読切小説
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夜の
1

 闇のランプという代物を欲しがる者は少なく、その用途も限定的ではあるが、しかしこの話に関してはその闇のランプのことを語らなくては始まらないし、終わりも見えてこぬであろう。この闇のランプという代物、大海の主たるクラーケンの墨、もとい魔力を凝縮したクラーケンのスミと呼ばれるものを燃料とする魔道具であり、疑似的な夜を作り出すことが可能になる。が、疑似的な夜という時点で用途はかなり絞られ、精々暗黒魔界の宿に夫婦やカップルの情交をより情熱的にするための補助具として置かれているのを見るのがしばしば、逆に言えばその程度のものであった。
 その闇のランプを欲しがる者が一人。
 ある時、というより大体は物言わぬただの像。しかしてその正体は立派な魔物であるガーゴイル、リサはひたすら台座の上に佇んでいた。いや、佇む、というよりは動けないでいると正した方が本人の名誉も幾分か守られるもので。
 昼は身体がカチコチに固まってしまい、動けなくなるのがガーゴイルであり、どう足掻いてもこれに抗うことは不可能なのは本人とて承知しているところではあったが、しかし。
 承知はしていても、暇なものは暇だった。ここの台座にご丁寧に猥褻本の一つでも地蔵の供え物の如く捧げられていたならば、彼女とて暇を持て余すことなどなかったろうが、彼女のいる場所は美術館。美術館に「資料」として展示されている彼女の下へ猥褻本など置こうものならば、即座に職員はその職務に忠実に猥褻本を排除し、ついでにそれを貢いだ慮外者も施設の外へと蹴飛ばすだろう。そもそもここが宗教国家である時点で、そのような猥褻本を手に入れるのさえ一苦労なのである。
 そんな訳で、リサは太陽が昇っている間はひたすらに暇な時間と向き合うことを余儀なくされていた。だからといって夜になればそんな懊悩から解放されるかといえば、そんなことはなく、夜になれば動けるといってもそもそも夜中に美術館に訪れる酔狂な、というより犯罪者一歩手前の者がそうそういるはずない。
 自分から美術館を出る、という手段も勿論、床のタイルを全て数え終わってしまう時間の中で考えたが、どうにも思案せどその案は悪い方に転びそうでぞっとしない。
 もし出歩いたとして、万が一にも朝が来てしまったなら、その男の逸物を滾らせる肢体が日ノ本に晒されるのだ。その間に男を捕まえていれば話は別だが、捕まえていなかった場合、お天道様の下で淫猥な格好ながら諧謔味も感じられる姿で固まってしまう自分の姿は、冷や汗を額から流させるには十二分で。
(男がいるなら平気だけど、さすがに一人でってのは……)
 と、いかに淫乱であろうとも流石に一度その光景を想像してしまうと、中々実行に移せるものでもなかった。だが実行に移さねば流行り病さながらに身体を蝕む疼きというものは性質が悪く、そろそろ自慰による密やかな発散にも限界が来ていた。
 悶々とした気分は晴れることなく、むしろ堆積していく一方なので夜になれば所構わず男を襲ってしまうのも秒読みかと危惧されたときに。
(ん?)
 ふと、目が合った。
 気づけば台座の下で自分を見つめている少年が一人、じっと自分を見つめていた。歳はせいぜい二桁にとどくかとどかないかというところだろう。そんな少年が、どこかそわそわとしながらも尾籠な欲望を目に湛え、頬も染めながらしっかりと。
(……ははぁん)
 具に観察してみれば、少年の視線はどちらかといえばリサではなくその豊かな胸部に、美しい曲線美を描いた砲丸よろしく艶美なそれへと、官能根差したものを注いでいて。
 それも無理らしからぬことではあり、そもそもリサがなぜ宗教国家の美術館に展示されているのかといえば、邪教の異端さを知らしめる資料目的で展示されているのであって、その邪教が淫靡な色であるとくれば少年の性的好奇心を擽るのは火を見るよりも明らかで。
 もし自分が動けたならばまず間違いなく襲って少年の身体に跨り、卑猥に腰を揺すって精を啜っていただろうと思う反面、手を出せないもどかしさというものがリサを苛んだ。
(はぁ……見た目も結構可愛いし、襲いたいなあ。動けるなら)
(まあそりゃ叶わないんだろうけどさ)
(それにしたって、ちょっとアタシの好みだしここで逃すのは惜しいなあ)
 そうこう思っているうちに、少年は存分にリサの身体を目で堪能したのか、それでも若干の罪の意識はあったと見えて足早にその場を去っていく。
 この行為を少年が何度も繰り返したならば、リサはパブロフの犬よろしく少年を見るだけで条件反射でその身を疼かせ、終いにはその実験者に対して平手打ちの一発でもお見舞いしてやりたくなる気持ちにもなったろうが、幸いに少年がまた訪れることはなかった。
 堂々と会いに来たのだ。
 夜に。

「かぁ〜、暇だなア。どうしたって私ガーゴイルなんか」

 ようやく喉から声を出すという感覚を味わい、それをいいことに早速愚痴を吐くのは夜中。既に外では光源はせいぜい月くらいで、その淡い幻想的な光も美術館の屋内とあってはとどくことはなく、内部はある種肝試しにはもってこいのお化け屋敷の風情を漂わせて。
 尤も、お化けどころか本物のリサがいるので肝試しにやってきた者は揃って腰を抜かすことは免れないだろうが。

「……ん?」

 と、リサが何かを感じ取る。正確には、気配。自分以外に、この美術館に蠢く者の気配。

「……んん?」

 が、どうにも妙なのはその気配が堂々たるものではなかったことで。美術品目当ての盗人ならば、そもそも気配も気取られることなく華麗に奇術師の手品のようにその仕事を済ませるはずで。
 ならば肝試しと洒落こんだ酔狂なヤツかと思うと、どうもその気配はおどおどしていて臆病そう。どうにも明瞭にならない正体ではあったが、リサにしてみれば滅多にない機会だった。

「よしよし」

 意地の悪い笑みを浮かべ、その気配のする方へ息を殺して忍び寄る。もし女ならばちょっと驚かせてからかってやろう、もし男ならば――

「ふふふふ」

 期待に胸ふくらませながら、リサは完全にその気配を捉えると、獲物に襲い掛かる猛獣よろしく飛びかかった。
 館内に悲鳴が木霊し、それが後に美術館の七不思議として尾鰭がつき本人も意図せぬ怪談の一つに数えられることになるのだが、ここではその経緯などは割愛するとして。
 そんな悲鳴をあげた人物を取り押さえたリサも負けず劣らず、驚いていた。すっかり闇に馴れたその目は顔の輪郭もしっかりと暗い中でも捉え、同時に見覚えあるその姿にあっと声をあげる。

「スケベちび!」
「ごめんなさい許して取って食べないでえ!」

 本人からすればひどく不名誉な名前で呼ばれたのも気にせず、未だパニックを起こした頭はてんやわんやの真っ最中。恐怖と衝撃とよくわからないものでごちゃ混ぜになった回路はすっかり断線してしまい、涙すら浮かべる始末だったのを見たリサも流石に申し訳なさが湧き起こり、泣く子をあやす母親のようにしてなんとかスケベちびをなだめた。
 なんでも昼間に見てしまってから、身体に甘い疼きが広がって仕方ないのだという。本人すら自覚のない性の芽によってここまで闇の恐怖心を抑えながらやってきたのだから、その行動力にリサは大いに関心して……一計を案じた。
 それは性を覚えたての童子が人目を盗みながら猥本を買いに赴くような情緒を含んだ、若しくはひっそりと腹に一物をかかえた悪童のような。
 しかしその一計は確かにスケベちびの願望に沿ったものであり、欲望掻き立てるものであり。
 同時にリサの願い、もとい色欲を叶えるものでもあったのだからウィンウィンの契約はすぐに成立した。
 実に悪い、悪役の親玉が浮かべるべき手本のような笑みを浮かべ、間をたっぷりとってリサは言った。

「おまえ、闇のランプをとってきな。そしたら、イイコトしてやるよ」

2

 翌朝、魔道具を売る店の前にはスケベちびの姿があった。
 さて宗教国家とて魔法を生活に取り入れない理由はなく、言わずとも魔道具を売るいかにも魔女が住まわる風な店に露店は数知れず。しかしその中に火を灯すもの、こっそりと酒を造るもの、勝手に湯を沸かしてくれるものはあれど闇のランプとなると話は別だった。
 そもそも闇のランプの原料からして宗教国家には相応しくない代物で、魔物娘を邪なものとみなすのにどうして闇のランプがほいほいと商品棚に陳列されていようか。いや、そう簡単に見つかるはずもない。
 しかし光があれば影あるように、宗教が雨水のように浸透した場所であっても、必ず密やかな昏い悦びなどを愉しみたがるのが人の性である。規制をすれば必ずそれを掻い潜る者が現れるのと同じ道理で、そこまで頭が回らないスケベちびが闇のランプを取り扱う店を当てたのは、本当に奇跡としか言いようがなかった。

「どうしよう……あるといいなあ」

 見てくれは一見地味な東洋の趣でありながら、中に入れば中々どうして内装は贅沢と「わびさび」というやつが奇妙な調和のもとで横溢しているのがスケベちびの目ですら明らかだった。ここまでくると調和というよりは、一大混沌と言ってのけてくれた方がむしろしっくりくるというもので、その場の空気に思わず呑み込まれて目的を見失いかけたが一瞬。
 慌てて本来の目当てのものを思い出し、店員をきょろきょろと探してみれば、いかにも大鍋に入った液体をかき回していそうな風貌の老女が一人。存在だけでスケベちびにとってはちょっとした恐怖の対象ではあったが、リサが報酬に提示した「イイコト」への魅力が勝って数秒後には老女に話しかけているあたり、スケベも筋金入り。

「あのう……」

 と話しかけてみると、その外見からは意外なほどに柔和で温厚そうな笑みを浮かべるので、先程勝手に抱いた老女への失敬な先入観にスケベちびは恥ずかしさを覚えた。

「おやおや可愛いお客さんだねえ。おつかいかい?」
「う、うん。あの、闇のランプってありますか?」

 子どもはこうして嘘を覚える。しかし咄嗟に吐いてしまった嘘の禁忌の味の、なんと刺激的なことか。
 老女は笑みを崩さずに

「あるよ。丁度在庫処分に困ってたんだ。坊やにあげようかね」
「え!?本当に!?」
「あぁ本当さ。さ、おつかいなんだろ?親孝行しておやり」
「ありがとうお婆ちゃん!」

 こうして思っていたよりも簡単に、伝説の剣を一般人が引っこ抜いたが如き呆気なさで闇のランプを手に入れたスケベちびはそれを大事に抱えるとまずは自宅へと走っていった。真昼の美術館で使うには少々目立ちすぎる代物であったのもあるが、何よりリサから夜にまた来るようにと念を押されていた。
 今はただ急かすように五月蠅い心臓の鼓動と高揚感に呑み込まれないようにするので必死だった。
 だからスケベちびが店を出る直前に、老女の姿が翼の生えた見目麗しく妖艶な若い女性に変化――もとい、戻っていたことに気づかなかったのは無理もないことである。
 それが、リリムだったとしても。

3

 夜の美術館というのは伏魔殿的な不気味さを醸し出し、並べられた美術品の数々も暗がりの中ではいわくつきの代物に見えなくもなかったけれど、それを遥かに上回る期待値である「イイコト」の前には些細な恐怖だった。意気揚々と美術館に忍び込んだその心地は、遠足前夜のそれに似た高揚感があったが仄暗い欲望の餌食になるとは、この時のスケベちびにはとてもとても想像していないことだった。
 もっとも、想像していないだけで本能で察してはいただろうが、その正体知り得ぬ知識を持たぬスケベちびに引き返せと忠告しようとも無駄なことで。
 スケベちびはふたたび生気を取り戻した像の前に、嬉しげにそれを差し出した。

「お姉ちゃん、闇のランプ持ってきたよ!」
「へぇ……大して期待していなかったけれど、まさかまさか本当に持ってくるなんて」
「ねぇ、ねぇ!これでイイコトしてくれるんでしょう。いったいなんなの?」

 性の芽生えを目前にしている以外には、まだ穢れ知らぬスケベちびの身体を舐めるように視線でなぞると、リサはにんまりと邪悪な笑みを浮かべた。舌なめずりもそれに加わろうものなら、獲物を前にした猛獣のそれかと見紛うほどにぞっとする。
 その視線にあれ?と嫌な予感がしたスケベちびはなぜか一歩後退した。ほとんど無意識だったにも関わらず、半身の構えをして迎え撃つに万端の体勢を整える。
 ただ、その本能的な防衛行動もなにほどもない。
 なんのことはない。

「とぉっても、気持ちよくなるコトだよ」

 いつの間にか背後を取られ、視界が真黒に染まった。いや元々夜の美術館は暗かったけれども、これは原色のような強さを帯びた黒が光の出る幕を無理矢理交代させたような、不和を感じずにはいられない黒で。
 それこそが闇のランプの効力だった。
 あまりの黒に前後不覚に陥ったスケベちびの脳裏に過ぎったのは原始的な死への恐怖だったが、それもさっさと網膜から去った後に刻まれたのは、自身の顔を埋めた柔らかな乳房だった。それが見覚えのあるものだと――リサのものだと――気づいたのは身体が浮遊感に襲われた頃で、危うくスケベちびは発狂しかけた。

「ねえお姉ちゃん!これどうなってるの!?何がなんなの僕どうなっちゃうの」
「今飛んでるところだからしっかり掴まってなって」

 よくよく耳を澄ましてみれば、猛禽が羽ばたく時のそれのような音も確かに聞こえたがスケベちびからしてみればそんな音をじっくりと演奏会の観客よろしく聞く余裕などない。ただ己の身にどうか危険が降りかからぬようにと願うばかり。
 その願いが天に届いたのか、今後スケベちびの身に危険が降りかかることは一切なかった。
 降り注いだのはありったけのエロスと、媚毒の権化のようなリサの寵愛だけで。

4

 文字通り地に足がついてもしばらくは迷子の子熊のように右往左往していたスケベちびも、いよいよ諦めがついたらしく大人しくなっていた。どうやら連れ去られたらしいという現実はひどく心を不安にさせはしたが、取って食われぬことはないという事実と比べてどっこいどっこいの折り合いがなんとかつけることができた次第である。
 それどころか、発狂しかけていたスケベちびは今現在そのスケベ心を発揮しつつあるのだからなるほど男児というのはたくましい。
 その理由は目の前にある二つの豊な丘で、並の男であれば理性を失くして飛びついていきそうな曲線美を描くそれ。リサが「ご褒美」として少年の眼の前に突き出された乳房は、不思議と闇の中でもはっきりと輪郭が浮かびあがり、息を荒げたくなる。お互いの姿がなぜか見える不思議な闇の中で、ゆっくりとスケベちびはランプの報酬である果実に手を伸ばしつつあった。
 さて童話にせよ神話にせよ果実に手を出した、或いは口にしたものに待っているのは酷も酷な目ばかりなのが定石であって、楽園追放された一組の男女であったり王子の助けを待つのみとなったどこかの女子であったりと枚挙に暇がない。
 ご多分に漏れずむぎゅりとリサの胸を鷲掴みにした瞬間にスケベちびに訪れたのは胸が躍りそうなほどの高揚感、そしてマウントポジションをいつの間にか取られて自分を見下ろすリサがいるという構図だった。
 食べているつもりがいつの間にか食べられるという事態に理解が追いつかず、スケベちびが呆然としているのをいいことに、唇を強引に奪う。目を白黒させる間も惜しくなり、既に固くなっていた男性器を露出させる手際は熟練の娼婦のそれであり、ただただスケベちびは翻弄されるだけだった。
 舌がスケベちびの口内を蹂躙し尽くした時には焦点がぶれにぶれ、長いキスで酸欠により朦朧としかけている姿がそこにはあった。ただ、その頬が朱に染まりどこか表情が恍惚じみているのを見ると、魔物から与えられる快楽には敵わなかったと見えて。
 その成果に満足気な笑みを浮かべると、リサは圧倒的量感を誇る乳房でスケベちびのまだ幼いペニスを挟み込んだ。

「ほ〜ら。あんたのおちんちんが埋まっちゃった。食べられちゃったよ」
「ふぁぁぁぁ……」

 双丘に埋もれ姿が見えなくとも、その圧迫はまだ未発達な男性器には過剰なほどの快感となるらしく、脳味噌が蕩けたような顔を浮かべる姿は見る者が見れば情けなく思われるものにも関わらず。

「こうやって上下に動かしたり……こねてみたりしたらどうかねえ?」

 最高の感触は性の萌木を育てるに十分で、肉槍とでも形容すべき硬度まで勃起させるには役目を果たしていた。
 肉と肉が溶け合うような未知の快楽に翻弄されるスケベちびは、腰を自分から動かしてとにかく更に気持ちよくなろうと必死で、その様はリサの加虐欲と同時に魔物の性を擽った。
リサとスケベちびのいやらしい顔ときたらどうか。
 宗教国家の国民とは思えない淫靡さであり、胸の中に精を注ぎ込ませようとするその手管は悪魔的であって。
 いかにして宗教者が堕落するのかを物語っているような諧謔味があったけれど、それ以上に場に漂うのは肉欲の宴がもたらす発情の瘴気。
 肉槍が一度大きく胸の中で跳ねると、谷間から勢いよく白濁液が飛び出してリサの肌を染める。それだけで普通、子どもならば精根尽き果てて回復するにも時間がかかるのに、性の発芽と淫欲の肥料はそれを善しとしない。
 未だ硬度を保ったままのスケベちびは口端から涎をたらし、何かを懇願する視線をリサに注いでいた。言葉にするまでもない、と、リサはもう一度愛しげにスケベちびの唇を奪った。

「今度はここでイイコトしてやるよ」
「は、わぁぁぁ」

 返事を待たずに肉壺が肉槍を呑み込み、無数の肉襞がスケベちびの子種をせがんで愛撫を繰り返す。未知の感覚を味わったと思ったら、次に待っていたのも未知の感覚。
 許容量などとっくに超えていて。
 気持ちよさでどうにかなってしまいそうだったけれど。
 それでもスケベちびは幸せそうではあった。

「小さいけど、アタシ好みだしこれから立派に育ててやるよ」
「気持ちいい、気持ちいいよぉ……」
「聞いちゃいないか。ま、いいけどね。ふふふ」

 幸せそうなのはリサも同じで、胸の中で飛び交う多幸感に酔い痴れながら腰を動かして快楽を貪る様は、魔物然としていて溜息すら漏れそうなほど美しく淫らで。
 ん、ん、と短く喘ぎながら心に花咲かせ、もう離すものかと心に決意を固めながら。

「いつでも好きな時に射精しなよっ。受け止めてやるからさ」
「あ、あ、またくる。変なの、気持ちいいのがくるよ!」

 まるでリサの言葉が絶頂の鍵となっていたように、スケベちびは子種を膣内へと放出した。なけなしの精のはずなのに、衰えを知らず濁流の濃さを持つそれが子宮へと到達した瞬間に、リサの眼前に火花が散った。
 満足できない。
 ふとそう思った時には既にまた律動を繰り返すリサとスケベちびの姿があり、情交はまだまだ終わりそうにもなかった。
 ある宗教国家から一人の男児が行方不明となった数日後、その宗教国家は親魔物国家へと変貌を遂げることになる。
 が、それは二人にとっては最早どうでもいいことであるし、物語の顛末ともなんら関係のないものである。
 この二人に許可をもらって、ここまでの話をほぼ実話として……読み物としても楽しめるように小説のようにして書いた。
 私の文才がどれほどかは知らないが、これを、この物語を読んで少しでも魔物の認識を改めて貰えれば私としては――リリムである私としては――嬉しい限りである。

                              アルサ・ヴェイン/著
15/11/11 21:54更新 /

■作者メッセージ
そんなお話でした。楽しんでいただければ幸いです。
スランプ。

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