連載小説
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主従、そして
 部屋の中央に設置された広い作業台はしばらく使われていないために随分とホコリを被っていた。部屋の隅に山盛りになっているジャンク部品や大きな炉も同様だ。
備え付けの本棚には錬金、冶金などの専門書がびっしりだが、部屋の片隅にある小机にはなぜか古代の伝承や冒険の心得に関する文献が散らかっており、この工房の主人であるラクランが旅立つ前に何に傾倒していたかが窺い知れる。
懐かしいな、とラクランは思った。命を落とし、二度とここに帰って来れないという可能性も十分考慮していた。
領内で恐ろしく強大な「紅い眼の魔物」と遭遇したときは教国の情勢を心配したものだったが、意外にも国内はなんの変哲も無く、平和すぎるといっていいほどの様相でほっと胸を撫で下ろした。
ラクランは背負った一抱えほどの麻袋をことさら丁寧に、いたわるように床に降ろし、しゅるりと紐を緩める。
「セリア」
「はい、マスター」
人形の少女が中からふわりと浮き上がる。
「ここが、マスターの…」
セリアは興味深そうにその工房を見渡す。
「ああ、俺の祖国で、俺の工房だ」
大型の切断機や魔道具鑑定アイテムも一式揃ったそこは、確かに機械人形を詳しく調べるには最適だ。
「悪いな、ここでも家から外には出してやれそうにないんだ」
「いえ、マスター、セリアはマスターのお家が見られて感動です…!」
人形の少女は目をきらきらさせてラクランの工房を眺めた。初めて訪れた主人の家を、セリアは主人との最期の思い出として目に焼き付けようとしていた。
「それではマスター…セリアを…分解するんですね?」
セリアは神妙な表情で主を見た、ラクランに貢献できるのであれば、例え自分の存在が消えてしまおうともセリアにとっては喜びだ。
「…どうぞひと思いに」
「できるわけないだろそんなこと」
「えっ!?」
ラクランはさも当たり前と言った風に自らの使命を否定する。
「マスターは、セリアを分解してマスターの国のお役に立てるって…」
「セリアの痛みは俺の痛みだ、だからできない、誰がなんと言おうとセリアを傷つけるなんて俺には無理だ」
ラクランは憑き物が落ちたような表情で言った。ああ、この結論だったらこんなにもしっくり来る、心に澱のように溜まっていた違和感が解けて消えていく。優柔不断とかエゴイストとか祖国の恥とか言われたってもう知ったことか。
「祖国を変える手立ては、また別に探すしかないな…セリアはそれでいいか?」
「はい…セリアがマスターのお役に立てるのなら…!」
「そうだ、それだよ」
「はい?」
ラクランは人形少女の口癖に待ったをかける。
「セリアにとって俺が全てなら、俺にとってもセリアが全てだ、お前ばっかり従者なんて身分があって不公平なんだよ」
「だって、セリアはマスターに仕えることが喜びですから…」
「俺だってセリアのために生きられることが喜びだ……そうだ、もっと相応しい関係が欲しいな」
ラクランは顎に手をあて数秒辺りをうろうろしながら黙考すると、くる、とセリアに向き直る。
「ここからは全部セリアの自由意志だ、命令じゃない…自分で決めて自分で返事をするように、いいか?」
「は、い…」
人形の少女はきょとんとする、この主人は一体なにを考えているのだろう?
「俺の嫁になってくれないか?」
「………はいぃ!?」
セリアは突然のプロポーズに目を丸くした。
「セリアが嫁になれば俺は夫になる、この国じゃ法律上は無理だけどそういうことにしよう、そしたら俺は心置きなく生涯をセリアに捧げることができる」
「…マスターは人間のお嫁さんじゃなくて…いいんですか?」
「セリア以外に人生を捧げる相手なんていらない」
「……お嫁さんってよくわからないですけど…そ、そしたら、セリアがマスターにお仕えする関係はどうなるので…?」
人形の少女は大層不安そうな面持ちで主を見つめる。
「そりゃ解消……だろうな」
「それはヤです!!それだけはヤです!!マスターにお仕えすることがセリアの喜びです!」
人形の少女は慌てて自由意志を行使し、前のめりになって主の提案に猛反対した。
「困ったな…夫婦って対等なもんじゃ……じゃあ、夫婦、兼、主従…?」
「はい、それで、それがいいです、マスター!」
人形の少女の顔がぱぁっと明るくなった、それを見てラクランもつい頬が緩んでしまう。
「…お前がいいっていうなら、それでいっか」







 ぱん、ぱん、とラクランはベッドの上に積もったホコリを払った。だいぶ長い間家を空けていただけあって大掃除が必要なのは間違いないが、今日はこれで我慢するしかない。
「セリア」
少女の名前を呼び、ラクランはホコリを払った場所にセリアを導く。それに従ってセリアはおずおずとラクランの横に腰掛けた。
セリアは膝の上でぎゅっと白いカラクリ仕掛けのこぶしを握りしめている。
「セリア」
ラクランが再び愛しい従者、もとい嫁の名前を優しく呼びかけると、セリアの肩がびく、と震えた。
「マ、マスター…」
セリアが顔を上げると、不安で今にも泣き出しそうな顔をしていた。
「その、マスターには人形趣味がないんですよね…やっぱり、人間のお嫁さんをもらった方が幸せになれるんじゃ…」
しゅんと俯いて自虐するセリアを見てラクランの心が罪悪感でちくちく痛む。
過去、ラクランはセリアに「人形趣味じゃない」などと心無い言葉をかけた。意中の男性であるラクランにそんな言葉を投げかけられてしまったセリアにとって、それが思い出すのも辛いトラウマになっているのは言うまでもない。だからラクランには、そのトラウマを払拭する責任があった。
「セリアは、マスターにご無理をさせるわけには……」
「…人形趣味じゃないってのは、撤回だ」
「…………」
ラクランは真剣な眼差しでセリアの青い瞳を見つめ、銀色の髪をさらさらと撫でた。
「お前を好きなんだからきっとあるんだろう、人形趣味」
「マスター………」
(いやこんな遠回しな言い方じゃだめだ、なにをカッコつけてるんだ俺は、セリアのために生きるんじゃなかったのか…!)
ラクランはセリアの腰に手を回して抱き寄せる。ああ、こいつはなんて華奢で綺麗な身体をしてるんだろう。
「俺は…セリアを魅力的だと思う」
「…あ、ありがとうございま」
「セリアを抱きたい」
「はえっ」
「セリアとエロいことがしたい」
「ええぇへぇえっあの、あのあのあのっ……!!」
セリアの顔がみるみるうちにりんごの如く赤く染まっていく。
「いいか?」
「は、はい、セリアでよければ喜んで、マスター…!」







 「マスター、この体勢だとセリアからなにもご奉仕できません」
「いいんだよ、これで」
ラクランはベッドの上でセリアを後ろからひしと抱きしめていた。セリアは機械の膝を折り曲げて女の子座りしてラクランに寄りかかる格好だ。
あぐらをかいた中に愛おしい機械の嫁を抱きかかえる格好にラクランの庇護欲は満たされていく。
腕にすっぽり収まる小さい肩や白くてきれいなうなじを見ていると、年頃の少女を手篭めにしてしまったみたいで結構背徳的だ。
「やっぱりセリア、いいにおいだ」
「え、えへ、えへへ…」
ラクランはセリアの銀髪に顔を埋めてすんすんと匂いをかぐ。
セリアの陶磁のような肌からは少女らしい華やかで清楚な匂いが広がる、これはセリア曰く「マスターを愉しませるために」とついている機能らしい。
他にも抱きしめていてラクランが感動した部分はたくさんある、上下する胸は呼吸を模しているし、人形の肌の表面はなぜかしっとり汗をかいており、柔らかくて温かい。
「ひやぁっ、マスターそこっ…」
身体を愛撫すると、すべすべで柔らかな素体とはギャップのある、本来腰骨や肘がある場所についた可動部のゴツゴツとした硬質な感触を感じる。
確かに人外かもしれない、誰かの手による作り物と言われればそうかもしれない、だがそれすらも今のラクランには愛おしくてたまらなかった。
小ぶりだがお椀型に整った双丘に優しく触れると、頂きの回りになんだかしこりを感じる。ラクランはなんとなくそこを中心にぷにっと可愛らしい乳房を押し出してみた。
ぴょこん
「あ…やぁ…!」
と、蕾のようなちょこんとした桃色の乳首が素体から露出した。
「あれ、こんなのあったっけ…?」
「マスターに刺激されると出てきちゃうみたいです…」
「ははっ、やっぱりセリアはびっくり箱みたいな奴だ」
「それちょっと傷つきます、マスター」
少しムスっとしたセリアの頭を撫でてなだめると、ラクランはさっそく指先でその可愛らしい乳首をくすぐる。
「ひぁん……」
「どんな感じがする?」
「ぞわっとして、ちょっといけないことをしてるような気分です…んっ…これ…悪いことじゃ、ないんですよね?」
セリアはひざの機械関節をもじもじとこすり合わせて顔を赤らめる。セリアは奉仕に特化した魔物だ、生まれつき男性器への奉仕は心得ていても性感は知らない。初めての性的刺激に戸惑っているのかもしれない。
「それ、気持ちいいってことだ、きっと」
「ふー…んっ…セリアはマスターに気持ちよくされちゃってもいいんですか…?」
「もちろん、嫁だからな」
これから愛し合おうというのに、目の前の少女があまりにも無防備で、無垢すぎて微笑ましくなってしまう。
だが花も恥じらう純情な乙女に性を教えている、その最中にもやたらめったら滾っていく自らの剛直を見て、ラクランはこれまで知らなかった自分の恥ずべき一面を認識し、少し後ろめたく感じた。
「セリア、こっち向いて」
「はい、マスター」
くるん、と振り向いたセリアにラクランはそっと唇を重ねた。
「…ファーストキス…ってやつだな」
「……………!」
ラクランの言葉にセリアの顔色がだんだん青ざめていく。以前愛しい主人との約束を破った事実を思い出して頭がいっぱいになり、表情に出てしまったのだ。セリアは隠し事が絶望的に下手だった。
「…ん?どうした?」
「あ、あの、マスター、ごめんなさい!」
セリアは急にぺこりと頭を下げ、懺悔を始める。
「ん?まさかもう経験済みなんて、あり得ないよな?」
「じ、実は、マスターに内緒で…」
「なんだと!」
人様の嫁に手を出すなんてただじゃおかない、とラクランは勘違いから修羅の形相を浮かべる、それを見てセリアはぶるりとすくみ上がる。
「マスターとの約束を破って、寝てる間にキスしちゃってました、ごめんなさい!」
「……は……?」
「だって、寝てるときには勝手に近づいちゃだめって言われてたのに…セリアは従者失格です…」
「そういや言ったっけなそんなこと」
「ごめんなさいマスター…セリアのこと嫌いになっちゃいました…?」
「許した」
「へっ?」
「寝込みを襲ったのも、勝手にキスしてたのも全部もう許したし、これからは我慢せずいくらでもしていい」
「いいんですか…マスター、あんなに怒ってたのに…」
「これからは夫婦だからな」
ラクランはバツが悪そうに言うと再び唇を重ねた。
「ちゅっ」
今のラクランにとって、奉仕を拒絶してセリアを否定してしまったことこそ罪深い。だからこそセリアをきっちり愛する、幸せにする、これからは。
「んンッー!!」
にゅる、と薄い唇を割り舌を入れると、ラクランはセリアの舌をなぞり、味わった。
「はむッ…れる、れるるっ…」
「んンッ、〜〜ッ!!」
セリアはあまりの幸福感に目からはらはらと涙を流して恍惚の表情を浮かべる。ラクランが舌で抽送すると、セリアはまるで陰部に挿入されているかのように腰をびくびくと震わせた。
それはセリアにとって刺激的で、甘美にすぎた。
奉仕の魔物である彼女は主人の肉体の一部を口から摂取することで直接的に中枢回路で主人の存在を認識する。
セリアがラクランの指をしゃぶって幸せな気分になるのもそのためだ。だから、激しいディープキスなんてしたらセリアの中枢回路は主人の存在で隅々まで満たされ、多幸感で塗りつぶされてしまう。セリアにとってラクランのディープキスは麻薬そのものだ。
「ん、ん、んイーッ!!」
唇から舌を引張りだしてはむ、と甘噛みすると、セリアは主人の味と刺激に耐えられず切なそうに声を裏返して絶頂した。想定外のキスへの弱さにラクランはセリアを心配して覗き込む。
「はーっ、はーっ、はーっ…!」
「お、おい平気か?」
「はーっ、はーっ……ひゅ、ひゅごかったれふぅ…♪」
ついさっきまで純情な乙女だったセリアは、いまや息を荒げて口からたらりとよだれを垂らし、恍惚でとろけきった雌の表情を浮かべており、キスの余韻で舌が麻痺している。
目元は涙で濡れ、青い瞳は焦点のあっていないようでいて、いまだに信じられないほどの幸せを与えてくれたラクランの口元を物欲しそうにじっと見つめていた。
セリアがディープキス快楽に堕ちた瞬間だった。







 「あのマスター、失礼ですが……セリア以外に、ご経験は……?」
「いいや、セリアが初めてだ」
「……っ! とっても光栄です、マスター…!」
人形の少女の青い双眸に愛しい主の初体験の相手となれることへの感動でじんわりと涙が浮かぶ。
ラクランにとって一生を捧げると決め込んだ少女との初の情事になる、必ずいい思い出にしなくては、と緊張で肩に力が入る。
「それで……そもそも挿れられるのか?」
「はい…!セリアはマスターをいつだって受け入れられます…!」
「そうは言ってもな…」
ラクランはディープキスの余韻で忘我の境地を彷徨っていたセリアが回復するまでしばらく待ち、いよいよ本番行為にこぎつけようといったところだ。
やや埃っぽいベッドの上にセリアを仰向けに寝転ばせ、機械関節の股を開いて腰を近づける。
素体の股下はつるつるで性器がついているようには見えない、若干他よりぷにぷにしてそうなだけだ。セリアは股を主人にじろじろと見られて恥ずかしそうに目を背け、きゅっと手を握りしめる。
「マスターのおちんちんを、ここに…」
少女の手に導かれるがまま、ラクランは本来陰唇があるべき場所に押し付けた。
と、下腹部に印字されていた意味不明な古代文字が紫色にぽうっと輝き、素肌から浮かび上がるようにぴっちりした割れ目が姿を現した。
唯一無二の主人が肉棒を突き立てたときにだけ露出するようになっているその女陰は、ぬらぬらと粘液でピンク色に光って主人の侵入を今か今かと待ちわびている。
「うわあ……」
「は、恥ずかしいですから…!」
いやに期待感を煽る演出にラクランはごくりと唾を飲み込む、しかし初夜だというのにあまり恥をかかせるわけにはいくまいと気を取り直した。
「じゃ、挿れるぞ…」
「は、はい…!」
「痛かったらすぐ言うんだぞ」
今夜処女を散らす機械の嫁を優しくいたわりながら、ラクランはゆっくりとセリアの性器の中に自らの剛直を侵入させた。
「ん…うわぁああああああああ!!」
「ひやぁああっ…!」
セリアの処女膜をぷちりと破り、ラクランの亀頭がぬるぬるした肉壁を掻き分け最奥まで達した。
セリアは侵入してくる主の陰茎の感覚が愛おしくてたまらない、下腹部にビクンと痙攣する主の熱を感じてうっとりと恍惚の表情を浮かべる。魔物娘は、初体験でさえすぐ夫の性器に順応し、頭がとろけるような快楽が得られるのだ。
むしろ覚悟が必要なのはラクランの方だった。
「はっ…!はっ…!はっ…!」
ラクランは手負いの獣のように短く荒い呼吸を繰り返し、余裕を失っていた。
これは気持ちいいなんて話ではない、ぷつぷつと弾ける生温かいひだが一斉に襲いかかってくる、ぞくぞくと背筋に電流が流れ快楽で一斉に鳥肌が立つ。
たった一擦り、入り口から奥までの刺激で陰茎の先端まで怒涛のようにマグマが上り詰めてもはや果てる寸前だ、いやむしろちょっと漏れてるかもしれない。
出る、出る、このままじゃ出る、ちょっとでも動いたら出る、射精したい、助けてほしい。
「……い、痛くないか…?」
ラクランは気高い男だ、男のプライド的な意味で窮地に陥ってもなお声を震わせて初体験の嫁を気遣う一言をどうにかこうにか絞り出す。
「はい、ひとつになれてすっごく幸せです…♪」
「…………………………」
「あの……マスター?」
「…………………………待ていま」
「えいっ♪」
「あ!」
ラクランの反応に待ちかね、セリアはほんの少しだけ腰を揺すってみた。
「あああああああああああああ!!」
ラクランが白痴のような声を上げると堰を切ったようにどばどばと白濁が溢れ出し、人形の美少女の清らかだった蜜壺を真っ白に汚していく。
びゅっ!! びゅーっ!! びゅーーーっ!!
射精すれば射精するほどに、それに反応して肉ひだが絡まりまるで意思を持っているかのようにもっともっとと次の射精をねだり促す。
ラクランの名誉のために補足しておくと、ラクランはこれといって早漏なわけではない、むしろ普通の男性の平均よりやや持つくらいだ。ただ相手が悪かった。
セリアは隅々まで奉仕の魔物だ、セリアの性器は主人に極限まで奉仕して精を搾るために人間よりずっと可動部が多く発達しており、もはや性器というより搾精機構と呼ぶに相応しい。
亀頭は優しく丁寧に、カリ首はくすぐるように、竿は勢いよくしごいて、裏筋は舐め回すようにと全てに別々の快楽を与え奉仕することができる。
セリアに性経験はないが、その搾精機構でどうやって主人を天国まで連れていけばいいのかは魔物の本能が教えてくれた。
「ふふっ…マスターったら、とーっても気持ちよさそうなお顔…♪」
自らに覆いかぶさる主人が人生で未だ味わったことのないほどの射精快楽に翻弄される壮絶な表情にセリアは奉仕欲求がくすぐられつい淫らな笑みが浮かび、腰をくいくい動かしてよりラクランを愉しまようとする。
「おっ…!オオっ……!」
亀頭の先から睾丸まで、射精感がちっとも引いてくれない、それどころか加速していってる、このままいけばあっという間に枯らされてしまう。
ラクランは以前のセリアの夜這いを思い出す、あの夜に感じた恐ろしいほどの快楽は寝込みを襲われたことで記憶が誇張されたものだとばかり思っていた。だがそれは残念ながら間違いだ、セリアの天性の「ご奉仕」の才能は妄想でなく現実だ。
ラクランは咄嗟に腰を引いて性感の無限地獄から逃れようとする、だが引き抜こうにもすがりつくようにカリ首にひだが引っかかってきゅうきゅう吸い付き、膣内から陰茎を引っこ抜くのも一苦労だ。
ちゅっ……ぽん!
ラクランはやっとの思いで陰茎を引き出した、引き出してもなお射精は続いており、セリアの白く清らかな股下や腹部をびとびとと夥しい量の精液が汚していく。
「あ……マスター……」
ラクランにしてみれば永遠のように長く感じられたが、その交わりはほんの数秒のできごとだった。セリアはむくりと身体を起こしてラクランを見つめた。
ラクランがすぐに交わりをやめてしまったことが悲しくて、セリアの青い瞳にうるうると涙が溜まっていく。
「マスター…ひぐっ…やっぱりセリアが人形だから…」
セリアはぽろぽろ溢れる涙を指先で拭う、セリアの脳裏をよぎるのはやはり主人から拒絶されたトラウマだ。
セリアがラクランへの性的奉仕を行いラクランがそれを拒絶するというのは、セリアにとって思い出すだけで胸がえぐられるほど辛い一日とよく似た流れだ。
ラクランのピンチはまだ終わらない、夫婦の記念すべき初夜が嫁を泣かせただけで終わってしまう、それだけはどうしても避けなくてはならなかった。
「違う、違うんだ!……そうだ、俺はセリアにかけたかったんだ!」
ラクランは必死で頭脳を回転させ、セリアの肌を汚す白濁をヒントに急場しのぎの言い訳をひねり出した。
「え……ぐすっ…かけるって…どういう…?」
「そ…それはだな……セリアが俺のものになった感じがするから、俺の精液がかかったセリアが見たかったんだ……こういうのはちゃんと「ぶっかけ」って名前もあるらしいぞ…!」
「へぇー…ぶっかけ…そういうのが、あるんですねぇ…」
取り繕うあまり無垢な少女に卑猥な性知識を仕込んでしまう、だが肝心のセリアはなんとか泣き止んでくれそうでラクランはほっと胸を撫で下ろした。
「マスターは…ぶっかけがお好きなんですか?」
「ああ、もちろんだとも」
と、ラクランはセリアの青い目がなんだかキラキラと宝石のように輝いていることに気づく。
「セリアにもっとかけてください!次はどこがいいですか?お胸ですか?お腹ですか?あわかった、お顔見ていまちょっとニヤってしてましたね、お顔ですね!」
「待って待っていましごかないで!」
ラクランに奉仕できるとなるとセリアは途端に元気を取り戻し、お任せくださいとばかりに手コキを開始する。
「やっぱりお顔!マスターすっごいニヤけてます…!」
セリアの人形の指がにゅこにゅこと絶妙な力加減で粘液に塗れた竿をしごく、流石のセリアは手コキ奉仕も完璧だ。ラクランはセリアにされるがまますぐに催してしまう。
「ご遠慮なさらずに!さあ!たーんと!」
セリアは顔をラクランの陰茎にぐいっと近づけ、鼻先を亀頭にぴっとりくっつけて目を閉じた。
「ううぅっ!」
ラクランの陰茎からどぴゅどぴゅと精液がほとばしり、セリアの芸術品のように美しく可憐な美少女顔を汚していく。
セリアの奉仕快楽がもたらした射精の勢いは驚くほど強く、顔にかかってはびちゃびちゃ飛び跳ねて飛沫がベッドに飛び散ってしまうほどだ。
「えへへぇマスター見てください、いかがですかぁ…♪」
煮凝りのように濃くところどころダマになった精液で長い睫毛までべとべと、美しい銀髪にもところどころへばりついており、あごからはぽたぽたと白い粘液が滴っている。
それでも無理して喋るものだから口元から精液が入ってぷくりと泡が膨らんだりしている。
そんなえげつない状態なのにセリアはいつもの天使のようにあどけない笑顔ではにかむものだから卑猥で仕方がない。
途方もない量の顔射の直後だというのに、少女を汚す背徳と興奮は非常に股間に悪く、がちがちに勃起した陰茎をちっとも萎えてさせてはくれない。
「……待ってろ今拭いてやるから」
「…もういいんですか?セリアはずっとこのままでも」
「いい、拭く」
「ああんもったいない…マスターの精液、全部飲んじゃいたいのに…!」







 綺麗に顔からザーメンを拭き取ったつもりでもなお、粘っこい精液はなかなか簡単には取れずなんとなくセリアの顔や髪はカピカピとしている。
「マスター…!」
「セリア…」
一悶着あって、セリアとラクランは再び一つになろうという場面だ。さっきと同じ、セリアは仰向け、ラクランが上から覆いかぶさる格好である。
「………………」
ラクランはセリアの秘部を見つめる、あんなにぴっちり閉じて可愛らしい見た目をしてるのに、中には一撃必殺の凶器が仕込まれているというのだから油断ならない。
ラクランはセリアの腰をがっしと掴んだ。
(極上の名器だってことはわかった…だが今度は心の準備ができてるし、さっき射精したから幾分落ち着いてるし、腰も掴んだから刺激は調整できるはず…!)
すーっと深呼吸をする。今度こそ絶対に失敗は許されない。
(そうだ、セリアを生涯愛しぬくと決めた、俺の覚悟を舐めるな…!)
ぎり、と歯を食いしばってラクランは極限の快楽をもたらす搾精機構に決死の挿入を行う。
「ぐぅぅううううっ!!」
「お慕いしています、マスター…♪」
一度で果ててしまわぬよう、ラクランはセリアの腰を引かせようと試みたが無駄だった。なぜなら一度挿入してしまったら最後、セリアの膣内はセリアの意思によって腰とは独立に主人にご奉仕できるのだから。
「マスターはセリアを愛してくださいました…だからセリアはもう失敗するわけにはいかないんです…!」
ラクランの睾丸から精液がぐつぐつせり上がっていく中、セリアは機械関節の膝を折り曲げラクランの腰をがっしと蟹挟みにして退路を断つ。これで今夜のラクランは気絶するまで搾精奉仕快楽地獄コースを味わうことが確定した。
「セリアはマスターがどれくらい元気なのか、どれくらいどぴゅどぴゅできるのか、どれくらいで気を失いそうか全部わかっちゃうんです…一番長ーく、一番愉しく、一番気持ちよくなれるように一生懸命ご奉仕しますね♪マスター♪」
確かにセリアは主人の体液を摂取することで主人の健康状態を詳細に至るまで読み取ることができる、精液の残量とて例外ではない。
「セリアぁああ…!」
「切なくなってきたんですね…そろそろ一回、びゅーってしちゃいましょう♪」
ラクランは無慈悲な搾精マシーンと化したセリアのご奉仕に一方的に蹂躙される。腰が動かせない、せいぜい痙攣することしかできない、また出る、搾り出されてしまう。
びゅぐっ!! びゅぐっ!! びゅぐっ!!
「死んじゃうからぁあああああ」
「死んじゃいません♪」
「ひぃぃいいいい」
「可愛いマスター♪」
仕方がないことだ、セリアは従者としては生まれながらの天才で、ラクランは夫としてはまだ駆け出しに過ぎないのだから。
山ほどセリアとセックスすることで魔力を存分に浴び、ラクランが極限の奉仕快楽を味わってなお更なる快楽を求めて腰を振れる成熟した「インキュバス」となるまで、道のりは遠いことだろう。
セリアとの初夜とあっては、組み敷いたはずの処女に鳴かされるという夫的に情けない運命には抗えそうにもなかった。







 「おはようございます、マスター」
「……ああ、おはよう」
まだ暗い部屋の中、壮絶な交わりで気絶したラクランが目を覚ますと、傍らには大切な従者、兼嫁が佇んでいるのが見えた。
さんざん男らしさとは程遠い痴態を見られたあとで照れくさいが、それよりも起きたときにセリアがそばにいるというのが嬉しくて、ラクランは自分が選んだ幸福の味をぐっと噛み締める。
「セリアはお役に立てましたか?」
「…ヤッたあとまで言うのか、それ」
「セリアにとっては大事なことです」
「うーん…男が言うのは恥ずかしいんだよ、その……出したら、役に立ったってことにしてくれ」
「……!はい、もっともっとマスターのお役に立てるよう頑張りますね!」
開いてはいけないものを開いてしまったような予感がしたが、今は気にしないことにしよう。
「あれ…外、まだ暗いな…」
シャッとカーテンを開くと外は真っ暗だ、壁掛けの機械時計を見た限りでは、もう朝日が出ていてもおかしくない時間のはずなのに。
暗い空をなんとなく見渡してみると、東からどこかで見たような血のように紅い色をした太陽が昇ってきている。
「変な天気もあったもんだな」
「ですねマスター…でもきっとこれは、いいことが起きる前触れですよ」
レスカティエ教国の、長い夜が明けようとしていた――――――――――。
17/09/24 16:53更新 / 些細
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■作者メッセージ
【宣伝】
@同人誌限定後日談は、侵略後の教国でセリアが
 ラクランから襲ってもらうために魔界食材集めてアレコレするお話です。
 書店委託は売り切れましたが気になる方はDLsiteから是非!

A「ワタシのモノ」デーモン沙也加さんの方はDLsiteでおさわりゲー頒布開始しました。

B現時点でCGI作者ランキング2位の雑兵さん(代表作:頭脳明晰な死人,OFFLINE,etc.)と
 一緒に今年冬コミに応募しました!新刊鋭意作成中です、当選したらよろしくお願いします。

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