出会い2
天使が、いやアリスと名乗った少女の小鳥が囀るかのような綺麗な声に聞き惚れ一切の思考が出来ず彼女が何と言ったのかさえ判別がつかない、唯一彼女の名前だけが頭蓋骨の中に浸透し、シナプスの全てがアリスで染まっていく。夢見心地のなかで、僕の世界はただ眼前のアリスだけしか認識できなかった。アリスは優雅に一礼をし、顔を上げる。その時鼻腔を花の香りが擽る。甘く、甘く蜂蜜の様に全身を蕩かせるような、思考を麻痺させ、出来るのであれば胸をその麗しい香りで満たしたくなるような危険で蠱惑的、そんな麻薬の様に危険な幽香を目の前の華奢で野に一輪咲く百合の様に無垢な少女から漂っていることに得も言えぬ背徳感が僕の脊髄を駆け巡る。体中を駆け巡る悦楽に悶えていると気づけば、じっとアリスが此方を見つめている。その碧瞳の何と綺麗な事。きっとこの神が創り上げたこの少女にとってはありとあらゆる宝石であろうとガラス球とさして変わらないのだろうと益体もなくふと思う。等と再起動した脳みそが暴走し少女に関する思考を巡らす。アリスが目の前で手を振っている。
「あの、大丈夫ですか?…もしもし、もしもーし。聞こえていますか?…どうしよう。」
アリスの顔が困ったように微かに歪む。花が萎れるようなその姿を脳が理解したその瞬間暴走していたニューロンに冷水を叩き付けられたかのように完全に正常に戻る。同時に店内の時間も動き出したようだ。息を吐き、呼吸を整える音がする。…皆、アリスに目を奪われ無意識に息を止めていたのだろう。そんな周囲の様子を感じながら眼前の少女に応える。
「…ふぅ。うん、大丈夫。えっと、君がアリスちゃんでいいのかな?」
「はい。私は朝霧学の娘、朝霧アリスです。…務さんで合っていますよね?」
「うん、僕が朝霧務です。よろしく。それにしてもよく僕を見つけられたね。兄さんが何か言ってたのかな?」
兄が実家から離れて10年その間に僕は成長したし、喫茶店という場所で人を探すなら、入ってくる側と最初から中にいる側では条件が違う。その辺り何か兄が言い含めていたのかと思ったが、
「いえ、雰囲気がお父さんに似ていたので。…でも、お父さんいつも言ってました!務さんはすごく頼りになる人だって。」
少し前のめりにきらきらと憧れの人を見るかのように美しい目を星のように煌めかせる。その夢見るお姫様のような可憐さに又、脳が暴走しそうになるがそれを抑えながら、話を続ける。
「あはは。それは是非その期待に応えないといけないな。…あっ、ごめん。いつまでも立たせちゃったままで座って座って。色々話したいこともあるからさ。」
対面の席に座るよう勧めながら冷静さを取り戻す。ふと、疑問が一つでてくる。さっきのあらゆる思考を融かされる感覚あれはただ事ではない。確かにアリスは凄まじい美少女だ。しかし、あれは人に出来る事なのだろうか?気づけば周囲はまた元の混沌とした騒めきを取り戻していた。正面に座ったアリスを見る。もしかすれば、人を超えた何かなのではないかと思考が飛躍する。
「いやいや、馬鹿馬鹿しい。」
「?どうかしましたか?」
「あぁ、いや、何でもないよ。そうそう、この日差しの中歩いて来たんだろう。ここのミックスジュースは美味しいって評判なんだ。奢るよ。」
「いえいえ、そんな。これからお世話になるのに悪いです。」
「そんなこと言わないでよ、兄さんからアリスちゃんをよろしくって言われてるんだ。これくらいさせてくれないと僕が怒られちゃう。」
「で、でも…。」
悩むアリスを置いて呼び出しベルを押す。「はーい。」という声がしてすぐにウエイトレスがやってきた。ウエイトレスは一瞬アリスに見惚れながらもすぐに注文を聞いて来たのでミックスジュースとパンケーキを一つそして、すっかり冷え切ってしまった紅茶のお代わりを頼んだ。ウエイトレスを見送った後、僕は少し申し訳なさそうにでもそれ以上に楽しみにそわそわしているアリスを見つめ、
(やっぱり、いい子なんだろうな。この子は。)
兄からは小学五年生だと聞いている。礼儀正しく、優しくって少々大人びているところもあるが、ミックスジュースを待つ姿は年相応だ。そして、この子の目はとても真っすぐだ。大学生として割と怠惰な生活を送っている自分には些か眩しいまでに。…あんなちゃらんぽらんな兄の元でどうしてこんな子が育つのか生物とは、遺伝とは不思議なものだと思いながら、だからこそこの純粋無垢な少女のために頑張らなければいけないなと決意を固めていれば、
「お待たせしました。此方、特性ミックスジュースにふわふわパンケーキ、オレンジペコです。では、ごゆっくり。」
注文した品が運ばれてくる。キラキラと目を輝かせ、パンケーキに舌鼓を打つアリスに「美味しいかい。」と尋ねる。「すごく美味しいです!ありがとうございます!」と花が咲き誇るかのような笑みをみせてくれる。その様子に心が癒されるのを感じながら紅茶に口をつける。その時、アリスがパンケーキと僕の顔を交互に見る。一体どうしたのだろうかと尋ねる前にアリスは、
「あの、務さん。パンケーキ一口食べませんか?このパンケーキすごく美味しくって私だけで食べるのはもったいない気がして。」
照れたようにナイフで一口サイズに切ったパンケーキをフォークにさして此方に差し出してくる。そんないじらしさと健気さについ、ありがとうと言ってパンケーキを食べる。美味しい。滑らかでくどく無い生クリームと爽やかな甘さのミカン、この控えめな甘さをパンケーキの絶妙な塩味が引き立てている。その美味しさを楽しんでいると目の前のアリスの笑顔が目に入る。それは先ほどまでの満面の笑みではなく穏やかでリラックスした春の日だまりのような笑顔だった。…はて、これはもしかしなくても「アーン」というやつなのではないだろうか。ニコニコと見ているだけで心があったかくなりそうなアリスの笑顔の後ろに鬼のような形相の兄の顔が見える気がして(10年以上会ってないので朧気にしか覚えていない)背中に一筋冷や汗が流れる。
「アリスちゃん。このパンケーキのことは僕との二人だけの秘密だよ。特に兄さんには秘密にしておいてね。」
僕が急に真面目な顔でそんなことを言ったので、アリスは一瞬きょとんとした後、笑い始めた。上品に口元を抑えながらも心の底から笑っているいい笑顔だ。
「ふふっ。解りました。私たちだけの秘密です。だから…指きりでもしましょうか。」
「いいよ。じゃあ、指切りげんまん。」
と冗談半分で目の前に出された白魚のような小指に自分の小指を絡ませる。するとアリスは「嘘ついたら針千本飲ます」と囁くように、小さく歌いするりと小指を離す。そしてその小指を顔の前に持っていきクスリと笑った。何か悪戯を成功させたような心の底から楽しそうな笑み。だから僕も少し茶目っけを込めながら、
「アリスちゃん。これで僕たちは秘密を共有するお仲間だ。だから、僕に遠慮なんてする必要はないよ。今日初めてあったとはいえ、君の叔父さんなんだからさ。」
「え。いえ、でも。私遠慮なんてしていません。」
「そうかい。ならさ、僕のこと務さんって呼ぶのやめてくれないかな。どうもしっくりこないんだ。務って呼び捨てでも、かまわないからさ。」
笑顔でそう告げながら、僕はアリスの様子を見る。これは会う前から決めていたことだった。親の代わりをするのだ、変な気遣いをされて僕に言いたいことも言えないというのでは話にならない。だから、まずは呼び名から。等と思考しているとアリスは小首をかしげながら、「うーん」と数秒考えると妙案が思いついたのだろうパッと顔を綻ばせた。しかし、何故か頬が少し赤らんでいる。そして何かを決意した様子で話し始めた。
「決めました!あの、私、私務さんのことお兄ちゃんって呼んでいいですか?」
「えっ。…うん、いいよ。これからよろしく。アリスちゃん。」
アリスはほっとしたように息をつく。…それにしても、お兄ちゃんとは予想もしていなかった。どこかむず痒いような、うれしいような感覚を覚えながらその呼び名を頭の中で繰り返していると。
「よかった〜。私一人っ子でお兄ちゃんっていうのに憧れていたんです。これからよろしくお願いします。お兄ちゃん。」
とても楽しそうに、小さくお兄ちゃんと口ずさみ語りかけてくるその笑顔は、今日見せてくれたどの笑顔よりも可憐で本当に光り輝いているようだった。
それからはいろんなことを話した。好きな物や趣味、学校の出来事など他愛のない、日常のお話。気が付くとすっかり日が落ちてきて、夕暮れ時。いつの間にか殆どのお客さんは帰ったようで店内は静かになっていた。
「あはは。…おっと、ごめん。アリスちゃん。もうこんな時間だ。そろそろ帰ろうか。」
時計を見ればもう五時を回っている。ここからアリスちゃんの家までは30分ほどらしいので解散するにはいい時間だ。アリスも制服のポケットから携帯を取り出して、時間を確認すると残念そうに肩を落とすと、
「残念です。楽しい時間はすぐに経っちゃいますね。もっとお話ししたいことがあったんですけど。」
アリスは携帯をポケットに戻して席を立つ準備をし始める。僕も荷物を纏めて席を立つ。そして会計を済ませ幾分か軽くなった財布をカバンに戻して店を出る。すると、先に出ていたアリスがくるりと此方を向いて。
「今日はありがとうございました。お父さんとお母さんがまか、遠い所に行ってしまって、寂しくって不安でした。けどお兄ちゃんに出会えて本当に、本当にうれしいです。だから、その私のことアリスって呼び捨てで呼んでくれませんか。」
夕日を背にしながら、縋るように告げる。あぁ、僕は馬鹿だ。遠慮は無しだと言いながら遠慮して溝を作ったのは僕のほうだ。ゆえに、後悔とこの少女に寂しい思いをさせないという決意を込めて、
「わかった。これからよろしく。アリス。」
これが僕とアリスの出会いであり、僕にとって最大の転機になるのだったが、そのことを今は知らないのだった。
「あの、大丈夫ですか?…もしもし、もしもーし。聞こえていますか?…どうしよう。」
アリスの顔が困ったように微かに歪む。花が萎れるようなその姿を脳が理解したその瞬間暴走していたニューロンに冷水を叩き付けられたかのように完全に正常に戻る。同時に店内の時間も動き出したようだ。息を吐き、呼吸を整える音がする。…皆、アリスに目を奪われ無意識に息を止めていたのだろう。そんな周囲の様子を感じながら眼前の少女に応える。
「…ふぅ。うん、大丈夫。えっと、君がアリスちゃんでいいのかな?」
「はい。私は朝霧学の娘、朝霧アリスです。…務さんで合っていますよね?」
「うん、僕が朝霧務です。よろしく。それにしてもよく僕を見つけられたね。兄さんが何か言ってたのかな?」
兄が実家から離れて10年その間に僕は成長したし、喫茶店という場所で人を探すなら、入ってくる側と最初から中にいる側では条件が違う。その辺り何か兄が言い含めていたのかと思ったが、
「いえ、雰囲気がお父さんに似ていたので。…でも、お父さんいつも言ってました!務さんはすごく頼りになる人だって。」
少し前のめりにきらきらと憧れの人を見るかのように美しい目を星のように煌めかせる。その夢見るお姫様のような可憐さに又、脳が暴走しそうになるがそれを抑えながら、話を続ける。
「あはは。それは是非その期待に応えないといけないな。…あっ、ごめん。いつまでも立たせちゃったままで座って座って。色々話したいこともあるからさ。」
対面の席に座るよう勧めながら冷静さを取り戻す。ふと、疑問が一つでてくる。さっきのあらゆる思考を融かされる感覚あれはただ事ではない。確かにアリスは凄まじい美少女だ。しかし、あれは人に出来る事なのだろうか?気づけば周囲はまた元の混沌とした騒めきを取り戻していた。正面に座ったアリスを見る。もしかすれば、人を超えた何かなのではないかと思考が飛躍する。
「いやいや、馬鹿馬鹿しい。」
「?どうかしましたか?」
「あぁ、いや、何でもないよ。そうそう、この日差しの中歩いて来たんだろう。ここのミックスジュースは美味しいって評判なんだ。奢るよ。」
「いえいえ、そんな。これからお世話になるのに悪いです。」
「そんなこと言わないでよ、兄さんからアリスちゃんをよろしくって言われてるんだ。これくらいさせてくれないと僕が怒られちゃう。」
「で、でも…。」
悩むアリスを置いて呼び出しベルを押す。「はーい。」という声がしてすぐにウエイトレスがやってきた。ウエイトレスは一瞬アリスに見惚れながらもすぐに注文を聞いて来たのでミックスジュースとパンケーキを一つそして、すっかり冷え切ってしまった紅茶のお代わりを頼んだ。ウエイトレスを見送った後、僕は少し申し訳なさそうにでもそれ以上に楽しみにそわそわしているアリスを見つめ、
(やっぱり、いい子なんだろうな。この子は。)
兄からは小学五年生だと聞いている。礼儀正しく、優しくって少々大人びているところもあるが、ミックスジュースを待つ姿は年相応だ。そして、この子の目はとても真っすぐだ。大学生として割と怠惰な生活を送っている自分には些か眩しいまでに。…あんなちゃらんぽらんな兄の元でどうしてこんな子が育つのか生物とは、遺伝とは不思議なものだと思いながら、だからこそこの純粋無垢な少女のために頑張らなければいけないなと決意を固めていれば、
「お待たせしました。此方、特性ミックスジュースにふわふわパンケーキ、オレンジペコです。では、ごゆっくり。」
注文した品が運ばれてくる。キラキラと目を輝かせ、パンケーキに舌鼓を打つアリスに「美味しいかい。」と尋ねる。「すごく美味しいです!ありがとうございます!」と花が咲き誇るかのような笑みをみせてくれる。その様子に心が癒されるのを感じながら紅茶に口をつける。その時、アリスがパンケーキと僕の顔を交互に見る。一体どうしたのだろうかと尋ねる前にアリスは、
「あの、務さん。パンケーキ一口食べませんか?このパンケーキすごく美味しくって私だけで食べるのはもったいない気がして。」
照れたようにナイフで一口サイズに切ったパンケーキをフォークにさして此方に差し出してくる。そんないじらしさと健気さについ、ありがとうと言ってパンケーキを食べる。美味しい。滑らかでくどく無い生クリームと爽やかな甘さのミカン、この控えめな甘さをパンケーキの絶妙な塩味が引き立てている。その美味しさを楽しんでいると目の前のアリスの笑顔が目に入る。それは先ほどまでの満面の笑みではなく穏やかでリラックスした春の日だまりのような笑顔だった。…はて、これはもしかしなくても「アーン」というやつなのではないだろうか。ニコニコと見ているだけで心があったかくなりそうなアリスの笑顔の後ろに鬼のような形相の兄の顔が見える気がして(10年以上会ってないので朧気にしか覚えていない)背中に一筋冷や汗が流れる。
「アリスちゃん。このパンケーキのことは僕との二人だけの秘密だよ。特に兄さんには秘密にしておいてね。」
僕が急に真面目な顔でそんなことを言ったので、アリスは一瞬きょとんとした後、笑い始めた。上品に口元を抑えながらも心の底から笑っているいい笑顔だ。
「ふふっ。解りました。私たちだけの秘密です。だから…指きりでもしましょうか。」
「いいよ。じゃあ、指切りげんまん。」
と冗談半分で目の前に出された白魚のような小指に自分の小指を絡ませる。するとアリスは「嘘ついたら針千本飲ます」と囁くように、小さく歌いするりと小指を離す。そしてその小指を顔の前に持っていきクスリと笑った。何か悪戯を成功させたような心の底から楽しそうな笑み。だから僕も少し茶目っけを込めながら、
「アリスちゃん。これで僕たちは秘密を共有するお仲間だ。だから、僕に遠慮なんてする必要はないよ。今日初めてあったとはいえ、君の叔父さんなんだからさ。」
「え。いえ、でも。私遠慮なんてしていません。」
「そうかい。ならさ、僕のこと務さんって呼ぶのやめてくれないかな。どうもしっくりこないんだ。務って呼び捨てでも、かまわないからさ。」
笑顔でそう告げながら、僕はアリスの様子を見る。これは会う前から決めていたことだった。親の代わりをするのだ、変な気遣いをされて僕に言いたいことも言えないというのでは話にならない。だから、まずは呼び名から。等と思考しているとアリスは小首をかしげながら、「うーん」と数秒考えると妙案が思いついたのだろうパッと顔を綻ばせた。しかし、何故か頬が少し赤らんでいる。そして何かを決意した様子で話し始めた。
「決めました!あの、私、私務さんのことお兄ちゃんって呼んでいいですか?」
「えっ。…うん、いいよ。これからよろしく。アリスちゃん。」
アリスはほっとしたように息をつく。…それにしても、お兄ちゃんとは予想もしていなかった。どこかむず痒いような、うれしいような感覚を覚えながらその呼び名を頭の中で繰り返していると。
「よかった〜。私一人っ子でお兄ちゃんっていうのに憧れていたんです。これからよろしくお願いします。お兄ちゃん。」
とても楽しそうに、小さくお兄ちゃんと口ずさみ語りかけてくるその笑顔は、今日見せてくれたどの笑顔よりも可憐で本当に光り輝いているようだった。
それからはいろんなことを話した。好きな物や趣味、学校の出来事など他愛のない、日常のお話。気が付くとすっかり日が落ちてきて、夕暮れ時。いつの間にか殆どのお客さんは帰ったようで店内は静かになっていた。
「あはは。…おっと、ごめん。アリスちゃん。もうこんな時間だ。そろそろ帰ろうか。」
時計を見ればもう五時を回っている。ここからアリスちゃんの家までは30分ほどらしいので解散するにはいい時間だ。アリスも制服のポケットから携帯を取り出して、時間を確認すると残念そうに肩を落とすと、
「残念です。楽しい時間はすぐに経っちゃいますね。もっとお話ししたいことがあったんですけど。」
アリスは携帯をポケットに戻して席を立つ準備をし始める。僕も荷物を纏めて席を立つ。そして会計を済ませ幾分か軽くなった財布をカバンに戻して店を出る。すると、先に出ていたアリスがくるりと此方を向いて。
「今日はありがとうございました。お父さんとお母さんがまか、遠い所に行ってしまって、寂しくって不安でした。けどお兄ちゃんに出会えて本当に、本当にうれしいです。だから、その私のことアリスって呼び捨てで呼んでくれませんか。」
夕日を背にしながら、縋るように告げる。あぁ、僕は馬鹿だ。遠慮は無しだと言いながら遠慮して溝を作ったのは僕のほうだ。ゆえに、後悔とこの少女に寂しい思いをさせないという決意を込めて、
「わかった。これからよろしく。アリス。」
これが僕とアリスの出会いであり、僕にとって最大の転機になるのだったが、そのことを今は知らないのだった。
19/05/26 02:43更新 / エルドブルー
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