境だ」
「詩人だね〜〜」
溶け崩れるんじゃないかってくらい顔を弛緩させたミミルが
的外れなことを言ってきたので蹴飛ばしたかったが、手足が
触手に押さえつけられていることもあり、ぐっとこらえることにした。
「…そうだ、大事な話があるんだが」
「まぐわいながら聞いてやるよ。どうせ大した話じゃないんだろうけどさ。
というより……これから始まるお楽しみ以上に大事なことなんて
あるはずないしねぇ………」
ペロリと長い舌で唇を舐め、好色な、メスそのものの目線を
こちらに向ける教官からは訓練や戦闘のときとは
また別の威圧感――そう、捕食者のそれが感じられた。
「えーと、姫様なら俺の話を聞いて、く、くっ」
普段が清楚だっただけに、やっぱ今のビジュアルは笑いが…
「申し訳ありませんが、わたくしの耳はただいま休憩していますの。
ですから話は聞けません。ごめんなさいね」
触手を生やした姿とは正反対なトゲトゲしい言葉が返ってきた。
「聞いてるじゃないですか」
「独り言です」
にべもない。
「それにしても、あなたも往生際が悪いわねぇ。
私もこれまでいろいろな子を堕としてきたけど、これだけ抗う子は初めてよ?」
呆れた口調でデルエラが割って入ってきた。
「これでも教団の一員なもんで」
吐き捨てるように俺は言ってやった。
「その割には信心深さがまったくないみたいだけれど…」
「そんなことないよ〜〜わたくしこれでも信心の塊ですから〜〜」
わざと変な顔をしてムカツク喋りをしてみた。
もの凄い痛いヘッドロックかけられた。死ぬかと思った。
「おにいちゃんてば、命知らずにもほどがあるよ〜〜」
「俺の信仰心を疑うような奴が悪い」
ん?
ふと隣のマリナを見ると、なんだか不機嫌そうにしている。
ふむ…逃げるチャンスに利用できるか?
「……………信仰心なんて………教団なんて、主神なんて、くだらないよ。
勝手な理屈で私を束縛して、勇者にして、私から大事なものを奪う、くだらない存在。
そんなものこの世からなくなってしまえばいいんだ……!」
あれれ、もしかしてトラウマに触れたか?
「ま、まあ、マリナさん落ち着いて。大事なものなら
後でこっそり取り返すとかしたらいいじゃん。なんなら俺が取り返すからさ。
息をするように無理難題を言ってたお前にさんざん振り回されて
幼いながらも胃を痛めたり『お嬢様のわがままぶりは魔王級だよぉ』とか
愚痴ったりしていた俺を信じろって、な?
……あれ?」
さっきまで自慰に使われていたマリナの手が、握りこぶしへと変貌していた。
「ねえ、腹パンしていい?」
「なんでだ」
勇者だったときのような凍った笑顔を見せるマリナを見て、
俺は『女心は秒単位で変わるって本当だな』とつくづく思うのだった。
腹パンをなんとか回避したり、またも口を滑らせて今度は
教官をイラッとさせたりしつつも、俺達は終点――玉座の間に辿り着いた。
途中で『窓突き破って疲れたから休もう』とか言って数分ほど尺を稼ぎ
助けが来ることを期待してたが人生は甘くなかった。
「ようこそ………ここが今から、あなたたちの愛の巣よ」
「ベッドすらないのに愛の巣もくそもあるかバーカこれだから淫魔は困る」
言い終える前に俺は隣に立つマリナの陰に隠れた。
「おさえて、どうかおさえて!
わたくし達がよく言って聞かせますから、落ち着いてくださいませ!」
「デルエラさま〜〜どうどう、どうどう〜〜!!」
このやりとりだけでまた数分稼いだがやはり人生は苦かった。
その後ひととおり事情説明を受け、俺は現状を理解することになった。
「ハタチ前に異種嫁四人とゴールインとかなんの罰ゲームだ」
「ご褒美でしょ?」
玉座に無理やり座らされた俺の上に向かい合うように
腰を下ろしたマリナが、俺の胸に子猫のように頬擦りしながら反論してきた。
正直すこし重いのだが、教官や王女様じゃなかっただけマシである。
「まあ、遅かれ早かれあなたもインキュバスになるわけだし、
この子達は異種嫁じゃなくて同種嫁になるのかしらねぇ…
…けど、一応、インキュバスって魔物じゃなくて
魔力で変質した人間だから…あら、やっぱり異種嫁かしら?」
「どっちにせよ俺も教団の討伐対象になるんじゃねーか!」
などとデルエラに怒鳴ったものの、俺のそれなりに回る頭脳は
『遅かれ早かれということは、この四匹とここでヤッても
インキュバス化する前に隙をついて逃げればよくね?』
と、実にクレバーな案を編み出していた。
「…遅かれ早かれって言ったけど、よく考えたらそうでもないわね。
この子達みたいな強力な魔物と交わったら、早くても今日中に
インキュバス化は確定だと思うわ」
……これだけ見事に退路を断たれると笑うしかないな。
だが、もうちょっとだけあがいてみようと思う。
数でも質でも負けてなおかつハンデつきの状況を打破することは難しく、
あわれ囚われの身となり玉座の間へと連行されたのだった。
「ねえ、今の気分はどうかな。ちなみに私は最高の気分だよ。
これから始まる宴のことを考えるだけで、子宮がうずいちゃうの。
独り占めできないのは残念だけどね……んっ、あ、ああっ……」
我慢できないのか、マリナは己の股間をいじり、うっとりとした表情で、
足取りが重くて仕方がない俺の腕にもう一方の腕を絡ませ並んで歩いていた。
他の面々もデルエラ以外はスキップしそうな面持ちだ。
…そのうち一人はスキップしようにも足がないが。
「ライオンの檻に放り込まれるブタさんの心境だ」
「詩人だね〜〜」
溶け崩れるんじゃないかってくらい顔を弛緩させたミミルが
的外れなことを言ってきたので蹴飛ばしたかったが、手足が
触手に押さえつけられていることもあり、ぐっとこらえることにした。
「…そうだ、大事な話があるんだが」
「まぐわいながら聞いてやるよ。どうせ大した話じゃないんだろうけどさ。
というより……これから始まるお楽しみ以上に大事なことなんて
あるはずないしねぇ………」
ペロリと長い舌で唇を舐め、好色な、メスそのものの目線を
こちらに向ける教官からは訓練や戦闘のときとは
また別の威圧感――そう、捕食者のそれが感じられた。
「えーと、姫様なら俺の話を聞いて、く、くっ」
普段が清楚だっただけに、やっぱ今のビジュアルは笑いが…
「申し訳ありませんが、わたくしの耳はただいま休憩していますの。
ですから話は聞けません。ごめんなさいね」
触手を生やした姿とは正反対なトゲトゲしい言葉が返ってきた。
「聞いてるじゃないですか」
「独り言です」
にべもない。
「それにしても、あなたも往生際が悪いわねぇ。
私もこれまでいろいろな子を堕としてきたけど、これだけ抗う子は初めてよ?」
呆れた口調でデルエラが割って入ってきた。
「これでも教団の一員なもんで」
吐き捨てるように俺は言ってやった。
「その割には信心深さがまったくないみたいだけれど…」
「そんなことないよ〜〜わたくしこれでも信心の塊ですから〜〜」
わざと変な顔をしてムカツク喋りをしてみた。
もの凄い痛いヘッドロックかけられた。死ぬかと思った。
「おにいちゃんてば、命知らずにもほどがあるよ〜〜」
「俺の信仰心を疑うような奴が悪い」
ん?
ふと隣のマリナを見ると、なんだか不機嫌そうにしている。
ふむ…逃げるチャンスに利用できるか?
「……………信仰心なんて………教団なんて、主神なんて、くだらないよ。
勝手な理屈で私を束縛して、勇者にして、私から大事なものを奪う、くだらない存在。
そんなものこの世からなくなってしまえばいいんだ……!」
あれれ、もしかしてトラウマに触れたか?
「ま、まあ、マリナさん落ち着いて。大事なものなら
後でこっそり取り返すとかしたらいいじゃん。なんなら俺が取り返すからさ。
息をするように無理難題を言ってたお前にさんざん振り回されて
幼いながらも胃を痛めたり『お嬢様のわがままぶりは魔王級だよぉ』とか
愚痴ったりしていた俺を信じろって、な?
……あれ?」
さっきまで自慰に使われていたマリナの手が、握りこぶしへと変貌していた。
「ねえ、腹パンしていい?」
「なんでだ」
勇者だったときのような凍った笑顔を見せるマリナを見て、
俺は『女心は秒単位で変わるって本当だな』とつくづく思うのだった。
腹パンをなんとか回避したり、またも口を滑らせて今度は
教官をイラッとさせたりしつつも、俺達は終点――玉座の間に辿り着いた。
途中で『窓突き破って疲れたから休もう』とか言って数分ほど尺を稼ぎ
助けが来ることを期待してたが人生は甘くなかった。
「ようこそ………ここが今から、あなたたちの愛の巣よ」
「ベッドすらないのに愛の巣もくそもあるかバーカこれだから淫魔は困る」
言い終える前に俺は隣に立つマリナの陰に隠れた。
「おさえて、どうかおさえて!
わたくし達がよく言って聞かせますから、落ち着いてくださいませ!」
「デルエラさま〜〜どうどう、どうどう〜〜!!」
このやりとりだけでまた数分稼いだがやはり人生は苦かった。
その後ひととおり事情説明を受け、俺は現状を理解することになった。
「ハタチ前に異種嫁四人とゴールインとかなんの罰ゲームだ」
「ご褒美でしょ?」
玉座に無理やり座らされた俺の上に向かい合うように
腰を下ろしたマリナが、俺の胸に子猫のように頬擦りしながら反論してきた。
正直すこし重いのだが、教官や王女様じゃなかっただけマシである。
「まあ、遅かれ早かれあなたもインキュバスになるわけだし、
この子達は異種嫁じゃなくて同種嫁になるのかしらねぇ…
…けど、一応、インキュバスって魔物じゃなくて
魔力で変質した人間だから…あら、やっぱり異種嫁かしら?」
「どっちにせよ俺も教団の討伐対象になるんじゃねーか!」
などとデルエラに怒鳴ったものの、俺のそれなりに回る頭脳は
『遅かれ早かれということは、この四匹とここでヤッても
インキュバス化する前に隙をついて逃げればよくね?』
と、実にクレバーな案を編み出していた。
「…遅かれ早かれって言ったけど、よく考えたらそうでもないわね。
この子達みたいな強力な魔物と交わったら、早くても今日中に
インキュバス化は確定だと思うわ」
……これだけ見事に退路を断たれると笑うしかないな。
だが、もうちょっとだけあがいてみようと思う。
12/01/07 14:24更新 / だれか
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