旅の剣士 その2 前編
〜とある砦の訓練場〜
俺の前には剣を構えているデュラハンの騎士。
俺と彼女を囲むのは野次馬達
……まったく見せものではないんだが……
リザードマンの剣士リターナからからくも逃げおおせた(油断はできないが……)俺は、新魔物領と反魔物領の国境付近を歩いていた。
仮に見つかっても反魔物領に逃げ込めば派手な動きはできないだろうという思惑が働いたからだ。
ただいくつか問題点がないわけではない。
まず一つは、ここ最近、国境付近がきな臭くなっていること。
そしてもう一つが路銀が心許なくなっていること。
逃げている途中に依頼を受けるわけにもいかなかったからだ。
まあ、次の街に着いたら解消しそうな問題だが……
等と考えながら歩いていると、ふと金属同士が打ち合う音(どうやら剣戟らしい)が聞こえてきた。
俺はどうするか悩んだ挙句、好奇心に負けて(今思えばここですべてが決まったような)剣戟のする方に向かった。
少し開けた場所で、戦闘が行われていた。
やたらと禍々しい鎧を身に付けた女騎士(十中八九デュラハンだろう)と教団のシンボルが入った鎧を着た騎士達(およそ十人ほどだろうか?)が闘っていた。
女騎士の方はかなり疲労がたまっているのか息が上がってしまっているが、教団の騎士達は些か余裕があるらしく、散発的に攻撃しさらに体力を奪おうとしているようだった。
ついには女騎士は膝をついてしまう。
「ここまでのようだな邪悪な魔物よ!覚悟!!」
教団騎士の一人がそう言って上段から打ち込む!
「くっ!ここまで『ガキンッ』」
「「なっ?」」
「もう勝負はついただろう?」
俺は間一髪、女騎士と起用団騎士の間に入り、攻撃を受け止めた。
「貴様っ!! 邪魔をするな!!」
言いつつ、切りつけてくる教団騎士!
俺はその剣めがけて切りつける!
『キンッ』
「「「なっ」」」
教団騎士達の声があがる。
俺は教団騎士の剣を文字通り、叩き切った。
「これ以上やるなら俺が相手だ」
途端に腰が引ける教団騎士達。
と、そこで隊長らしき人物が
「頃合いか…… 総員退却だ」
「しかしっ!!」
「時間が経ちすぎた。魔物の増援が来る前に撤退する!」
「くっ! 了解」
そう言って、騎士達は去って行った。
去り際に隊長が
「見事だ」
と言っていたのが妙に印象に残っていた。
「おい無事か?」
と背後に聞いても返事がない。
もしや?と振り返ると、女騎士は地面に横たわっていた。
呼吸もしているし、緊張の糸が切れて気絶したらしい。
「やれやれ」
俺はそう呟くと、野営の準備を始めた。
彼女をせめて敷物の上で休ませるために……
テントを張り、彼女をなんとか中に運び込み、鎧を脱がしてから横にして毛布をかけてやった。
ここまでして起きないとは、よほど際どい戦いだったのだろう……
俺は夕食(もう日が傾いている)を作るために石でカマドを作り、料理を始めた。
今日は干し肉と、乾燥野菜のシチューだ。
出来上がったシチューを器に盛るとテントの中に入った。
どうやら入ると同時に目が覚めたみたいだ。
「お? 目が覚めたみたいだな」
「ここは……?」
「ああ、あんたが囲まれてたところだ。 あんた気絶してたから、テント張ってそこで寝さしてたんだ」
「そうか…… あっすまない助けてもらった礼がまだだったな? 私はリリアンヌ・スコーテットという。おかげで命を落とさずに済んだ。礼を言う」
「俺はユークリッド。 礼はいい。 俺が勝手にやったことだ。」
「しかしユークリッド殿…… 」
「ユウでいいぞ、リリアンヌ」
「私もリリーで良い、だがせめて皆には紹介したいんだが…… 」
「しょうがないか…… あ、腹減ってないか? シチューを作ったんだが?」
「すまない、いただこう」
「食ったらもう一度横になってな。 まだ本調子じゃないだろう? 」
「……そうさせてもらおう」
「移動は明日の朝でいいな?」
「ああ…… すまないな気を使わせて…… 」
「気にするな。 じゃ俺は外に居るからな」
そう言って俺は外に出る。
外に出る間際に小さな声で「ありがとう」と聞こえた気がした。
俺も飯食って休もう……
後篇に続く
俺の前には剣を構えているデュラハンの騎士。
俺と彼女を囲むのは野次馬達
……まったく見せものではないんだが……
リザードマンの剣士リターナからからくも逃げおおせた(油断はできないが……)俺は、新魔物領と反魔物領の国境付近を歩いていた。
仮に見つかっても反魔物領に逃げ込めば派手な動きはできないだろうという思惑が働いたからだ。
ただいくつか問題点がないわけではない。
まず一つは、ここ最近、国境付近がきな臭くなっていること。
そしてもう一つが路銀が心許なくなっていること。
逃げている途中に依頼を受けるわけにもいかなかったからだ。
まあ、次の街に着いたら解消しそうな問題だが……
等と考えながら歩いていると、ふと金属同士が打ち合う音(どうやら剣戟らしい)が聞こえてきた。
俺はどうするか悩んだ挙句、好奇心に負けて(今思えばここですべてが決まったような)剣戟のする方に向かった。
少し開けた場所で、戦闘が行われていた。
やたらと禍々しい鎧を身に付けた女騎士(十中八九デュラハンだろう)と教団のシンボルが入った鎧を着た騎士達(およそ十人ほどだろうか?)が闘っていた。
女騎士の方はかなり疲労がたまっているのか息が上がってしまっているが、教団の騎士達は些か余裕があるらしく、散発的に攻撃しさらに体力を奪おうとしているようだった。
ついには女騎士は膝をついてしまう。
「ここまでのようだな邪悪な魔物よ!覚悟!!」
教団騎士の一人がそう言って上段から打ち込む!
「くっ!ここまで『ガキンッ』」
「「なっ?」」
「もう勝負はついただろう?」
俺は間一髪、女騎士と起用団騎士の間に入り、攻撃を受け止めた。
「貴様っ!! 邪魔をするな!!」
言いつつ、切りつけてくる教団騎士!
俺はその剣めがけて切りつける!
『キンッ』
「「「なっ」」」
教団騎士達の声があがる。
俺は教団騎士の剣を文字通り、叩き切った。
「これ以上やるなら俺が相手だ」
途端に腰が引ける教団騎士達。
と、そこで隊長らしき人物が
「頃合いか…… 総員退却だ」
「しかしっ!!」
「時間が経ちすぎた。魔物の増援が来る前に撤退する!」
「くっ! 了解」
そう言って、騎士達は去って行った。
去り際に隊長が
「見事だ」
と言っていたのが妙に印象に残っていた。
「おい無事か?」
と背後に聞いても返事がない。
もしや?と振り返ると、女騎士は地面に横たわっていた。
呼吸もしているし、緊張の糸が切れて気絶したらしい。
「やれやれ」
俺はそう呟くと、野営の準備を始めた。
彼女をせめて敷物の上で休ませるために……
テントを張り、彼女をなんとか中に運び込み、鎧を脱がしてから横にして毛布をかけてやった。
ここまでして起きないとは、よほど際どい戦いだったのだろう……
俺は夕食(もう日が傾いている)を作るために石でカマドを作り、料理を始めた。
今日は干し肉と、乾燥野菜のシチューだ。
出来上がったシチューを器に盛るとテントの中に入った。
どうやら入ると同時に目が覚めたみたいだ。
「お? 目が覚めたみたいだな」
「ここは……?」
「ああ、あんたが囲まれてたところだ。 あんた気絶してたから、テント張ってそこで寝さしてたんだ」
「そうか…… あっすまない助けてもらった礼がまだだったな? 私はリリアンヌ・スコーテットという。おかげで命を落とさずに済んだ。礼を言う」
「俺はユークリッド。 礼はいい。 俺が勝手にやったことだ。」
「しかしユークリッド殿…… 」
「ユウでいいぞ、リリアンヌ」
「私もリリーで良い、だがせめて皆には紹介したいんだが…… 」
「しょうがないか…… あ、腹減ってないか? シチューを作ったんだが?」
「すまない、いただこう」
「食ったらもう一度横になってな。 まだ本調子じゃないだろう? 」
「……そうさせてもらおう」
「移動は明日の朝でいいな?」
「ああ…… すまないな気を使わせて…… 」
「気にするな。 じゃ俺は外に居るからな」
そう言って俺は外に出る。
外に出る間際に小さな声で「ありがとう」と聞こえた気がした。
俺も飯食って休もう……
後篇に続く
11/06/17 23:33更新 / 瑠璃石