読切小説
[TOP]
侵略のためのセックス実況
「さあ、今日もこの時間がやってまいりました。繰り広げられるのは男と女の魂の対話!その先に待ち受けるのは無限の快楽!これぞ究極の肉体淫技パクロス!!!」

 男の畳みかけるような言葉とともにある深夜番組の放送が始まった。番組名は「パクロス」。何と男と女の性交を実況中継する番組である。それも女は人ではなく魔物娘である。この異常な番組が生まれたのには特殊な経緯がある。

 世界に突如として魔物娘が現れてから10年ほど。街中で人と魔物娘のカップルを見かけることもあるようになった頃、魔王軍の幹部たちは自分たちの存在をさらに世間に認めてもらうための方策を思案していた。彼女たちの出現は当初こそ大きな衝撃を与えたものの、現代の競争社会に疲弊していた人々の心の隙間に巧みに入り込み、まだ数は多くないが社会にうまく適応していた。しかしながら彼女たちに対する懐疑的な見方も根強く、魔界からの本格的な侵攻は未だ果たせずにいた。

 魔王軍は自分たちを拒絶されないよう少しずつ魔界から魔物娘を送り込んでいたが、魔界で待たされ続ける彼女たちの不満は募る一方だった。何か起爆剤となるものがあればと魔王軍幹部たちが頭を悩ませた末に、結論として出たのは自分たちの魅力をメディアで発信することだった。彼女たちの美貌を生かしAV嬢をやらせてみようとも考えたが、まずはテレビ出演から始めることにした。そこで魔王軍は魔物娘達を番組制作会社のスタッフ達と交際・結婚させ、さらに役員への根回しをした結果、なんとか番組制作まで漕ぎつけることに成功した。

 番組は広く国民に見てもらえるように当初は地上波でバラエティー番組として放送する予定だった。しかし、魔界で待つ魔物娘達の一部は魔王軍の慎重な侵攻戦略に業を煮やし、暴徒化寸前にまでなっていた。彼女たちへの懸命な説得もむなしく、「3か月以内に自分たちに人間界へ行く許可を与えないと勝手に行かせてもらう」と宣言をされることになった。もはや一刻の猶予もない。彼女たちを速やかに人間界へ開放してやらねば反乱にまでなりかねない。

 こうなったら人間に快楽を刷り込み洗脳するしかないと考えた幹部達は、より過激で刺激的な番組を制作することした。そこで彼女たちから制作会社に提案されたのは人と魔物娘のカップルの性交中に実況中継をつけたバラエティー番組だった。「セックスを実況中継するAVなどないのだからこれはAVではない」という謎の主張も添えて。そして局部は仕方ないからモザイク処理をすると譲歩の姿勢らしきものを見せてゴリ押しを始めたのだ。無茶苦茶な提案だったが、魔物娘から与えられた快楽により制作サイドの者たちの貞操観念やモラルは破綻していた。彼らはパートナーから性交の頻度を少なくすると脅されるとあっさりと折れてしまった。もっとも、その脅しもブラフに過ぎなかったのだが。役員からも「とりあえずバラエティーぽくすればOK」とやけくその承諾を得て、ついに番組の制作は決まった。
 
 番組に出演するのは魔王の幹部達から要請を受けた男を持つ魔物娘である。彼女たちは「魔王様の野望のためなら」と二つ返事で涎を垂らしながら快諾した。快楽づけで特殊思考となっている男たちも「世の中を良くするために一肌脱ぐ」とこれに賛同した。

 番組の構成はまず出演者のカップルがそれぞれ簡単なインタビューを受けた後、番組用に作られた施設に入り、ベッドルームでひたすら性交をしてそれを実況中継する内容となっている。実況は別室でモニターを見ながら行われるので、音声はカップルには聞こえない。ただ一つ問題だったのは実況者がこれまた凄まじい男だったことである。番組中は彼が口を閉ざすことが全くないのだ。

 「今夜の競技者が入場してまいりました。まずは金髪で爽やかな男の登場です。夜の経験は豊富なようです。力仕事でほどよく鍛えられた細マッチョであります。大工王子・ケンです!彼の後に続くのは青みがかった艶やかな髪を持つ美女です。きりりとした目ですが、どこか優しさも感じます。体はメリハリがあり健康的な肉付きです。一体その抱き心地はどれほどのものでしょうか?地上に舞い降りた悩殺女神・サキュバスのメルです!」

「さあ、メルがベッドの上に仰向けになりケンを誘います。ケンが応えます。まずは口付けからです!落ち着いた上品なキスです。聞こえるのは二人の息遣いだけです。早くも二人だけの世界に入ろうとしております。舌も絡めます。その様は息の合ったダンスのようです。口と同時に胸も攻める!持ちきれないその果実をそっと撫でています。乳首をつまみねじっております。たまらずメルが喘ぎます!性感へのチューニング完了です!!絶頂への準備万端です!!!」

「さあ、ケンが彼女の下半身へと動いていきます。獲物を狙うハンターの目だ!狙うは彼女のヴァギナのようです。狙いを定めた!このまま狩られてしまうのか?ケンがしゃぶりつきます!思わず身をよじる!しかしケンが逃がさない!!彼女の脇をその腕でがっちりロックしています!顔を前後左右に振りながらも決して離れません。おおっと!メルの足が空中へ伸びたぞ!イッたのか!!イッてしまったのか!!?どうやら達したようです!
『イカされるよりもイカしたいんですよ、俺は』ケンはインタビューでそう豪語しておりました。まさに有言実行!この男ただの優男ではありません!!」

「一息ついて今度はお返しとばかりにメルが攻めます。相手はそそり立つ男根です。彼の爽やかとは裏腹にどうだと言わんばかりの猛々しさです。さながら女を約束された絶頂へと導く聖剣といったところでしょうか。」

「ムム!!?メルがケンの股間を見つめたまま動きません。どうしたのでしょうか!?あっ!今ぴくっと動きました。我に返ったようです。どうやら思わず見入ってしまって我を忘れていたようです。サキュバスを魅了するとは、げに恐ろしき男です!!!さあ、気を取り直して・・・・咥えました!サキュバスとしての誇りを今こそ見せます。バキュームだ!!驚きの吸引力です。これはケンもたまらない!!反射的に腰を引く!しかし離しません。左手を彼の腰へ回し万力のように締めています!!!右手で陰嚢へのマッサージも忘れません。亀頭を執拗に舐め精の放出を促します。さあどうだ!・・・・イッたぁーーー!!イキました!!!!無事メルの任務完了です。乳を搾り最後までしっかり飲み干しております。その横顔の何と美しいことでしょうか。精巧に作られた淫靡な芸術作品を思わせます。」

「さあ、いよいよこの時が来ました。愛する者たちが一つとなり、高みへと共に上ってゆきます。ケンが己自身を彼女へと向け狙いを定めています。正常位の体制です。もうここは黙って決めてもらいましょう。いけ、ケン!!・・・・あぁーー、はずしてしまった!どうしたんだケン!!焦ってしまったのか!?普段とは違う環境に弘法も筆を誤ってしまったというのか!!?次こそ決めてもらいましょう。さあ落ち着いて・・・・ハイったぁ〜〜〜!!!!!鮮やか!狙い通りです!やるときはやる男です!」

「息が上がっております。ケンが苦しそうだ!!入れただけで耐えがたい快楽が彼を襲っているのでしょう。しかし耐えます。まだイクわけにはいきません。これはもう獣になるしかありません。相手は淫魔です!尋常なやり方では太刀打ちできるはずがありません。欲望に忠実になるしか方法はありません。今こそ内なる野獣を呼び覚ませ、ケン!!
ケンがストロークを始めました。何と!?紳士的です!紳士的にメルを労わるストロークです。その理性の城壁は崩れることを知らないのでしょうか?憎たらしいほどの男の鑑です。お互い呼吸を合わせていきます。メルが手を伸ばし彼を呼んでいます。ケンも応えます。二人は重なり合い再び口付けを交します。
『正常位が好きです。彼とキスしたり見つめ合ったまま二人でイクのがたまらなく好きなんです』
メルは頬を赤らめながらそう健気に語っておりました。今まさに彼女は至福のひと時を迎えていることでしょう。呼吸が荒くなり互いの名を呼び合っています。その時が来ているようです。クライマックスです。二人の身も心も融合する瞬間です。
おおぉぅ!!!!二人が絶叫しております!体も震えております!想像を絶する快感が全身を駆け巡っている!!!ケンの精がメルの元へと流れていきます。彼の精子たちが激流をなして彼女へと注がれていく。心なしかメルの妖艶さが先ほどより増して見えます。流れる汗が二人の激闘を物語っております。震えるほどのエクスタシー!!燃え上がる情欲の炎!!何度見ても胸打たれる瞬間です。
今夜はこれまでです。また明夜お会いしましょう!」

 番組はその異様な内容もさることながら、実況者のマシンガントークも話題となり予想に反して好評を博した。この実況ぶりは魔物娘達にも予想外のものだったが、深夜枠としては異常に高い視聴率が取れて一安心していた。放送時間も今ではより早い時間帯にずれ、DVD化までされている。かくして作戦は成功し無事人々は洗脳され、魔界にいた魔物娘達は人間界へ溢れるように押し寄せて行った。今では魔物娘は人間には欠かせない存在となっている。めでたし、めでたし。
18/07/17 10:25更新 / 犬派

■作者メッセージ
こんなくだらない文章を読んでくださってありがとうございます。
ただ実況をさせてみたかっただけなんです。
実際に書いてみると想像以上にひどいですね。(笑)

TOP | 感想 | RSS | メール登録

まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.33