三話 街へ
リュシーとサリーさんに連れられて、僕はカリドの街に入ることになった。
カリドという街は、大陸でも有数の中心都市の一角、というより、端に位置する場所にあるらしい。また、この地域は争いごとが少ないらしく、結構平和な場所かつ、所謂親魔物に部類される街なのだそうだ。どうりで通りを歩いていると魔物の姿が多く見られるわけだ。日本もこんな感じだったなぁ〜なんて思ったりして。
ちょっと歩くと、街の検問所の前に着いた。検問所といっても、砦のように大きくはなく、木造の簡素なたてものだった。
サリーさんに先導されるように進んでいくと、入り口の脇に立っている衛兵にサリーさんが声をかけた。
「やぁ、元気にやってるか?なにも異常は・・・ないか。」
「こんにちは隊長。今日も空気が気持ちがいいですね。」
「全くだ。もう少しで夜だ、体を冷やさないようにな。」
「ありがとうございます隊長。」
・・・
「あの、サリーさん?今、隊長って・・・まさか?」
「ふっふっふ。。。サリーさんはですね、なな、なんと!!この町の警備隊長だったのです!」
ばばーん!!!
「な、なんだってー!?」
「そんなに驚くことはないじゃないか。。。」
「あ、すいません。いやしかし、まさか隊長とよばれる立場だったなんて・・・」
「あとねあとね!サリーさんとっても強いんですよ!この前なんか、岩山をパンチで砕いたんですよ!あとあと・・・」
その後、リュシーちゃんがサリーさんのすごいところを延々と話してくれた。放り投げた野菜を空中で千切りにしたとか、家の屋根に一ッとびで乗ったこととか、酔った男10人を全員「傷つけずに」気絶させたこととか。そして話の最後に
「とにかく、サリーさんは生きるチートなのです!!」
といって区切った。ちーとというのは、規格外とかもはや超人という意味らしい。
「まぁ、つまり同時にサリーさんには何かあっても歯向かわないこと、っていうことだろ?」
「ふふーん♪そうですよ〜」
「まぁ、自分で言うのもあれだが、下手な真似はするなよ真之介♪」
なぜか語尾が弾んでいた気がするが気にしないでおこう。
「さて、すっかり立ち話をしてしまったな。それではカリドに入ろうか。」
「はーい」
「あー、緊張する・・・」どきどき
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「これは・・・」
カリドの街にはいった真之介の第一声である。
「む?どうした真之介よ。そんなに不思議な光景か?」
「いやちがう・・・まるで僕がもといた地・・・そう・・・京・・・そんな感じがするんだ。」
カリドの街は、大きな街道が中央に通っている。そしてその横には様々な商店が構えているのだ。違うところというと、格子状に道が通ってないところくらいか。そして、その中央には、もう夕方だというのにたくさんの人や魔物で賑わっている。各々、笑っている物、強そうなもの、なにやら忙しそうな物、空を見ると茜を背景に飛び交っているものと、その様子は様々である。そんな街や人々の光景は、真之介にとってどこか懐かしささえ感じてしまうようなものだったのだろう。
「そうか。それではすぐにでもこの街になじめそうだな」
「あぁ、そうだといいな。」
・
・
・
「それにしても、似ているけど似てないなぁ。。。」
「なんだそりゃ」
「なんというか、この壁の造りだとか、店構えだとか、なかなか見慣れないものが多くて。」
「ふむ。それならば、明日にでもこの街を歩き回ってみるとよい。はやく街にもなじまないとな。」
「そうだな。そうするとしよう。」
「さ、いろいろ話していたらアトリエに着いてしまったぞ。おーい、起きろリュシー」
「うぅ・・・ふみゃ・・・まだ眠いです・・・」
「そういうな。もうついたぞ。」
そうサリーさんがいうと、僕の背中に負ぶさっていたリュシーちゃんはまだ眠そうにしながらも、なんとか起きれたようだ。・・・つーか、寝てたんだな。だから静かだったのか・・・
「ふあぁ・・・みなさんおはようです。」
「おはよう。というよりおそよう。」
「・・・さてシンさん!ここはどこですか!」
「うん。あとりえの前だよ。」
「はう!もう着いてましたか!」
「さっきからいってるじゃないか。」
「きいてませんでした!(きっぱり じゃ、改めて・・・ようこそ!僕のアトリエに!」
[アトリエ(atelier]・・・画家、彫刻家、工芸家、デザイナなどの仕事部屋のこと。
アトリエの外装は、いたってシンプルで、隆起のない表の壁には、リュシーちゃんが描いたであろう様々な花模様が描かれている。そして、入り口の上には[アトリエ・リュシー]という、主の名前を冠した看板がかけられている。内装はアトリエという名前の通り、一番大きいへやに一人でつくったであろう様々な絵画、像、小物のようなものまでが飾られている。そして、奥にはリュシーちゃんが作業をする部屋があるらしいが、サリーさんもほとんど入ったことがないらしく、作業部屋のドアには「しんにゅうきんし!」と書かれていた。これがアトリエの一階である。
「すごいな・・・全部ひとりで作ったなんて・・・」
僕にはよくわからないものも多いけれど、どれも本当に美しく、躍動感があり、しなやかで、洗礼された作品ばかりだ。。。
「ふっふっふ〜♪もっとほめてもいんですよ〜♪」
言葉にならなかったので、頭をなでておこうか。
なでなで・・・
「〜〜〜♪」
・・・、
あーもう、いい笑顔しちゃって・・・かわいいなぁ・・・
「よし、それじゃあ二階に上がろうか。・・・真之介?」
なでなで・・・
「ふみゅ〜・・・あったかいです〜♪」
あー、僕もなんだか幸せだ・・・もうしばらk
こぉぉぉぉ・・・
刹那、背後から殺気を感じた真之介は、それで現実に帰ってきた。
「二階にあがろうか・・・?早く・・・?」
そこには、サリーさんが笑顔(?)で立っていた。というより、立ちはだかっていた。切れ長な目がいつもより大きく見開かれている気がする。。。なにこれ怖い。
「すいませんでした。ごめんなさい。どうしてこうなった僕。」
「わかったらいいんだよ。自分を責めなくてもいいさ。いやなに、私は怒っていないよ。だ・が、話は一回で聞けよ?」
「はい。せんせーしゃる。」
「よろしい。あと、リュシーも誘惑するんじゃない。」
「うぅ・・・シンさんの手あったk」
「Are You OK?」
「さー、いえすまーむ。」
「さて、それでは行こうか。」
こぉぉぉぉぉぉぉぉぉ
せめてその紫色のオーラを隠してくださいサリーさん。
ともかく、アトリエの二階に上がった一行。二階は二人が住んでいるところである。作りは洋風であり、白を貴重としたシンプルな部屋のつくりをしていて、家具などは効率よくおかれ、全体的に整っている。
「おおぉぉ・・・一体どうなっているんだ・・・」
真之介はというと、またもや異文化に触れた驚きや喜びのようなものに浸っていた。
「ふぅー、今日は疲れました〜〜」
リュシーちゃんは近くのイスに腰を下ろした。そして、サリーさんも、その隣に座った。
「さ、真之介も座ってくれ。・・・なに、襲ったり壊れたりはしないよ。」
「う、うむ。。。」
やはり、初めてのものばかりに囲まれると、緊張というものはするだろう。真之介はそれをどうにか振り切ろうと、イスに座ると一つため息をついた。
「ふぅ・・・」
・
・
・
しばしの沈黙
「なぁ、真之介よ」
「はい?」
「今さらなんだが、もっと詳しくお前について教えてくれないか?ジパングの文化だとか、その服装だとか、今までなにをしていたのかとか、、、さっきはいろいろとごたごたしてて聞けなかったから・・・」
「僕も!僕もシンのことしりたいです!」
真之介は無言で頷いた。
「僕の生い立ちは・・・
11/02/06 01:44更新 / れじぇん道
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