第一話 異世界?なにそれおいしいの?
俺の名前は光 一機(ヒカリ カズキ)
高1の冴えないメガネ野郎である。
他人と違うといえば異能の力を持っているということだけ。
その異能とは「闇を操る」ことである。
姓が光なのに、能力が闇
自分に矛盾を感じる今日この頃である。
非日常を待ち望んでいた俺にとって異能を手に入れた瞬間はとても喜ばしいことだった。
手に入れる過程は通学路の公園に犬耳の生えたメイドさんが云々という感じ。
話すと長くなるので以下省略っつうことで。
さて、そろそろ現状を確認するか。
「……草原?」
白いワンピースに白い帽子をかぶったお嬢様がよく似合う風が吹き抜け、草がゆれる草原。そこにたたずむ俺。
訳がわからない。記憶を整理してみるか。
「あー、確か部活が終わって、帰り道に何気なく橋から川を覗いててだな」
そこからどうした、俺?
「あ!そーだ、橋から川に突き落とされ・・・て殺されかけてね、俺!?」
しかし、川でも病院でも無く、草原。
生きてはいるが天国の可能性も否定しきれないわけだ。
「道か、これ?」
道といっても草原の中で草の少ない地帯が長く続いているといった程度だが。
「辿る価値は大いにあるな」
街にさえ出れば、ここがどこかぐらいはわかるだろう。
ここでふと気付いた。
「ここ、日本・・・なのか?」
日本じゃこんな風景見たことない・・・しいていえば俺の「ヨーロッパの春」というイメージを具現化したような風景だ。
「まぁ、人と会うこと優先ってことでいっか」
開き直りも大切だと誰か言ってた気もするしな!
「とりあえず刀出しとくか」
自分の影に手をつっこみ、何かをつかみ取る感じで引き抜く。
引き抜いたその手には日本刀が握られていた。
これが俺の異能を応用して作った「闇刀」
名前は思いつかなかったので適当だが、要するに闇をある形に固定できるということだ。
影も闇の一つの呼び名ってわけだ。
普通どこであろうとこれ銃刀法違反じゃね、とはこの時は考えていなかった。
「歩こう、歩こう。わたしは元気ー♪」
歩きながらジ○リの某名曲を口ずさむ。
わりとこういうことをよくするのである、俺は。
40分後
「広い、広すぎるぞ!、この草原!!」
さすがに2,3qは歩いた自信がある。
そろそろ街なり村なり見えても・・・
「おぉ!村だ、少なからず人がいるはず!」
と言いつつ、俺は走り出す気にはなれなかった。
前方にたたずむ人影が目に入ったからだ。
それは女性であるらしかった。
胸があって、体型がどことなく丸みをおびているから、多分間違いない。
しかし、俺の知る人間の女性といろいろ違っていた。
「あれは・・・尻尾か?」
異能を手にした時、回復した視力によってよく見えた。
なぜ今もメガネかというと異能を悟られないためというのが大きい。
それは置いといて、女性のお尻のあたりから尻尾が見える。
どうも爬虫類のそれに見える、しかも、動いている。
腰には剣を携えている。
人間の女性では、まずありえなかった。
「そんなバカな!?いや、話をしてみればよく出来たコスプレかも・・・」
そんなことを口にしつつ、女性に近づく。
彼女もこちらに気付いたらしい、こっちを見ている。
ちょうど良い、話しかけよう。
「あのー」
「ん、なんだ」
言葉がつうじてほっとした。
じつをいうと外国の人っぽいので言葉がつうじるか不安だったのだ。
「つかぬことをお聞きするが、その尻尾は本物・・・なのか?」
「変なことを聞くやつだ。本物に決まっているだろう、ほら」
そう言うと彼女は尻尾を左右に揺らした。
近くで見ると布や金属などの無機質な感じはせず、生きているものの温かみが感じ取れる。
さすがに異能で異形共を倒してきた俺も驚愕だった。
「ところでお前、戦士か?それとも冒険者か何かか?」
「へ・・・?」
彼女の突然の問いに間の抜けた声しか返せなかった。
「戦士か冒険者かと聞いている」
「俺は学生なんだが・・・」
「しかし、その得物、ジパングの物と見た。持ち歩いているのだから、少しは扱えるのだろう」
「それは、まぁ」
ジパングという言葉に聞き覚えがあったが今は無視していいだろう。
だって、彼女の瞳が爛々と輝いているのだから。
・・・嫌な予感しかしない。
「ならば、私と勝負してもらおう!」
「やっぱり!しかし、何故に!?」
「私は剣士でな、修行の旅をしているのだ。そのためジパングの得物にも興味があったのだ。ここで会ったのも何かの縁、いざ勝負!」
「俺は向こうの村に用があるんだが・・・まぁ、良い。久々の実戦だ、受けてたとう!」
どうせ倒さなきゃ通してくれないのだろうしな。
「受けてくれてくれてうれしいぞ。私の名はリノウ・イスクール。見ての通り、リザードマンだ。お前は?」
「俺は光 一機、姓が光、名が一機だ。見ての通り、人間さ。全力で行かせてもらうよ。」
「無論だ、カズキ。全力でなくては意味がない。では、こちらから行かせてもらう!」
剣を構えると同時に全力ダッシュか。速いなー、でも、異能は使用者の能力を上げる効果もあるらしいし、なにより俺の世界ではあれより速いのを何体と相手にしてきた。
だから、
「この程度のスピードなら普通に見えるんだよね」
抜刀と同時に接近してきたリノウの剣をはね上げる。
「なっ!?」
俺が避けると思っていたであろうリノウは驚愕の表情を浮かべながらも剣を防御の位置に持っていこうとする。
普通ならあのスピードを捉えるのがやっとだから避けるんだろうけど、生憎俺は普通じゃない。
一瞬で踏み込み、刀を振るう。
決着はついていた。
リノウの防御より速く、俺の刀がリノウの喉元に突きつけられていた。
「勝負ありってことでいいかな?」
「くっ、お前の勝ちだ、カズキ。まだまだ私も修行が足りないな」
「いや、リノウは強かったぜ。普通のやつならまず敵わないはずだ。俺の能力はチートだからな、気にすんな」
これで村に行ってここのことが聞ける。
いや、そういえばリノウに聞けば手っ取り早いんじゃ。
ん?なんかリノウが静かだな。
「なあ、リノウ、聞きたいことが・・・」
おかしい、明らかにリノウがほんのり頬を上気させ、目をうるませてこっちを見ている。
「ど、どうした、リノウ。急性の風邪か何かか?」
「カズキ」
「お、おう」
「私をお前の女にしてくれ!」
「うえぇぇぇぇえぇえぇ!?」
言ってる意味を理解できない。いや、理解はできる。リノウが自分を俺の女にしてくれと言っているのだ。
しかし、何故?
「な、何言ってんだ、リノウ。俺たち、出会って一戦交えただけだろ。どこで恋愛に発展したんだ?」
「私は私に勝った男と一緒になると決めていたんだ。そして、カズキが初めて私を負かした。だから、お前の女になると決めたんだ」
「いや、でも、良いのか。こんな冴えない男で一生を棒にふるんだぞ」
「私が良いと言っている。それにどこが冴えない男だ、あれだけの技能と力を持っているくせに」
まずい、断る言葉が見つからない。いや、リノウほどの美人ならまんざらでもないけどでもいいのか?
「うーー、やっぱ、ここは保留で!俺は先を急ぐんでそれじゃ!」
「あっ、待て、カズキ!逃げるなー!!」
トカゲ娘、リノウに追われて俺の異世界1日目は過ぎてゆくのだった。
高1の冴えないメガネ野郎である。
他人と違うといえば異能の力を持っているということだけ。
その異能とは「闇を操る」ことである。
姓が光なのに、能力が闇
自分に矛盾を感じる今日この頃である。
非日常を待ち望んでいた俺にとって異能を手に入れた瞬間はとても喜ばしいことだった。
手に入れる過程は通学路の公園に犬耳の生えたメイドさんが云々という感じ。
話すと長くなるので以下省略っつうことで。
さて、そろそろ現状を確認するか。
「……草原?」
白いワンピースに白い帽子をかぶったお嬢様がよく似合う風が吹き抜け、草がゆれる草原。そこにたたずむ俺。
訳がわからない。記憶を整理してみるか。
「あー、確か部活が終わって、帰り道に何気なく橋から川を覗いててだな」
そこからどうした、俺?
「あ!そーだ、橋から川に突き落とされ・・・て殺されかけてね、俺!?」
しかし、川でも病院でも無く、草原。
生きてはいるが天国の可能性も否定しきれないわけだ。
「道か、これ?」
道といっても草原の中で草の少ない地帯が長く続いているといった程度だが。
「辿る価値は大いにあるな」
街にさえ出れば、ここがどこかぐらいはわかるだろう。
ここでふと気付いた。
「ここ、日本・・・なのか?」
日本じゃこんな風景見たことない・・・しいていえば俺の「ヨーロッパの春」というイメージを具現化したような風景だ。
「まぁ、人と会うこと優先ってことでいっか」
開き直りも大切だと誰か言ってた気もするしな!
「とりあえず刀出しとくか」
自分の影に手をつっこみ、何かをつかみ取る感じで引き抜く。
引き抜いたその手には日本刀が握られていた。
これが俺の異能を応用して作った「闇刀」
名前は思いつかなかったので適当だが、要するに闇をある形に固定できるということだ。
影も闇の一つの呼び名ってわけだ。
普通どこであろうとこれ銃刀法違反じゃね、とはこの時は考えていなかった。
「歩こう、歩こう。わたしは元気ー♪」
歩きながらジ○リの某名曲を口ずさむ。
わりとこういうことをよくするのである、俺は。
40分後
「広い、広すぎるぞ!、この草原!!」
さすがに2,3qは歩いた自信がある。
そろそろ街なり村なり見えても・・・
「おぉ!村だ、少なからず人がいるはず!」
と言いつつ、俺は走り出す気にはなれなかった。
前方にたたずむ人影が目に入ったからだ。
それは女性であるらしかった。
胸があって、体型がどことなく丸みをおびているから、多分間違いない。
しかし、俺の知る人間の女性といろいろ違っていた。
「あれは・・・尻尾か?」
異能を手にした時、回復した視力によってよく見えた。
なぜ今もメガネかというと異能を悟られないためというのが大きい。
それは置いといて、女性のお尻のあたりから尻尾が見える。
どうも爬虫類のそれに見える、しかも、動いている。
腰には剣を携えている。
人間の女性では、まずありえなかった。
「そんなバカな!?いや、話をしてみればよく出来たコスプレかも・・・」
そんなことを口にしつつ、女性に近づく。
彼女もこちらに気付いたらしい、こっちを見ている。
ちょうど良い、話しかけよう。
「あのー」
「ん、なんだ」
言葉がつうじてほっとした。
じつをいうと外国の人っぽいので言葉がつうじるか不安だったのだ。
「つかぬことをお聞きするが、その尻尾は本物・・・なのか?」
「変なことを聞くやつだ。本物に決まっているだろう、ほら」
そう言うと彼女は尻尾を左右に揺らした。
近くで見ると布や金属などの無機質な感じはせず、生きているものの温かみが感じ取れる。
さすがに異能で異形共を倒してきた俺も驚愕だった。
「ところでお前、戦士か?それとも冒険者か何かか?」
「へ・・・?」
彼女の突然の問いに間の抜けた声しか返せなかった。
「戦士か冒険者かと聞いている」
「俺は学生なんだが・・・」
「しかし、その得物、ジパングの物と見た。持ち歩いているのだから、少しは扱えるのだろう」
「それは、まぁ」
ジパングという言葉に聞き覚えがあったが今は無視していいだろう。
だって、彼女の瞳が爛々と輝いているのだから。
・・・嫌な予感しかしない。
「ならば、私と勝負してもらおう!」
「やっぱり!しかし、何故に!?」
「私は剣士でな、修行の旅をしているのだ。そのためジパングの得物にも興味があったのだ。ここで会ったのも何かの縁、いざ勝負!」
「俺は向こうの村に用があるんだが・・・まぁ、良い。久々の実戦だ、受けてたとう!」
どうせ倒さなきゃ通してくれないのだろうしな。
「受けてくれてくれてうれしいぞ。私の名はリノウ・イスクール。見ての通り、リザードマンだ。お前は?」
「俺は光 一機、姓が光、名が一機だ。見ての通り、人間さ。全力で行かせてもらうよ。」
「無論だ、カズキ。全力でなくては意味がない。では、こちらから行かせてもらう!」
剣を構えると同時に全力ダッシュか。速いなー、でも、異能は使用者の能力を上げる効果もあるらしいし、なにより俺の世界ではあれより速いのを何体と相手にしてきた。
だから、
「この程度のスピードなら普通に見えるんだよね」
抜刀と同時に接近してきたリノウの剣をはね上げる。
「なっ!?」
俺が避けると思っていたであろうリノウは驚愕の表情を浮かべながらも剣を防御の位置に持っていこうとする。
普通ならあのスピードを捉えるのがやっとだから避けるんだろうけど、生憎俺は普通じゃない。
一瞬で踏み込み、刀を振るう。
決着はついていた。
リノウの防御より速く、俺の刀がリノウの喉元に突きつけられていた。
「勝負ありってことでいいかな?」
「くっ、お前の勝ちだ、カズキ。まだまだ私も修行が足りないな」
「いや、リノウは強かったぜ。普通のやつならまず敵わないはずだ。俺の能力はチートだからな、気にすんな」
これで村に行ってここのことが聞ける。
いや、そういえばリノウに聞けば手っ取り早いんじゃ。
ん?なんかリノウが静かだな。
「なあ、リノウ、聞きたいことが・・・」
おかしい、明らかにリノウがほんのり頬を上気させ、目をうるませてこっちを見ている。
「ど、どうした、リノウ。急性の風邪か何かか?」
「カズキ」
「お、おう」
「私をお前の女にしてくれ!」
「うえぇぇぇぇえぇえぇ!?」
言ってる意味を理解できない。いや、理解はできる。リノウが自分を俺の女にしてくれと言っているのだ。
しかし、何故?
「な、何言ってんだ、リノウ。俺たち、出会って一戦交えただけだろ。どこで恋愛に発展したんだ?」
「私は私に勝った男と一緒になると決めていたんだ。そして、カズキが初めて私を負かした。だから、お前の女になると決めたんだ」
「いや、でも、良いのか。こんな冴えない男で一生を棒にふるんだぞ」
「私が良いと言っている。それにどこが冴えない男だ、あれだけの技能と力を持っているくせに」
まずい、断る言葉が見つからない。いや、リノウほどの美人ならまんざらでもないけどでもいいのか?
「うーー、やっぱ、ここは保留で!俺は先を急ぐんでそれじゃ!」
「あっ、待て、カズキ!逃げるなー!!」
トカゲ娘、リノウに追われて俺の異世界1日目は過ぎてゆくのだった。
14/05/17 00:45更新 / 光
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