黙示録の娘たち
終焉のラッパの音色が彼方より響いた。ある者は痩せ細った大地に鍬を入れる手を止め、またある者は解れた衣服を繕い、ある者は小さな教会で神に祈りながらその音色を聴いた。空を震わせた不安の残響が小石を震わせながら地の底へ染み渡って行く。人々は大地の裂け目から黒い柱が湧き上がった事を知らない。その柱は空高くで広がり巨大な雲海になると、低い唸りを上げながらどこかへと飛び立った。
まず初めにその黒い雲海を見たのは一人の羊飼いの男だった。男は幼い頃に一度だけ見た蝗の群を思い出す。うねりながら大群で飛来し、一度食べ物を見付けると僅かな草木であっても食らい尽くす蝗の群。その群の先頭から外れた一欠片が、急降下を始めた。唸りを上げる六枚三対の翅と甲殻に覆われた四本二対の腕、強靭かつ大柄な体躯、アバドンだ。
その巨躯に見合わぬ機敏さで飛来した一匹のアバドンが、男の前に降り立った。振るわれた翅による風が薄く砂埃を立たせ、その風に乗って届いた甘い香気が男の思考を鈍らせる。男が逃げようとするよりも速く、アバドンは彼をその腕で捕らえた。抱きかかえられて地に足が着かない男の顔を深い胸の谷間に埋めさせ、アバドンは飛び立つ。黒い雲海と思っていたものの正体を知り、男は恐怖に慄いた。視界を埋め尽くしてなお余りあるアバドンとアバドンフォークの大群。男を抱えたアバドンが群の先頭に戻ると群の動きが変わった。無秩序に思えた大群の向きが統制され、ある方向へ向け飛来する。男は体と首を捻り、どうにか彼女たちが向かう先を見た。今はまだ豆粒程の大きさでしかないが、それは男の住む開拓村だった。
「暴れないで」
村が襲われる。勝てないと知りながら藻掻く男をアバドンは抱え直し、より強く深く胸の谷間へ顔を埋めさせた。風を受けていても分かる甘く重い濃厚な雌の匂いを嗅がされた男は、全身から力が抜け何も出来なくなる。匂いを嗅いだだけで怒張するペニスと、そのペニスから感じるアバドンの肢体の柔らかさと熱だけがやけにはっきりと分かった。
村は正に阿鼻叫喚の絵図だった。アバドン達は捕まえた男をその場で犯し、村から逃げようとする人々をアバドンフォークの群が言葉無い連携で包囲し、犯す。その矛先に男女の違いは無かった。皆が皆、アバドンとアバドンフォークに組み付かれ、貪られている。
村に建てられた小さな教会の扉を開けると、そこにもアバドンフォーク達がいた。彼女達の輪の中にはこの教会の修道女がいる。清貧を説いていた彼女の口からは甲高い嬌声が叫ばれ、主神への忠誠はアバドンクイーンへの忠誠に変わり、淫猥極まりない祝詞を捧げながらアバドンフォーク達に嬲られていた。
羊飼いの男を抱えたアバドンが教会に入ると、アバドンフォーク達の様子が変わった。修道女を責める手つきや舌の動きが苛烈さを増し、修道女はもはや言葉にならない獣のような喘ぎ声を出すことしかできない。
絶えぬ喘ぎ声と淫猥な水音の中、アバドンは腕の縛めを僅かに緩めた。溺れる者が空気を求めるように顔上げた男は、アバドンのフェロモンと立ち込めた淫気とが混ざり合った空気を胸いっぱいに吸い込むこととなった。蕩けた脳はアバドンと子をなすことしか考えられずにいる。
切り裂かれたズボンからペニスがまろび出た。先端は我慢汁で濡れ、無意識に動く腰がその粘液をアバドンの腹に擦り付ける。アバドンは男が自分の雄になった事を確信すると、二対目の腕で彼の腰を抑えた。興奮に震えるペニスの先端が膣口に当てられ、一息に迎え入れられる。柔らかな肢体と裏腹にアバドンの膣はきつく締まり、肉厚のひだの一つ一つがペニスを扱き、精液を吐き出させた。挿入のみで絶頂を迎えた男は、抱き上げられて宙に浮く脚をピンと伸ばして人外の快楽を受け入れる事しか出来なかった。
「たくさん出せて偉い。けど、まだまだ足りない」
穏やかにも見える細められた瞳で男を見つめながら、アバドンは男の腰に自らの腰を打ち付け始めた。がっしりと抱き込み、力任せに腰をぶつける苛烈な交わり。ドチュ、バチュと重い肉がぶつかる湿った音が響いた。
「我慢しなくても良いから。もっともっと子種を注ぎ込んで」
きつく締まった膣をペニスがゴリゴリと掻き分けながら出入りすると、男は腰が砕けるような快楽に気を失いそうになった。その度にアバドンは腰を殊更に強く打ち付け、気を失う事も出来ない快楽を与える。
「い、ぐ……射精るぅ!」
「んっ、たくさん出して」
抽送はより大きく速くなり、締まりの強まった膣がペニスを苛烈に責める。アバドンが一際強く腰をぶつけると、子宮口を叩く鈴口から精液が迸った。その熱い奔流を逃すまいとアバドンは男の腰を更に強く抱き締める。そして、ペニスから子種を一滴たりとも逃さないとばかりに、アバドンの膣が別の生き物のように蠕動する。その搾り取るような蠕動に男は三度目の絶頂を迎えた。
「また、たくさん出たね♥もっともっと欲しい♥」
声色だけを聞けば穏やかだが、苛烈極まりない搾精は続いた。腰を打ち付け、精液を吐き出させる。子宮が満たされて結合部から精液が溢れ落ちれば、その分を補うとばかりに更に精液を吐き出させる。無尽蔵の繁殖欲と愛欲からなるその交わりは、終わる事がない。
教会の窓ガラスが割られ、そこから一匹のアバドンと彼女に従うアバドンフォーク達が飛び立った。ちらと見えたその横顔から、あの修道女がアバドンに変じたと分かる。清貧故の痩せた体はむっちりとした肉付きに変わり、一秒でも早く自分だけの雄を得たいと欲望でギラつく瞳を走らせた。主神の教えという強い箍がある聖職者こそがもっとも恐ろしい魔物になるのだ。
割れた窓から大きく重々しい羽音が聞こえた。不幸にも男を得られなかったアバドンとアバドンフォークたちが一斉に飛び立ったのだ。一つの村を飲み込み、更に大きくなった飛蝗の大群が向かう先を知る者はいない。しかし、この大群はいずれ街を飲み込み、国を食らい尽くしていくのだろう。産み落とされた黙示録の娘たちで地上が満ちるその時まで。
まず初めにその黒い雲海を見たのは一人の羊飼いの男だった。男は幼い頃に一度だけ見た蝗の群を思い出す。うねりながら大群で飛来し、一度食べ物を見付けると僅かな草木であっても食らい尽くす蝗の群。その群の先頭から外れた一欠片が、急降下を始めた。唸りを上げる六枚三対の翅と甲殻に覆われた四本二対の腕、強靭かつ大柄な体躯、アバドンだ。
その巨躯に見合わぬ機敏さで飛来した一匹のアバドンが、男の前に降り立った。振るわれた翅による風が薄く砂埃を立たせ、その風に乗って届いた甘い香気が男の思考を鈍らせる。男が逃げようとするよりも速く、アバドンは彼をその腕で捕らえた。抱きかかえられて地に足が着かない男の顔を深い胸の谷間に埋めさせ、アバドンは飛び立つ。黒い雲海と思っていたものの正体を知り、男は恐怖に慄いた。視界を埋め尽くしてなお余りあるアバドンとアバドンフォークの大群。男を抱えたアバドンが群の先頭に戻ると群の動きが変わった。無秩序に思えた大群の向きが統制され、ある方向へ向け飛来する。男は体と首を捻り、どうにか彼女たちが向かう先を見た。今はまだ豆粒程の大きさでしかないが、それは男の住む開拓村だった。
「暴れないで」
村が襲われる。勝てないと知りながら藻掻く男をアバドンは抱え直し、より強く深く胸の谷間へ顔を埋めさせた。風を受けていても分かる甘く重い濃厚な雌の匂いを嗅がされた男は、全身から力が抜け何も出来なくなる。匂いを嗅いだだけで怒張するペニスと、そのペニスから感じるアバドンの肢体の柔らかさと熱だけがやけにはっきりと分かった。
村は正に阿鼻叫喚の絵図だった。アバドン達は捕まえた男をその場で犯し、村から逃げようとする人々をアバドンフォークの群が言葉無い連携で包囲し、犯す。その矛先に男女の違いは無かった。皆が皆、アバドンとアバドンフォークに組み付かれ、貪られている。
村に建てられた小さな教会の扉を開けると、そこにもアバドンフォーク達がいた。彼女達の輪の中にはこの教会の修道女がいる。清貧を説いていた彼女の口からは甲高い嬌声が叫ばれ、主神への忠誠はアバドンクイーンへの忠誠に変わり、淫猥極まりない祝詞を捧げながらアバドンフォーク達に嬲られていた。
羊飼いの男を抱えたアバドンが教会に入ると、アバドンフォーク達の様子が変わった。修道女を責める手つきや舌の動きが苛烈さを増し、修道女はもはや言葉にならない獣のような喘ぎ声を出すことしかできない。
絶えぬ喘ぎ声と淫猥な水音の中、アバドンは腕の縛めを僅かに緩めた。溺れる者が空気を求めるように顔上げた男は、アバドンのフェロモンと立ち込めた淫気とが混ざり合った空気を胸いっぱいに吸い込むこととなった。蕩けた脳はアバドンと子をなすことしか考えられずにいる。
切り裂かれたズボンからペニスがまろび出た。先端は我慢汁で濡れ、無意識に動く腰がその粘液をアバドンの腹に擦り付ける。アバドンは男が自分の雄になった事を確信すると、二対目の腕で彼の腰を抑えた。興奮に震えるペニスの先端が膣口に当てられ、一息に迎え入れられる。柔らかな肢体と裏腹にアバドンの膣はきつく締まり、肉厚のひだの一つ一つがペニスを扱き、精液を吐き出させた。挿入のみで絶頂を迎えた男は、抱き上げられて宙に浮く脚をピンと伸ばして人外の快楽を受け入れる事しか出来なかった。
「たくさん出せて偉い。けど、まだまだ足りない」
穏やかにも見える細められた瞳で男を見つめながら、アバドンは男の腰に自らの腰を打ち付け始めた。がっしりと抱き込み、力任せに腰をぶつける苛烈な交わり。ドチュ、バチュと重い肉がぶつかる湿った音が響いた。
「我慢しなくても良いから。もっともっと子種を注ぎ込んで」
きつく締まった膣をペニスがゴリゴリと掻き分けながら出入りすると、男は腰が砕けるような快楽に気を失いそうになった。その度にアバドンは腰を殊更に強く打ち付け、気を失う事も出来ない快楽を与える。
「い、ぐ……射精るぅ!」
「んっ、たくさん出して」
抽送はより大きく速くなり、締まりの強まった膣がペニスを苛烈に責める。アバドンが一際強く腰をぶつけると、子宮口を叩く鈴口から精液が迸った。その熱い奔流を逃すまいとアバドンは男の腰を更に強く抱き締める。そして、ペニスから子種を一滴たりとも逃さないとばかりに、アバドンの膣が別の生き物のように蠕動する。その搾り取るような蠕動に男は三度目の絶頂を迎えた。
「また、たくさん出たね♥もっともっと欲しい♥」
声色だけを聞けば穏やかだが、苛烈極まりない搾精は続いた。腰を打ち付け、精液を吐き出させる。子宮が満たされて結合部から精液が溢れ落ちれば、その分を補うとばかりに更に精液を吐き出させる。無尽蔵の繁殖欲と愛欲からなるその交わりは、終わる事がない。
教会の窓ガラスが割られ、そこから一匹のアバドンと彼女に従うアバドンフォーク達が飛び立った。ちらと見えたその横顔から、あの修道女がアバドンに変じたと分かる。清貧故の痩せた体はむっちりとした肉付きに変わり、一秒でも早く自分だけの雄を得たいと欲望でギラつく瞳を走らせた。主神の教えという強い箍がある聖職者こそがもっとも恐ろしい魔物になるのだ。
割れた窓から大きく重々しい羽音が聞こえた。不幸にも男を得られなかったアバドンとアバドンフォークたちが一斉に飛び立ったのだ。一つの村を飲み込み、更に大きくなった飛蝗の大群が向かう先を知る者はいない。しかし、この大群はいずれ街を飲み込み、国を食らい尽くしていくのだろう。産み落とされた黙示録の娘たちで地上が満ちるその時まで。
25/12/08 20:19更新 / 何野某