連載小説
[TOP][目次]
焦げた刃と放熱の刃
 危機に晒されたニール。彼女を救ったブレードは、地面に投げ刺した『RAY.S.R』を手早く回収して、再び赤服の男を睨みつける。シャグも突然の襲撃者に対して興味津々に見つめた。

「ほう、さっきの黒い戦士の仲間か・・・そういやあのハゲは複数いたと言ってたな」
『左側にラキの反応を確認。気絶しているようです』
「・・・相変わらずだな」

 レックスの通信どおり、ブレードが左に一瞬だけ目を向けると、目を回らせて気絶しているラキがいた。

「お前らは妙な服装なうえに、妙な武器を持っているらしいな。だが、使っている奴が素人で面白くもねぇ」
「・・・当たり前だ。あいつは市民に武装させたような存在。まあ、ただの市民でもないがな」
「はぁん?それで、お前はどういった存在だ?」
「・・・ただの特攻隊員さ。下衆十字架」
「ふ、はぁはははははははははは!!」

 ブレードの軽蔑の言葉にシャグは高らかと笑い出す。

「はははは!確かに、だせえ十字架だが、掲げて戦わねぇとクソジジイがぼやきまくるから仕方ねえんだよ!」
「・・・なら、何故戦う?」
「決まってんだろう!強い奴と戦うためだ!」

 思った以上の収穫ができず、ちっぽけな満足を邪魔されて苛立つシャグは、目の前のブレードを叩き潰そうと突っ込んでくる。純白の魔法剣が彼に襲い掛かった。

バシィィィィィィィン
「っ!?」
「・・・子どもみたいな理由だ」
「んだ、ぐうっ!?」

 ブレードは右手の『RAY.EDGE』で魔法剣を受け止め、相手の鳩尾に強烈な左キックをかます。吹き飛ばされたシャグは地面を一回後転して立ち上がった。

「てめえ、よくも俺を不愉快にさせたな」
「・・・お前の気持ちなぞ知らん」
「ほざけええ!!」

 再び突っ込み、魔法剣を振り回して襲い掛かるシャグ。ブレードは両手に『RAY.EDGE』を展開させて待ち構える。今度は受け止めず、両手の光学刃で魔法剣の軌道をずらしながら斬撃を避けた。斬り裂こうとする純白の剣を青き双刃が受け流す。

「なっ!?」
「・・・ふっ!」
「ぶっ!?」

 ブレードは僅かな隙をついて、刃を消失させた右手で相手の顔にストレートをきめる。ふらつくシャグに彼は追い打ちで、左に回転して右足で突き飛ばした。盛大にぶっ飛ばされる赤服の男は、うつ伏せで地面に倒れる。

「「!?」」
「すげぇ!」
「やったか!?」
「すごいわ・・・」

 周りで見ていた付添いの騎士とアイビスの兵士たちは驚きを隠せなかった。無論、ニールやリオも目を丸くして見ている。

「な、何なのだアイツ・・・」
「私との模擬戦でも見せなかった動きだ・・・」
「な、アイツと戦ったのか!?」

 倒れた相手を確認すると、ブレードは空を見上げながら通信機を操作した。

「・・・レックス、負傷者を手当てしろ」
『了解。ですが、所持数では不足の可能性もありますので、他の隊員にも物資要請をしておきます』

 彼の指示でニールのいる付近に着陸するレックス。傷ついたニールに治療用の簡易注射を使用する。その時、レックスはセンサーにある反応を感知し、こちらを見ているブレードに向かって叫んだ。

「ブレード!」
「・・・」

 彼は無言で腰に左手を回して『L.B.H』を抜き、振り向いてシールドを展開させた。気付けば奴は立ち上がり、魔法剣をスイングして光弾を放っている。ブレードは全弾を防いで、立ち尽くしている相手を睨んだ。

「・・・・・・くっくっくっくっく」
「・・・」
「ふ、はははははははははははははは!!」

 突然、歓喜の笑いを高々と上げるシャグ。その場に居た者たちのほとんどが困惑した。一方のブレードは相変わらずの無表情で相手を見つめる。

「これだ。これだぁ!これだあ!!俺が長年味わうことのなかった感覚ぅ!そうだ!お前こそ!俺の求めた強者だぁ!」
「・・・それがどうした?」
「俺は求めていた!強者たるお前の存在をぉ!そして!その強者を倒す感覚を!」

 歓喜に満ちる歪んだ顔で彼に迫るシャグ。ブレードは再び『RAY.EDGE』を両手に持ち、迎え撃つ。今度の斬撃は隙がなく、彼は光学刃で受け流せずに避けるしかなかった。やむを得ないと判断した彼は、長剣を持つ右腕を浅く斬りつける。その瞬間、シャグは口元を釣り上げ、またも剣でブレードを右側に叩き飛ばした。

「くっ!?」

 彼は咄嗟に防御姿勢で攻撃を受けて吹き飛ぶも、受け身を取って相手に向き直る。シャグの打撃をまともに受けた左腕は、多数の擦り傷だらけで赤くなり始めた。

「はぁははは!!いいぞ!此処らの雑魚より段違いだ!さあ、見せやがれぇ!」
「・・・何をだ?」
「決まってるだろう!お前のまだ出してねぇ!本当の力をぉぉぉぉ!」

 またも襲い掛かるシャグに、ブレードも同じく迎え撃った。

 ニールたちはレックスの応急処置を受け、なんとか動けるまで回復した。回復したリオとともに瓦礫に埋もれたケイを救助する。ケイの治療中、リオが剣を持って参戦しようとした。だが、それを許さない者が彼女の前に立ち塞がる。ドラグーン隊のレックスだ。

「何故邪魔をする!?」
「今の負傷したあなたでは、彼の援護はできません」
「あいつは私の夫だ!殺させる訳にはいかない!せめて一太刀でも・・・」
「今の彼は援護すら拒否しています。かえって彼の邪魔になるだけです」
「なっ!?」
「!?」

 レックスの言葉にリオだけでなく、ケイを介抱しているニールも驚いた。話している最中でもブレードは僅かな斬撃を受けていき、全身に次々と傷が増えていく。彼は先程と同じく動きを止めようと手足などに軽い攻撃を当てるも、相手の傷が一瞬にして消失することに気付いた。

(・・・再生した?・・・これも魔法とやらか・・・)
「ブレード!そいつは治癒魔法で傷がすぐに治る!生半可な攻撃は無意味だ!」
「・・・なるほど」

 ニールの警告を聞き、一旦距離を離れて間合いを取るブレード。彼の身体のあちこちから血が滴り落ちる。口の中に溜まった血の唾を吐き飛ばし、取り出した簡易注射を左腕に刺した。注射のラベルには『ADRENALINE』と書かれている。

「何故、本気を出さない!?」
「・・・」
「お前は!得物すら出してない!俺には解るぞ!何故出さねぇ!?」
「・・・暴れまわる子どもに必要ないからだ」
「っ!?」
「・・・そうだな」

 顔に怒りが満ちていくシャグを気にせず、ブレードは左手の光学刃をしまって右手の光学刃を掲げ見せた。

「・・・子どもにはこれ一本で十分だ」
「てめえええええええ!!」

 彼の挑発的な宣言にシャグは逆上し、光弾を飛ばして突撃する。それまで無表情だったブレードが今まで以上に目を見開き、右手の光学刃で光弾を弾き落とした。続いてやって来た相手の攻撃を難なくかわして、シャグの右脇辺りをすれ違いざまに斬り裂いた。

「ぐぶっ!?」

 致命傷まではいかなかったが、さらにブレードは反対側の脇を斬り裂く。

「ぐぶぅ!?ごぼぉ!?がべぇやがぶぅ!?」

 治癒魔法による再生が始まるも、シャグは続けざまに斬られ、塞がったばかりの傷が繰り返し開く。今までとは違う感覚の攻撃に慌てて反撃するも、かすりもせず避けられる。

「ごぼぉ!ぎぃばぁま゛!あ゛びぃを゛!?」

 口から留まることなく血反吐がでるシャグ。お構いなしに斬り続けるブレード。ニールたち含めた周りの者たちは、彼が何をしているのか理解できなかった。次第にシャグの顔が青くなり始める。

「ごぼっ!がほっ!ぐほぉぉぉ!」

 彼は上手くしゃべれないせいで、悪態をつく言葉すら出ない状況に陥る。そして、遂に膝をついて一歩も動けなくなった。その瞬間、ブレードは斬ることを止めて彼を見下す。気付けば、魔法剣は輝きを失い、片手で持てずに落としてしまう。すでに傷は塞がっていたが、最早目が見えないせいか、左手が虚空を掴もうと必死に探っていた。

「・・・悪いが昼寝の時間だ」

 ブレードは『RAY.S.R』を取り出して彼の頭に当てた。

バチィィィィ!!
「かっ!?はぁぁ・・・・・・・・・・・・」

 強烈な電撃により、シャグは白目を剥いてうつ伏せに倒れた。動かなくなった彼を確認して、ブレードは武器をしまう。その場で見ていた者全員が目を疑った。1人を除いて・・・。

「見事です」
「・・・子ども相手なら当然だ」

 ニールとリオは傷だらけの黒服の男から目が離せなかった。

「思った以上の実力らしいな」
「あ、あの化け物勇者を・・・あの男・・・い、一体・・・」

 付添いの騎士とアイビスの兵士も唖然とする。

「「!?・・・」」
「な、何をやったんだ?」
「嘘、でしょ?」
「あの不消の陽熱が・・・」

 これを機に少数の兵士が騎士2人に刃を向けた。騎士たちも身の危険に気付き、腰の長剣を取り出す。

「・・・止めろ!そいつらに手を出すな!」

 今にも襲い掛かろうとする兵士たちをブレードが大声で止めた。彼の静止の言葉に彼らは刃を下ろす。未だに剣を構える騎士2人にブレードは近づいた。

「「・・・?」」
「・・・さっさとあいつを連れて帰れ。帰るなら手出しはさせん」
「「!?」」
「・・・早くしろ!帰れなくなってもいいのか!?」
「「・・・」」

 彼の言葉を聞いてお互いに相槌を打ち、剣をしまって赤服の男のもとへと歩く。1人は剣をもう1人はシャグを背負い、街の入口に向かって歩き始めた。それを見ていたニールが無事な兵士を数人呼び集め、騎士たちの追跡と監視を指示する。

「・・・絶対に手を出すな」
「分かっている。だが、何故帰すのだ?」
「・・・こちらに手を出せば、どれだけ酷い火傷をするか、教えてやったまでだ」
「なるほど・・・」

 ようやく皆が落ち着いた時、遠くからチェイサーの飛行音が鳴り響く。同時にレックスとブレードの通信にイーグルの声が響いた。

『全くお前たちは・・・状況を報告しろ』
「隊長、申し訳ございません。今のところ負傷者が多数。死傷者はゼロ。ですが、早急に手当てが必要とされます」
『分かった。ジェミニと一緒に医療キットを持ってきた。重傷者から手当てするぞ』

 それを聞いたニールがレックスに話し掛けた。

「私の部下たちは医療施設に向かわせる。幸い、ほとんどの者が動ける。心配はない」
「だそうです。隊長、如何いたしますか?」
『なら、重傷者は何人いる?』
「ニール様含めた3名います。ラキは気絶状態で意識はありません。外傷はないので無事かと・・・」
『ブレードは?』
「・・・」
「ブレード?」

 声を掛けたニールが見ると、棒のように突っ立ったままの彼の姿が目に入る。微動だにしてないことに不思議がっていると、リオが彼に近づいて行った。

「おい、お前・・・ブレードとか言ったな?」
「・・・」
「流石、私が決めた伴侶だ。勇者を倒す実力まで持っているとは・・・」
「・・・」
「おい、どうした?・・・大丈夫か?」
「・・・」

 彼女は全く返事を返さない彼の肩に触ろうと、右手を近づけた。すると、触った瞬間、彼の身体は後ろへ仰向けに倒れる。倒れた後に彼の身体を中心として血溜まりがゆっくりと拡がった。

「えっ!?」
「ブレードォ!!」
「隊長!すぐに輸送準備を!ドクター!治療設備の準備を!ブレードが倒れました!」
『なんだと!?』
『えっ!?一体何事!?レックス?』

 いきなりの出来事にリオとニールが声を上げた。レックスはすぐにブレードのもとへ駆け寄り、止血剤を投与し始める。


<戦艦クリプト 治療室>

 治療カプセル内に上半身裸の男が横たわっていた。そのカプセルから離れた端末をエスタが椅子に座りながら操作している。しばらくして1人の男が治療室に入ってきた。

「ドクター、容体はどうだ?」
「ああ、イーグル。取りあえずは無事。でも復帰には4日かかるかも・・・」
「全く・・・後先考えずに突っ走りよって・・・」
「そうだね。血を流しながらアドレナリンを投与。余計傷口が開くのに・・・」
「まあ、短時間で片が付いたのが幸いだな。ブレードらしい・・・」
「彼の過去の戦績でも想像は付くけど・・・」

 2人が話していると、突然、レックスから通信が入る。

『ドクター、よろしいでしょうか?』
「どうしたの?」
『ブレードのお見舞いに3名が訪れましたが・・・』
「此処は病院じゃない。悪いが帰って貰え」
「まあまあ、イーグル。誰が見舞いに来たの?」
『ニール様と、付添いでリオ様とケイ様です』
「いいんじゃない?入ってもらって・・・」
「ドクター・・・はぁ・・・治療の邪魔だけはするなと言え」
『了解』

 レックスを先頭に3人の女性が入ってくる。手甲を外した左手に包帯が巻かれているニール。腹部に包帯が巻かれたリオ。鉢巻のように頭へ包帯が巻かれたケイ。それぞれ治療を終えた状態だった。

「こんなに来るとは・・・ニールはさておき、他の2人はブレードの何なのだ?」
「「妻だ」」
「「・・・・・・」」

 リオとケイの答えにイーグルだけでなく、エスタも唖然とする。そんな2人を無視して彼女たちはカプセルに近づく。

「今日一日はその中にずっと入れておく予定。なので、出すことは出来ないからね」
「そうか・・・随分と無理をしたようだな」
「あの時は、わ、私が触ったせいかと思った」
「いい身体してんじゃん♪」
「はぁ・・・言っておくが彼は怪我人だ。見世物ではない」

 ニールは右手でカプセルを触り撫でる。

「完治はどのくらいだ?」
「4日だ。だが、謹慎処分もあるから実質はそれ以上・・・」
「な、なんだと!?」
「おい、こいつを閉じ込める気か!?」

 イーグルの発言にリオとケイが不満を挙げる。ニールは悲しげな表情でイーグルに顔を向けた。

「私たちのために戦ってくれたのだ。出来れば罰を与えないでほしい」
「頼む!私からもお願いする!」
「アタイも!」
「ぬぅ・・・・・・」

 ニールに続けてリオやケイからも懇願されて、頭を悩まされるイーグル。そんな彼を面白そうに見ながら、エスタが片手で端末を操作する。

「じゃあ本人の意見も聞いてみる?」
「「「えっ!?」」」
「「ドクター!?」」
「起きてるって言ってよ。こっちにばかり面倒事回さないでくれる?」
『・・・俺だって面倒事はごめんだ』

 エスタが端末操作でカプセル内の声を出せるようにしたのだ。そして、いつの間にか起きていたブレードは不機嫌にしゃべる。そんな彼にエスタが尋ねた。

「ブレード、気分はどうだい?」
「・・・せまっくるしい」
「自業自得だと思え」

 彼の愚痴を皮肉で返すイーグル。

「それで・・・覚悟はできているな?」
「・・・無論だ」
「「「!?」」」

 ブレードの言葉に彼女たちが反応する。一息置いてイーグルが口を開けた。

「傷が完治するまで待機しろ。最低4日間。艦内での訓練も禁止だ。いいな?」
「・・・ストレッチは?」
「1セットまでにしろ」

 彼らのやり取りで、彼女たちはブレードへのお咎めが無かったことにほっとする。ニールが軽くカプセルのガラスをノックすると、無表情のブレードが彼女に目を向けた。

「また、借りができてしまったな。すまない」
『・・・ふん、別に返さなくていい』
「そうはいかん。私だけでなく、彼女たちも返す気満々だぞ」
「リザードマンとしての誇りにかけて、私はお前に尽くそう」
「アタイとなら不自由させないぜ!」
『・・・いらぬ礼だ』

 彼女たちの謝礼に彼は困り果てる。その様子を見ていたイーグルたちは微笑んだ。不意にリオがあることを尋ねる。

「1つ気になってたのだが、お前はあの不消の陽熱に何をしたのだ?」
『・・・再生と言えど、奴は不死身というわけではない。人間としての弱点は残っている』
「弱点?」
『・・・人間はどのようにして生きているか考えれば、その答えが解る』
「そういえば、お前は奴の胸を切り裂き続けていたな。あれは一体・・・」

 ニールの疑問に彼は答えた。

『・・・呼吸が出来なければ、生きることは出来ない』
「「「!?」」」
『・・・奴の肺だけ潰し続けた。そうすることで頭に酸素が行き渡らなくなる。当然、窒息しかけになる。満足に動けなくなったところで気絶させた』
「あんた、エグイことするね」

 ケイが冷や汗を掻きながらしゃべる。

『・・・自身をよく知らずに挑んだことが奴の敗因だ』
「だが、奴、不消の陽熱は単身で魔界に訪れ、名のあるデュラハンやヴァンパイアを倒した強者だ。そんな奴を倒したお前が信じがたい」
『・・・俺は強者じゃない。ただの兵士だ』

 彼の答えに微笑むニール。そんな彼女を見て面白くなさそうな顔をするリオとケイ。

「むぅうう!私の夫と仲良く話して〜!」
「アタイの夫〜!」
「お前たちは何を考えている?」
『・・・俺は知らんぞ』

 イーグルは彼女らを見ながらレックスに話し掛けた。

「ラキの方は?」
「背中の打撲と軽い脳震盪だけで外傷は全くありませんでした。明日には復帰可能です」
「あいつにしては珍しいな。まあ、それでも負傷はしていないということか」
「それとこちらにも面会の希望者がいます。確か、アリスと言われる種族の少女が・・・」
「そういうことは早く言え、レックス。すぐに・・・」
「こちらはさっき、ドクターの許可を得てお通し済みです」
「・・・・・・エスタ、最近、レックスのメンテはしたのか?」
「したけど?」

 イーグルの質問に対して、エスタは“にぱ〜”と満面の笑顔で答える。右手を頭に当てながらため息を吐くイーグル。彼は治療室のドアに向かいながら、彼らに指示を伝えた。

「今日の任務は終了。他の隊員たちに伝えてくれ。レックス、彼女らの監視と送り迎えは頼んだぞ」
「了解」
「イーグルは?」
「部屋で少し休憩したら、明日の予定について考える」
「あまり考えすぎない方がいいよ」
「人のことが言えるのか?」

 少し不機嫌な言葉を残し、イーグルは治療室から立ち去る。

「ブレード、動けるようになったら領主様が直々にお礼をしに参られる。その時は無礼なことはしないようにな」
『・・・英雄でもないのに面倒だな』
「何を言う。お前は妻である私や部下の兵士たちを救ってくれただろう?」
「「妻である私〜!?」」
「あっ!」
『・・・』

 ニールのある発言に2人は彼女を睨み、ブレードは言葉を失う。

「やはり、お前も〜」
「アタイのものに〜」
「ち、違う!私は・・・えっと、その・・・」
「こいつは渡さない!」
「アタイのものだ!」
「こら、お前たち!不用意に触るな!」
「やれやれ・・・レックス、連れ出して」
「了解」

 カプセルに引っ付く2人を引き剥がそうと、彼女らを引っ張るニールを手助けしにレックスが向かう。難なく掴み捕られて連れて行かれるリオとケイ。ニールも自重して一緒に退室した。

「以外に複数の女性を引っかけるなんて、色男でもマネできないね」
『・・・ほっとけ』
(・・・彼女もか・・・だが、2人よりは・・・・・・)

 ブレードは目を瞑り、先刻のシャグとの戦いを思い返す。

(・・・飢えた炎のようだった・・・ただ喰らうのではなく・・・自身に合う存在だけを・・・)
11/08/26 19:59更新 / 『エックス』
戻る 次へ

TOP | 感想 | RSS | メール登録

まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.33