読切小説
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堕落へのいざない
 


 荒い呼吸を繰り返しながら闇の中を走る。
 足音はまだ僕の背中を追ってきていた。しっかりと確実に、その音は近づいてくる。

「はあ、はあ……! も、もう少しで……!」

 僕は身軽になる為に、背負っていた荷物を捨てる。
 貴重な鉱石や旅道具が詰まった大切なものだが、背に腹は代えられない。
 汗ばむ背中が軽くなったことを感じながら僕は、緩い上り坂を駆け上がる。

 洞窟はもう終わりに近づいている。
 僕の目には入口と、そこから差し込む外光が見えた。あそこに飛び込めば、きっと大丈夫。逃げ切れる。

 長い遁走で震え始めた足に力を込め、体に残った最後の力を振り絞って走る。
 もう少し、あと少し──

 僕は無意識に手を伸ばしていた。
 光を掴み取ろうと、必死にもがいていた。
 けれど、そんな僕の抵抗は。

 突然現れた龍によって、呆気なく阻まれてしまった。

「あ、ああ……!?」

 僕をずっと追いかけてきたドラゴンは、翼を使って空を飛び、僕の頭の上を飛び越えてきたらしい。
 昏い色の柔らかな肌に僕の開いた指が沈んでいく。
 僕の手は、彼女の大きな乳房を無理矢理掴まされていた。

 その柔らかな感触に戸惑う。指を手を離そうともがく。
 けれど僕の手首は彼女に掴まれ、逃げ出すことが出来なかった。
 振り解こうと力を入れても、龍の膂力に人間が勝てるはずがない。

「ハァ、ハァ……♡ つかまえ、たぁ……♡」

 怯える僕の腕をドラゴンが無理矢理引き寄せた。
 釣られた魚のようにされるがまま、僕は彼女に抱きとめられる。
 両腕でがっちりと肩を抱かれ、僕より少し高い体高からじっとりとした視線で見下される。
 背中の震えを感じながら僕は、彼女の、龍の顔を見上げた。

 ドラゴンは、邪悪な魔物らしい淫靡な笑みを浮かべながら舌舐めずりをする。

「にがさ、ない。おまえは、ワタシの、ものだぁ……♡」

 魔物の瞳が昏く光る。
 僕の背中がゾッと震えた。
 主神様の教えに背き、世に渾沌を齎す存在。
 その中でも特に凶悪で強力とされている龍種の魔物が僕を見ている。その口を開いて鋭い牙を見せつけ、今にも僕の喉笛に喰らいつかんと涎を滴らせているのだ。
 命の危機を前にして僕の身体はみっともなく震え始めた。

「こ、この……!」

 そんな心を奮い立たせる為、僕は首を反らせドラゴンの顔を睨み返した。
 白く長い髪。天に向かって伸びる一対の黒い角。暗所で過ごしていたからか、肌の血色は悪く、淀んだ光を放つ金の瞳は僕を射すくめ、開いた口から見える紫の舌は粘っこい唾液が纏わりついている。

 その風貌、昔見た図鑑に載っていたことを思い出す。おそらく彼女はドラゴンゾンビ。
 死したドラゴンが死霊となって蘇った魔物だ。
 龍の膂力はそのままに、アンデッドらしく本能のまま人間を襲う危険な存在。
 獲物を前に捕食者は、僕を値踏みするかのようにほくそ笑む。

「はな、せぇ……!」

 まだ自由になる足を開いてバタバタと暴れてみる。が、拘束は一向に解けそうにない。
 その抵抗が彼女を煽ってしまったのか、僕は一層強く抱き締められた。

「んっ、ぐぅぅ……!?」

 更に抱き寄せられた僕の顔は彼女の胸の谷間に埋まってしまう。
 その二つの塊は柔らかくて、ほのかに温かくて、心地が良い。魔物であれど女体の肌の熱を感じた僕の心臓がドクンと高鳴る。
 こんな状況だというのに、僕は情欲を煽られてしまった。

「アァ。にお、う。オスの、匂いだ。ずっと欲しかった。精の、匂いだぁ……♡」

 ドラゴンゾンビは僕の匂いを嗅ぐ。
 顔面が胸に挟まれて、身動きが取れない僕の身体を、ドラゴンは鼻を鳴らしてぎ回る。

 身体中を手で弄られた。
 冷ややかな指が、僕の肌を撫でる。その度にぞくりと、背中が震えて下半身に熱が溜まる。

「アハァ……♡ おまえ、勃起してるぞ……♡ チンポ、膨らんでぇ……子作り、したがってる♡ わたしとぉ……エレノアと、セックス、したいんだな……♡」

「むぅぅっ……!?」

 ズボンの隙間に柔らかくて冷たいものがねじ込まれる。
 どうやら彼女、エレノアの手が、指が、僕のズボンの中に入ってきたらしい。
 くすぐるように下着の中を弄られ、そのこそばゆさに身震いした瞬間、僕の硬くなったペニスは彼女の指に握られた。
 
「んぅっ……!? んぐぅぅっ……!?」

「チンポ、オスのぉ、チンポぉ……♡」
 
 エレノアと名乗ったドラゴンゾンビは、硬いそれを手のひらで包み掴んだまま、上下に擦り始めた。
 他者の体温と、自分のものではない手の感触。魔物のものとはいえ女性の豊満な乳房に溺れながら、ペニスを刺激されるのは心地が良かった。

 一人でするときよりも、ずっとずっと気持ちがいい。
 背徳の快楽は、疑問と恐怖に染まった僕の思考にゆっくりと浸透していく。

 どうして、魔物がこんなことをするのか?
 彼らは人を喰らうために襲ってくるのでは無かったのか?
 畏れ多くも主の教えに疑問が浮かんでしまう。

「ほぉら、きもち、いいだろぉ……♡ チンポ、こうやってしごかれるのぉ♡ 先っぽからぁ、ぬるぬるしたのが、出てきてるぞぉ♡」

 ちゅくちゅくと、僕のズボンの中から音が鳴る。エレノアの指が僕のペニスを掴んで上下に動く音だ。その刺激はとても甘美で、僕は思わず呻いてしまう。

「あぁんっ♡ くくっ、お前の吐息、気持ちよくなってきた声がぁ……、聞こえてきたぞぉ♡」
 
 僕の反応が気に入ったのか、エレノアはより手の動きを早くする。
 ズボンの中では見えないけれど、僕のモノはもうすっかりと勃起して、先っぽから汁を垂れ流していることだろう。

「あはぁ……♡ お前のチンポの匂いも濃くなってきたぞぉ♡ オスの、臭いぃ……。ワタシのメス穴もぉ、疼いてきたぁぁっ♡」

「むぐぅぅっ!?」

 そんな僕を見て、その手で感じて、彼女は更に強く僕を抱き締める。
 柔らかな胸の感触と、僕のペニスを扱く手が与える快楽が頭を苛む。
 もっと欲しいと、思ってしまう。

「はぁ、はぁ。ほしい。お前みたいな、オスが欲しいっ♡ ワタシの、住処にぃ……引きずり込んでぇ……♡ ずっとこうしてるんだぁ♡」

 ズボンの中の手淫は激しさを増すばかりだ。優しく包み込み、擦り上げながら上下に動く手の刺激に、僕はもう限界だった。

「子種を、搾り尽くしてぇっ♡ ワタシの卵に植え付けてやる♡ このチンポでぇ……子作りぃ、するんだぁっ♡」

 エレノアの淫靡な言葉と共に僕の限界は訪れた。

 びゅく、びゅるると硬くなったペニスの先から精液が迸る。ズボンの中で彼女を汚す。

「おぉぉぉっ♡ 出たぁ♡ ザーメン出たぁ……♡ おほぉぉおおっ♡」

 彼女は僕が吐き出した手の中の熱に嬌声をあげた。
 ペニスに纏わりつく指は更にキツく締まり、尿道を圧迫しながら精を残らず搾り取ろうとしてくる。その絶妙な刺激、快楽に僕は堪らず激しく射精を続けてしまう。

「い、ひひっ……♡ びゅるびゅる、出てるぞぉ♡ お前のせーし……♡ あっつい、子種がぁ……♡」

 ひひひ、と淫靡な笑い声が頭の上から聞こえてくる。
 彼女の乳房に顔を埋めて、その指に誘われるがまま絶頂し続けた。逃げ出そうと下半身に込めていた力が、みんなペニスから抜け出してしまって、僕は倒れないよう彼女に必死に腰にしがみついていた。

「あはぁ……♡ お前のせーしで、わたしの手の中、ドロドロだぁ♡」

 そう言ってエレノアは僕のズボンから手を抜いていく。
 指先が下着に触れ、その湿った感触が肌に伝わってくる。何とも言えない気持ち悪い感触に、魔物とはいえ初対面の女性の手で果ててしまったことを思い出し、今更ながら赤面してしまう。

「んふぅ……っ♡ 美味そうな、濃厚ザーメンだ……♡ んっ、ちゅるぅ、じゅぷっ……♡」

 そんな僕を他所に、エレノアはぴちゃぴちゃと音を立て、なにかを舐めしゃぶっていた。
 粘質な水音は僕の興味を強く惹き、谷間に埋もれた顔を上へと向ける。
 柔らかい脂肪の塊の隙間から見えたのは、彼女が指についた僕の体液を舌で舐め取る姿だった。

「ちゅるっ、んはぁ……♡ すごい。なんだ、コレぇ。甘美でえ、飲み込む度にぃ……♡ 胎が、疼く。さいこう、だ。もっと欲しいいぃ……♡」

 その行為に僕は呆然とする。
 自分の股間から出た体液を、見目麗しい女性が恍惚とした表情で飲んでいる。その光景は官能的で背徳的で、背筋がゾクゾクと震えてしまう。

「じゅるぅ……んっ♡ ぷっ、はぁぁっ……♡」

 手の窪みに溜まっていた僕の体液は、最後の一雫まで余さず彼女の口の中に入り、喉の奥に流し込まれていった。
 その残り香を味わうように、エレノアの長い舌が手の平をねっとり舐める。僕が夢中になっていることに気づいていたのか、視線を胸元に落とし、見せつけるように。
 エレノアは僕の精を綺麗に平らげた。

「はぁ、はぁ……♡ 美味かった、ぞぉ……お前の、精液♡ 濃厚でぇ……オスの匂いが、プンプンしてぇ……♡ 至福の、味だぁ……」

 「う、あ……」

 ぺろりと口の端を舐める彼女の顔を見ると身体が熱くなってしまう。
 射精したばかりだというのに、僕のペニスは、はち切れんばかりに張り詰めていた。

「 なんだぁ……チンポぉ……。また勃ってるぞぉ……♡ まだ、射精し足りない、のかぁ……?」

 僕の勃起の硬さを肌に感じたのか、彼女はにやりと笑みを深めた。

 「ワタシも、だ♡ あんな濃い匂い、かがされたらぁ……もっと欲しく、なってしまう……♡」

 エレノアは僕のズボンに再び手をかける。今度は下着ごと脱がされ、下半身を丸出しにされる。僕は抵抗することを忘れ、されるがままだ。

「んっ♡ くふぅっ……♡」

 彼女の口から甘い吐息が漏れる。その指が、ぐちゅぐちゅと音を立て始めた。

「私も、我慢の限界だ……♡ さあ、交尾しよう。お前の、チンポを…、ワタシのマンコに入れてぇ……種付け、するんだ♡」

 彼女の両手が僕の臀部を掴む。
 そしてそのままゆっくりと全身を持ち上げられた僕のペニスは、彼女の股座の温く湿ったものに触れた。
 ぞくり。と快感が背筋を走る。未知の感覚に僕は恐怖を覚え、喉を震わせ言った。

「な、なにを、するの……?」

「とっても、気持ちいいことだ。心配、するなぁ……。すぐにまた、射精させてやる♡」

 彼女は僕の身体を抱き締める。
 持ち上がった腰が、屹立したペニスが、ゆっくりと彼女の中に沈んでいく。
 亀頭が柔らかいものに包みこまれ、濡れた孔の奥深くまで進んでいった。

「あっ、ああっ……! やめっ……!」

 とてつもなく、気持ちがいい。
 ペニスが蕩けて無くなってしまいそうだ。そんな想像と快楽に襲われた僕は、彼女の腕の中でもがいた。
 けれどその細くしなやかな腕はびくとも動かず、僕を掴んで離さない。

「ひぃっ……!?  あ、あああっ……!」

 抵抗虚しく、僕のペニスは根元まで彼女の中に飲み込まれてしまった。
 熱くぬめった肉が、僕のモノを包み込み、締め付けてくる。手の中の温もりよりも熱い、じっとりとした粘つく体温が僕のペニスをきゅうと搾る。

「んはぁぁっ……♡ はいっ、たぁ♡ チンポぉ……オスの、おチンポぉ……♡ これぇ、これがぁ……ずっと、欲しかったんだぁ……♡」

 彼女は再び乳房に埋もれた僕の頭の上で、熱っぽい吐息を吐いた。
 僕のペニスは締め付けられ、絶え間なく甘美な刺激を与えられ続けている。
 気を抜けばすぐにでも射精してしまいそうだった。

「あぁっ…… はぁっ……んぁっ……!」

 呼吸や身動ぎで微細に身体が動く度、濡れた肉の筒が僕のモノをねっとりと扱く。絡みつく肉壁は貪欲に精を求めてくる。今まで味わったことのない快楽に僕は声をあげることしかできない。

「はぁ、はぁぁっ……♡ もう、ダメだ。こんなの、おかしくなる♡ がまん、できない。う、動かすぞ……♡ お前のチンポで、ワタシのマンコ、ぐちゃぐちゃに突いてぇ、貰うから、なぁ……♡」

 彼女が言うと僕の身体が動き始めた。
 エレノアの両腕が僕を抱えて、ペニスが孔の中を抽挿するように、自らの腰に打ち付け始めたのだ。

「まっ……てぇ……! やめっ……、こんな、のぉ……!」

 まるで玩具のように僕の腰は乱雑に動かされる。ぱんぱんと肌と肌がぶつかって、激しく、躊躇の無いストロークの刺激が僕のペニスに奔る。

「おっ…、おっ、おおぉぉっ……♡ すっごぉ……♡ チンポ、ずぼずぼするのぉ……きもちいいっ♡ ああっ、んん♡」

 彼女の獣のような嬌声が僕の頭の中に響く。
 柔らかな女の肌に包みこまれながら、絶えず激しく蜜孔を抜き差し続けた僕のペニスは、すでに限界だった。
 びくんびくんと脈動し、腰の奥から湧き上がってくる熱の塊を、彼女の中に放出しようと敏感になる。

「もう、やめっ……! これ以上はもう……出ちゃうっ!」

 僕は悲鳴を上げた。
 このまま絶頂してしまえばきっと、戻れなくなる。魔物の虜になってしまう。
 本能がそう叫んでいる。なけなしの理性が彼女に静止を呼びかける。

 しかしエレノアは僕の尻を一層強く掴むと、ペニスを深くまで突き入れ、言った。

「いいぞ……出せ♡ ワタシの中に、射精しろ♡ オスのチンポでぇ、ぐじゅぐじゅになったマンコに、熱い精液どぴゅどぴゅ出せっ♡ ぜんぶ、子宮でぇ、受け止めてやるから、なぁ……♡」

「あぁっ、あぁぁっ……!」

 その声に導かれるまま、僕の欲望は弾けてしまった。
 びゅくっ! びゅるるるるっ!!
 と熱い白濁液が尿道を駆け抜け、彼女の胎にぶちまけられていく。僕はまた、射精してしまった。

「んはぁぁぁぁっ♡ きたぁぁぁぁぁっ♡ あついのぉっ、精液ぃ……♡ チンポ、射精してるぅぅぅぅぅぅっ♡」

 エレノアの口から悦びの声が上がる。
 ペニスの先から体液が飛び出す快楽に、僕は頭の奥が痺れてしまう。
 全身を強く抱きしめられ、彼女の肉壺の中に精を吐き出し続けた。

「これぇぇっ、射精っ、なかだしぃぃ……♡ 種付けぇ、ずっと、されたかったのぉぉぉぉぉぉっ♡ チンポ、ハメたままぁ、子宮にドバドバ、せーし出されてぇ……♡ 赤ちゃん、孕みたかったのぉぉぉっ♡」

 彼女の一番奥に突き刺さったペニスは、肉の壁に抱擁されたまま絶頂を繰り返す。
 射精の勢いは衰えず、彼女の求愛に応じるように湧き出る熱を与え続けた。

「いくっ、いくいくいくいくっ♡ おっ、おおおおっ……♡ いぐっ、うぅぅんっ♡ 孕むぅっ……このチンポで、はらんじゃうっぅ……♡」

 彼女の絶頂につられるように、僕もまた精を吐き出す。
 その快楽の坩堝に嵌まった僕達は、硬く身体を結び合って、没我の悦楽を享受した。

「はぁ……、はぁっ♡ チンポ、たくさん射精した、なぁ♡ 偉いぞ、ワタシの旦那さま♡」

 絶頂の余韻に浸る僕の頭の上から、優しい声がかけられる。
 彼女はすっかり僕を『つがい』だと思い込んでいるらしい。
 魔物娘はそうやって人間の男を堕落させ、自らと同じ淫魔にしてしまうのだという。それは神の教えに背く所業。故に僕達は彼女達を神の敵としているのだが、そんなことはどうでもいいと、僕のペニスはまた膨らみ始めていた。

「あっ、んぅ……♡ くふっ、また、チンポが勃起、してるじゃないか♡ また、射精したいのか? ワタシのマンコに、種付けしたいのかぁ?」

 囁かれる、彼女の声。
 それは僕の心を溶かし、魅了し、堕落させる。

「したい……です。もっと、たくさん」

 もう、僕は我慢できなかった。
 胸の谷間から顔を出して、彼女を見上げる。
 僕の瞳はちろりと口端を舐める彼女の深い笑みを捉えた。

「そうか♡ いいぞぉ♡ もっと、いっぱい、交尾しようなぁ……♡」

 彼女の昏い、けれど美しい瞳が僕を見下ろす。その顔に、身体に、すべてに。
 僕はすっかり、魅力されてしまっていた。


24/09/28 06:44更新 / 煩悩マン

■作者メッセージ
最後までお読みいただきありがとうございます。
今回は短めですが楽しんでいただけたなら幸いです。
拙作への感想、評価ありがとうございます。大変励みになっております。
また煩悩のままに書き散らすと思いますので、UPされているのを見つけてお読みいただけたら嬉しく思います。

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