F2 仕事と混沌としたレストハウス
さて、あたしがあの広告を作成してすぐに…
ペドさんがニコニコしながらあたしのデスクに歩いてきたんだ
そりゃあ、募集したその日に二人も入りたいって人がきたっていうのは、ペドさん的にも嬉しい誤算なんだろうから…その気持ちはよーくわかるぜ?
ペド「シアエガ〜!!」
でも!!今来られたら非常に困る!!
だって、ハードなデスクワークで、全身の目を酷使していたから、目薬をさしている最中なんだ!!
ようやく右半分が終わったところなんだから、今だけは来ないでくれよ?
サキュバス「あっ…ペドさん、これ虜の果実で作ったケーキなんですけど…どうですか〜?」
ペド「なんだと!?むむぅっ……」
よしっ…同僚のサキュバスが気を引いているうちにさっと終わらせてやる!
あたしはその後、もの凄い勢いで左半分も終わらせ…ようやくメインの自分のこの単眼に目薬をさすところまで来たんだ!
この目薬はすごくスースーするから、量に気を付けないと…
ペド「あ、後に置いておいてほしい…うん…ってわけで、シアエガー!!」
そして、背中に当たる小さいペドさんのタックル…
あたしは次の瞬間、衝撃で思わず目薬の量を間違えてしまったんだよ!!
大量に出てくる目薬を防ぐ術なんてないわけで…
次の瞬間、あたしを襲っていたのはもの凄い爽快感だった…
シアエガ「みゅああぁぁぁぁぁぁっ!?目が目がぁぁぁっ!?」
ペド「おぉっ!?す、すまん……嬉しさのあまり、気づかずにタックルしてしまった…許せ」
シアエガ「ペドさんじゃなかったら、正気でいられないくらいに睨んでるところでしたよ!!それで……なんのようでしょうか?」
あたしがそういうと、ペドさんは一枚の紙を見せてすごい笑顔であたしに話しかけてきた
手に持っている紙には、見覚えのある人の写真が一枚添付されていた
あの人は確か…面接にきたタカコさん…だったか…?
クリームさんが思わず半狂乱になってしまうほどの豊満な胸の持ち主…
でも、写真で見た感じすごく性格はよさそうな感じのアポピスさんだったが…
あの感じ、ファラオとまだ出会ってないな
あたしのこの目がそう告げているから、まず間違いないな
ん……?文句あるのかぁ?頭の中かるーくピンクに染めてやろうか?
嫌なら、黙ってな!!(クワッ!!)←眼力
ペド「リーダー兼社長の許可が下りたぞーー!!ようやく…ようやく私たちの部署にも新しい新人が…!!シアエガももう…新人じゃなくなるんだなぁ…」
シアエガ「そうですねー…思えば3年…長いよーな、短いよーな…」
あたしはそう言うと、フォーリンダウンにはいったあの時の思い出す…
……あれ?今とあまり変わってない……
い、いや…それは別にいいんだ!!
ペド「というわけで!!自己紹介も兼ねて、守衛課の連中と飲むことになったんだ!!シアエガも参加してくれ!!あっちの方も、新しいメンバーがはいって、ものすごくテンション上がっているみたいでなぁ…」
シアエガ「えっ………こ、今晩…ですかぁ?」
嫌じゃない…嫌じゃないが…
今晩は今までのデスクワークで疲れた目を休めるために、単眼ネットワークで話題の蒸しタオル屋に行こうと思ってたんだが……
……はぁ…まぁ、しかたないかぁ…
シアエガ「わかりましたけど……あたし、あんまり飲みませんよぉ?」
ペド「わかってるさ!!いやあ…今晩は楽しみだなぁ!!」
そして、時間は過ぎ去って夜…飲み会の時間がやってきた…
ここは居酒屋『油揚げ』と呼ばれる小さな居酒屋で、フォーリンダウンのみんなが飲み会のときは決まってここになっているんだ
なんでも、ここの女将さん…蘭狐(らんこ)さんはフォーリンダウンのリーダーであるリリムさんと昔からの付き合いがあるらしい
…噂によれば、結婚しているみたいだけど……旦那さんを見たことは、実は一度もない
そんな居酒屋『油揚げ』の前であたしはペドさんをひとり待っていた…
……すると、ペドさんではないが、見覚えのある顔がこちらにむいて歩いているのが見えたんだ…
見覚えがある…ってレベル以上に顔を合わせてはいるんだけども…
飲み会の話が会った時は部屋にいなかったし、先に帰ったものだと…
??「いやぁ〜…まいったまいった!!お姉さん、仕事中に資料室で居眠りしちゃってたよぉ〜…ペドさんにおこしてもらえなかったら、今日の飲み会にも来られなかったね、多分!」
シアエガ「……ソア、また仕事中に寝てたのか!?そんなに寝てたら組織クビにされちゃうぜ!?」
ソア「だいじょーぶ!!なんとかなるさぁ!!」
この、ものすごく適当な返事を返してきた、ラヴァゴーレムの女性…
この人の名前は 我田乃 ソア(がたの そあ)…
実は、彼女はあたしの住んでいるところの同居人のひとりなんだ
まぁ、その話は追々していくとして……
シアエガ「あれ?ペドさんは一緒じゃないのか?」
ソア「ん〜?ペドさんねぇ〜…マイジョッキを取りに家に帰るって言ってたねぇ、そろそろくるんじゃないかなぁ?ところでところで!!お姉さん、イイ物買っちゃったんだぁ〜!!」
シアエガ「………ま、まさか…」
ソア「じゃーんっ!!【その日運勢チェック読本】!!どう!?占ってあげようか!?」
……ソアは、目をキラキラさせながら手を振りつつ、あたしのほうを向いてくるが……
正直に言わせてもらうと、あたしは占って欲しくない!!
断固拒否するぞ!あたしは!!
だって…ソアさんに占われた日は決まって、嫌なことが起こるんだ!!
だから、一緒に住んでいる同居人たちの間では、占い=呪いってことになってるぐらいだ
シアエガ「いや、しなくていいぜ……」
ソア「えぇーーーっ!?こ、こんなにおもしろそうなんだよ!?ほら!!お姉さん、ここの恋愛運のページとかお気に入りで…」
シアエガ「えっ…?うーん……あたし、単眼だから遠近感が捉えにくくて近くの文字は見えないなぁ…悪いけど、占いはまた今度な」
ソア「あーっ!!いっけないんだーー!!お姉さん知ってるんだから!!シアエガちゃん目は一つじゃぁないでしょ?わかってるんだよ?」
シアエガ「………ちっ……」
と、こんなことをしていると、ペドさんが小さなカバンを背負ってちょこちょことこっちに歩いてくるのが見えたんだ
ペドさん!!やっぱりナイスタイミング!!現れる時がわかってるぜ!!
あたしは、心の中でそう言うと、ソアの占いに付き合わされたらたまらないと急いでペドさんのところに向かう…
ペド「おぉ…お前ら、なかなか早いな」
シアエガ「あたしはてっきり、ペドさんのほうが早く来ているものだと思っていましたけどね…入ります?」
ペド「そうだな、だいぶみんなを待たせてしまったし…」
そう言って、居酒屋『油揚げ』の中に入っていく…
蘭狐「いらっしゃい…あら?あなたたちも来たの?もうみんな、そろっていますよ。ゆっくりと楽しんで行ってくださいね?」
ペド「もちろん!!さぁ、お前たちも席についてくれ!!」
そう言われ、あたしとソアは指定された席についた
昔、あたしが今の課にきたときと、流れが一緒なら…まず、新人さんの自己紹介から始まるはずだ…
そしてその後、飲み会が始まるんだ
ペド「みんな、集まったな…では!!新人紹介の時間だ!!」
ラグナロク「うむっ!!妾もかまわぬぞ!」
ペド「じゃあ…まずは情報課の方から…緊張するかもしれんが、あまり気をはらず、気軽にしてくれ」
??「はい…こほん…わたくしの名前は黒田 タカコですわ…これから、一緒のところで働くことにはなりますけど…わたくし、新入社員だからといって、みなさんの下につくつもりはありませんので…しっかりと頑張らせていただきますわ」
………うわぁ……なんていうか性格きついなぁ…
彼女を見てると、あたしなんか性格天使だな、天使!えんじぇうだな!
あぁ?なんだその目は…
そうかそうか……その目、気に入らねえなぁ…
夜…細い路地で黒いフードをかぶった、あたしの仲間にはせいぜい気をつけな
あたしがしっかりと、お前たちのことは伝えておいてやるよ…きひひっ
持っていかれるのはモラルとお前の体と心と童貞ぐらいだ、軽いもんだろ?
しかし…
紙を見ていただけの感想では、なんだぁ…ただのTUNDEREかぁって思っていただけだが、そんな要素まったく見えないなぁ…
……あたしの後輩がこうも性格がキツそうだと…少しいやだなぁ…
タカコ「……ですが、そのぉ……こんな性格ですけど……仲良くしてくれると……嬉しい……ですわ///」
ペド「あぁー…実はな、本人から後で聞いた話なのだが、彼女はお嬢様育ちで、少し普通のコミュニケーションが苦手なだけなんだ。普通に接してあげて欲しい!!」
………そうか…
まぁ、コミュニケーションが苦手っていうのは共感できるなぁ…
だって、あたしはこの魅力的な目が怖いって人ともたくさん出会ってきたからな
昔のあたしだったら、そんなこと言ったら即洗脳だったけど…
今はだいぶ丸くなって、そんな人もいるって割り切ってるから、三回までは許してるんだぜ?
今でも、荒れていた昔のことを思い出すと、目の奥がむずむずするよ
ラグナロク「では、次は妾たちの新人の紹介じゃな…ユメカ!!紹介するのじゃ!」
??「すー…Zzzzzz…ぴー…Zzzzzz」
……ありゃあ、完璧に寝てる…
あそこで寝ている彼女が……守衛課の新人さん…だとしたら…
相当の大物の予感だよ
ラグナロク「………おーきーるーのーじゃぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
ユメカ「……むにゅぅ……ふふっ…」
ラグナロク「むっ……妾をこうも愚弄するとは…許せん!!」
あぁっ!?ラグナロクさんが来ている金の羽織を片腕だけ脱いだぞ!?
あの状態は戦闘時のスタイル……ら、ラグナロクさん…
ここで争いごとを起こすのはよくないとあたしは思うぞ…
ラグナロク「ここで……あの時の恨み、妾の刃にて晴らしてやるのじゃ!この世界で一番強いのは妾じゃ……安心せい…鞘越しじゃ…痛いじゃろうが、死にはせんでな……」
ユメカ「……スー……っ!?」
なっ!?さ、さっきまで寝ていたユメカが……
一瞬で目を覚まし、ラグナロクさんの攻撃を箸でとめた!?
す、すげぇ……あのユメカさんも…そして、箸も…両方すごいな…
ユメカ「……やっぱり、ラグナロクさんのその刀は力が偏りすぎです…もっとその技に、謙虚さを持つべきですね…でも、刀はあなたを好いているみたいですよ?」
ラグナロク「ぐっ……ぐくぅっ……一度ならず、二度までもぉ……魔物の中でも上位の存在であるドラゴンの妾に、二度も恥をかかすなど………かかすなどぉ……ひっぐっ…えぐっ…」
あっ……ラグナロクさん……泣いちゃった…
あの人…もの凄い強いし、態度も大きいけど…すぐに泣いちゃう涙もろいところがあるんだよなぁ…
でも、そんなところが、あたしは好きだけどね
しかし……あのユメカって娘……まさか、電波系…?
電波系は話がわかりにくくてあたしは苦手だなぁ…
ちょうど、家で一緒に同居してるメンバーに、電波系がいるからよーくわかる
まったく……いっつもパソコンばかりいじっている、困った奴がね
カノカ「あらあら…ラグナロクさん………よしよし……」
ラグナロク「ぐすっ……妾を…ぐすっ…子供扱いするな!今日は厄日じゃ…お菓子はもらえないし、少し太るし、また負けるし……」
オルタ「………べつに私は、食べていいと言ったのですが」
ラグナロク「それでは妾はましまろに負けたみたいなのじゃあぁぁぁっ!!甘いもの欲しいのじゃあぁぁぁっ!!あーまーいーもーのーーっ!!」
……ら、ラグナロクさん、年甲斐もなく駄々をこねはじめたぞ…
少なくともあたしよりは年…上のはずなのに…
しかし……金色のドラゴンが居酒屋の座敷で子供みたいに駄々をこねているというのも……あたし的には面白くていいんだけども…
……これ、魔物娘になる前だと…すごい絵柄だよなぁって思ったり…
えっ!?い、いや…なんでもないぜ!?
これ以上の追求は、SUN値を全て失ってもらうぞ!!
そして、色々いざこざはあったが、ユメカの自己紹介が始まったのだった…
ユメカ「……私はユメカ…好きなことは寝ること…将来は旦那さんと一緒に楽しく寝て暮らしたいと思ってる…どぞ、よろしく」
………短っ!?
あまりの自己紹介の短さに、周りも少しだけ呆気に取られているが…
このマイペースを貫くところには、ゲイザー的にも気にいるところがあるね
ユメカ「ラグナロクさん…意図的ではないけど、ひどいことをしたみたいだね、この私のお菓子をあげよう」
ラグナロク「ふぇっ……よ、よいのか!?はっ……わ、妾に献上品をというユメカの心構えに応じてやろう……それで、お菓子はなんなのだ!?」
ユメカ「……鱈チーズ……あたしの大好物…」
ラグナロク「たら…チーズじゃとぉ…?貴様っ!!妾を馬鹿にするのもいい加減にするのじゃ!!お菓子ではないではないか!!」
ユメカ「世の中には…お菓子より美味しいものもある…それに、モノを試さずに決め付けるのは二流……まずは食べてみるといい」
ラグナロク「……ほぅ?そこまでいうか…面白い…では、妾の舌を納得させられなければ………むっ……う、うみゃい……」
ユメカ「ふっ……」
ラグナロクさんはそう呟くと、一心不乱に鱈チーズを貪り始めたんだ
そ、そんなにうまいのか…あれ…?
あたしは、すこーしだけ気になって、今度帰るときに買って帰ることを密かに決めたのだった…
ラグナロク「ふむ…認めよう…美味しかったぞ?ましまろには及ばぬが…それでも、妾の舌は大満足じゃ!!」
ペド「……さぁってっ!!みんな!!一段落ついた事だし、今日はたっくさん飲もうじゃないか!!今日も一日、お疲れ様!!そして……乾杯っ!!」
ペドさんがそういうと、みんなが目の前にあったグラスに好きな飲み物を入れて、ペドさんの合図と一緒に乾杯の声が響き始めた
もちろん、あたしだって飲むつもりだ…
えっ…?何をって…?ミルクティーだが…なにか?
お酒…?あいにく、あたしはお酒は弱いから、飲まないことにしてるんだ
そして、あれから数分……あたしは今、ペドさんと世間話をしてる最中だ
どうしてそんなことをすることになったのかはまったくもって謎だが…
まぁ、黙々と飲むよりはね、こっちのほうが気が楽さ
シアエガ「ふぅ……やっぱり、ここのミルクティーは美味しいな…なにか…ほかのところのミルクティーとは違う気がする…」
ペド「それはそうだ…だって、ここのミルクティーはホルスタウロス種の乳が使われているんだからな…って、前に蘭狐さんから聞いたな」
シアエガ「なるほど…このすこーし落ち着く感じはそんな秘密が隠されているからだったのか…って…えぇっ!?」
あたしは始め、さも当然といった感じでペドさんの話に相槌を打っていたんだけど、ま、まさか……ホルミルクだったなんて…
ペド「まぁ、最近は普通の牧場も姿を変えてきてるし……今に、この国の全ての農場が魔物娘で溢れるようになるって思うな……」
そう……人間の方々は気がついていないが…
あたしたちの仲間のうち、一番積極的に活動しているのは獣系の魔物娘なんだ
あたしたちフォーリンダウンからも、もう何人も牧場で夫を手に入れているって話は聞いたことがある
つまり……牧場は獣系の魔物娘からすれば絶好の狩場なわけだな…
あたしは、路地裏とかのほうが好きだけどな
なんて、ペドさんと話をしていると、ペドさんがラグナロクさんに呼ばれたんだ
なんでも、一緒にお菓子を食べたいらしい…
複数人でお菓子を食べたら、太らない気がするとかどうとか…
……幻想だと思うけどな…あたしは
シアエガ「……もう9時かぁ…あたし的にはこの時間帯からがメインだけど…今日は抜けれそうにないし…もし抜けても、最近は出会いないからなぁ…」
あたしの仲間には、出会い頭に襲ってしまえって言う奴もいるけど…
それは、あたしの流儀に反しているから、あたしはできないっていう…
出会ってすぐになにも言わず逃げるような失礼なやつを捕まえて、好みに調教…もとい洗脳して、恋人をゲットする…
欲を言えば、洗脳は使わずにゲットしたい…それがあたしの願いであり、流儀だ
そして、今からは一人でミルクを飲むことになるのかと思っていた時だった…
守衛課のメンバーが話かけてきたんだよ!!
アカオニ「よぉっ!!飲んでるかぁ?」
シアエガ「ごふっ!?けほっ……いきなり話しかけてくるのはどうかと思う」
ウシオニ「そうつれないこと言うなっ!!肉…食うか?」
そう言われるやいなや、一気に口の中に入れられる肉の塊…
この独特のフォルムが……あたしの興奮を誘って……いつまでも食べていられそう…って違う!!
シアエガ「げほっ……」
ウシオニ「おぉっ!?す、すまねぇ…って、シアエガ、飲んでねぇじゃねえか、お酒」
アカオニ「なーにぃーっ?こんなめでたい場でお酒を飲んでない奴がいるだって〜?それはダメだなぁー……シアエガ!!」
シアエガ「あ、あたしは酒はあまり飲めな…だって、苦いし…」
アカオニ「苦くなきゃいいんだな…?じゃあこれだ……」
そう言って、目の前のアカオニはひとつの飲み物をあたしに渡してきたんだ
この飲み物……色も匂いも……ミルク…?
………なんだ、ミルクを飲んでいるんでもいいんだな…
だったらあたしはさっきまでも飲んでいたし…咎められることはないって事か
シアエガ「あたし、さっきまでもミルク飲んでいたんだぜ?でも…せっかくだしもらうよ…ありがとう」
アカオニ&ウシオニ「おうっ!!ぐいっといけ!!」
そう言われ、つがれたミルクをぐいっと一口………ん?
なんだろうこのミルク……喉奥に焼け付く痛みが…この感覚…お酒!?
アカオニ「これなら甘いだろ!?日本酒のミルクでわったやつだ!!」
ウシオニ「それだったら、苦みがダメでも大丈夫だな!!」
うぐぅっ……油断したァ…
顔が一瞬で真っ赤になり、頭の中がグラグラとし始めるのが自分でもわかる
あぁぁ…もうっ!!これだからあたしは酒はダメなんだと……
アカオニ「どうした?もう酔っ払ったのか?情けねぇなぁ…」
シアエガ「……あぁんっ?あたしが酔った?キヒヒヒっ!!そんなわけないだろ?おらぁっ!ミルク酒どんどんもってこーいっ!!あっひゃっひゃっはっ!」
ウシオニ「……なんか、様子がへんな気がするが…まぁいいか!!よぉし…俺も飲むぞぉっ!」
〜〜〜帰宅時間〜〜〜
ペド「ふむ……そろそろだな……みんな、帰るぞ!!蘭狐さん、今日もありがとうございました!!これは、フォーリンダウン特製の…アレです」
蘭狐「いつもすみません…皆さんが帰ったあとにでも、旦那といただきますね」
………ん?ペドさんが手招きしてる?いったいなんだ?
めんどくせぇが、行ってやるか…あたしは優しいから…
シアエガ「おっとと……ありゃ……おかしいな…足が思うように動かないよぉっと……ふぇっ……?」
目の前の景色が上下左右にグラグラ…グルグル…おっかしい…なー…
と、そう思ったとたん…あたしはその場に倒れ込んだんだ…
たぶん…今、自慢の単眼も複眼も目を回しているんだろうな
ソア「どーしたー?って、あぁっ!?シアエガ…酒飲んだな!?誰ぇ…飲ませたの……」
アカオニ「す、すまねぇ……つい調子にのって…」
ソア「いーよいーよ!!おねーさんが背負って帰るから……」
アカオニ「えっ…!?(ラヴァゴーレムだから、担いだらやけど程度じゃすまねぇんじゃ…)」
ウシオニ「(でも、旦那とヤル時とか、旦那やけどしてねぇし……大丈夫じゃねぇの?服は知らないが)」
ソア「よいしょっと……じゃあ、ペドさん…先に帰りますねー」
ペド「あぁ、またあした会おう……」
アカオニ「おい……これってシアエガの仕事着じゃ……」
ウシオニ「……あの人…シアエガの服だけ焼きながら帰ってるのか…朝起きたら驚くぞあれは…まぁ、魔物娘なら朝から全裸って状況でも、人間ほど焦りはしねぇだろうけどな」
〜〜翌朝〜〜
ふあぁぁ……あうぅっ…あたまがガンガンする…最悪の目覚めだ…
あたしは痛む頭を抑えながら、洗面所へ顔を洗いに行く…
……えっと昨日は……うーむ、酒を飲まされた後の記憶がないぜ…
あたしはいつの間に帰ったんだろうか…?
そう思いながら鏡の前に立つ……??
こ、この完璧なボディは…あたし!?って、なんであたし全裸なんだ!?
……別に、この時期は寒くねぇからいいけど…
そして、すぐに自分の部屋に戻り数着ある仕事用の服に着替え、食堂に移動する…
すると、そこにはソアと、一緒に同居している連中が飯を食べていたんだ
あたしたちに部屋を貸してくれているルルさんもいるな…
ちなみに、あたしがお世話になっているこの家…
その名も【レストハウス ルルイェイ!!】というふざけた名前ではあるけども……
何がレストハウスなのか…そもそもレストハウスとはなんなのかはあたしもまったくわかっていない
そんなところだけども…大勢の魔物娘たちがここで同居生活を送っている
全員フォーリンダウンに勤めているから…なんていうか…寮…みたいなものか?そんな感覚で考えてもらってもいい
ここにいるメンバーはあたしとルルさんを除けると……4人…
まずは昨日も紹介した…我田乃 ソア (がたの そあ)
次に性格はかなり…アレな…デビルの麻里 スゥ(あざと すぅ)
超電波系ネット廃人…リビングドールの愛里影 ダオロス(ありかげ だおろす)
臆病なバブルスライムの相武 ホース(あいみや ほーす)の四人だ…
………ん…?なんだ?その突っ込みてぇって顔は…
わかっているやつもいるみたいだが……そこに注意してはいけないんだぜ?
あたし的にも、その注意はNGワードだね
……深入りして、あたしたちに襲われたいなら止めないが…きひひっ…
シアエガ「おはよっ……はぁ…頭いてぇ…」
ホース「ど、どうしたんです?今日は遅いですけど…」
シアエガ「あぁっ?あー……昨日、飲み過ぎちゃって…うぅ…」
ソア「昨日は大変だったぞー?おねーさん、背負って帰ったんだから!」
スゥ「全裸で帰ってきたときは、もうドキドキしたよ!!新手の魅了ほうかって思ったぐらい!!ははっ!!」
なんて、言いながらあたしを茶化してくるメンバーの言葉を綺麗に流し…
サンドウィッチを頬張るあたし……そういえば、ダオロスはどこだ?
シアエガ「……ダオロスは?」
ホース「ダオロスちゃんなら…部屋にこもってネットゲームしてますよ?」
……やっぱりか…まったく、こう毎日ネットって…飽きないのか?
流石にそろそろフォーリンダウンに連れて行かないとまずい気がするな…
仕方がない…
シアエガ「ちょっと、呼んでくる」
スゥ「無駄だと思うけどねーー」
あたしは、食堂を出てまっすぐダオロスの部屋に行く……
そして、ダオロスの部屋の扉を勢いよくあげる…
??「……そこ、回復してくれないと困る…ST値下がったよ?ぼんやりしないで!!右右、周り見ないとだめだって…しまった!!ポイズンった…アンポイアンポイっと…この場所、効率マジウマ…レベ34までここで雑魚刈り…」
シアエガ「おーい…何ブツブツ言ってんだ?そろそろフォーリンダウン行かねぇと、色々怒られるよ?」
ダオロス「うわっ!?あわあわ……やば……あっ!?今日も助けてくれるんだね…【沈黙のデータ】さん!!助かる……ふぅ…敵全滅……っと、なに?シアエガさん…忙しいんだけど……」
………相変わらず、なんか少し同じ世界で会話してないようなへんな感じになっちゃうな…
沈黙のデータってなんだよ……まったく…
シアエガ「まったく…いつもいつもゲームばかり……大体、沈黙のデータ?それってなんだよ?」
ダオロス「えっ…?私の救世主だよ!!いつもピンチになったときに助けてくれる…私のゲーム世界での王子様なんだ!もぉ……好きすぎて好きすぎて…リアルでも会いたいんだけど…多分会えないんだよね……はぁ…」
………ふぅ…やっぱりダオロスはめんどくさいぜ…
話が通じてないって感じがビンビンするよ…
シアエガ「いいから、さっさと行こう!!」
ダオロス「嫌だ…だって、今日のイベは激アツで……ってえぇっ!?沈黙さん、ログアウト!?な、なんで!?どうして…!?いつも無言ログアウトなんてなかったのに…!?」
シアエガ「はいはい!!沈黙さんもログアウトしたし、お前も仕事にログインするんだ!!じゃないと、ペドさんにそろそろ怒られちゃうぜ?」
あたしはそう言うと、ものすごく嫌がるダオロスを自慢の触手で少し絡めとり、食堂に引きずっていったのだった…
ダオロス「むーーーっ…………」
シアエガ「そんな目であたしを見るなって…」
仕事に行く準備を済ませ、レストハウスを出ると、ダオロスがふくれっつらであたしを睨んできたんだ
そんな可愛い睨み、あたしの前では赤子も同然の睨みだけど……
それでも、いい気分にはならないな……
えっ?あたしの睨みがみたい…?見たら発狂は免れないLVだぜ?それでもか?
………そんなに見たいのか……まぁ、そのうちな?
なんて、色々あったわけだが……あたしたちがフォーリンダウンの本社につくと…いつものおっとりとした雰囲気とは一転した…
なんだかドタバタとしていたんだよ…
あたしが情報課に入ると、ペドさんが机にうつ伏せになって、小さい足をプラプラさせているところを見ると…もの凄い厄介事が出てきた……ってことか?
………うわぁ…すっごくいやーな予感がするなぁ…
ペド「社長〜……そんなに怒らないでくださいよ……旦那さんが悪いのはわかりますけど……むぅー…」
ん……?ペドさん…あの状態で電話をしているのか…
おそらく、相手は社長だろうけど……いったい社長とどんな話をしているんだろう……?
単眼の奥がむずむずする……これは…あたしの人生を動かす大きなことが…
起ころうとしているのかもしれないなぁ…
ペドさんがニコニコしながらあたしのデスクに歩いてきたんだ
そりゃあ、募集したその日に二人も入りたいって人がきたっていうのは、ペドさん的にも嬉しい誤算なんだろうから…その気持ちはよーくわかるぜ?
ペド「シアエガ〜!!」
でも!!今来られたら非常に困る!!
だって、ハードなデスクワークで、全身の目を酷使していたから、目薬をさしている最中なんだ!!
ようやく右半分が終わったところなんだから、今だけは来ないでくれよ?
サキュバス「あっ…ペドさん、これ虜の果実で作ったケーキなんですけど…どうですか〜?」
ペド「なんだと!?むむぅっ……」
よしっ…同僚のサキュバスが気を引いているうちにさっと終わらせてやる!
あたしはその後、もの凄い勢いで左半分も終わらせ…ようやくメインの自分のこの単眼に目薬をさすところまで来たんだ!
この目薬はすごくスースーするから、量に気を付けないと…
ペド「あ、後に置いておいてほしい…うん…ってわけで、シアエガー!!」
そして、背中に当たる小さいペドさんのタックル…
あたしは次の瞬間、衝撃で思わず目薬の量を間違えてしまったんだよ!!
大量に出てくる目薬を防ぐ術なんてないわけで…
次の瞬間、あたしを襲っていたのはもの凄い爽快感だった…
シアエガ「みゅああぁぁぁぁぁぁっ!?目が目がぁぁぁっ!?」
ペド「おぉっ!?す、すまん……嬉しさのあまり、気づかずにタックルしてしまった…許せ」
シアエガ「ペドさんじゃなかったら、正気でいられないくらいに睨んでるところでしたよ!!それで……なんのようでしょうか?」
あたしがそういうと、ペドさんは一枚の紙を見せてすごい笑顔であたしに話しかけてきた
手に持っている紙には、見覚えのある人の写真が一枚添付されていた
あの人は確か…面接にきたタカコさん…だったか…?
クリームさんが思わず半狂乱になってしまうほどの豊満な胸の持ち主…
でも、写真で見た感じすごく性格はよさそうな感じのアポピスさんだったが…
あの感じ、ファラオとまだ出会ってないな
あたしのこの目がそう告げているから、まず間違いないな
ん……?文句あるのかぁ?頭の中かるーくピンクに染めてやろうか?
嫌なら、黙ってな!!(クワッ!!)←眼力
ペド「リーダー兼社長の許可が下りたぞーー!!ようやく…ようやく私たちの部署にも新しい新人が…!!シアエガももう…新人じゃなくなるんだなぁ…」
シアエガ「そうですねー…思えば3年…長いよーな、短いよーな…」
あたしはそう言うと、フォーリンダウンにはいったあの時の思い出す…
……あれ?今とあまり変わってない……
い、いや…それは別にいいんだ!!
ペド「というわけで!!自己紹介も兼ねて、守衛課の連中と飲むことになったんだ!!シアエガも参加してくれ!!あっちの方も、新しいメンバーがはいって、ものすごくテンション上がっているみたいでなぁ…」
シアエガ「えっ………こ、今晩…ですかぁ?」
嫌じゃない…嫌じゃないが…
今晩は今までのデスクワークで疲れた目を休めるために、単眼ネットワークで話題の蒸しタオル屋に行こうと思ってたんだが……
……はぁ…まぁ、しかたないかぁ…
シアエガ「わかりましたけど……あたし、あんまり飲みませんよぉ?」
ペド「わかってるさ!!いやあ…今晩は楽しみだなぁ!!」
そして、時間は過ぎ去って夜…飲み会の時間がやってきた…
ここは居酒屋『油揚げ』と呼ばれる小さな居酒屋で、フォーリンダウンのみんなが飲み会のときは決まってここになっているんだ
なんでも、ここの女将さん…蘭狐(らんこ)さんはフォーリンダウンのリーダーであるリリムさんと昔からの付き合いがあるらしい
…噂によれば、結婚しているみたいだけど……旦那さんを見たことは、実は一度もない
そんな居酒屋『油揚げ』の前であたしはペドさんをひとり待っていた…
……すると、ペドさんではないが、見覚えのある顔がこちらにむいて歩いているのが見えたんだ…
見覚えがある…ってレベル以上に顔を合わせてはいるんだけども…
飲み会の話が会った時は部屋にいなかったし、先に帰ったものだと…
??「いやぁ〜…まいったまいった!!お姉さん、仕事中に資料室で居眠りしちゃってたよぉ〜…ペドさんにおこしてもらえなかったら、今日の飲み会にも来られなかったね、多分!」
シアエガ「……ソア、また仕事中に寝てたのか!?そんなに寝てたら組織クビにされちゃうぜ!?」
ソア「だいじょーぶ!!なんとかなるさぁ!!」
この、ものすごく適当な返事を返してきた、ラヴァゴーレムの女性…
この人の名前は 我田乃 ソア(がたの そあ)…
実は、彼女はあたしの住んでいるところの同居人のひとりなんだ
まぁ、その話は追々していくとして……
シアエガ「あれ?ペドさんは一緒じゃないのか?」
ソア「ん〜?ペドさんねぇ〜…マイジョッキを取りに家に帰るって言ってたねぇ、そろそろくるんじゃないかなぁ?ところでところで!!お姉さん、イイ物買っちゃったんだぁ〜!!」
シアエガ「………ま、まさか…」
ソア「じゃーんっ!!【その日運勢チェック読本】!!どう!?占ってあげようか!?」
……ソアは、目をキラキラさせながら手を振りつつ、あたしのほうを向いてくるが……
正直に言わせてもらうと、あたしは占って欲しくない!!
断固拒否するぞ!あたしは!!
だって…ソアさんに占われた日は決まって、嫌なことが起こるんだ!!
だから、一緒に住んでいる同居人たちの間では、占い=呪いってことになってるぐらいだ
シアエガ「いや、しなくていいぜ……」
ソア「えぇーーーっ!?こ、こんなにおもしろそうなんだよ!?ほら!!お姉さん、ここの恋愛運のページとかお気に入りで…」
シアエガ「えっ…?うーん……あたし、単眼だから遠近感が捉えにくくて近くの文字は見えないなぁ…悪いけど、占いはまた今度な」
ソア「あーっ!!いっけないんだーー!!お姉さん知ってるんだから!!シアエガちゃん目は一つじゃぁないでしょ?わかってるんだよ?」
シアエガ「………ちっ……」
と、こんなことをしていると、ペドさんが小さなカバンを背負ってちょこちょことこっちに歩いてくるのが見えたんだ
ペドさん!!やっぱりナイスタイミング!!現れる時がわかってるぜ!!
あたしは、心の中でそう言うと、ソアの占いに付き合わされたらたまらないと急いでペドさんのところに向かう…
ペド「おぉ…お前ら、なかなか早いな」
シアエガ「あたしはてっきり、ペドさんのほうが早く来ているものだと思っていましたけどね…入ります?」
ペド「そうだな、だいぶみんなを待たせてしまったし…」
そう言って、居酒屋『油揚げ』の中に入っていく…
蘭狐「いらっしゃい…あら?あなたたちも来たの?もうみんな、そろっていますよ。ゆっくりと楽しんで行ってくださいね?」
ペド「もちろん!!さぁ、お前たちも席についてくれ!!」
そう言われ、あたしとソアは指定された席についた
昔、あたしが今の課にきたときと、流れが一緒なら…まず、新人さんの自己紹介から始まるはずだ…
そしてその後、飲み会が始まるんだ
ペド「みんな、集まったな…では!!新人紹介の時間だ!!」
ラグナロク「うむっ!!妾もかまわぬぞ!」
ペド「じゃあ…まずは情報課の方から…緊張するかもしれんが、あまり気をはらず、気軽にしてくれ」
??「はい…こほん…わたくしの名前は黒田 タカコですわ…これから、一緒のところで働くことにはなりますけど…わたくし、新入社員だからといって、みなさんの下につくつもりはありませんので…しっかりと頑張らせていただきますわ」
………うわぁ……なんていうか性格きついなぁ…
彼女を見てると、あたしなんか性格天使だな、天使!えんじぇうだな!
あぁ?なんだその目は…
そうかそうか……その目、気に入らねえなぁ…
夜…細い路地で黒いフードをかぶった、あたしの仲間にはせいぜい気をつけな
あたしがしっかりと、お前たちのことは伝えておいてやるよ…きひひっ
持っていかれるのはモラルとお前の体と心と童貞ぐらいだ、軽いもんだろ?
しかし…
紙を見ていただけの感想では、なんだぁ…ただのTUNDEREかぁって思っていただけだが、そんな要素まったく見えないなぁ…
……あたしの後輩がこうも性格がキツそうだと…少しいやだなぁ…
タカコ「……ですが、そのぉ……こんな性格ですけど……仲良くしてくれると……嬉しい……ですわ///」
ペド「あぁー…実はな、本人から後で聞いた話なのだが、彼女はお嬢様育ちで、少し普通のコミュニケーションが苦手なだけなんだ。普通に接してあげて欲しい!!」
………そうか…
まぁ、コミュニケーションが苦手っていうのは共感できるなぁ…
だって、あたしはこの魅力的な目が怖いって人ともたくさん出会ってきたからな
昔のあたしだったら、そんなこと言ったら即洗脳だったけど…
今はだいぶ丸くなって、そんな人もいるって割り切ってるから、三回までは許してるんだぜ?
今でも、荒れていた昔のことを思い出すと、目の奥がむずむずするよ
ラグナロク「では、次は妾たちの新人の紹介じゃな…ユメカ!!紹介するのじゃ!」
??「すー…Zzzzzz…ぴー…Zzzzzz」
……ありゃあ、完璧に寝てる…
あそこで寝ている彼女が……守衛課の新人さん…だとしたら…
相当の大物の予感だよ
ラグナロク「………おーきーるーのーじゃぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
ユメカ「……むにゅぅ……ふふっ…」
ラグナロク「むっ……妾をこうも愚弄するとは…許せん!!」
あぁっ!?ラグナロクさんが来ている金の羽織を片腕だけ脱いだぞ!?
あの状態は戦闘時のスタイル……ら、ラグナロクさん…
ここで争いごとを起こすのはよくないとあたしは思うぞ…
ラグナロク「ここで……あの時の恨み、妾の刃にて晴らしてやるのじゃ!この世界で一番強いのは妾じゃ……安心せい…鞘越しじゃ…痛いじゃろうが、死にはせんでな……」
ユメカ「……スー……っ!?」
なっ!?さ、さっきまで寝ていたユメカが……
一瞬で目を覚まし、ラグナロクさんの攻撃を箸でとめた!?
す、すげぇ……あのユメカさんも…そして、箸も…両方すごいな…
ユメカ「……やっぱり、ラグナロクさんのその刀は力が偏りすぎです…もっとその技に、謙虚さを持つべきですね…でも、刀はあなたを好いているみたいですよ?」
ラグナロク「ぐっ……ぐくぅっ……一度ならず、二度までもぉ……魔物の中でも上位の存在であるドラゴンの妾に、二度も恥をかかすなど………かかすなどぉ……ひっぐっ…えぐっ…」
あっ……ラグナロクさん……泣いちゃった…
あの人…もの凄い強いし、態度も大きいけど…すぐに泣いちゃう涙もろいところがあるんだよなぁ…
でも、そんなところが、あたしは好きだけどね
しかし……あのユメカって娘……まさか、電波系…?
電波系は話がわかりにくくてあたしは苦手だなぁ…
ちょうど、家で一緒に同居してるメンバーに、電波系がいるからよーくわかる
まったく……いっつもパソコンばかりいじっている、困った奴がね
カノカ「あらあら…ラグナロクさん………よしよし……」
ラグナロク「ぐすっ……妾を…ぐすっ…子供扱いするな!今日は厄日じゃ…お菓子はもらえないし、少し太るし、また負けるし……」
オルタ「………べつに私は、食べていいと言ったのですが」
ラグナロク「それでは妾はましまろに負けたみたいなのじゃあぁぁぁっ!!甘いもの欲しいのじゃあぁぁぁっ!!あーまーいーもーのーーっ!!」
……ら、ラグナロクさん、年甲斐もなく駄々をこねはじめたぞ…
少なくともあたしよりは年…上のはずなのに…
しかし……金色のドラゴンが居酒屋の座敷で子供みたいに駄々をこねているというのも……あたし的には面白くていいんだけども…
……これ、魔物娘になる前だと…すごい絵柄だよなぁって思ったり…
えっ!?い、いや…なんでもないぜ!?
これ以上の追求は、SUN値を全て失ってもらうぞ!!
そして、色々いざこざはあったが、ユメカの自己紹介が始まったのだった…
ユメカ「……私はユメカ…好きなことは寝ること…将来は旦那さんと一緒に楽しく寝て暮らしたいと思ってる…どぞ、よろしく」
………短っ!?
あまりの自己紹介の短さに、周りも少しだけ呆気に取られているが…
このマイペースを貫くところには、ゲイザー的にも気にいるところがあるね
ユメカ「ラグナロクさん…意図的ではないけど、ひどいことをしたみたいだね、この私のお菓子をあげよう」
ラグナロク「ふぇっ……よ、よいのか!?はっ……わ、妾に献上品をというユメカの心構えに応じてやろう……それで、お菓子はなんなのだ!?」
ユメカ「……鱈チーズ……あたしの大好物…」
ラグナロク「たら…チーズじゃとぉ…?貴様っ!!妾を馬鹿にするのもいい加減にするのじゃ!!お菓子ではないではないか!!」
ユメカ「世の中には…お菓子より美味しいものもある…それに、モノを試さずに決め付けるのは二流……まずは食べてみるといい」
ラグナロク「……ほぅ?そこまでいうか…面白い…では、妾の舌を納得させられなければ………むっ……う、うみゃい……」
ユメカ「ふっ……」
ラグナロクさんはそう呟くと、一心不乱に鱈チーズを貪り始めたんだ
そ、そんなにうまいのか…あれ…?
あたしは、すこーしだけ気になって、今度帰るときに買って帰ることを密かに決めたのだった…
ラグナロク「ふむ…認めよう…美味しかったぞ?ましまろには及ばぬが…それでも、妾の舌は大満足じゃ!!」
ペド「……さぁってっ!!みんな!!一段落ついた事だし、今日はたっくさん飲もうじゃないか!!今日も一日、お疲れ様!!そして……乾杯っ!!」
ペドさんがそういうと、みんなが目の前にあったグラスに好きな飲み物を入れて、ペドさんの合図と一緒に乾杯の声が響き始めた
もちろん、あたしだって飲むつもりだ…
えっ…?何をって…?ミルクティーだが…なにか?
お酒…?あいにく、あたしはお酒は弱いから、飲まないことにしてるんだ
そして、あれから数分……あたしは今、ペドさんと世間話をしてる最中だ
どうしてそんなことをすることになったのかはまったくもって謎だが…
まぁ、黙々と飲むよりはね、こっちのほうが気が楽さ
シアエガ「ふぅ……やっぱり、ここのミルクティーは美味しいな…なにか…ほかのところのミルクティーとは違う気がする…」
ペド「それはそうだ…だって、ここのミルクティーはホルスタウロス種の乳が使われているんだからな…って、前に蘭狐さんから聞いたな」
シアエガ「なるほど…このすこーし落ち着く感じはそんな秘密が隠されているからだったのか…って…えぇっ!?」
あたしは始め、さも当然といった感じでペドさんの話に相槌を打っていたんだけど、ま、まさか……ホルミルクだったなんて…
ペド「まぁ、最近は普通の牧場も姿を変えてきてるし……今に、この国の全ての農場が魔物娘で溢れるようになるって思うな……」
そう……人間の方々は気がついていないが…
あたしたちの仲間のうち、一番積極的に活動しているのは獣系の魔物娘なんだ
あたしたちフォーリンダウンからも、もう何人も牧場で夫を手に入れているって話は聞いたことがある
つまり……牧場は獣系の魔物娘からすれば絶好の狩場なわけだな…
あたしは、路地裏とかのほうが好きだけどな
なんて、ペドさんと話をしていると、ペドさんがラグナロクさんに呼ばれたんだ
なんでも、一緒にお菓子を食べたいらしい…
複数人でお菓子を食べたら、太らない気がするとかどうとか…
……幻想だと思うけどな…あたしは
シアエガ「……もう9時かぁ…あたし的にはこの時間帯からがメインだけど…今日は抜けれそうにないし…もし抜けても、最近は出会いないからなぁ…」
あたしの仲間には、出会い頭に襲ってしまえって言う奴もいるけど…
それは、あたしの流儀に反しているから、あたしはできないっていう…
出会ってすぐになにも言わず逃げるような失礼なやつを捕まえて、好みに調教…もとい洗脳して、恋人をゲットする…
欲を言えば、洗脳は使わずにゲットしたい…それがあたしの願いであり、流儀だ
そして、今からは一人でミルクを飲むことになるのかと思っていた時だった…
守衛課のメンバーが話かけてきたんだよ!!
アカオニ「よぉっ!!飲んでるかぁ?」
シアエガ「ごふっ!?けほっ……いきなり話しかけてくるのはどうかと思う」
ウシオニ「そうつれないこと言うなっ!!肉…食うか?」
そう言われるやいなや、一気に口の中に入れられる肉の塊…
この独特のフォルムが……あたしの興奮を誘って……いつまでも食べていられそう…って違う!!
シアエガ「げほっ……」
ウシオニ「おぉっ!?す、すまねぇ…って、シアエガ、飲んでねぇじゃねえか、お酒」
アカオニ「なーにぃーっ?こんなめでたい場でお酒を飲んでない奴がいるだって〜?それはダメだなぁー……シアエガ!!」
シアエガ「あ、あたしは酒はあまり飲めな…だって、苦いし…」
アカオニ「苦くなきゃいいんだな…?じゃあこれだ……」
そう言って、目の前のアカオニはひとつの飲み物をあたしに渡してきたんだ
この飲み物……色も匂いも……ミルク…?
………なんだ、ミルクを飲んでいるんでもいいんだな…
だったらあたしはさっきまでも飲んでいたし…咎められることはないって事か
シアエガ「あたし、さっきまでもミルク飲んでいたんだぜ?でも…せっかくだしもらうよ…ありがとう」
アカオニ&ウシオニ「おうっ!!ぐいっといけ!!」
そう言われ、つがれたミルクをぐいっと一口………ん?
なんだろうこのミルク……喉奥に焼け付く痛みが…この感覚…お酒!?
アカオニ「これなら甘いだろ!?日本酒のミルクでわったやつだ!!」
ウシオニ「それだったら、苦みがダメでも大丈夫だな!!」
うぐぅっ……油断したァ…
顔が一瞬で真っ赤になり、頭の中がグラグラとし始めるのが自分でもわかる
あぁぁ…もうっ!!これだからあたしは酒はダメなんだと……
アカオニ「どうした?もう酔っ払ったのか?情けねぇなぁ…」
シアエガ「……あぁんっ?あたしが酔った?キヒヒヒっ!!そんなわけないだろ?おらぁっ!ミルク酒どんどんもってこーいっ!!あっひゃっひゃっはっ!」
ウシオニ「……なんか、様子がへんな気がするが…まぁいいか!!よぉし…俺も飲むぞぉっ!」
〜〜〜帰宅時間〜〜〜
ペド「ふむ……そろそろだな……みんな、帰るぞ!!蘭狐さん、今日もありがとうございました!!これは、フォーリンダウン特製の…アレです」
蘭狐「いつもすみません…皆さんが帰ったあとにでも、旦那といただきますね」
………ん?ペドさんが手招きしてる?いったいなんだ?
めんどくせぇが、行ってやるか…あたしは優しいから…
シアエガ「おっとと……ありゃ……おかしいな…足が思うように動かないよぉっと……ふぇっ……?」
目の前の景色が上下左右にグラグラ…グルグル…おっかしい…なー…
と、そう思ったとたん…あたしはその場に倒れ込んだんだ…
たぶん…今、自慢の単眼も複眼も目を回しているんだろうな
ソア「どーしたー?って、あぁっ!?シアエガ…酒飲んだな!?誰ぇ…飲ませたの……」
アカオニ「す、すまねぇ……つい調子にのって…」
ソア「いーよいーよ!!おねーさんが背負って帰るから……」
アカオニ「えっ…!?(ラヴァゴーレムだから、担いだらやけど程度じゃすまねぇんじゃ…)」
ウシオニ「(でも、旦那とヤル時とか、旦那やけどしてねぇし……大丈夫じゃねぇの?服は知らないが)」
ソア「よいしょっと……じゃあ、ペドさん…先に帰りますねー」
ペド「あぁ、またあした会おう……」
アカオニ「おい……これってシアエガの仕事着じゃ……」
ウシオニ「……あの人…シアエガの服だけ焼きながら帰ってるのか…朝起きたら驚くぞあれは…まぁ、魔物娘なら朝から全裸って状況でも、人間ほど焦りはしねぇだろうけどな」
〜〜翌朝〜〜
ふあぁぁ……あうぅっ…あたまがガンガンする…最悪の目覚めだ…
あたしは痛む頭を抑えながら、洗面所へ顔を洗いに行く…
……えっと昨日は……うーむ、酒を飲まされた後の記憶がないぜ…
あたしはいつの間に帰ったんだろうか…?
そう思いながら鏡の前に立つ……??
こ、この完璧なボディは…あたし!?って、なんであたし全裸なんだ!?
……別に、この時期は寒くねぇからいいけど…
そして、すぐに自分の部屋に戻り数着ある仕事用の服に着替え、食堂に移動する…
すると、そこにはソアと、一緒に同居している連中が飯を食べていたんだ
あたしたちに部屋を貸してくれているルルさんもいるな…
ちなみに、あたしがお世話になっているこの家…
その名も【レストハウス ルルイェイ!!】というふざけた名前ではあるけども……
何がレストハウスなのか…そもそもレストハウスとはなんなのかはあたしもまったくわかっていない
そんなところだけども…大勢の魔物娘たちがここで同居生活を送っている
全員フォーリンダウンに勤めているから…なんていうか…寮…みたいなものか?そんな感覚で考えてもらってもいい
ここにいるメンバーはあたしとルルさんを除けると……4人…
まずは昨日も紹介した…我田乃 ソア (がたの そあ)
次に性格はかなり…アレな…デビルの麻里 スゥ(あざと すぅ)
超電波系ネット廃人…リビングドールの愛里影 ダオロス(ありかげ だおろす)
臆病なバブルスライムの相武 ホース(あいみや ほーす)の四人だ…
………ん…?なんだ?その突っ込みてぇって顔は…
わかっているやつもいるみたいだが……そこに注意してはいけないんだぜ?
あたし的にも、その注意はNGワードだね
……深入りして、あたしたちに襲われたいなら止めないが…きひひっ…
シアエガ「おはよっ……はぁ…頭いてぇ…」
ホース「ど、どうしたんです?今日は遅いですけど…」
シアエガ「あぁっ?あー……昨日、飲み過ぎちゃって…うぅ…」
ソア「昨日は大変だったぞー?おねーさん、背負って帰ったんだから!」
スゥ「全裸で帰ってきたときは、もうドキドキしたよ!!新手の魅了ほうかって思ったぐらい!!ははっ!!」
なんて、言いながらあたしを茶化してくるメンバーの言葉を綺麗に流し…
サンドウィッチを頬張るあたし……そういえば、ダオロスはどこだ?
シアエガ「……ダオロスは?」
ホース「ダオロスちゃんなら…部屋にこもってネットゲームしてますよ?」
……やっぱりか…まったく、こう毎日ネットって…飽きないのか?
流石にそろそろフォーリンダウンに連れて行かないとまずい気がするな…
仕方がない…
シアエガ「ちょっと、呼んでくる」
スゥ「無駄だと思うけどねーー」
あたしは、食堂を出てまっすぐダオロスの部屋に行く……
そして、ダオロスの部屋の扉を勢いよくあげる…
??「……そこ、回復してくれないと困る…ST値下がったよ?ぼんやりしないで!!右右、周り見ないとだめだって…しまった!!ポイズンった…アンポイアンポイっと…この場所、効率マジウマ…レベ34までここで雑魚刈り…」
シアエガ「おーい…何ブツブツ言ってんだ?そろそろフォーリンダウン行かねぇと、色々怒られるよ?」
ダオロス「うわっ!?あわあわ……やば……あっ!?今日も助けてくれるんだね…【沈黙のデータ】さん!!助かる……ふぅ…敵全滅……っと、なに?シアエガさん…忙しいんだけど……」
………相変わらず、なんか少し同じ世界で会話してないようなへんな感じになっちゃうな…
沈黙のデータってなんだよ……まったく…
シアエガ「まったく…いつもいつもゲームばかり……大体、沈黙のデータ?それってなんだよ?」
ダオロス「えっ…?私の救世主だよ!!いつもピンチになったときに助けてくれる…私のゲーム世界での王子様なんだ!もぉ……好きすぎて好きすぎて…リアルでも会いたいんだけど…多分会えないんだよね……はぁ…」
………ふぅ…やっぱりダオロスはめんどくさいぜ…
話が通じてないって感じがビンビンするよ…
シアエガ「いいから、さっさと行こう!!」
ダオロス「嫌だ…だって、今日のイベは激アツで……ってえぇっ!?沈黙さん、ログアウト!?な、なんで!?どうして…!?いつも無言ログアウトなんてなかったのに…!?」
シアエガ「はいはい!!沈黙さんもログアウトしたし、お前も仕事にログインするんだ!!じゃないと、ペドさんにそろそろ怒られちゃうぜ?」
あたしはそう言うと、ものすごく嫌がるダオロスを自慢の触手で少し絡めとり、食堂に引きずっていったのだった…
ダオロス「むーーーっ…………」
シアエガ「そんな目であたしを見るなって…」
仕事に行く準備を済ませ、レストハウスを出ると、ダオロスがふくれっつらであたしを睨んできたんだ
そんな可愛い睨み、あたしの前では赤子も同然の睨みだけど……
それでも、いい気分にはならないな……
えっ?あたしの睨みがみたい…?見たら発狂は免れないLVだぜ?それでもか?
………そんなに見たいのか……まぁ、そのうちな?
なんて、色々あったわけだが……あたしたちがフォーリンダウンの本社につくと…いつものおっとりとした雰囲気とは一転した…
なんだかドタバタとしていたんだよ…
あたしが情報課に入ると、ペドさんが机にうつ伏せになって、小さい足をプラプラさせているところを見ると…もの凄い厄介事が出てきた……ってことか?
………うわぁ…すっごくいやーな予感がするなぁ…
ペド「社長〜……そんなに怒らないでくださいよ……旦那さんが悪いのはわかりますけど……むぅー…」
ん……?ペドさん…あの状態で電話をしているのか…
おそらく、相手は社長だろうけど……いったい社長とどんな話をしているんだろう……?
単眼の奥がむずむずする……これは…あたしの人生を動かす大きなことが…
起ころうとしているのかもしれないなぁ…
14/11/04 22:54更新 / デメトリオン mk-D
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