旅の剣士
ここはとある街道沿い、そこから少し外れた空き地。
目の前には大剣の柄に手をかけ、構えているリザードマン。
俺はバックパックを地面に下ろしながら
(どうしてこうなった……)
と、事の発端を思い出していた。
話は数日前に遡る。
フリーの冒険者である俺は、次の街に向かうため街道を歩いていた。
次の街まであと少しという所で、数人の男たち(後でわかったことだが
なかなか名の通った盗賊団だったらしい)に囲まれた。
で、それをあっさりと撃退した(最初数人だったのが、最後には十数人になっていたのには驚いたが)のだが、どうもそれを見られていたらしい。
街に着き、ギルドへの挨拶を終わらせ、宿に向かう途中、
「そこの男待て!」
と声をかけられた。
振り向くとそこには自身の身長程もある大剣を背負ったリザードマンがいた。
「何か用か?」
と問いかけると
「私と闘ってく『断る!』れ」
台詞の途中で断る俺。
「なっ!?」
リザードマンが驚いている隙に路地に逃げる俺。
「あっ! 待て逃げるなっ!」
リザードマンも慌てて追いかけるが
「いない? 確かにこちらに逃げたはずなのに…… 」
と、あたりを見回すリザードマン。俺はそれを屋根の上から見ていた。
「悪く思わないでくれよ…… 」
と呟きながら、宿へと向かった。
次の日、保存食や、消耗品を補充しすぐに街を離れることにした。
ギルドに街を出ることを伝え、俺は街を出た。
街道をしばらく進むと、前方に見覚えのあるシルエットが見えた。
あのリザードマンだ。
あちらの方も気付いたらしく、すさまじい勢いで走ってきた。
「見つけた、今度は逃がさん! 私と闘え!」
「どうしてもか?」
「ああっどうしてもだ!」
「……わかった。だがここでは往来の邪魔になる」
「少し行った先に空き地がある。そこでならいいだろう?」
「わかった」
で話は冒頭に戻る。
俺は覚悟を決め、剣を抜きながら
「名前を名乗って無かったな。俺はユークリッド、ユウと呼んでくれ」
「私はリターナ。リターナ・アイスコフィン」
「わかった。来いリターナ!」
「応!」
こうして闘いが始まった。
一気に距離を詰めてくるリターナ。
背中から大剣を抜きつつ振り下ろしてくる。
想像以上に素早い動き、だが俺は余裕を持って回避し、反撃に移ろうとした時
「てああああっ!」
リターナは気合いの声を上げると振り下ろした剣を途中で止め、横殴りの攻撃を仕掛けてきた。
「くっ!」
咄嗟に剣でガードしつつ力に逆らわずに飛び、衝撃をいなす。
だがいなしきれず、わずかに腕がしびれる。
「やるな。今までの相手はあれで終わっていたんだが」
「その方が楽だったかもな」
と言うと
「ようやく本気で闘えそうだ。行くぞ!」
と、距離を詰めるリターナ。
(さっきよりも速い!?)
連撃を繰り出すリターナ。
最初の攻撃よりも速くなった攻撃が俺を襲う。
なんとかその攻撃を避け、時に剣でいなしつつ、隙を窺う。
「これで終わりだっ!」
リターナが渾身の力を込めた攻撃を放つ。
その瞬間、俺は
「ここだっ!」
と言いつつ、リターナの持つ大剣に向けて攻撃を放つ!
「なっ!?」
俺は大剣の軌道を逸らしつつ、捲り込みながら大剣を地面に縫い付ける。
「しまっ」
そう言うリターナの喉元に剣を突き付ける。
そして
「俺の勝ちだ」
「……ああ、私の負けだ」
俺は剣を収めつつバックパックの所に戻りそれを背負いながら、
「じゃあなリターナ。縁があったらまた会おう」
と言いながら立ち去ろうとする。
「待て、ユウ」
「なんだ?まだ用があるのか?」
「私と夫婦になってくれ」
「は? 何を言って……」
そういえばリザードマンって自分に勝った相手と……
「おまえは私に勝った。私の夫に相応しい。だから……」
俺はすべてを聞く前に逃げだした。
「あっ待てっ逃げるなぁ〜」
慌てて追いかけてくるリターナ。
俺は全速力で逃げる。
心の中で、『どうしてこうなった』と叫びながら
〜fin?〜
目の前には大剣の柄に手をかけ、構えているリザードマン。
俺はバックパックを地面に下ろしながら
(どうしてこうなった……)
と、事の発端を思い出していた。
話は数日前に遡る。
フリーの冒険者である俺は、次の街に向かうため街道を歩いていた。
次の街まであと少しという所で、数人の男たち(後でわかったことだが
なかなか名の通った盗賊団だったらしい)に囲まれた。
で、それをあっさりと撃退した(最初数人だったのが、最後には十数人になっていたのには驚いたが)のだが、どうもそれを見られていたらしい。
街に着き、ギルドへの挨拶を終わらせ、宿に向かう途中、
「そこの男待て!」
と声をかけられた。
振り向くとそこには自身の身長程もある大剣を背負ったリザードマンがいた。
「何か用か?」
と問いかけると
「私と闘ってく『断る!』れ」
台詞の途中で断る俺。
「なっ!?」
リザードマンが驚いている隙に路地に逃げる俺。
「あっ! 待て逃げるなっ!」
リザードマンも慌てて追いかけるが
「いない? 確かにこちらに逃げたはずなのに…… 」
と、あたりを見回すリザードマン。俺はそれを屋根の上から見ていた。
「悪く思わないでくれよ…… 」
と呟きながら、宿へと向かった。
次の日、保存食や、消耗品を補充しすぐに街を離れることにした。
ギルドに街を出ることを伝え、俺は街を出た。
街道をしばらく進むと、前方に見覚えのあるシルエットが見えた。
あのリザードマンだ。
あちらの方も気付いたらしく、すさまじい勢いで走ってきた。
「見つけた、今度は逃がさん! 私と闘え!」
「どうしてもか?」
「ああっどうしてもだ!」
「……わかった。だがここでは往来の邪魔になる」
「少し行った先に空き地がある。そこでならいいだろう?」
「わかった」
で話は冒頭に戻る。
俺は覚悟を決め、剣を抜きながら
「名前を名乗って無かったな。俺はユークリッド、ユウと呼んでくれ」
「私はリターナ。リターナ・アイスコフィン」
「わかった。来いリターナ!」
「応!」
こうして闘いが始まった。
一気に距離を詰めてくるリターナ。
背中から大剣を抜きつつ振り下ろしてくる。
想像以上に素早い動き、だが俺は余裕を持って回避し、反撃に移ろうとした時
「てああああっ!」
リターナは気合いの声を上げると振り下ろした剣を途中で止め、横殴りの攻撃を仕掛けてきた。
「くっ!」
咄嗟に剣でガードしつつ力に逆らわずに飛び、衝撃をいなす。
だがいなしきれず、わずかに腕がしびれる。
「やるな。今までの相手はあれで終わっていたんだが」
「その方が楽だったかもな」
と言うと
「ようやく本気で闘えそうだ。行くぞ!」
と、距離を詰めるリターナ。
(さっきよりも速い!?)
連撃を繰り出すリターナ。
最初の攻撃よりも速くなった攻撃が俺を襲う。
なんとかその攻撃を避け、時に剣でいなしつつ、隙を窺う。
「これで終わりだっ!」
リターナが渾身の力を込めた攻撃を放つ。
その瞬間、俺は
「ここだっ!」
と言いつつ、リターナの持つ大剣に向けて攻撃を放つ!
「なっ!?」
俺は大剣の軌道を逸らしつつ、捲り込みながら大剣を地面に縫い付ける。
「しまっ」
そう言うリターナの喉元に剣を突き付ける。
そして
「俺の勝ちだ」
「……ああ、私の負けだ」
俺は剣を収めつつバックパックの所に戻りそれを背負いながら、
「じゃあなリターナ。縁があったらまた会おう」
と言いながら立ち去ろうとする。
「待て、ユウ」
「なんだ?まだ用があるのか?」
「私と夫婦になってくれ」
「は? 何を言って……」
そういえばリザードマンって自分に勝った相手と……
「おまえは私に勝った。私の夫に相応しい。だから……」
俺はすべてを聞く前に逃げだした。
「あっ待てっ逃げるなぁ〜」
慌てて追いかけてくるリターナ。
俺は全速力で逃げる。
心の中で、『どうしてこうなった』と叫びながら
〜fin?〜
11/06/16 18:31更新 / 瑠璃石