連載小説
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04 宿屋店主の旅立ちwith唐突
ゾーネたちが俺の家に住み始めた翌日……
結局、昨日はお客さんを呼んでの商売をしている余裕はなかったんだ


なんと言っても、家具の設置やスカニの店の準備で忙しかったからね……
まぁ、今日からは普通に宿屋業務に戻れそうだし…


そう思いながら、ロビーで干し肉をかじっての至福のひとときを過ごしていた時だった……



バンッ!!


急に玄関の扉が力強く開けられ、外からとある人物が入ってきたんだ


メ「お邪魔するわ……デメトリオ、さっそくで悪いんだけど…ついて来てくれるかしら?」


デ「メリィっ!?ついてきてって…何処に……?」



メリィといえば、モンスターラグーンって集団のリーダー……って最近しったばっかりだけど……
そ、そんなメリィがいったい俺にどんな用事が……?


ま、まさか……俺が集会に参加していたってことが、バレたのかっ…!?
それは非常にまずい……だ、だけど……それなら、もっと早くに来てもいいはず……だよな?


と、とにかく、変な行動はしない方がいいな……
ここは素直に従おう……うん


メ「……城よ…ところで、あなた…サリィと最後にあったのはいつ?」

デ「えっ?それは……5日ぐらい前だったけど……」

メ「……っ(ぎりっ……)とにかく、急ぐわよ……捕まりなさい、すぐに城に向かって飛ぶわ」



し、城って……
いよいよもって、バレたって可能性が浮上してきてしまったぞ……

しかも、今日のメリィはいつも以上に目が冷たいし……
いや、いつも俺をものすごい冷ややかな目で見ているけれどさ……

でも、そんなメリィもサリィと一緒にいるときは穏やかで優しい目をしてるんだけどね?




そして、時は20分後……俺はフェルス城の謁見の間の前で、謁見の準備をしていたのだった……


デ「(待て待て…どうして俺が女王様と謁見することになってるんだ…!?メリィも一緒だけど……あまりに急なことに、俺は動揺を隠せない……)」


そういえば、王女様はリリム……見ただけで、ありとあらゆる男が魅了され、我を忘れてしまうほどの美貌だとかどうとか聞いたことがある……
今回の謁見で、俺が粗相をしてしまわないように、宿の秘伝の薬を飲んでおかないと……


この薬を飲めば、神の加護を受けた勇者の如き精神力を誰でも得ることができる……らしい、なんとも都合のいい薬……
この薬を飲んでおけば、粗相をしてしまうことはない……はず……



兵「お待たせした…それでは、フェルス王女との謁見を……ついて来てください」



兵士のサキュバスの人に連れられ、物凄く大きな扉の向こう側に移動すると、そこは物凄く広い部屋だった
そして、その部屋の真ん中に、リリムの女性が座って、こちらを見ている…

ヤバイな…あの微笑みは……男だったら一撃というのは、間違いないな…
いやぁ、お薬飲んでてよかった……



フ「ようこそ、いらっしゃいました。さて、デメトリオ…あなたに質問があります、昨日……サリィとは会いましたか?」


王女様も、この質問をするのか?
会ってはないけれども、俺がサリィと昨日、会ってるかどうかが一体、何に関係するんだ…?


デ「いえっ……会っておりません」


フ「そうですか……これは、我が国民の命が危険に晒されているかも知れない、重要な問題です。メリィ、デメトリオに事の説明はいたしましたか?」


メ「いえ……まだ……」


フ「それでは、まずはその部分から話をするべきでしょうね。メリィ、お願いします」




メリィはフェルス様にそう言われると、俺の方を向いて、話を始めたんだ


メ「あれは……昨日のことだった……」



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メ「遅いっ……サリィ、いつもよりも物凄く帰ってくるのが……」


私は、そろそろ宅配業が終わる時間になっても、サリィが帰ってこないことに、不安を感じていた

いつもは、遅くても宅配に出て6時間後には絶対に帰ってきていたのに……


デメトリオのところに行っている……にしても、遅すぎる…
サリィ曰く、デメトリオはサリィに対して、まったくもって鈍感らしいのよね

でも、お姉ちゃんとしてはサリィには幸せになってもらいたいし……
デメトリオの事、なんだかんだで私は嫌いではないし……
デメトリオにはなぜか、避けられてるけど…
お似合いだと…思うんだけれどねぇ……



メ「少し、探してみようか……えっと、サリィの最後の配達は……少し遠いわね……でも、行き慣れてる峠にあるカフェ…か……」


私は、そのカフェまで飛んでいく……


メ「すみません、サリィはここにきましたか?」


店員「えっ?サリィちゃんですか?来ましたよ?あれは……今から4時間ぐらい前かなぁ……」


メ「四時間も前に……?」


なんだろう、凄い嫌な予感がする……


それから、どれだけの時間がたっただろう……
私はすっかり暗くなったフェルス興国内で、途方にくれていた

いくら探しても、サリィは見つからない……
もしかしたら、さらわれたのかも……反魔物主義の危険な思想の持ち主に、ひどい目に合わされているのかも……

そう思うと、とてもじっとしてはいられなかった……



それからさらにしばらくして…とある路地裏に差し掛かった時だった……


??「いやぁ、稼いだ稼いだ……まさか、親魔物領の中で反魔物思想勢力の売人が、ソロ活動してるなんて、誰も夢にも思わねぇだろうな…へっへっへ…今日きた、メガロス帝国って国の研究者の話によると、あの素材を使えば、未来的な発明ができるとかなんとか……しっかし、あの国の連中も白昼堂々、誘拐するなんて……勇気あるねぇ…」



………誘拐?あの男……危険ね……
でも、もう少しだけ泳がせてみよう……


私はそう判断すると、さらに情報を漏らさないか、彼の後をつけた


売人「しかし……あの四人……ハーピーの少女を睡眠薬で眠らせてから拉致…あの手際は……そんなに手馴れてはなかったみたいだが……あのハーピーの少女をどうするのかねぇ……四人で肉便器にでもしてしまうのかね?まぁ、俺にゃあ関係ねぇ話だけどな……っと、俺は早々にあのハーピーの少女が持っていたであろうペンダントを高値で売っぱらって、この国からおさらばしねぇと……」



あのペンダントは……サリィがデメトリオにプレゼントしてもらったって喜んでた、真鍮の……間違いない、あの男……なにか知ってるっ!!


私はそれに気づくや否や、ものすごい速度で飛翔した
そのまま、あの売人を後ろから押し倒す


売人「うおぁっ!?だ、誰だいっ!?」


メ「動かないで……」


売人「っ!?へ、へへっ……どうしたんですかい?あっしになにか、御用でも……?ちょっと乱暴すぎやしないですかねぇ?」


メ「正直に話しなさい……さっき言っていた、ハーピーの少女というのは……誰の事かしら?」


売人「へっ…?嫌だなぁ…あっしが知っている訳がないじゃないですか……ハーピーの少女?いや、わかりませんなぁ……答えましたよ?そろそろあっしを開放してくれねぇと……」



この売人の男……あくまでしらをきるつもりらしい……

私はサリィの安否を考えると……この男との押し問答に付き合う余裕はなかったのだった

ここは……少し強引にいかせてもらいましょうか…


メ「そのペンダント……どこで手に入れたのかしら?」


売人「こ、これは……そうっ!!闇市ででしてね……珍しい真鍮製のペンダントだったので、ついつい即買してしまったのですよ……いやぁ、いい買い物をしたなぁ……」


メ「そう……あくまでとぼけるのね……ところで、メガロス帝国って何かしら…?」


売人「っ!?………あんた、聞いてたのか?」


メガロス帝国の単語を出した途端に、目の前の男の反応がガラリと変わった…
メガロス帝国……聞いたことないけれど、一体なんなのかしら…?



売人「ちぃっ!!」


メ「きゃっ!?しまっ……」


油断した……一瞬の隙を突かれて、売人の男は私を突き飛ばし、路地裏を走り出す

私も慌てて後を追ったけれど……こんな狭い路地じゃ、いつもの速度が出せない……!!



売人「ちぃっ……逃げ切れるか……?うおっ!?猫…っ!?邪魔だっ!!」


猫「ふにゃっ!?」


売人「へっ!!いきなり出てくるんじゃねぇっ!!猫如きがっ!!」

……っ!!あの男っ!!猫を思いっきり蹴り飛ばした……!!
動物に対してのあの最低な行為……許せないっ!!


……サリィのことは心配…だけど、目の前でひどい目にあった猫を見捨てるなんて真似は……私にはできなかった

あの売人は……この後、モンスターラグーンの情報網を使ってでも、絶対に捕まえてやる…っ!!


メ「大丈夫……?」


猫「………あの男……女王様に報告して、呪いをかけてもらうにゃ……ふーっ……猫を邪険に扱うとどうなるか……思い知らせてやる……」



………あぁ、そういうことね……
ケット・シーを呼んで、あの男に制裁を加えてもらうと……
でも、それはメガロス帝国とやらの情報を教えてもらってからじゃないと困る……


メ「ねぇ、お願いがあるのだけれど……」

猫「んにゃ?何?」


私は、目の前の猫に事情を説明する……


猫「わかった…じゃあ、メイリィ様に頼んで、明日の朝…8時頃にお城にあの男を連れて行くにゃ……」



さてと……お次は、王女様に謁見して、明日…サリィのことについて、相談させてもらわないと……



時間は深夜2時……こんな時間に謁見なんて、非常識だけれど……
女王様なら、きっとわかってくれる




そうして、私は城にて、フェルス様に謁見を申し出た
フェルス様は嫌な顔一つせず、謁見に応じてくれたらしく、物凄くすんなりと謁見をすることができた


フ「すみませんね?このような格好で謁見してしまって……さっきまで寝ていたから……」


メ「いえ、私の方こそ、すみません……このような時間に…ですが、急を要する事で……私の妹のサリィが、昨晩から帰ってこないのです…それだけなら、王女様にお手を煩わせることはないのですが……誘拐された可能性があって…他の国の者に……」


フ「誘拐とは…穏やかではないですね…それも、他の国の者に……?それは国際的な問題も絡んでいます…詳しく説明をお願いできますか?」



私は王女様に、今まで聞いたことを包み隠さずに報告した
王女さまはそれを、真剣な表情で聞いている……



フ「そうですか……それは確かに、心配ですね…デメトリオにも協力してもらって、サリィを無事に助け出す必要があります。私の方からも、明日の件について、メイリィに連絡をしてみましょう」

メ「よろしくお願いします……」




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メ「ここまでが、事の顛末よ…わかったかしら?」


デ「はぁ…なんとなく…ですけれど……」


……でも、これって……なんで俺呼ばれたんだ!?
話の流れから、俺が呼ばれる理由がわからないんだけど…!?


デ「で、でも……これって、どうして俺が呼ばれたんですか?」


フ「おかしな事をいいます……デメトリオしか適任、いないではないですか。あなたももう一歩踏み込んで、お姫様を助ける王子様のような事をすれば、あとは流れるようにゴールインですよ?うふふ……若いですわねぇ……私も、あの人と一緒になった時なんて……」



………?
いや、本気で訳がわからん……
俺はただの宿屋店主だぞ……?さっきの話だと、誘拐事件が起こってるってことになるじゃないか!!
それだったら、宿屋店主じゃなくて、自警団の担当だろ!?
仕事違いもいいとこだ!!



デ「あのぉ……これって、自警団の方々の方が、適任だと思うんです……私のような宿屋店主には荷が重いのですが……」


フ「(噂に聞いた通りの鈍感ぶりですねぇ……デメトリオとサリィのカップルはもう確定だろうって、国内でももっぱらの噂ですのに……ここは、少し強引ですが、デメトリオには勇気をもって、一歩踏み込んでもらうのが、いいかもしれませんね…いらぬお節介かもしれませんが、聞くところによると、サリィはかなり奥手だとか……恋心を抱いたまま、ひたすら耐え続けるなんて、可愛そうです……ここはあえて、王女たる私が汚れ役を引き受けましょう……)」



フ「そうはいいますが………私はやはり、デメトリオ…あなたが適任だと思います、なので……今日、この後に行われる尋問が終わり次第、準備をしてサリィ救出の任についてください」


デ「そ、そんなぁっ!!」


王女様の命令とはいえ……ただの宿屋店主に旅にでろっていうのかっ!?
そんなの、横暴だと思うんだけど…………
で、でも……ここで逆らったら反逆罪とか適用されて、牢屋行きとか……絶対にないって言えないからな……



俺は必死に考えた結果……諦めることにしたのだった…



デ「わ、わかりました……」

俺がそうやって返事をした時だった……


急に扉が開いて、兵士のリザードマンがフェルス王女のところに駆け寄ったんだ
急用…かな?


リ「王女様……メイリィ=ジェネッタ様がお見えになりました……どうやら、無事にあの売人を捉えたようです」


フ「わかりました、こちらも話がつきましたので、この部屋にお呼び下さい」


リ「それでは、直ちに準備いたします……メイリィ様、こちらへ……」



リザードマンに連れられ、一匹の猫が、二足歩行でこちらに歩いてきたんだ
……んっ!?二足歩行っ!?

俺は思わず、目を疑ったね……だって、猫が二足歩行だぜ?


メイ「ふふん……まぁまぁ、いい城ではないか……私の城には少し劣るが……にゃんてなっ!!やだにゃあ……冗談、冗談だよ……私とフェルスの仲じゃないかっ!!そう、むっとした顔はしてはいけないよ?」

フ「ふぅっ……相変わらずですね…メイリィ」


メイ「昨晩、私の可愛い国民を、あろう事か蹴っ飛ばした男を捕まえてきたにゃ、じゃあ早速……尋問行っちゃうっ?」


フ「お願いします……」



フェルス様がそう言うと、奥から荒縄でぐるぐる巻きにされた、目つきの悪い男が一人、運ばれてきたんだ
これが、先程から話題に出てきていた、売人ってやつで間違いないんだろうけど……


売人「王家の方々が、あっしのような一商人になんのようですかねぇ?聞いた話によると、この国では拷問は禁止されているとか……言っておきますが、あっしは知らないことは話しませんからね?それに、拘束は国際法でも厳しい処置があるんですぜ?あっしを拘束するなら、それなりの施設を通してもらいますからね?」


フ「そうですわね……存じております……」


売人「うっ!?(う、美しい……はっ!?いかんいかん……色香にほだされていては……裏の世界の売人としては失格……)」


フ「要件があるのは、私ではありません………彼女ですわ」


メ「………おはよう………また……会ったなぁ…?あの時は私から逃げてくれて……おかげで女王様の前で尋問できるから……感謝……しないと……ねぇ?」


売人「っ!?あ、あれぇ?どなたでしたっけ?あっし、記憶にございませんですが……こう見えて、お客様の顔は覚えておりますが……あなたはあっしのお得意様では無い様子……人違いではございやせん?」



メ「…………メイリィ様……お願いします」


メイ「お主……それでは、昨晩は何をしておった?言ってみよ?」


売人「昨晩?昨晩は……そうそう、取引がありましてね?ずっと荷馬車の中にいましたよ?」


メイ「……っと、申しておるが……どうにゃ?」


猫「意義ありにゃっ!!この男は、昨日と同じ靴をしているにゃ……昨晩、私が蹴られたとき、決死の思いで毛をむしりなげたのにゃ……あの男の靴には猫の毛が入っているはずにゃ……」


メイ「そうだな……あらかじめ、あの男の靴には誰も一切手を付けぬように指示しておる……猫に手を出すような輩に近づく他の猫も、おるまい……猫の毛が出たとしたら……黒であるな」


売人「っ……ちっ……バレちまってんならしょうがねぇ……そうだよ、あっしが昨晩、あの猫を蹴っ飛ばした売人ですよ、あそこにいる鳥女だって知ってる」


メ「鳥っ……女………?」


売人「そうだよ、鳥女……てめえら魔物なんざ、人間は恐れてなんかいねぇんだよ!!こっちには勇者がいるんだからなぁっ!!それに、俺様はとある反魔物国家の中でも貴重な財源として重宝されている超エリートなわけ、わかる?俺はいくらでも金を儲ける事ができる……そんな俺様を傷つけたら、国の方が黙っちゃいねぇぞっ!!そうだ、だったら昨日蹴っ飛ばした猫、俺様が買ってやろうか?生皮剥いで、剥製にでもしたら、どこかのバカが高い値段で買ってくれるだろうさ!!猫の毛皮は肌触りが人間のセレブに大人気ってな、人間様の役に立てるんだから、本望だろ?感謝しろよ?猫風情が……」


メイ「(ぶちっ……)貴様……我が眷属を馬鹿にしたな……?いい覚悟だ……貴様を更生させてやる……更生期間は……貴様の人生全てだっ!!」


そう言うと、メイリィさんの目が緑色に光り始め、それを見た売人の男が、一瞬だけ身震いをした……
だけど、それだけだった……
さっきの行為に……一体どんな意味合いがあったんだろうか…?



売人「………ん?なんともない……へっ…脅かしやがって……」


メイ「うむ、準備は整った……では、執行者よ……準備は良いか?」


執行者「はい……肉球の準備は万端です……」


メイ「よし……やれ」


売人「お、おい……てめえら、何をするつもりだ?あぁっ!?」


執行者「……肉球……ぷに…ぷに…」



………なんというか、俺の目の前では物凄くシュールな光景が繰り広げられていたんだ
大の男に、黒いフード付きの服を来た黒猫が近づき、顔に軽く肉球を押し付けている……
ただ、あれだけの事をされているだけ……

だが、俺はあの売人の様子が少し変だって気が付いてしまったんだよ!!


売人「……っ!?ふおぉぉっ!?ぷ、ぷにぷにしてやがる……なんだこの感覚はっ!?なんでこんな……」


執行者「………にゃーっ♥」


売人「ぐはあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!」


デ「ど、どうしたんですかっ!?あの人はっ!?」


メイ「ふっ……あの執行者は我が国でも凄い実力の持ち主…彼女の力と我の魔法の力をもってすれば、あの程度……容易いものよ」



……っ!!なにか……危険な魔法でも使ったのだろうか…!?
あの売人はなんだか、とても体をもじもじさせながら叫び声をあげ続けている……
なんだか、見ていてかわいそうになってきたよ、俺は……


執行者「……ぷにぷに……(ぺろっ♥)」


売人「ぐっ……がっ……」


執行者「これで……あなたも……こちら側です……ぷにぷに……さわさわ…」


売人「ぎゃああああっ!!!!心が浄化されていくぅぅぅぅぅぅぅっ!!優しくなるっ!!優しくなってしまうっ!!あっ………」




売人の表情が……天に召された……だと……!?



メイ「……ふむ……お主……、これ、そこの売人っ!!」


売人「えっ……えへへへへっ……うふひひひひひっ……」


あ、あの目は……まるで廃人のように濁ってやがる……
お、恐ろしい…下手な拷問より…恐ろしさを感じるぜ……


なんて思いながら見守っていると、だんだんと彼の目に光が戻ってきた
彼には、さっきまでの鋭い眼光はなく……どこか優しさまで感じるような目になっていたから、俺は驚いたね


売人「………私は……今まで、最低な事を……猫は至高…猫は愛でるものっ!あぁ、こうしてはいられない、今すぐ市場の猫グッズを買い占めに行かなくては行けません……私は……反魔物勢力を脱退します!魔物最高っ!!そしてなにより、猫ちゃん最高っ!!いやっふぅぅぅぅっ!!」


メイ「うむ、これでまた一人……猫の虜であるな、あとは聞くことを聞いたあと、我の国に連れて行って、我らの玩具だ」

売人「喜んで……猫の国とやらが本当にあるのなら、私はそこで今までしてきたことの罪を償いたいぐらいです……あぁ、この心が澄み渡った気持ちは、まるでそう……私がビジネスで女性に騙されてから、闇商人になる前に戻ったかのようです……」




……あの売人、話し方まで変わってる気がするのは…俺の気のせいだろうか?
っと、そんなことよりだ……
メリィはあの売人の男に聞きたいことがある…っていってたから、これから尋問が始まるんだよな…?

………聞き逃さないようにしないと……



メ「じゃあ……聞きたいことは三つ……一つは、サリィのこと…もう一つは、メガロス帝国の事、最後はこの国に来た理由……この三つを教えてもらうわ」


売人「わかりました……まず、一つ目ですが……そもそも、サリィと言うのはどなたでしょうか?」


メ「……あなたが昨日、見たハーピーの娘のことよ」


売人「あぁ……彼女を見かけたのは……メガロス帝国の方々と、物品交換をし終わったすぐ後のことでした。タイミング的に、私との交渉時には彼女は来ていなかったみたいですが、その後…メガロス帝国から来た四人に拉致されたのを目視しました。この真鍮のペンダントはその時に彼女が落としたものです」



……あれ?あのペンダント…見覚えが……うーん
思い出せないってことは、気のせいだな



フ「交渉というのは、どういったものだったのでしょうか?」


売人「はい、なんでも国の発明の素材として、魔力を抑制する鉱石が必要とか……今のご時世、このような鉱石は希少で、高値で売れるので……もう、この鉱石は出回っていないのではないでしょうか?もしあったとしても、魔物娘たちの手に堕ちれば、即座に破棄されるような代物ですし……まぁ、売ったといえど数ミリgほど……あの量では、兵器も何も作ることなんて出来やしませんが……」


メ「ということは、サリィがさらわれたのは知っているが、なぜさらわれたのかはわからない…そういうこと?」


売人「はい…そういうことになりますね。次に、メガロス帝国についてなのですが……実は、私は詳しい事を知らないのです……メガロス帝国なんて国、私だってあちらの方からコンタクトを取ってこなければ、知りませんでしたし」


フ「私も……メガロス帝国と言うのは聞いたことがありません……」


売人「考えられるのは、物凄く小国であるということと……最先端の技術が国力として備わっている……ということでしょうか。あのような空飛ぶ鉄の塊は、始めて見ますから…」



メ「国の概要については一切不明……か…こればかりは、旅をしながら情報を集めるしかない…かぁ…面白くないわね…」


売人「最後に、この国に来たわけ…ですが……実は、これはメガロス帝国の方々から国の指名があったのです。それに従って、こっそりと国の中に侵入して、商売をおこなったわけです」



………?それって、メガロス帝国はフェルス興国の事を知ってるってことになるよな……
でも、フェルス王女はメガロス帝国なんて国、聞いたこともない……
これって、どういうことなんだろうか……?


ん?まぁ……ただの宿屋店主の俺は何も考えずに、状況に流されるのを待つのみなんだけどね!!


売人「……とにかく、これで私の知っている情報は全てです……もし、メガロス帝国を探すのなら……あの鉄の塊は西に飛んで行きましたから、西の方を探すのがいいかと思います」






こうして、短時間で尋問は終わり……あの売人はメイリィと数匹の猫に目隠しや拘束をされて、どこかに連れて行かれたのだった……




俺はこのあと、とりあえず旅に出るのは明日以降だろうなんて気楽に構えながら一旦、メリィと別れ、フェルス城をあとにして宿屋に帰ってきたんだ



デ「……いやはや、とんでもないことに巻き込まれたなぁ……明日から、しばらくこの愛しの宿屋ともおさらばかぁ……うぅっ……なんか、涙出てきたぜ」



ゾ「何が、おさらばなのじゃ?」


デ「あぁ、ゾーネ……いや、ちょっと旅に出ることになってしまって……行きたくはないんだけど、仕方ないね…王女命令だからね……ってことで、しばらくこの宿屋を任せたい……いいか…絶対に壊すなよっ!!それと、変な改築や改造もしないで……このままにしておいてくれっ!!」



ゾ「……宿屋も一緒に連れて行けば良いではないか……何を言っておるのじゃ?まったく……この儂がこんなこともあろうかと、この宿屋を改造して、動かせるようにしておいて良かったわい……」


えっ?なにそれ…聞いてないんだけどっ!?


デ「えっ………聞いてないんだが……その改造……」


ス「そりゃあそうだ!!だって……」


ス&ゾ「「言ってないからな(のう)!!」」



こ、こいつらぁ……
なんて自由な発明家連中だ………


と、その時、宿屋の扉をノックする音が聞こえたんだ…

誰だろうか……?時間的には、お客様の可能性もある……けれども……
そう思い、扉の方を見ると、そこにはセムちゃんと、いつぞやのメイドさんが立っていたんだ

メイドさんの手には、お風呂セットが抱えられていたわけだけど……
はっ…!?まさか、あのポスターの宣伝効果が……もう!?
……ん?あのポスター、まだ張り出してなかったような……


セ「………デメさん……お風呂…できたって……その……あの…」

デ「セムちゃん…!?い、いや…まぁ…できたはできたんだけれど……」


セ「……っ!!(すーーっ)誰?」


ゾ「(びくっ!?)な、なんじゃ?そんな相手を射殺すような冷たい目つきで見んでくれ……儂はゾーネ=ランゲ……天才発明家じゃっ!!」


ス「セムちゃんじゃないかっ!!あたいの店、デメトリオの宿屋の1階に移転したからさぁ…こんどバシバシ買って行ってくれっ!!」


セ「………(ぎりっ)デメさん……お風呂…一緒に……入りましょう?」

デ「いや、それはダメだよ?いくら混浴と言ったって、僕はこの宿屋の店主だからね、お客様と一緒にお風呂は入っちゃダメなんだ。セムちゃんがこのお風呂の始めての入浴者だから、入ったら感想……聞かせてくれると助かる……まぁ、僕はしばらく、旅に出るんだけどね……?」


セ「旅っ!?…どこですかっ!?何時……っ!?」


な、何をあんな慌てているんだろう……?
それに、どことか、何時とか聞かれてもなぁ……
肝心の俺すらわからねぇんだから、答えようがないんだよなぁ……


デ「わからないけれど……たぶん、明日以降……」


メ「違うわ……今よっ!!モンスターラグーンの中でも、未婚者で精鋭を数人連れてきたわ……早速行くわよ……支度しなさい」



デ「えぇっ!?いきなり過ぎるんだけどっ!?」


じ、準備ったって……旅自体するの始めてなんだから、何を用意したらいいのか……わからないってっ!!
いきなりやってきて、メリィは一体何を言い出すんだっ!!


ゾ「大丈夫じゃ……この宿屋はいつでも動かせるぞ……!!」


ちょっとゾーネさんっ!?なに話をややこしくするような事言ってるんですかっ!?

だが、ゾーネは俺の心配はよそに、メリィにこの宿屋の仕掛けの事を話していく……

俺の心を、物凄く嫌な予感が横切った瞬間だった……
16/03/10 19:52更新 / デメトリオン mk-D
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■作者メッセージ
どうも!!


今回も見て下さり…ありがとうございます!!

猫の肉球や仕草を見ていると…なんだか…それだけで癒されますよねぇ…
作者は猫アレルギーだから、近づけないけどねっ!!

体痒くなるんですよねぇ……

さてさて、いよいよ次回から旅が始まります……
今までが宿屋編…次回からは、ミスト山脈編をお送りします!!


ミスト山脈までの道のり……そして、ミスト山脈に封印されているとある魔物娘……そして、旅に加わる新たな仲間との出会い……
前作とは違う流れで、のんびりと進めていきますので、のんびり見てやってください!!


まぁ、前作の話もちらほら交じるんですが……それは、リメイクって事でここはひとつ……


それでは、今回も見て下さり…ありがとうございました!!

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