真実の鏡 上
とある国に1人の家具職人が居ました。彼は、無類の女好きで女性の依頼なら無償で何でも作ってしまう男でした。そんな中、その国にも魔物が押し寄せて来てしまいます。国はあっという間に落とされてしまい一部の人間はその国から逃げ出してしまいました。勿論、その中にはあの家具職人もいました。
それから幾年、逃げきった人たちは過去の出来事を糧に様々な事を準備しました。ある者は清めた武器を、ある者は魔から身を守る呪文を。勿論、家具職人もある物を作っていました。
ありとあらゆる物を真実に映し出す『真実の鏡』を・・・
風が吹き、雪が視界を遮り俺たちの歩みを妨げる。
「おい、ダン。お前の予想はどうしてこんなに当たらないんだよ」
「知りませんよ。そんなの空の神様に言ってください」
俺、コモン・アルブと隣を歩くダン・グラウスはどうしようもない口論をしながら進みが遅い歩みを続けている。 何故、こんな事をしているのかと言うと事の発端はこいつにある。
「コモンさん。今週の回収率、悪いみたいですねぇ。どうせなら僕の仕事を手伝ってくださいよぉ」
仕事の事を忘れようと楽しく酒を飲んでいた俺に対してダンは、鼻につくような言い方で俺に寄り添ってきた。元々担当が違うのだから余り関わらないが時たま、自分では出来ない仕事を持ってきては俺に手伝うようにやって来る。・・・最初の頃は、仕事覚えも兼ねて受けていたが今は突き放すよう接している。
「お前が受けた仕事だろうが。責任もって最後までやれ」
「ええぇ!?そんな冷たい事言わないで下さいよ。折角、最北の町キューリューの依頼が入ったのに、・・・あそこの地酒は美味しいのになぁ」
「!!?」
・・まぁ、こんな感じで俺は釣られてしまった訳なのだが、ここからがダンの責任になる。まずは移動する際はワープを使用するのに時間を掛けて海を渡ったりするし、宿も安いところで良いのに経費使いまくってホテルに泊まる。最終的には町人の警告も聞かずに今なら雪山に入っても大丈夫と言う始末。要は自己中なのである。
「見えましたよ。あの村です」
そんな事を思い耽っていると目の前には薄っすらとなにかの建物が見えてきた。更に近づくとここが目的の村であることが解った。
「村に着くなり酒を浴びて寝るなんてどこの馬鹿ですか貴方は」
村に着いた俺達は、日も暮れ始めていることに気づき調査を明日に持ち越しにし、俺は酒を買いにバーへ、ダンは宿を取りに行った。その後は、明日の行動の確認をして眠りにつこうとした際にダンが言い放ったのでその言葉に俺は、軽くあしらう素振りをして目を閉じた。
「鏡?・・・いや見たこと無いですね」
「そんなものがあるんなら私達、みんな化け物に映っちゃうわ。それよりもお兄さん格好良いわね、私と楽しまない?」
「がははは・・・。男の俺が鏡を持っている訳ないだろう」
翌日、昨日の怠けを巻き直すかのような動きで俺たちは村人から聞き込みを始める。・・しかし、誰に聞いても知らない、見たこともないばかりであった。
「はぁ、村人全員に聞いても解らないんならこの村じゃないんだろうな。それかそもそもその鏡自体が無くなったか」
「・・・」
「しょうがないから明日の朝にこの村を出て他の場所当たろうぜ?」
「・・・」
「おいダン。無口だが話聞いていたか?」
聞き込みを終えた俺が、明日からの予定を話しているにもかかわらずダンは何かを真剣な眼差しで見つめている。覗き込むとそれはこの宿のパンフレットであった。
「そんなの見てどうしたよ」
「コモンさん。俺たちが探している鏡ってこれの事ですよね?」
そう言ってダンは俺の顔にパンフレットを押し付けてくる。そこに描かれていたのは創立始め頃の部屋の一室、そしてその部屋に似合わないぐらいの大きな鏡だった。
「・・これだ。間違いない渡された資料通りの形に装飾、間違いない。ってことは、この宿の中にあるって事だろうな」
その事を確信した俺達は明日の為に、今日は寝る事にした。
「へっ? 鏡ですか?」
翌日、この宿の主に鏡の事を聞いてみた。丁度奥さんであるホルスタウルスの胸を握っている。・・・どうやらこれから搾乳をする予定だったらしい。
「・・・えぇ、このパンフに記載されているやつなのですが。どうでしょうか?」
「・・ん〜、ボクがここに婿として来た時は無かったですね」
「婿っすか、因みにご主人は何代目で?」
宿の関係者からの聞き込みを行ってはみたものの結局のところは何の情報は得られなかった。やはり、別の村に移されてしまったのでは?と部屋での討論会をしている時、ドアをノックする音に俺達はドアに目を向けた。
「ご注文のお酒をお持ちいたしました」
入ってきたのはホルスタウルスの少女、多分、主の娘さんだろう。ダンの方を見ると変な顔でこっちを見ている。なんか気に障ったのだろうか。そんな事よりも俺はパンフをこの子にも見せてみる。
「・・まさか、あの子の曾祖母が鏡の持ち主だったとはな。しかも家が別居で村の外れなんて」
「そんな所に毎日、様子を見に行くあの子は健気で良い子ですね。嫁さんにするならあんな子が良いです」
翌日、少女から得た情報で俺達は彼女の曾祖母の家に向かう事にした。少女の話によると、祖母と一緒に行った時に大きななにかに布が掛かっていたらしい。今、思えば鏡だろうといっていた。それともう一つ・・
「その曽祖母が歳のわりには20代と変わらなく、しかも“人間のまま”ときたものだ。こりゃ完全に当たりだろ」
そんな事を話しながら俺達は微かに見え始める家に歩みを速めた。
それから幾年、逃げきった人たちは過去の出来事を糧に様々な事を準備しました。ある者は清めた武器を、ある者は魔から身を守る呪文を。勿論、家具職人もある物を作っていました。
ありとあらゆる物を真実に映し出す『真実の鏡』を・・・
風が吹き、雪が視界を遮り俺たちの歩みを妨げる。
「おい、ダン。お前の予想はどうしてこんなに当たらないんだよ」
「知りませんよ。そんなの空の神様に言ってください」
俺、コモン・アルブと隣を歩くダン・グラウスはどうしようもない口論をしながら進みが遅い歩みを続けている。 何故、こんな事をしているのかと言うと事の発端はこいつにある。
「コモンさん。今週の回収率、悪いみたいですねぇ。どうせなら僕の仕事を手伝ってくださいよぉ」
仕事の事を忘れようと楽しく酒を飲んでいた俺に対してダンは、鼻につくような言い方で俺に寄り添ってきた。元々担当が違うのだから余り関わらないが時たま、自分では出来ない仕事を持ってきては俺に手伝うようにやって来る。・・・最初の頃は、仕事覚えも兼ねて受けていたが今は突き放すよう接している。
「お前が受けた仕事だろうが。責任もって最後までやれ」
「ええぇ!?そんな冷たい事言わないで下さいよ。折角、最北の町キューリューの依頼が入ったのに、・・・あそこの地酒は美味しいのになぁ」
「!!?」
・・まぁ、こんな感じで俺は釣られてしまった訳なのだが、ここからがダンの責任になる。まずは移動する際はワープを使用するのに時間を掛けて海を渡ったりするし、宿も安いところで良いのに経費使いまくってホテルに泊まる。最終的には町人の警告も聞かずに今なら雪山に入っても大丈夫と言う始末。要は自己中なのである。
「見えましたよ。あの村です」
そんな事を思い耽っていると目の前には薄っすらとなにかの建物が見えてきた。更に近づくとここが目的の村であることが解った。
「村に着くなり酒を浴びて寝るなんてどこの馬鹿ですか貴方は」
村に着いた俺達は、日も暮れ始めていることに気づき調査を明日に持ち越しにし、俺は酒を買いにバーへ、ダンは宿を取りに行った。その後は、明日の行動の確認をして眠りにつこうとした際にダンが言い放ったのでその言葉に俺は、軽くあしらう素振りをして目を閉じた。
「鏡?・・・いや見たこと無いですね」
「そんなものがあるんなら私達、みんな化け物に映っちゃうわ。それよりもお兄さん格好良いわね、私と楽しまない?」
「がははは・・・。男の俺が鏡を持っている訳ないだろう」
翌日、昨日の怠けを巻き直すかのような動きで俺たちは村人から聞き込みを始める。・・しかし、誰に聞いても知らない、見たこともないばかりであった。
「はぁ、村人全員に聞いても解らないんならこの村じゃないんだろうな。それかそもそもその鏡自体が無くなったか」
「・・・」
「しょうがないから明日の朝にこの村を出て他の場所当たろうぜ?」
「・・・」
「おいダン。無口だが話聞いていたか?」
聞き込みを終えた俺が、明日からの予定を話しているにもかかわらずダンは何かを真剣な眼差しで見つめている。覗き込むとそれはこの宿のパンフレットであった。
「そんなの見てどうしたよ」
「コモンさん。俺たちが探している鏡ってこれの事ですよね?」
そう言ってダンは俺の顔にパンフレットを押し付けてくる。そこに描かれていたのは創立始め頃の部屋の一室、そしてその部屋に似合わないぐらいの大きな鏡だった。
「・・これだ。間違いない渡された資料通りの形に装飾、間違いない。ってことは、この宿の中にあるって事だろうな」
その事を確信した俺達は明日の為に、今日は寝る事にした。
「へっ? 鏡ですか?」
翌日、この宿の主に鏡の事を聞いてみた。丁度奥さんであるホルスタウルスの胸を握っている。・・・どうやらこれから搾乳をする予定だったらしい。
「・・・えぇ、このパンフに記載されているやつなのですが。どうでしょうか?」
「・・ん〜、ボクがここに婿として来た時は無かったですね」
「婿っすか、因みにご主人は何代目で?」
宿の関係者からの聞き込みを行ってはみたものの結局のところは何の情報は得られなかった。やはり、別の村に移されてしまったのでは?と部屋での討論会をしている時、ドアをノックする音に俺達はドアに目を向けた。
「ご注文のお酒をお持ちいたしました」
入ってきたのはホルスタウルスの少女、多分、主の娘さんだろう。ダンの方を見ると変な顔でこっちを見ている。なんか気に障ったのだろうか。そんな事よりも俺はパンフをこの子にも見せてみる。
「・・まさか、あの子の曾祖母が鏡の持ち主だったとはな。しかも家が別居で村の外れなんて」
「そんな所に毎日、様子を見に行くあの子は健気で良い子ですね。嫁さんにするならあんな子が良いです」
翌日、少女から得た情報で俺達は彼女の曾祖母の家に向かう事にした。少女の話によると、祖母と一緒に行った時に大きななにかに布が掛かっていたらしい。今、思えば鏡だろうといっていた。それともう一つ・・
「その曽祖母が歳のわりには20代と変わらなく、しかも“人間のまま”ときたものだ。こりゃ完全に当たりだろ」
そんな事を話しながら俺達は微かに見え始める家に歩みを速めた。
16/11/17 18:05更新 / kirisaki
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