読切小説
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雄しべと雌しべ
四季と言うものをご存知でしょうか?
……はい。春夏秋冬、季節の移り変わりのことです。
ちょうど今の季節は冬から春になる移り変わりの時期になりますね。
皆さまの中には体感している方もいらっしゃるでしょうが、最近日差しを暖かく感じたり、天気に乱れが生じたりはしていませんか?
それこそが春の始まり。命が活発に動き出す季節の訪れ、雪が解け眠っていた動物達は眼を覚まし、草木達にとっては新芽を出して太陽の恵みを謳歌する誕生の季節です。

皆さまはご存知でしょうか?
物理の法則が乱れて年中過ごしやすいと言われている魔界にも実は沢山の種類があり、中には春夏秋冬のある魔界もあります。
このタイプの魔界は主に熱帯、亜熱帯地域を除いた森林地帯やジパング等元々四季が顕著な土地に多く見られます。四季の変化があることで生活にメリハリをつけているのでしょう。
しかし、森林地帯に発生した魔界はジパング等とは違い滅多に人が立ち入ることは無く、多くの人がその様子を知る事はありません
そこで今回はあまり知られていない四季があるタイプの魔界の春の訪れを例としてアルラウネの開花で紹介しましょう。


あの大きな蕾をご覧ください。花弁部分が大きく膨らみ、時たま動いています。
あれがアルラウネ。最近のぽかぽか陽気に誘われて今にも開きそうです。
アルラウネは寒さに弱く、冬の間はあの大きな蕾のように固く花弁を閉じているのです。もちろん外にむき出しになった花弁は凍りつきますが、最重要である内部は幾重にも折り重なった花弁が防壁となって冬の間も冷える事はありません。
そうして冬を耐えきったアルラウネは全ての花弁の氷が解けて周囲が暖かくなってきた事を確認すると少しずつ蕾を内側から膨らませてゆき、余計な養分を使わないようにしていたため少なくなった蜜を彼女の蜜壺ギリギリになるまでたっぷりと蓄えてから花開くのです。
そうして春の訪れとともに花開いたアルラウネは魔力の乗った大量の花粉を撒き散らします。
しかしなぜ雌花しか存在しないのに花粉を撒き散らすのでしょう?
それは生存競争を勝ち抜く為、自分の存在を周囲に知らしめる為と言われています。
アルラウネの蜜は希少価値が高く、貴賓高いその極上の舌触りと最高の香り、まるで天上からの贈り物のような味は多くの人々を魅了してやみません。また、彼女の蜜は甘味としてだけでなく魔界でも有数の強力な媚薬兼精力剤として取引されています。この媚薬効果は男性が使った場合はインキュバスでなくとも無尽蔵の精力を持つようになり、女性が使った場合、自らの心音で絶頂を迎えられるようになるほど体中の感覚が敏感になります。
そのため、甘味としてつかわれる場合はごくごく少量をポツリと付けるだけであり、媚薬としてつかわれる場合は50倍から100倍まで薄めて使われています。そうでもしないと体中の性感が狂いとんでもない事になってしまうからです。
大抵の場合はその蜜の甘い匂いに引かれてハニービーやその他魔物娘が彼女らの世話をしにやってくるのですが、ごく稀に場所が悪く魔物娘達にさえ気付かない場所に芽吹いてしまう場合があります。
ある程度は自ら発見されやすい場所にアルラウネ自身が移動するので事なきを得るのですが彼女らは移動する能力が低く本当に運の悪い場所、崖の下など彼女らの運動能力ではどうしようもない場所に芽吹いてしまうともう手の打ちようが無くなってしまうのです。
もちろん十数年は植物型の魔物娘の特徴である根を使って地中から養分や水を吸ったり魔力を集めたりして延命をすることができますが、やがて養分も尽きて枯れてしまいます。
そういう最悪の事態、誰にも気付かれることなく枯れてしまうことを防ぐために彼女らは吸い集めた魔力を花粉に乗せて毎年春に飛ばすのです。

では実際どうやって花粉によって自身の存在を知らせる事が出来るのでしょう?
それはアルラウネの花粉に乗った魔力にはいくつか作用があり、その中には強力な誘引作用を含むために自分の位置を伝える事が出来るのです。それではどのように誘引するのかアルラウネの花粉の効果を順に説明しましょう。

まずは自身の雄しべとなりうる人間の雄を誘引する作用。
大抵のアルラウネが生息する場所は森林地帯となっています。運よく森の浅い場所に芽吹いたのならばなんの苦労もなく雄しべを見つけることもできますが、森は広大であり、前述のように彼女らは移動をすることも不得手です。
また、人間は森の中を危険だと知っているため余程の事態が発生しない限り奥深くへと入ろうとしません。そのためなかなか普通のアルラウネは相手を見つけることができず、彼女らは自らを発見してもらえるように誘引作用の強い花粉を飛ばすのです。
実はこの作用にはすでに雄しべが存在している場合は他の雄を正気に戻す作用と雄しべをより効率良く興奮させるような作用に切り替わる機能があります。
必要以上に獲物を集める意味はないという意思が垣間見えますね。

次に自身の手入れをしてくれる存在に場所を知らせる作用。
これは彼女らの蜜と引き換えに様々な世話をしてくれるハニービーなどに蜜の匂いよりも強く働きかけ、自らの居場所を知らせる機能です。一人では脱出できない場所に芽吹いてしまった場合に最大限に役割を発揮する作用ですね。しかし実はこの作用は自らを追い込む諸刃の剣にもなり得ます。

そして最後に花粉を吸い込んだ魔物娘や人間の女性を蜜のように甘いエッチを好むトロトロに蕩けた性格にする作用があります。主にマタンゴや精霊達と並んで無差別生体バイオテロ兵器と呼ばれている由縁はここにあります。
ですが花粉を飛ばす彼女たちをどうか憎まないであげて下さい。花粉を飛ばす事は自ら動くことは難しい彼女らが生きる為に必要な機能であり、普段は強気なアルラウネ達も誰にも愛し愛されることもなくたった一人で枯れてゆくことは寂しいのです。

……あ、今あのアルラウネの蕾が開き始めました。中身を見る限りどうやらまだ雄しべを獲ていない若い株のようですね。
ご覧ください、開花と同時にまき散らされている黄色い粉がアルラウネの花粉です。
あの花粉は非常に細かくて軽く、風に乗って広い範囲に散らされてゆきます。風に乗った花粉は気象条件が整った場合約150kmは飛ぶと言われています。しかし、花粉に乗った魔力は安定していないため、保存などをしない場合直ぐに魔力が花粉から離れてしまいます。そのため、いくら気象条件が良くとも花粉に乗った魔力が効力を発揮するのはおよそ40km以内と言われているのです。

……偶然にも近くに番のいない男性がいたようですね。身なりから予想するに山菜取りに来ていたところを道に迷い、こんな場所まで来てしまったようです。ふらふらと歩く様子は完全にアルラウネの花粉に中てられた証拠。もうアルラウネを見ても躊躇することなく近付いてゆくでしょう。
ほら、アルラウネが男の姿を確認するとしきりに辺りを気にしながら誘惑を始めましたよ?
それもそうでしょう。ここは森の中でも割と深い場所にあり、滅多に男性が訪れる事はありません。ここで逃げられたら次はいつ獲物が来るかわかりません。
それに先程紹介した花粉の作用の二つ目、他の魔物娘を呼ぶ機能が今も効力を発揮しています。
アルラウネの花粉に導かれてやってきた他の魔物娘に折角の男性をお持ち帰りされてしまう事が多々あるのです。

……どうやら今回はハニービーたちはまだやってこないようですね。ふらふらと正気を失い気味の男がアルラウネのすぐそば、花弁の縁まで来ました。こうなれば後は邪魔が入ろうとどうしようもありません。
あ、アルラウネの表情がホッと一息をついたかと思うとすぐに嗜虐的な笑みに変わりましたね。あの嗜虐的な表情はある種の見栄と言われています。彼女らは総じて気が強く、自身が優位であると彼女自身に想いこませることにより数年単位の不安感と孤独感を和らげるのです。

そう言っている間にもアルラウネの蔓が男性の衣服を切り裂き、全裸にさせ、巻きつきました。こうすることで花弁の中に邪魔なものを入る事を防ぐことと、直接肌を触れ合わせることで蜜を獲物に直接擦りこんで魅了することの二つを同時に果たすのですね。

さぁ、男が蔓に持ち上げられ彼女の花弁の蜜壺に足先から少しずつ、少しずつ沈められてゆきます。
先程紹介したようにアルラウネの蜜には強力な媚薬作用があり、薄めないで使うと大変なことになってしまいます。その原液で満たされた蜜壺に腰まで浸かってしまったらどうなるのでしょう?
それではその様子をアルラウネの求愛とともに説明しましょう。

まずアルラウネは腰までどっぷりと蜜に浸かった男性の耳元で何かを囁きながら少しずつ少しずつ体に蜜を掬ってかけてゆき体を擦りつけます。これにより既に花粉で混濁した男性の精神を媚薬と甘い言葉で蕩けさせ、自身の存在を男性に擦りこんでゆくのです。
すぐに男性の息があがってきましたね。これは媚薬が効果を発揮してきた証拠。既に男性の中では彼女の存在が大きく刷り込まれているでしょう。実際男性の陰茎は凄まじく勃起をしておりビクビクと脈を打つたびに透明な液体を吐きだしています。
しかし彼女達は最後まで油断する事はありません。蜜まみれになってあまりの快楽にがくがくと震える男性に自身の体を熱心に擦りつけ、陰茎を蜜濡れになった手でヌチャヌチャと音を立てながらしごき、情熱的な愛の言葉を振りかけ一気に落としにかかります。
ここで疑問なのはアルラウネ自身には蜜は効かないのか?といった点です。今の彼女は元から浸かっていた花弁につながる脚の部分の他にも男性への愛撫によって全身が蜜まみれなのに、媚薬が効いている様子はありません。なぜでしょう?
それは彼女らに蜜の媚薬を吸収しても即座に分解して新しい蜜の材料にする機能があるためです。しかし、彼女にも蜜の効果を発揮してしまう場所があります。それは膣道の奥にある魔物娘にとって一番大切な場所です。
彼女のようなまだ若く雄しべが存在しないアルラウネの膣内部には全く穴のない薄い膜があり、そこが常に蜜の浸入を防いでいます。ですがもしその膜が破られるとどうなるのでしょうか?
今から実例が入りますので、それとともにお伝えしましょう。

いよいよアルラウネの求愛行動は終盤へと入り、男性を自らの雄しべとする段階に入りました。この時点で男性はすでにアルラウネ以外の女性では満足どころか射精できるかも怪しいほどにアルラウネの存在を刻みこまれています。ようやくここにきてアルラウネも安心したのか嗜虐的な笑みの他にも慈愛の笑みが混ざってきましたね。
そして、ゆっくりとアルラウネは自らの蜜壺と男性のペニスに蜜を塗りたくり、
男性を導くように自らの蜜壺へと当てて
一気に腰をおろしました。
人外の快楽に我慢の限界を超えた男性が激しく絶頂を迎え、種をアルラウネに注ぎ込んでいるようですね。しかし、アルラウネは一向に気にすることなくネチャネチャと粘液の音を立てながら激しく男性に擦りついています。
これはもうこれ以上ないであろう快楽を男性に与えることによって獲物の意識が覚醒してもアルラウネから離れたくなくならせるためです。
そしてここまでがアルラウネの求愛行動のうち、男性を雄しべにするまでになり、ここからはアルラウネが雌しべとなる段階に入ります。

……どうやらアルラウネが自身の異変に気付きました。今まで完全に快楽を与える側だったのにだんだんと自身も快楽を味わい始めた事に戸惑っているようですね。
膣口とペニスに塗った蜜が精液とともにたっぷりと子宮に入り込んだようです。
アルラウネは自身の媚毒が自らの子宮に入ると劇的に効果を発揮させることを知りません。
どうやら先程の膣口や陰茎に蜜を塗る行為は他の個体でも見受けられ、本能的に彼女らがする行為であるようです。

彼女の瞳は初めての媚薬効果によって完全に淫欲の色へと染まり、体を擦りつける動きから腰を振って快楽を求める動きに変わっています。
男性側もそれを感じ取ったのか激しく腰を突き上げるかのように動かしているようですね。
ここからでもキュンキュンと締め付ける彼女の膣の音が聞こえてきそうです。
最初は戸惑い気味だったアルラウネも今ではすっかり快楽の味を覚えたのか激しく男性に奉仕しているようで、乳蜜をたっぷりと蓄えた両胸をせわしなく擦りつける姿がお分かりになられるでしょうか?ああすることで自身の性感を高めていくと同時にサキュバスでもきついと言われる蜜の原液をお互いに刷り込みあい、お互いの全身に浸透させていくことがアルラウネの愛情表現の一つとされています。
しかし、お互いに擦りこみ合うと言ってもこの時点ではまだアルラウネの肌には蜜の分解機能があります。実際に蜜の媚薬を肌から吸収しているのは男性だけということになりますね。
これでは不公平だとお思いになられる方もいらっしゃるでしょう。ですが御安心ください。アルラウネは花粉と蜜に関連するトリガーがいくつもありその中には媚薬の分解機能を失わせるトリガーもあります。もうすぐその機能が垣間見えると思いますのでゆっくり説明していきましょう。

おっと今度はネチョネチョと激しい粘液音を立てながら男性に抱きつき蜜を口移しで男性に飲ませ始めました。あれはアルラウネの愛情表現の中でも最上位に位置する親愛のサインであると言われています。……これではゆっくり説明する暇もなさそうですね。
本来気の強い彼女らは自身の蜜の評価を知っていて滅多なことでは差し出そうとしません。
しかし、誰かの世話を必要とする春先と獲物の男性、自らの伴侶と認めた男性だけは例外で蜜を差し出します。
瓶やバケツに入れる一番目、性を搾り取るために蔓で振りかける二番目、そして自身の体を使って奉仕する三番目。今回はそのなかでも三番目であり、必要量のみの一番目、二番目とは違い自身の蜜を湯水のように使う事を全く惜しみません。
また最初の方で軽く触れましたが、アルラウネの蜜は媚薬だけでなく甘露としても最高峰の評価を持っています。そのため気の強く自らの蜜の評価を知る彼女らが肉体を使って奉仕し、意中の人に舌を絡めあって最高の舌触りを持つ極上の甘露を分け与える事は最高の愛情表現だと言われているのです。

あ、花の一部からまた花粉を噴出させましたね。これはこの瞬間アルラウネ自身が雌しべとなった証拠です。快楽と愛の悦び、子宮に大量の蜜と精力を男性のペニスにより擦りこまれたアルラウネは二度目の花粉の放出をします。この際に花粉の効果にスイッチが入り今、雄しべとなった男性以外の男を正気に戻す作用を付与させるのです。
また、一シーズンに二度目の花粉の放出は彼女の媚薬分解機能を停止させるトリガーとなっています。その結果彼女は自身の精製した強力な媚薬の原液に常に浸かる事になり発情状態が止まらなくなってしまうのです。

おや、男性がまた射精したようです。しかし一つの花になった彼らはもうそう簡単には止まらないでしょう。その証拠に雄しべも雌しべも絶頂に次ぐ絶頂を迎えても激しく蜜を掻き混ぜながら、相手を片時も離さないと言わんばかりに抱きしめ大輪の笑顔を咲かせています。




……ようやくアルラウネの花粉を感じ取ったハニービーがやってきたようですね。
そしていつの間にかに正気に戻ってもなお相手を離そうとせずに腰を動かし続ける男性と嬉しそうに蜜を擦りこみ続けるアルラウネを見て羨ましそうな顔をした後、そのまま一言二言アルラウネと会話を交わし手に持つバケツで蜜をすくい取ったかと思うとそのまま飛んで行ってしまいました。


これが魔界の春の訪れの一部になります。
これ以上を紹介するのは野暮ですのでこの辺りで私どもは退散したいと思います。
それでは皆さま御清聴ありがとうございました。
12/03/15 09:26更新 / ごーれむさん

■作者メッセージ
きっと微エロ。多分微エロ。恐らく微エロ。

リアルで花粉症なせいでカッとなった。反省する気は無い

アルラウネ花粉症な妖狐とちゅっちゅしたいお……

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