憧れのセンパイと
日曜の昼下がり、プールサイドのベンチで休んでいる俺は目の前のレーンを泳ぐセンパイの姿をぼうっと眺めていた。ドルフィンキックで滑らかに水を切っていく姿は人魚のようだ。クロールで端まで泳ぐと鮮やかに体を半回転させ、またドルフィンキックを始める。余裕のあるゆったりとした泳ぎだが、周りで泳ぐ人を次々と抜かしていく。それも当然のことだ。センパイは元高校水泳部のエースだったのだ。趣味やら健康のためと中年以上の人も多いこの市民プールでセンパイと同レベルの人などそうはいない。一方で1学年下の俺も同じ水泳部だったが、センスがなかったようで素人に毛が生えた程度にしかならなかった。それでも3年間の活動のおかげでそれなりに筋肉質な体になったのには感謝している。でも、俺にはそれ以上に得たものがある。
「カズキ、いつまで休んでんだよ。体力落ちたんじゃないないのか?」
センパイがプールから上がり俺の横まで来ていた。水泳ゴーグルを上げながら涼しい顔で息をついている。
「帰宅部なんで、さすがになまりますよ」
俺とセンパイが通っている大学には水泳部がなく、今は二人とも帰宅部だ。
「なにぃ〜?それは先輩として見過ごせないな。よし、また来週ここに来るぞ!っていうかもう毎週来るぞ!」
「えぇ〜」
「えぇ〜じゃない!」
腰に手を当ててセンパイがすごんだ。
「……」
「ん?どうなんだ?」
「プッ」
センパイの保護者みたいな態度に思わず吐き出した。
「フフッ」
センパイも笑みを浮かべる。切長の目を細めた優しい笑顔だ。
「もう行くか?」
「はい」
二人でプールを出てシャワールームに来た。俺が手短にサッと浴びて出ると、隣で先輩はまだ浴びていた。サラサラとした綺麗な黒髪をかき揚げながらシャワーを浴びている姿は、男の俺でもホレボレするくらい絵になっている。色白の長身でスラリとした長い手脚は細身だけど引き締まって筋肉質だ。肌には体毛がなくて滑らかだ。胸毛もすね毛もしっかりある俺とは大違いである。ガゼルのような脚とはきっとこういうのを言うのだろうと一人思っていると、センパイがシャワーを終えて出てきた。水泳部時代に使っていたピッタリと密着する競泳水着にはやや膨らみがある。まあ、センパイも男だから当然なのだが、中性的なセンパイにアソコがついているのを見ると何か不思議な感じがするものだ。ちなみにセンパイはアソコもキレイだ。亀頭がピンク色でツヤがあるのだ。…いや、別に変な意味はない。ただ、そう見えただけの話だ。
センパイは俺が待っているのを見ると、相変わらず早いだのしっかり身体を流しておいた方がいいだのとプチ説教を垂れながら更衣室に向かっていった。
更衣室で体を拭くと、センパイは丸椅子に腰かけ体に保湿クリームを塗り始めた。肌が弱いらしくまめに塗っているそうだ。丹念に全身に塗り込み自分の体を確認すると、センパイが俺の方を見た。
「カズキ、悪いけど背中塗ってくれる?」
「いいっすよ」
「ありがとう」
センパイがクリームの丸い容器を手渡し背を向けた。
「厚めに塗ってくれる?」
「うっす」
俺は白いクリームをすくって手に取り、センパイの背の全体に点々とつけ、それを手の平で満べんなく伸ばした。背筋でできた溝にも筋肉に沿ってしっかり塗り込む。きめ細かいキレイな肌だが、よく見ると少し赤みがかった部分もある。
(こういう所はよく塗った方がいいのかな)
肌を観察して荒れてる部分が他にないか探していると
「何かさぁ〜、さっきから手つきヤラしくない?」
センパイが眉をひそめて怪訝な顔でこちらを向いた。
「えっ!?そうっすか?」
「うん、何というか女の背中にオイル塗ってるエロ親父って感じ」
「なに言ってんすか!センパイにこき使われてる可愛い後輩に!」
「自分で可愛い言うなし!むさ苦しいエロビデオに出てきそうな顔してるくせに」
「そりゃあんまりっす!俺、もうやめます!」
俺はセンパイの背中から手を離し、顔をぷいっと横に向けた。
「ゴメンゴメン!冗談だって!!」
センパイが笑いながら謝る。
「いや、別に怒ってないですよ。でも、俺のことそんな風に思ってたんですか?」
「うーん、ちょっとだけね」
「ガーン!!ショックです…」
まさかの言葉に少なからず傷ついていたが、しかしクリームであやしく光っているセンパイの体を見ていると、本当にオイルが塗られた女性の体のように見えてきた。胸筋でわずかに膨らんでいる胸が女性の胸に見えなくもない。そんな風に思っていると不意に
「でも、確かにセンパイの体ってなんかエロいっすよね」
意図せず、ぼろっと言葉が出た。
「えっ….」
センパイがこちらを見たままボカンと口を開けた。
「あっ….」
俺も遅れて事態を呑み込み言葉に詰まった。2人の間で一瞬時が止まる。
「や、やっぱりお前、ヤラしい目で見てたんじゃねーか!!」
「あ、いや!違いますって!変なこと言われたから、こっちも頭が変になっただけですって!!」
慌てて取り繕う。気づくとセンパイの視線が下の方を向いていた。
「……お前、アソコ勃ってないか」
「へっ?」
首を曲げ自分の股間を見ると、半勃ちになっていた。
「あ、ほら、そんなこと言ってるから勃っちゃったじゃないですか!!」
「オレのせいかよ!!」
「そうっすよ!!」
「分かったよ!もういいよ!!」
センパイがクリームを取り上げて服を着た。変な気まずさの中、俺たちはそそくさと市民プールを出た。
センパイと繁華街をあてもなくほっつき歩く。町で女学生と思われる集団とすれ違うと時折こちらをチラッと見た。もちろん見ているのは俺ではなく隣のセンパイのだ。センパイは爽やかイケメンで実際に女子からモテている。サラサラの髪、クールでキリッとした目、特別高くはないがスッと通った鼻筋、やや薄めだが血色の良い唇にシャープな顎のライン。色白の透明感のある肌にいい感じの細マッチョで、ふんわりと香るどこだかの横文字ブランドの香水までつけている。服装も洗練されたオシャレな着こなしだ。おまけにクールな印象に対して人当たりは良い。こんなのモテるに決まってる。
「そういえば、休日に俺なんかと過ごしてていいんですか?彼女いましたよね?」
ふと疑問に思ったことを聞いてみた。センパイには彼にふさわしい可愛い彼女がいるのだ。
「ああ、うん。あの子はもう別れた」
センパイはなんでもないようにサラッと答えた。
「えっ、またですか!?価値観が合わなかったとか?実は性格悪かったんですか?」
「うーん、そうじゃないんだけど…なんでだろうね。オレもよくわかんないわ」
センパイはあまり重く考えてないようだった。引く手あまたのものだから、センパイは高校の時から女性に困ることはなかった。だが、いずれも長続きせず、理由を聞いても、いつも『分かんない』と答えるだけだった。女子とは全く縁のなかった俺からすればセンパイのモテっぷりは羨ましかったが、彼女と別れても俺とは変わらずにつるんでくれるのが嬉しかった。
二人でゲーセンやCDショップやらをうろついた後、センパイの家で宅飲みすることになった。コンビニで酒とつまみを買って大学近くのアパートに向かった。
ガチャッ
「お邪魔しまーす」
「うん、上がって」
センパイの家はいつも小綺麗でよく片付いている。居間のテレビの横には小さめの本棚があり、大学の教科書や参考書やらが学問分野ごとに並べられている。ゲームでもするかとセンパイがゲーム機を取り出し、二人でレースゲームやパーティゲームを楽しんだ。時間が遅くなると、テレビを見ながらつまみと酒を飲み食いし、学校のことや読んでいる漫画の話題などたわいもない話をした。やがて酒がまわり顔が赤らんでいるセンパイと高校時代の思い出話をした。
中学では帰宅部で灰色の青春を送った俺は、高校デビューを果たそうと運動部に入ることを決めていた。入学間も無く入部先を探していた時、新入生に勧誘のビラを配っているセンパイと出会った。出会ったと言っても上級生がひしめく中でただセンパイを見ただけだ。玄関に隣接するホールでは他にも勧誘活動をする生徒が何人もいた。でも、俺の目はセンパイにだけ向けられていた。俺はフラフラッと光に集まる羽虫のようにセンパイの方へと歩いて行った。
『あっ!ビラもらってくれるの?ありがとう!』
笑顔で手渡されたビラには水泳部の文字が大きく書かれていた。
『未経験でも大丈夫だからね!良かったら体験入部してみてね』
『はい』
ビラを持って俺はその騒がしい空間からすぐに離れた。他の部活には目もくれずに。足元は変にフワフワして妙な気分だった。翌日水泳部の見学に行った。緊張と不安で部室前をソワソワしていると向こうからやってきたセンパイがこちらに気づいて声をかけた。
『キミ、昨日来てた子でしょ?来てくれたんだ!ありがとう!!』
『あっ、昨日はどうも。その俺、全然泳げないんですけど大丈夫ですか?』
『もちろん、ノープロブレム!!とりあえず中入りなよ!』
おどけてみせるセンパイを見て心のコワバリがスッと楽になった。水着も持っていなかった俺はただセンパイの泳ぐ姿をずっと見ていた。まさに水を得た魚のように泳ぐその人を飽きることもなく。その日入部を決めた。
いざ入部してみると新入部員のうちで本当の初心者は俺だけだった。そんな俺にセンパイは一から丁寧に指導してくれた。
バシャバシャ……
入部初日、ビート板を使って練習を始めたが、いくら足をバタつかせても進まない上によく沈んだ。
『バタ足は力いっぱいやっても疲れるだけだよ。もっと力抜いて』
『はい』
バシャバシャバシャバシャ……
意識はしてみるもすぐにまた沈んだ。
『うん、いきなりは難しいな。まずは壁キックからしよう』
今度はプールの壁を掴んでの練習だ。周りをみると新入部員でも未熟ながらクロールくらいは大体出来ている。恥ずかしさのあまり入部したのを少し後悔した。
『力まずに股関節から動かすイメージで』
センパイが俺の足を掴んで上下に動かす。細く長い指が足を優しく包み込む。
『いい感じになってる。その調子その調子』
感覚を掴めるようになるまでセンパイは根気強く励まし続けてくれた。センパイは俺の専属指導係のようになり、プライベートでもよくつるむようになった。結局、俺は女子からモテることはなかったけど、センパイと過ごす時間はかけがいのないものだった。
やがてセンパイは希望する学科のある大学へと進学して地元を離れた。俺も進路を考える時期になると迷わずセンパイと同じ大学を目指して猛勉強を始めた。偏差値的に厳しかったが、センパイが勉強法や使える参考書を教えてくれて頑張ることができた。勉強は全然好きじゃなかったが、センパイの大学に行きたいという想いと彼の励ましのおかげでなんとか合格することができた。
「カズキは部活も勉強もよく頑張ったよな。ホントによくやったと思うよ」
居間のソファにもたれたセンパイが感慨深けに語った。
「全部センパイのおかげです。あんなに覚えが悪かったのにずっと付き合ってくれて本当に感謝してます」
「なんだよ改まってー。部活の同級生の中じゃカズキが一番成長してたと思うよ」
「スタートラインが違いましたからね」
「そうだけど、中身もたくましくなったし……」
酔ったセンパイが俺を見ると、にやけながら不意に俺の胸元を触った。
「体も立派になったよな」
「ちょっ!センパイ飲み過ぎですよ!酒弱いのに」
「なーにマジメぶってんだよー。昼間はエロい目で見てたくせに……」
センパイがやや顔を背けながらつぶやくように話した。
「えっ!今その話しますか!?」
「だってお前が言ったんじゃんかー」
「だ、だからあれは…」
「……ホントのところ、オレのこと、どう思ってんの?」
あたふたしてると静かにその言葉が聞こえた。
「えっ?」
気づくとセンパイがこちらを見据えていた。その言葉の解釈をどうすればいいのか分からずにいると
「ゴメン、変なこと聞いちゃって。やっぱ飲み過ぎたみたいだわ。なんかもう眠くなってきたし、今日泊まってくか?」
センパイが伸びをしながら立ち上がり、大きなあくびをした。
「あ、いや、……今日はやめときます」
「そっか。じゃあ、また明日な。一限目からだから起きれるかな」
「月曜はそうでしたね。早めに寝た方がいいっすよ。じゃ、俺帰ります」
センパイの家には何度も泊まったことがあったのだが、この日は帰ることにした。その方がお互いにいいと思った。
翌日の一限目は二人とも履修している科目だった。講義室でセンパイを待っていたが、いつもやって来る時間になっても現れない。
ビロンッ
どうしたのだろうと思っているとケータイからメールの通知音が鳴った。
“今日調子悪いから休むわ”
センパイからメールがきていた。
“了解です”
返信を送ると教授が講義室に入ってきた。
講義の合間に見舞いに行っていいかセンパイにメールを送ったが、ただの二日酔いなので必要ないと返事がきた。心配いらないとも送られてきた。
けれども、その次の日になってもセンパイは姿を見せなかった。今度は、”風邪を引いたようで移すと悪いので来ないで欲しい”とメールがきた。その日は授業中もセンパイのことばかりを考えていた。
そして、センパイが休んでから3日目の日、朝にやはり今日も休むと連絡があったが、昼過ぎになって家に来れるかとメールがきた。俺はすぐに行くと伝え、まだあった講義をサボって学校を飛び出した。
その日は朝から曇り空で重ったるい空気に包まれていた。俺はゼリーや風邪薬などを買うと小雨が降る中走ってセンパイの家に向かった。アパートの2階に駆け上がり、息を切らしてセンパイの部屋の前まできた。鍵は開けてあると先ほど知らせがあった。息を整えてドアをノックした。
コンコン……
「……」
中から返事は聞こえてこない。
「センパイ、入りますよ」
小さめな声で伝えてから中に入った。
玄関に入ると奥の居間にセンパイが見えた。こちらに背を向け、なぜかバスタオルを羽織り床に座っているようだ。
「センパイ?」
声をかけると少しだけセンパイが首を横に向けた。
「ああ、カズキ……」
ひどくか細い声だった。
「大丈夫ですか?だいぶ悪いんですか?」
「鍵…閉めて……」
「はい」ガチャン
施錠して足早にセンパイの方へ向かう。
「センパイ……」
近くまで来て見ると、センパイは正座をしていてタオルをぎゅっと中から握っていた。うずくまるように前屈みになっている。タオルから露出した膝が見えた。
「もしかして服着てないんですか?冷えますよ」
センパイの横にしゃがみ、声をかける。センパイはただ前の一点を見つめていた。
「どうしたんですか、センパイ?」
センパイの肩に手を振れる。センパイの体がわずかに震えた。視線は前を向いたままだ。
「カズキ……オレさ、オレ……」
囁くような小さな声が聞こえた。
「はい…」
「オレ…”アルプ”になったみたい、だ……」
「へっ?」
俺は言葉を失った。次の言葉が出てこない。
「アルプ、わかるか?」
センパイがこちらを向いた。その目は怯えているようにも険しいようにも見えた。
「……聞いたことはあります。何となく、分かります……」
「そうか」
二人の間で沈黙が流れる。
俺はアルプについてそれほど詳しくは知らなかったが、大体どういうものかは理解していた。そして、それと同時に今この状況がどういうことなのかも、瞬時に頭の中で理解されようとしていた。
“アルプ……人間の男が女性の魔物へと変異した存在”
これまでのことが走馬灯のように目まぐるしく頭の中に浮かび上がってくる。
(これは…つまり……)
俺の中で出されようとされる答え。そんなバカなと振り払おうとしても消えてくれないその考えが頭をもたげる。
「その、いつからなんすか?」
努めて冷静さを装って聞いた。
「一緒に酒飲んだ日。酒飲み過ぎて頭がガンガンして、あの夜すぐに寝たんだけど…起きたらこうなってた」
センパイがゆっくり話し始めた。
「最初、夢だと思ったんだけど、どんなに頭叩いても目が覚めなくて…これが現実だって分かった。それでネットを調べたら、やっぱそういうことなんだって……それで、家こもってたらだんだんカズキに会いたくなって、でも怖くて言えなかった」
センパイが俺を見た。その目は潤んでいるように見えた。
「カズキ……オレ、お前が……」
わずかに開いた唇から吐息を感じる。俺を見つめるセンパイを見て、自分の中から信じられない感情が込み上げてきた。
「センパイ、キスしていいですか?」
センパイは一瞬息を呑んだが、
「うん、して……んぅ!」
センパイが頷いた瞬間、俺はセンパイにキスした。
「んん……んふぅ」
唇を重ねてそっと離すと目の前にセンパイのわずかに開いた目が見えた。
その途端、俺の中の何かの枷が外れた。センパイの顔を手で包み込んで再びキスする。彼の頬はヒンヤリとしていた。俺は貪るように舌を絡めたキスをした。
「んちゅ…んぅ、んん、センパイ……」
「んぐ…ふあ…カズキ……」
夢中でセンパイを口の味わい、唾液の糸を垂らしながら口を離すと、俺はセンパイの肩を押して床に押し倒した。
「あっ……」
タオルが外れセンパイの体が露わになる。色白の滑らかな肌の美しい肉体。何度も見たはずなのに今日はどこか違って見える。水泳で鍛えられた胸筋と腹筋がくっきりと見え、ひろい肩幅は女性らしさとは対象的だ。そして、背中からは人外の証である翼と尻尾が生えている。だが、そんなことは気にならなかった。俺のオスとしての本能が囁くのだ。
“このメスを自分のモノにしろ”と
センパイの体で決定的に変化した部分がもう一つある。腰の下にあった男性の象徴がなくなり、そこには逆に男を受け入れるモノができている。白状すると俺に女性経験はなかった。それでも何をすればいいのか分かっていたし、未経験であるにも関わらず躊躇は全くなかった。俺は服を全て脱ぎ捨て自分のペニスをセンパイのそこにあてがった。だが、わずかに残っていた理性が俺を止め、腰を突き出す前にセンパイを見た。
「うん……」
センパイがわすがに頷いた。俺はペニスをセンパイの中に突き入れた。柔らかく温かくセンパイが受け入れてくれる。つかの間、センパイの体と馴染んでいく快楽と、ずっと結ばれたかった者と一つになれた喜びで体が震えた。
”自分はこの瞬間のために生まれてきたのだ”
そう叫びたくなるほどに強烈な充足感で満たされた。だが、これで終わりではない。俺は腰を動かして自分の欲望をぶつけた。
「あっ…あんっ♥」
センパイの口から声が漏れ出る。俺は体を前に倒してセンパイの胸にしゃぶりついた。ピンク色の乳首を吸い、もう片方の乳首を手の平で撫でまわしたり、指でつまんで感触を楽しむ。女性のような乳房はないが、胸筋でわずかに膨らんだ胸はどんな女性のものより俺をそそった。センパイを見ると恍惚で細められた視線で俺を見つめ、悩ましげな嬌声を上げている。腰を打ちつけるたびにセンパイのやや高い声が喘ぎ声となって聞こえてくる。俺は発情期の獣のように腰をひたすらに振り続けた。
喜びと快楽が強かった分、限界を感じるのは早かった。それと共に”このメスを孕ませたい”という動物的欲求が俺を支配した。だが、それでもセンパイへの敬慕が俺に最低限の確認をさせた。
「中で出してもいいですか?」
「うん、出して♥」
センパイが俺を求めてくれている。彼の言葉を聞くや否や俺はセンパイを強く抱きしめ、一際腰を深く打ち付けた。俺の欲望がドクドクとセンパイの中を迸る。このメスを自分で埋め尽くさんとばかりに止めどなく溢れ出る。
「あっ、イクぅ!!♥」
センパイも絶頂を迎え、腰がわずかに反り返り、俺の背に回した手にぎゅっと力を込める。センパイの中がキツく俺のモノを締め付け、牛の乳のように静液を搾り出す。肉棒の脈動が徐々に弱まり静まるまで、お互いを離すまいとキツく抱きしめ合った。
部屋の中では二人の息遣いしか聞こえなかった。荒かった呼吸も少しずつ整っていき、肌に感じていたセンパイの胸の動きも小さくなっていった。センパイのヒンヤリとしていた肌は汗ばみ熱を感じるようになっていた。そんなふうに互いの存在を確かめ合って、しばらく二人でじっと余韻を楽しんだ。
「カズキ、すごい良かったよ♥」
センパイが耳元で囁いた。
「俺もめちゃくちゃ気持ち良かったです」
「カズキ、すげースッキリした顔してるわ」
センパイが俺の顔を見て笑いながら言った。
「マジでスッキリしました!」
「ホントにオレで良かった?」
センパイの顔にわずかに不安の影がよぎって見えた。
「もちろん良かったですよ!!俺、きっとセンパイとずっとこうなりたかったんです」
「そっか。それ聞いて安心したわ。オレだけだったらマジでどうしようと思ってた。あー、こうなるんだったら、もっと早く言えばよかったー!」
「ですね」
二人で清々しい気分で笑い合った。行為の最中に聞こえていた小雨の音もいつのまにか止んでいて、窓からは虹が見えていた。
「ってかオレ、エロい目で見られたもんな」
「それ今言います!?」
すっかりいつもの空気になってた。さっきまであれだけ激しく求め合っていたのに。なんだか不思議な気分がした。
「あー、安心したらなんか腹減ったー」
センパイは俺に事を打ち明けるまでマトモに食事をしてなかったようだ。行為の後始末をすると買い物袋を漁り、俺が買ったゼリーをバクバクと食べ始めた。
「体が変わって、心も変わったんですか?」
「んん?んぐ、それがあんまオンナになったって感じがしなくてさー。まだ自分ではオトコの感覚なんだよね」
センパイがゼリーで口をいっぱいにしながら答えた。
「それじゃあ、俺たちはゲイSEXしてたってことですか?」
「いやいや、オレゲイじゃないし!!なんか上手く言えないけど……カズキが良かったんだよ」
「あっ!それ同じこと思ってました!俺もそんな感じです!!」
センパイと行為に及んでやっと自分の気持ちに素直に向き合えた。そうだ、俺はセンパイが好きだったのだ。いつからかセンパイに抱いている気持ちを自覚した時、どう折り合いをつければいいのか分からなかった。でも、今となってはなんてことなかった。俺もセンパイも同じ気持ちで同じように悩んでいたのだ。
「なんだよ、カズキもそうだったのか!そっか、だからオレを……」
「それはもういい加減にいいでしょ!!」
俺たちは晴れて恋人同士になり、センパイ…つまり彼女の家で同棲生活を始めた。ちなみに彼女を名前で呼ぶのはまだ慣れておらず”センパイ”と呼んでいる。学校では変わらず二人で過ごし、家では欲望のままに愛し合った。そして、ある時俺は自分がひそかに抱えていた願望を彼女に打ち明けた。初めは彼女も当惑していたが、承諾してくれて今ではすっかり楽しんでいる。
夏真っ盛りになり、家の前の通りには学生や大学の関係者たちが賑やかに行き来しているのが見える。俺はベッドで横向きに寝ていて、後ろでは恋人がびたりと寄り添っている。黒髪のポニーテールの美女が長い手足を俺に絡ませ、腰をゆっくり前後に動かしている。
「あっ、気持ちいいよ♥馴染んできたから、もうちょっと奥でも大丈夫」
「うん、いくよ。力抜いて」
いつかの指導を思い出しながら、俺はフッと尻から力を抜いた。彼女が少しずつ腰を奥に突き出す。
「あっ!ヤバい、それいい!あんっ!♥」
「フフっ、オンナの子みたいだよ」
彼女にバックから腰をつかれながらベッドの向かいにある姿見を見た。彼女がダイナミックな動きで腰をグラインドさせている。それを見て俺はセンパイがプールで泳ぐ姿を想像した。あの美しいドルフィンキックで颯爽と水を切り、誰よりも速く優雅に泳ぐ姿を。彼女は今、プールではなく俺の背中を泳いでいるのだ。ポニーテールを振り乱す麗しい人魚が俺を捕らえて犯しているのだ。そんな妄想が頭に浮かび、興奮がますます高まる。
「センパイ、ギュッてして!!♥」
「うん♥」
センパイが俺を抱きすくめる手に力を込める。
「ああっ!もうイキそう!!♥」
「ワタシも!カズキ一緒にイこう!!んんっ!!♥」
彼女の最後のひと突きで絶頂し、俺のイチモツが震える。精液がじわりと出てくる。後ろの彼女も体を震わせ、脇から俺の胴体に回した手をぎゅっと引き絞る。
彼女の腰にはバンドが巻かれ、その先端には男性器を精巧に模した性具が付いている。そして、彼女の膣にも同様のモノが深く刺さっている。いわゆるペニスバンドという物で今使っている物には双方向にディルドが付いている。これは魔族が開発した物で特別な仕掛けが施されている。先端のディルドが何かに擦れると反対のディルドにその刺激が伝わり、そこから電気刺激が発せられる。その電気刺激よって装着者にまるで陰茎が自分に生えているかのような感覚を与えるのだ。この特別なペニスバンドよって俺と彼女は男女を逆転させたプレーを楽しんでいるのだ。
発端は俺のわがままだった。男だったセンパイはアルプという魔物娘になり俺と恋人関係になった。それはもちろん幸せなことだったのだが、彼女とSEXを重ねるうちに俺の中である特殊な願望が沸々と湧き起こってきたのだ。俺はその願望を叶えるために密かにネットで情報を集めていた。そして、ある時ついに求めていた物を発見した。今は世に蔓延る魔物娘の性への渇望と技術力と変態性は凄まじく、見事に俺の夢を叶える道具を開発していたのだ。しかもご丁寧なことに、その道具を使ったプレイの指南書まで無料公開していたのだ。
俺の夢、それは男のセンパイに自分を犯してほしいというものだった。俺は恐らくゲイでもなければトランスジェンダーでもない。だが、センパイのペニスだけには妙に惹かれるものがあったのだ。あの怪しい輝きを放つ亀頭をしゃぶってみたい。俺のペニスとセンパイのペニスでキスをしてみたい、力強く俺のアナルに突き入れてみてほしい。そして、センパイに抱かれてみたい。それと共にセンパイを犯したいという願望も持っていた。まあ、これだけみれば完全にゲイSEXなのだが、この気持ちはセンパイにしか抱いたことがなかった。この夢はセンパイがアルプになることで一方は達せられたが、もう一方は潰えたかに思えた。それでも幸せだから良かったのだが、タチの悪いことにその欲望の炎は俺の中で燻り続けていた。そして、この夢の道具を発見してしまってはもう引き下がれなくなったのだ。
俺は彼女に想いを洗いざらい打ち明けて、調べ上げたことも話した。驚き戸惑う彼女だったが、おもしろそうということで乗ってくれた。そして、今に至る。
「はぁはぁ……これホントにすごいね。ワタシもまたオトコに戻った感覚がするよ」
俺のアナルを犯して絶頂した彼女が興奮気味に話す。アルプになった直後はまだ男の意識が強かった彼女も、今は少しずつオンナに近づいているようだ。
「うん、やっぱアナルをセンパイに犯されるの最高に気持ちいい」
アナルSEXは慣れるまで難しかったが、一度習得すると病みつきになった。さらにこんな美女にヤられているという背徳感やアブノーマル感がなお性的興奮を高めた。
「まさか、カズキがこんなヘンタイだったなんてね」
「そんなこと言ってセンパイも楽しんでたでしょ」
「そうだね。ワタシもカズキのおかげでヘンタイになっちゃった♥もう抜くね」
彼女がゆっくり腰を引く。
「あっ、あぁ……」
アナルから抜かれる時も自然と喘ぎ声が出てしまう。
「うん、よいしょ」
ニュポッ
卑猥な音を立てて、アナルから彼女のペニスが抜き取られる。力強くそそり立つ男の象徴が彼女の膣の痙攣に合わせてピクピクと動いている。生々しいくらいにリアルに造られたペニスが美女の股間から生えているという倒錯感は何度見てもたまらない。だが、リアルなのは見た目だけではない。ペニスの先端から竿全体にかけて半透明の白い粘液がべっとりついているのだ。俺のアナルの中にも熱い粘液がしっかり注入され、体がポカポカしている。
「カズキのアナル犯しちゃった♥」
ヒクヒクと痙攣するアナルからダラリと垂れる精液を見て、彼女が茶目っ気たっぷりに言った。
俺が手に入れたペニスバンドにはもう一つ特殊な仕掛けがある。それは膣の痙攣具合から装着者の絶頂を感知すると、ペニスバンドに内蔵された擬似精液が射出されるというものだ。擬似精液は当然ながら人体に害はない。精液作成キットもペニスバンドとは別にネットで売られているのだ。それをお湯で作ることで通常のものよりホットな精液を作ることが可能となっている。
俺はベッドから降りると床に座った。
「センパイ、こっちに来て」
「うん」
彼女がベッドの端に座った。
「これ、キレイにするね」
「うん、お願い♥」
彼女の前にひざまづき、ペニスに顔を近づけるとなんの躊躇いもなくそれを口に咥えた。
「んぅ!カズキ♥」
彼女が俺の頭に手をやり、髪を撫ぜたり掴んだりする。まさに夢見ていたシチュエーションだ。竿全体に濡りたくられた精液を丁寧に舐めとる。ちなみにこの精液はカル○スのような甘酸っぱい味で普通に美味しい。夢中になって一通り精液を舐めとると、ペニスが俺のよだれでヌメヌメになった。
「センパイ、もっと気持ちよくしてあげますね♥」
彼女を見上げてそう告げると、俺は彼女のモノを根元まで咥えこんだ。力を抜いて少しずつペニスを迎え入れ、亀頭が喉奥まで到達するのを確認する。慌てずに呼吸を整えると喉で亀頭を締め付けた。
「あぁ!!カズキぃ、すごい!!♥」
彼女が大きな声を上げた。俺の頭を掴む手がグッと力む。じっと息苦しさに耐えていると、口の中のペニスが急に激しく痙攣し、喉に熱い粘液が注がれた。
「んぐ!んご…ごふっ!ぶはぁ、ごほっごほっ!」
喉が詰まり息苦しさに耐えられなくなり、ペニスを口からバッと離した。大量のよだれが口からダラリと垂れる。咳き込みながら、必死に息をする。涙まで出てきた。
「カズキ、大丈夫!?」
彼女が心配そうに俺の顔を覗き込んだ。
「うん……大丈、夫。気持ち…良かった?」
かすれ気味な声で彼女に聞いた。
「うん、気持ち良すぎてすぐにイッちゃったよ。でも、無理しちゃダメだよ!」
「センパイもやってくれたから、俺も喜んで欲しくて」
彼女が自分からやってくれるディープスロート。苦しいはずなのにそんな素振りも見せず、俺が気持ち良いと言うといつも嬉しそうにする。それをお返しにやってみたかったのだ。
「嬉しいけど今度はもっと少しずつやろうね」
「うん」
彼女が優しく俺の頭を撫ぜた。
「カズキ、もう疲れた?」
苦しさが落ち着いて、顔を拭くと彼女が遠慮深げに聞いてきた。
「うん?まだイケるよ」
俺は既にインキュバスになっており、体力も精力も段違いになっていた。
「そう、そしたら……できたら、ワタシも欲しいなって」
彼女が伏し目がちに体を揺らしながら話した。
「うん、俺もシたいなって思ってたところ」
「ホント?じゃあ……」
彼女がバンドを外し、膣からディルドを引き抜いた。彼女の秘所が露わになる。そこはもう濡れそぼっていた。
「きて♥」
「うん♥でも、その前に」
彼女の髪をそっと持ち上げた。ポニーテールのウィッグが外され、彼女のショートボブの髪が現れる。外したウィッグをタンスの上の専用スタンドに置いた。
ウィッグも俺のリクエストでしてもらっている。様々な彼女と楽しみたいという俺のわがままで行為の時やデートの時につけてもらっている。彼女は手櫛で髪を頭に馴染ませる。クールなインテリ美女からボーイッシュな可愛い彼女に早変わりだ。
「すごく可愛いよ♥」
いつも俺は気の利いたことを言ってあげられない。
「うん、ありがと♥」
それでも彼女は弾けるような笑顔を見せてくれる。
彼女と恋人になってから俺は自分の欲望に素直になった。彼女はそんな俺の願いを全て聞き入れてくれる。大学を卒業したらプロポーズするつもりだ。でも、それまでまだ時間がある。今は大学生活を彼女と思う存分楽しもう。俺はそんなことをぼんやり考えながら彼女を抱きしめた。
「カズキ、いつまで休んでんだよ。体力落ちたんじゃないないのか?」
センパイがプールから上がり俺の横まで来ていた。水泳ゴーグルを上げながら涼しい顔で息をついている。
「帰宅部なんで、さすがになまりますよ」
俺とセンパイが通っている大学には水泳部がなく、今は二人とも帰宅部だ。
「なにぃ〜?それは先輩として見過ごせないな。よし、また来週ここに来るぞ!っていうかもう毎週来るぞ!」
「えぇ〜」
「えぇ〜じゃない!」
腰に手を当ててセンパイがすごんだ。
「……」
「ん?どうなんだ?」
「プッ」
センパイの保護者みたいな態度に思わず吐き出した。
「フフッ」
センパイも笑みを浮かべる。切長の目を細めた優しい笑顔だ。
「もう行くか?」
「はい」
二人でプールを出てシャワールームに来た。俺が手短にサッと浴びて出ると、隣で先輩はまだ浴びていた。サラサラとした綺麗な黒髪をかき揚げながらシャワーを浴びている姿は、男の俺でもホレボレするくらい絵になっている。色白の長身でスラリとした長い手脚は細身だけど引き締まって筋肉質だ。肌には体毛がなくて滑らかだ。胸毛もすね毛もしっかりある俺とは大違いである。ガゼルのような脚とはきっとこういうのを言うのだろうと一人思っていると、センパイがシャワーを終えて出てきた。水泳部時代に使っていたピッタリと密着する競泳水着にはやや膨らみがある。まあ、センパイも男だから当然なのだが、中性的なセンパイにアソコがついているのを見ると何か不思議な感じがするものだ。ちなみにセンパイはアソコもキレイだ。亀頭がピンク色でツヤがあるのだ。…いや、別に変な意味はない。ただ、そう見えただけの話だ。
センパイは俺が待っているのを見ると、相変わらず早いだのしっかり身体を流しておいた方がいいだのとプチ説教を垂れながら更衣室に向かっていった。
更衣室で体を拭くと、センパイは丸椅子に腰かけ体に保湿クリームを塗り始めた。肌が弱いらしくまめに塗っているそうだ。丹念に全身に塗り込み自分の体を確認すると、センパイが俺の方を見た。
「カズキ、悪いけど背中塗ってくれる?」
「いいっすよ」
「ありがとう」
センパイがクリームの丸い容器を手渡し背を向けた。
「厚めに塗ってくれる?」
「うっす」
俺は白いクリームをすくって手に取り、センパイの背の全体に点々とつけ、それを手の平で満べんなく伸ばした。背筋でできた溝にも筋肉に沿ってしっかり塗り込む。きめ細かいキレイな肌だが、よく見ると少し赤みがかった部分もある。
(こういう所はよく塗った方がいいのかな)
肌を観察して荒れてる部分が他にないか探していると
「何かさぁ〜、さっきから手つきヤラしくない?」
センパイが眉をひそめて怪訝な顔でこちらを向いた。
「えっ!?そうっすか?」
「うん、何というか女の背中にオイル塗ってるエロ親父って感じ」
「なに言ってんすか!センパイにこき使われてる可愛い後輩に!」
「自分で可愛い言うなし!むさ苦しいエロビデオに出てきそうな顔してるくせに」
「そりゃあんまりっす!俺、もうやめます!」
俺はセンパイの背中から手を離し、顔をぷいっと横に向けた。
「ゴメンゴメン!冗談だって!!」
センパイが笑いながら謝る。
「いや、別に怒ってないですよ。でも、俺のことそんな風に思ってたんですか?」
「うーん、ちょっとだけね」
「ガーン!!ショックです…」
まさかの言葉に少なからず傷ついていたが、しかしクリームであやしく光っているセンパイの体を見ていると、本当にオイルが塗られた女性の体のように見えてきた。胸筋でわずかに膨らんでいる胸が女性の胸に見えなくもない。そんな風に思っていると不意に
「でも、確かにセンパイの体ってなんかエロいっすよね」
意図せず、ぼろっと言葉が出た。
「えっ….」
センパイがこちらを見たままボカンと口を開けた。
「あっ….」
俺も遅れて事態を呑み込み言葉に詰まった。2人の間で一瞬時が止まる。
「や、やっぱりお前、ヤラしい目で見てたんじゃねーか!!」
「あ、いや!違いますって!変なこと言われたから、こっちも頭が変になっただけですって!!」
慌てて取り繕う。気づくとセンパイの視線が下の方を向いていた。
「……お前、アソコ勃ってないか」
「へっ?」
首を曲げ自分の股間を見ると、半勃ちになっていた。
「あ、ほら、そんなこと言ってるから勃っちゃったじゃないですか!!」
「オレのせいかよ!!」
「そうっすよ!!」
「分かったよ!もういいよ!!」
センパイがクリームを取り上げて服を着た。変な気まずさの中、俺たちはそそくさと市民プールを出た。
センパイと繁華街をあてもなくほっつき歩く。町で女学生と思われる集団とすれ違うと時折こちらをチラッと見た。もちろん見ているのは俺ではなく隣のセンパイのだ。センパイは爽やかイケメンで実際に女子からモテている。サラサラの髪、クールでキリッとした目、特別高くはないがスッと通った鼻筋、やや薄めだが血色の良い唇にシャープな顎のライン。色白の透明感のある肌にいい感じの細マッチョで、ふんわりと香るどこだかの横文字ブランドの香水までつけている。服装も洗練されたオシャレな着こなしだ。おまけにクールな印象に対して人当たりは良い。こんなのモテるに決まってる。
「そういえば、休日に俺なんかと過ごしてていいんですか?彼女いましたよね?」
ふと疑問に思ったことを聞いてみた。センパイには彼にふさわしい可愛い彼女がいるのだ。
「ああ、うん。あの子はもう別れた」
センパイはなんでもないようにサラッと答えた。
「えっ、またですか!?価値観が合わなかったとか?実は性格悪かったんですか?」
「うーん、そうじゃないんだけど…なんでだろうね。オレもよくわかんないわ」
センパイはあまり重く考えてないようだった。引く手あまたのものだから、センパイは高校の時から女性に困ることはなかった。だが、いずれも長続きせず、理由を聞いても、いつも『分かんない』と答えるだけだった。女子とは全く縁のなかった俺からすればセンパイのモテっぷりは羨ましかったが、彼女と別れても俺とは変わらずにつるんでくれるのが嬉しかった。
二人でゲーセンやCDショップやらをうろついた後、センパイの家で宅飲みすることになった。コンビニで酒とつまみを買って大学近くのアパートに向かった。
ガチャッ
「お邪魔しまーす」
「うん、上がって」
センパイの家はいつも小綺麗でよく片付いている。居間のテレビの横には小さめの本棚があり、大学の教科書や参考書やらが学問分野ごとに並べられている。ゲームでもするかとセンパイがゲーム機を取り出し、二人でレースゲームやパーティゲームを楽しんだ。時間が遅くなると、テレビを見ながらつまみと酒を飲み食いし、学校のことや読んでいる漫画の話題などたわいもない話をした。やがて酒がまわり顔が赤らんでいるセンパイと高校時代の思い出話をした。
中学では帰宅部で灰色の青春を送った俺は、高校デビューを果たそうと運動部に入ることを決めていた。入学間も無く入部先を探していた時、新入生に勧誘のビラを配っているセンパイと出会った。出会ったと言っても上級生がひしめく中でただセンパイを見ただけだ。玄関に隣接するホールでは他にも勧誘活動をする生徒が何人もいた。でも、俺の目はセンパイにだけ向けられていた。俺はフラフラッと光に集まる羽虫のようにセンパイの方へと歩いて行った。
『あっ!ビラもらってくれるの?ありがとう!』
笑顔で手渡されたビラには水泳部の文字が大きく書かれていた。
『未経験でも大丈夫だからね!良かったら体験入部してみてね』
『はい』
ビラを持って俺はその騒がしい空間からすぐに離れた。他の部活には目もくれずに。足元は変にフワフワして妙な気分だった。翌日水泳部の見学に行った。緊張と不安で部室前をソワソワしていると向こうからやってきたセンパイがこちらに気づいて声をかけた。
『キミ、昨日来てた子でしょ?来てくれたんだ!ありがとう!!』
『あっ、昨日はどうも。その俺、全然泳げないんですけど大丈夫ですか?』
『もちろん、ノープロブレム!!とりあえず中入りなよ!』
おどけてみせるセンパイを見て心のコワバリがスッと楽になった。水着も持っていなかった俺はただセンパイの泳ぐ姿をずっと見ていた。まさに水を得た魚のように泳ぐその人を飽きることもなく。その日入部を決めた。
いざ入部してみると新入部員のうちで本当の初心者は俺だけだった。そんな俺にセンパイは一から丁寧に指導してくれた。
バシャバシャ……
入部初日、ビート板を使って練習を始めたが、いくら足をバタつかせても進まない上によく沈んだ。
『バタ足は力いっぱいやっても疲れるだけだよ。もっと力抜いて』
『はい』
バシャバシャバシャバシャ……
意識はしてみるもすぐにまた沈んだ。
『うん、いきなりは難しいな。まずは壁キックからしよう』
今度はプールの壁を掴んでの練習だ。周りをみると新入部員でも未熟ながらクロールくらいは大体出来ている。恥ずかしさのあまり入部したのを少し後悔した。
『力まずに股関節から動かすイメージで』
センパイが俺の足を掴んで上下に動かす。細く長い指が足を優しく包み込む。
『いい感じになってる。その調子その調子』
感覚を掴めるようになるまでセンパイは根気強く励まし続けてくれた。センパイは俺の専属指導係のようになり、プライベートでもよくつるむようになった。結局、俺は女子からモテることはなかったけど、センパイと過ごす時間はかけがいのないものだった。
やがてセンパイは希望する学科のある大学へと進学して地元を離れた。俺も進路を考える時期になると迷わずセンパイと同じ大学を目指して猛勉強を始めた。偏差値的に厳しかったが、センパイが勉強法や使える参考書を教えてくれて頑張ることができた。勉強は全然好きじゃなかったが、センパイの大学に行きたいという想いと彼の励ましのおかげでなんとか合格することができた。
「カズキは部活も勉強もよく頑張ったよな。ホントによくやったと思うよ」
居間のソファにもたれたセンパイが感慨深けに語った。
「全部センパイのおかげです。あんなに覚えが悪かったのにずっと付き合ってくれて本当に感謝してます」
「なんだよ改まってー。部活の同級生の中じゃカズキが一番成長してたと思うよ」
「スタートラインが違いましたからね」
「そうだけど、中身もたくましくなったし……」
酔ったセンパイが俺を見ると、にやけながら不意に俺の胸元を触った。
「体も立派になったよな」
「ちょっ!センパイ飲み過ぎですよ!酒弱いのに」
「なーにマジメぶってんだよー。昼間はエロい目で見てたくせに……」
センパイがやや顔を背けながらつぶやくように話した。
「えっ!今その話しますか!?」
「だってお前が言ったんじゃんかー」
「だ、だからあれは…」
「……ホントのところ、オレのこと、どう思ってんの?」
あたふたしてると静かにその言葉が聞こえた。
「えっ?」
気づくとセンパイがこちらを見据えていた。その言葉の解釈をどうすればいいのか分からずにいると
「ゴメン、変なこと聞いちゃって。やっぱ飲み過ぎたみたいだわ。なんかもう眠くなってきたし、今日泊まってくか?」
センパイが伸びをしながら立ち上がり、大きなあくびをした。
「あ、いや、……今日はやめときます」
「そっか。じゃあ、また明日な。一限目からだから起きれるかな」
「月曜はそうでしたね。早めに寝た方がいいっすよ。じゃ、俺帰ります」
センパイの家には何度も泊まったことがあったのだが、この日は帰ることにした。その方がお互いにいいと思った。
翌日の一限目は二人とも履修している科目だった。講義室でセンパイを待っていたが、いつもやって来る時間になっても現れない。
ビロンッ
どうしたのだろうと思っているとケータイからメールの通知音が鳴った。
“今日調子悪いから休むわ”
センパイからメールがきていた。
“了解です”
返信を送ると教授が講義室に入ってきた。
講義の合間に見舞いに行っていいかセンパイにメールを送ったが、ただの二日酔いなので必要ないと返事がきた。心配いらないとも送られてきた。
けれども、その次の日になってもセンパイは姿を見せなかった。今度は、”風邪を引いたようで移すと悪いので来ないで欲しい”とメールがきた。その日は授業中もセンパイのことばかりを考えていた。
そして、センパイが休んでから3日目の日、朝にやはり今日も休むと連絡があったが、昼過ぎになって家に来れるかとメールがきた。俺はすぐに行くと伝え、まだあった講義をサボって学校を飛び出した。
その日は朝から曇り空で重ったるい空気に包まれていた。俺はゼリーや風邪薬などを買うと小雨が降る中走ってセンパイの家に向かった。アパートの2階に駆け上がり、息を切らしてセンパイの部屋の前まできた。鍵は開けてあると先ほど知らせがあった。息を整えてドアをノックした。
コンコン……
「……」
中から返事は聞こえてこない。
「センパイ、入りますよ」
小さめな声で伝えてから中に入った。
玄関に入ると奥の居間にセンパイが見えた。こちらに背を向け、なぜかバスタオルを羽織り床に座っているようだ。
「センパイ?」
声をかけると少しだけセンパイが首を横に向けた。
「ああ、カズキ……」
ひどくか細い声だった。
「大丈夫ですか?だいぶ悪いんですか?」
「鍵…閉めて……」
「はい」ガチャン
施錠して足早にセンパイの方へ向かう。
「センパイ……」
近くまで来て見ると、センパイは正座をしていてタオルをぎゅっと中から握っていた。うずくまるように前屈みになっている。タオルから露出した膝が見えた。
「もしかして服着てないんですか?冷えますよ」
センパイの横にしゃがみ、声をかける。センパイはただ前の一点を見つめていた。
「どうしたんですか、センパイ?」
センパイの肩に手を振れる。センパイの体がわずかに震えた。視線は前を向いたままだ。
「カズキ……オレさ、オレ……」
囁くような小さな声が聞こえた。
「はい…」
「オレ…”アルプ”になったみたい、だ……」
「へっ?」
俺は言葉を失った。次の言葉が出てこない。
「アルプ、わかるか?」
センパイがこちらを向いた。その目は怯えているようにも険しいようにも見えた。
「……聞いたことはあります。何となく、分かります……」
「そうか」
二人の間で沈黙が流れる。
俺はアルプについてそれほど詳しくは知らなかったが、大体どういうものかは理解していた。そして、それと同時に今この状況がどういうことなのかも、瞬時に頭の中で理解されようとしていた。
“アルプ……人間の男が女性の魔物へと変異した存在”
これまでのことが走馬灯のように目まぐるしく頭の中に浮かび上がってくる。
(これは…つまり……)
俺の中で出されようとされる答え。そんなバカなと振り払おうとしても消えてくれないその考えが頭をもたげる。
「その、いつからなんすか?」
努めて冷静さを装って聞いた。
「一緒に酒飲んだ日。酒飲み過ぎて頭がガンガンして、あの夜すぐに寝たんだけど…起きたらこうなってた」
センパイがゆっくり話し始めた。
「最初、夢だと思ったんだけど、どんなに頭叩いても目が覚めなくて…これが現実だって分かった。それでネットを調べたら、やっぱそういうことなんだって……それで、家こもってたらだんだんカズキに会いたくなって、でも怖くて言えなかった」
センパイが俺を見た。その目は潤んでいるように見えた。
「カズキ……オレ、お前が……」
わずかに開いた唇から吐息を感じる。俺を見つめるセンパイを見て、自分の中から信じられない感情が込み上げてきた。
「センパイ、キスしていいですか?」
センパイは一瞬息を呑んだが、
「うん、して……んぅ!」
センパイが頷いた瞬間、俺はセンパイにキスした。
「んん……んふぅ」
唇を重ねてそっと離すと目の前にセンパイのわずかに開いた目が見えた。
その途端、俺の中の何かの枷が外れた。センパイの顔を手で包み込んで再びキスする。彼の頬はヒンヤリとしていた。俺は貪るように舌を絡めたキスをした。
「んちゅ…んぅ、んん、センパイ……」
「んぐ…ふあ…カズキ……」
夢中でセンパイを口の味わい、唾液の糸を垂らしながら口を離すと、俺はセンパイの肩を押して床に押し倒した。
「あっ……」
タオルが外れセンパイの体が露わになる。色白の滑らかな肌の美しい肉体。何度も見たはずなのに今日はどこか違って見える。水泳で鍛えられた胸筋と腹筋がくっきりと見え、ひろい肩幅は女性らしさとは対象的だ。そして、背中からは人外の証である翼と尻尾が生えている。だが、そんなことは気にならなかった。俺のオスとしての本能が囁くのだ。
“このメスを自分のモノにしろ”と
センパイの体で決定的に変化した部分がもう一つある。腰の下にあった男性の象徴がなくなり、そこには逆に男を受け入れるモノができている。白状すると俺に女性経験はなかった。それでも何をすればいいのか分かっていたし、未経験であるにも関わらず躊躇は全くなかった。俺は服を全て脱ぎ捨て自分のペニスをセンパイのそこにあてがった。だが、わずかに残っていた理性が俺を止め、腰を突き出す前にセンパイを見た。
「うん……」
センパイがわすがに頷いた。俺はペニスをセンパイの中に突き入れた。柔らかく温かくセンパイが受け入れてくれる。つかの間、センパイの体と馴染んでいく快楽と、ずっと結ばれたかった者と一つになれた喜びで体が震えた。
”自分はこの瞬間のために生まれてきたのだ”
そう叫びたくなるほどに強烈な充足感で満たされた。だが、これで終わりではない。俺は腰を動かして自分の欲望をぶつけた。
「あっ…あんっ♥」
センパイの口から声が漏れ出る。俺は体を前に倒してセンパイの胸にしゃぶりついた。ピンク色の乳首を吸い、もう片方の乳首を手の平で撫でまわしたり、指でつまんで感触を楽しむ。女性のような乳房はないが、胸筋でわずかに膨らんだ胸はどんな女性のものより俺をそそった。センパイを見ると恍惚で細められた視線で俺を見つめ、悩ましげな嬌声を上げている。腰を打ちつけるたびにセンパイのやや高い声が喘ぎ声となって聞こえてくる。俺は発情期の獣のように腰をひたすらに振り続けた。
喜びと快楽が強かった分、限界を感じるのは早かった。それと共に”このメスを孕ませたい”という動物的欲求が俺を支配した。だが、それでもセンパイへの敬慕が俺に最低限の確認をさせた。
「中で出してもいいですか?」
「うん、出して♥」
センパイが俺を求めてくれている。彼の言葉を聞くや否や俺はセンパイを強く抱きしめ、一際腰を深く打ち付けた。俺の欲望がドクドクとセンパイの中を迸る。このメスを自分で埋め尽くさんとばかりに止めどなく溢れ出る。
「あっ、イクぅ!!♥」
センパイも絶頂を迎え、腰がわずかに反り返り、俺の背に回した手にぎゅっと力を込める。センパイの中がキツく俺のモノを締め付け、牛の乳のように静液を搾り出す。肉棒の脈動が徐々に弱まり静まるまで、お互いを離すまいとキツく抱きしめ合った。
部屋の中では二人の息遣いしか聞こえなかった。荒かった呼吸も少しずつ整っていき、肌に感じていたセンパイの胸の動きも小さくなっていった。センパイのヒンヤリとしていた肌は汗ばみ熱を感じるようになっていた。そんなふうに互いの存在を確かめ合って、しばらく二人でじっと余韻を楽しんだ。
「カズキ、すごい良かったよ♥」
センパイが耳元で囁いた。
「俺もめちゃくちゃ気持ち良かったです」
「カズキ、すげースッキリした顔してるわ」
センパイが俺の顔を見て笑いながら言った。
「マジでスッキリしました!」
「ホントにオレで良かった?」
センパイの顔にわずかに不安の影がよぎって見えた。
「もちろん良かったですよ!!俺、きっとセンパイとずっとこうなりたかったんです」
「そっか。それ聞いて安心したわ。オレだけだったらマジでどうしようと思ってた。あー、こうなるんだったら、もっと早く言えばよかったー!」
「ですね」
二人で清々しい気分で笑い合った。行為の最中に聞こえていた小雨の音もいつのまにか止んでいて、窓からは虹が見えていた。
「ってかオレ、エロい目で見られたもんな」
「それ今言います!?」
すっかりいつもの空気になってた。さっきまであれだけ激しく求め合っていたのに。なんだか不思議な気分がした。
「あー、安心したらなんか腹減ったー」
センパイは俺に事を打ち明けるまでマトモに食事をしてなかったようだ。行為の後始末をすると買い物袋を漁り、俺が買ったゼリーをバクバクと食べ始めた。
「体が変わって、心も変わったんですか?」
「んん?んぐ、それがあんまオンナになったって感じがしなくてさー。まだ自分ではオトコの感覚なんだよね」
センパイがゼリーで口をいっぱいにしながら答えた。
「それじゃあ、俺たちはゲイSEXしてたってことですか?」
「いやいや、オレゲイじゃないし!!なんか上手く言えないけど……カズキが良かったんだよ」
「あっ!それ同じこと思ってました!俺もそんな感じです!!」
センパイと行為に及んでやっと自分の気持ちに素直に向き合えた。そうだ、俺はセンパイが好きだったのだ。いつからかセンパイに抱いている気持ちを自覚した時、どう折り合いをつければいいのか分からなかった。でも、今となってはなんてことなかった。俺もセンパイも同じ気持ちで同じように悩んでいたのだ。
「なんだよ、カズキもそうだったのか!そっか、だからオレを……」
「それはもういい加減にいいでしょ!!」
俺たちは晴れて恋人同士になり、センパイ…つまり彼女の家で同棲生活を始めた。ちなみに彼女を名前で呼ぶのはまだ慣れておらず”センパイ”と呼んでいる。学校では変わらず二人で過ごし、家では欲望のままに愛し合った。そして、ある時俺は自分がひそかに抱えていた願望を彼女に打ち明けた。初めは彼女も当惑していたが、承諾してくれて今ではすっかり楽しんでいる。
夏真っ盛りになり、家の前の通りには学生や大学の関係者たちが賑やかに行き来しているのが見える。俺はベッドで横向きに寝ていて、後ろでは恋人がびたりと寄り添っている。黒髪のポニーテールの美女が長い手足を俺に絡ませ、腰をゆっくり前後に動かしている。
「あっ、気持ちいいよ♥馴染んできたから、もうちょっと奥でも大丈夫」
「うん、いくよ。力抜いて」
いつかの指導を思い出しながら、俺はフッと尻から力を抜いた。彼女が少しずつ腰を奥に突き出す。
「あっ!ヤバい、それいい!あんっ!♥」
「フフっ、オンナの子みたいだよ」
彼女にバックから腰をつかれながらベッドの向かいにある姿見を見た。彼女がダイナミックな動きで腰をグラインドさせている。それを見て俺はセンパイがプールで泳ぐ姿を想像した。あの美しいドルフィンキックで颯爽と水を切り、誰よりも速く優雅に泳ぐ姿を。彼女は今、プールではなく俺の背中を泳いでいるのだ。ポニーテールを振り乱す麗しい人魚が俺を捕らえて犯しているのだ。そんな妄想が頭に浮かび、興奮がますます高まる。
「センパイ、ギュッてして!!♥」
「うん♥」
センパイが俺を抱きすくめる手に力を込める。
「ああっ!もうイキそう!!♥」
「ワタシも!カズキ一緒にイこう!!んんっ!!♥」
彼女の最後のひと突きで絶頂し、俺のイチモツが震える。精液がじわりと出てくる。後ろの彼女も体を震わせ、脇から俺の胴体に回した手をぎゅっと引き絞る。
彼女の腰にはバンドが巻かれ、その先端には男性器を精巧に模した性具が付いている。そして、彼女の膣にも同様のモノが深く刺さっている。いわゆるペニスバンドという物で今使っている物には双方向にディルドが付いている。これは魔族が開発した物で特別な仕掛けが施されている。先端のディルドが何かに擦れると反対のディルドにその刺激が伝わり、そこから電気刺激が発せられる。その電気刺激よって装着者にまるで陰茎が自分に生えているかのような感覚を与えるのだ。この特別なペニスバンドよって俺と彼女は男女を逆転させたプレーを楽しんでいるのだ。
発端は俺のわがままだった。男だったセンパイはアルプという魔物娘になり俺と恋人関係になった。それはもちろん幸せなことだったのだが、彼女とSEXを重ねるうちに俺の中である特殊な願望が沸々と湧き起こってきたのだ。俺はその願望を叶えるために密かにネットで情報を集めていた。そして、ある時ついに求めていた物を発見した。今は世に蔓延る魔物娘の性への渇望と技術力と変態性は凄まじく、見事に俺の夢を叶える道具を開発していたのだ。しかもご丁寧なことに、その道具を使ったプレイの指南書まで無料公開していたのだ。
俺の夢、それは男のセンパイに自分を犯してほしいというものだった。俺は恐らくゲイでもなければトランスジェンダーでもない。だが、センパイのペニスだけには妙に惹かれるものがあったのだ。あの怪しい輝きを放つ亀頭をしゃぶってみたい。俺のペニスとセンパイのペニスでキスをしてみたい、力強く俺のアナルに突き入れてみてほしい。そして、センパイに抱かれてみたい。それと共にセンパイを犯したいという願望も持っていた。まあ、これだけみれば完全にゲイSEXなのだが、この気持ちはセンパイにしか抱いたことがなかった。この夢はセンパイがアルプになることで一方は達せられたが、もう一方は潰えたかに思えた。それでも幸せだから良かったのだが、タチの悪いことにその欲望の炎は俺の中で燻り続けていた。そして、この夢の道具を発見してしまってはもう引き下がれなくなったのだ。
俺は彼女に想いを洗いざらい打ち明けて、調べ上げたことも話した。驚き戸惑う彼女だったが、おもしろそうということで乗ってくれた。そして、今に至る。
「はぁはぁ……これホントにすごいね。ワタシもまたオトコに戻った感覚がするよ」
俺のアナルを犯して絶頂した彼女が興奮気味に話す。アルプになった直後はまだ男の意識が強かった彼女も、今は少しずつオンナに近づいているようだ。
「うん、やっぱアナルをセンパイに犯されるの最高に気持ちいい」
アナルSEXは慣れるまで難しかったが、一度習得すると病みつきになった。さらにこんな美女にヤられているという背徳感やアブノーマル感がなお性的興奮を高めた。
「まさか、カズキがこんなヘンタイだったなんてね」
「そんなこと言ってセンパイも楽しんでたでしょ」
「そうだね。ワタシもカズキのおかげでヘンタイになっちゃった♥もう抜くね」
彼女がゆっくり腰を引く。
「あっ、あぁ……」
アナルから抜かれる時も自然と喘ぎ声が出てしまう。
「うん、よいしょ」
ニュポッ
卑猥な音を立てて、アナルから彼女のペニスが抜き取られる。力強くそそり立つ男の象徴が彼女の膣の痙攣に合わせてピクピクと動いている。生々しいくらいにリアルに造られたペニスが美女の股間から生えているという倒錯感は何度見てもたまらない。だが、リアルなのは見た目だけではない。ペニスの先端から竿全体にかけて半透明の白い粘液がべっとりついているのだ。俺のアナルの中にも熱い粘液がしっかり注入され、体がポカポカしている。
「カズキのアナル犯しちゃった♥」
ヒクヒクと痙攣するアナルからダラリと垂れる精液を見て、彼女が茶目っ気たっぷりに言った。
俺が手に入れたペニスバンドにはもう一つ特殊な仕掛けがある。それは膣の痙攣具合から装着者の絶頂を感知すると、ペニスバンドに内蔵された擬似精液が射出されるというものだ。擬似精液は当然ながら人体に害はない。精液作成キットもペニスバンドとは別にネットで売られているのだ。それをお湯で作ることで通常のものよりホットな精液を作ることが可能となっている。
俺はベッドから降りると床に座った。
「センパイ、こっちに来て」
「うん」
彼女がベッドの端に座った。
「これ、キレイにするね」
「うん、お願い♥」
彼女の前にひざまづき、ペニスに顔を近づけるとなんの躊躇いもなくそれを口に咥えた。
「んぅ!カズキ♥」
彼女が俺の頭に手をやり、髪を撫ぜたり掴んだりする。まさに夢見ていたシチュエーションだ。竿全体に濡りたくられた精液を丁寧に舐めとる。ちなみにこの精液はカル○スのような甘酸っぱい味で普通に美味しい。夢中になって一通り精液を舐めとると、ペニスが俺のよだれでヌメヌメになった。
「センパイ、もっと気持ちよくしてあげますね♥」
彼女を見上げてそう告げると、俺は彼女のモノを根元まで咥えこんだ。力を抜いて少しずつペニスを迎え入れ、亀頭が喉奥まで到達するのを確認する。慌てずに呼吸を整えると喉で亀頭を締め付けた。
「あぁ!!カズキぃ、すごい!!♥」
彼女が大きな声を上げた。俺の頭を掴む手がグッと力む。じっと息苦しさに耐えていると、口の中のペニスが急に激しく痙攣し、喉に熱い粘液が注がれた。
「んぐ!んご…ごふっ!ぶはぁ、ごほっごほっ!」
喉が詰まり息苦しさに耐えられなくなり、ペニスを口からバッと離した。大量のよだれが口からダラリと垂れる。咳き込みながら、必死に息をする。涙まで出てきた。
「カズキ、大丈夫!?」
彼女が心配そうに俺の顔を覗き込んだ。
「うん……大丈、夫。気持ち…良かった?」
かすれ気味な声で彼女に聞いた。
「うん、気持ち良すぎてすぐにイッちゃったよ。でも、無理しちゃダメだよ!」
「センパイもやってくれたから、俺も喜んで欲しくて」
彼女が自分からやってくれるディープスロート。苦しいはずなのにそんな素振りも見せず、俺が気持ち良いと言うといつも嬉しそうにする。それをお返しにやってみたかったのだ。
「嬉しいけど今度はもっと少しずつやろうね」
「うん」
彼女が優しく俺の頭を撫ぜた。
「カズキ、もう疲れた?」
苦しさが落ち着いて、顔を拭くと彼女が遠慮深げに聞いてきた。
「うん?まだイケるよ」
俺は既にインキュバスになっており、体力も精力も段違いになっていた。
「そう、そしたら……できたら、ワタシも欲しいなって」
彼女が伏し目がちに体を揺らしながら話した。
「うん、俺もシたいなって思ってたところ」
「ホント?じゃあ……」
彼女がバンドを外し、膣からディルドを引き抜いた。彼女の秘所が露わになる。そこはもう濡れそぼっていた。
「きて♥」
「うん♥でも、その前に」
彼女の髪をそっと持ち上げた。ポニーテールのウィッグが外され、彼女のショートボブの髪が現れる。外したウィッグをタンスの上の専用スタンドに置いた。
ウィッグも俺のリクエストでしてもらっている。様々な彼女と楽しみたいという俺のわがままで行為の時やデートの時につけてもらっている。彼女は手櫛で髪を頭に馴染ませる。クールなインテリ美女からボーイッシュな可愛い彼女に早変わりだ。
「すごく可愛いよ♥」
いつも俺は気の利いたことを言ってあげられない。
「うん、ありがと♥」
それでも彼女は弾けるような笑顔を見せてくれる。
彼女と恋人になってから俺は自分の欲望に素直になった。彼女はそんな俺の願いを全て聞き入れてくれる。大学を卒業したらプロポーズするつもりだ。でも、それまでまだ時間がある。今は大学生活を彼女と思う存分楽しもう。俺はそんなことをぼんやり考えながら彼女を抱きしめた。
23/04/12 13:45更新 / 犬派