二話 招待
「「・・・・・・」」
少女と目があってしまった・・・どうしようこの状況?というか、なんでこの娘は僕に抱きつく形になってるんだ?しかも誰だろう?
「にぱー♪」
・・・か、かわいい・・・じゃない!とにかく落ち着こう!ここは会話から・・・
「や、やぁ・・・」
「こんにちはです〜。お兄さんお名前はなんていうんですか〜?」
「え、あぁ・・・僕は[中村真之介]という。。。」
「シンノスケ・・・ですか〜。僕はリュシーです。種族はリャナンシーです。」
へぇ・・・りゅしー・・・あれ?・・・りゃなんしーって、たしか・・・大陸の・・・?
「・・・りゃ、、、りゃなんしー?」
「へ?どうしたんですか〜?」
「・・・・・・すまないのだが、ここはどこだ?」
「・・・ここはカリドの外れの草原だが?」
[りゃなんしー]という単語に驚いた僕の質問には、[りゅしー]と名乗る少女ではなく、もう一人のそばに立っていた女性が答えた。
「・・・もしやあなたは・・・りざーどまん・・・ですか?」
「そうだ。リザードマンのサリーだ。よろしく。」
そういうと、[さりー]という女性は軽く一礼した。
「あぁ忝い。。。それで、ここは・・・その・・・[かりど]という場所なのですか?」
「そうだが?ところでお前はこんなところでなにをしていたんだ?昼寝か?」
「昼寝ですか〜?あとこの服なんですか〜?」
・・・どういうことなんだ・・・?
真之介はすぐに答えられないでいた。
なぜなら、彼はこの大陸で言う[ジパング]出身であった。そんな彼の生きている時代のジパングから大陸へ行ける人などほんの一握りの人のみであった。当然、真之介はその一握りに入るような家柄ではなく、そのため、平民が大陸や異文化について学ぶためには、数少ない文献に頼るほかなかったのだ。
目覚めてからというものの、突然目の前に少女がいたり、彼にとってあまり聞きなれない単語を当然のように連発されたりして、結構混乱していたのだ。
「・・・ここは日本なのか・・・?」
「ニホン?・・・よくわからないが、服装から察するに、お前はジパング出身なのか?」
「・・・ジパング?・・・そうなのかもしれない・・・」
「そうか。珍しいものだな、ジパングからの来訪者というのは。」
「あはは〜ジパングです〜♪」
幸い、人よりも頭が切れ、大陸や異文化に興味があった真之介は、わずかながら文献で知識を身につけていたのだが、突然見知らぬ場所、しかもジパングではない場所に放り出されてしまっては混乱するのも当然のことだった。
・・・そんな・・・こんな馬鹿なことがあり得るのか?
「・・・それでは、ここは・・・その[じぱんぐ]ではないのか?」
「うむ。その通りだ。・・・しかし、何故お前はこんなところで寝ていたのだ?・・・しかも何の装備や持ち物もなしに。」
「そ、それが・・・」
「全く、覚えていないとでもいうのか?」
「あ、あぁ・・・すまない・・・しかし、覚えていることというと、頼まれていた墨と紙をもらいに行って・・・その時天気が悪かった上に、雨を凌ごうと森の中をくぐりぬけようとしたら・・・運悪く雷があたって・・・そしたらここに・・・」
「もう何が何だかわからないような理由でここにきたんだな。。。」
「うむ。。。」
「しかし、話の流れからすると、その雷が起因しているのか・・・?」
「・・・恐らく、というより、今はそれしか考えられない。」
真之介にしても、サリーにしても、この理由だけではわからないことが多すぎた。なにせ、雷に打たれたら普通は即死、もしくは全身火傷するような事故なのだから。今回に至っては、人が大陸間を移動してしまったという、常識を軽くこえた現象が起きたものだから、理解は簡単なことではないだろう。
「「「・・・・・・」」」
お、重い・・・どうにかしないと・・・
「と、ところで、お二人はどうしてここへ?」
「あぁ、今、リュシーの絵のために模写する景色探しをしようと思っていてな。いざ町をでたらここにお前が倒れていた、ってことだ。」
・・・そういうことか。
「そういうことですよ〜・・・あ、忘れてました!!」
「「??」」
「あうー、すみません・・・
あの〜、
僕、人が倒れているのなんて初めて見ましてですね・・・だから、ちょっと興奮しちゃって・・・
だから・・・
・・・もう一回死んでください!」
・・・は?
「・・・今、なんと?」
「はい!もう一回死んだ状態になってほしいな〜って思ったんです〜♪お願いします!」
「な、なに初対面に突拍子もないこと頼んでんだよ!っつーかなにが折角だ!しかも僕は死んでない!」
「で、でもでも!もう二度と人が倒れているところなんて見れないかもしれないんですよ〜!シンノスケはレアなんですよ〜!」
「いやだ!っつーか怖いよ!」
「・・・グスッ・・・お願いします・・・」
うぐぅ・・・泣くだなんて少女の特権使いおって・・・
「全く、ただ倒れているだけでよいではないか・・・おい、真之介。」
「は、はい・・・?」
「・・・歯、食いしばれ。強制突破だ。」
あれ・・・?サリーさん、なんか低く構えちゃって・・・強制突破!?
「うわ!!ちょ!まっ!だm」
「リュシーのためだ。・・・くたばれぇ!」
そう言ったかと思うと、僕の視界からサリーさんがフッと消え、そして下腹部のあたりに黒い影が見えたかと思ったところで、突然そこから衝撃のようなものが走り、、、脳まで衝撃が来たときにはもう真っ白だった。
(あぁ・・・これが気絶・・・っつーかなんつー力・・・ガク)
その後、僕が倒れたところで、リュシーちゃんは無様な僕の姿を興奮した様子で描いていたという。。。
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「・・・・・・う〜・・・ん」
「あ!シンノスケが起きたです!はむっ・・・」
「やぁ、おはよう真之介。あむ」
二人は食事中か・・・
「ううぅ・・・お爺さんが見えた・・・ん?」
「「あふ?」」
・・・なんだ?この白い、青い、黄色い、赤いものが挟まった三角形のものは・・・?
「あの、一体なにを口に運んでいるのだ?そんなもの見たことがないぞ・・・?」
「あふぅ〜、こふぇふぁ・・・ゴクン!・・・これは、[サンドイッチ]ですよ〜サリーさんがもってきたですよ〜」
「うむ。リュシーが描き終わった頃にはもう昼過ぎでな。しかしお前が目覚めないものだから、ここで昼食をとろうと思ってもってきたのだ。」
「三度・・・一致・・・」
大陸にはこんな食べ物があるのか・・・?うーん、興味が湧いてきた・・・
「あの、僕にも一つもらえないだろうか?」
「ふぇ?ふぁいでふ〜」
そういってリュシーちゃんは、今まさに口に運んでいた、くっきりと歯形のついたそれを渡してきた。
「できれば新品を頼みたい。」
「[できれば]なので、これを食べてくださいです!今なら僕との間接キスができるです!」
リュシーちゃんは、なんだかキラキラしながら歯形のほうを此方へむけ、ズイッ!と迫ってきた。
「キ、キスがなにかは知らないが!し、新品で、新品で頼む!」
「えー、もったいないです〜」
そうはいったものの、僕の言葉におとなしく従ってくれた。そして代わりに新しいものをくれた。・・・なぜか若干悔しそうに。
「おぉ・・・これがさんどいっち・・・どうやって食べればいいんだ?」
おおぅ、中のものがあふれそうだ・・・
「上下のパンを手で挟むようにして、そのまま口に運べばよい。」
「サリーさんの手作りなのでおいしいですよ〜♪」
「そんなことは言わんでよろしい!」
・・・なんか緊張する・・・
「「・・・」」
「どきどき・・・どきどき・・・」
しばしの沈黙があった。そして、ついに意を決したように真之介が動いた!
「・・・アグッ!」
「「!!!」」
「もしゃもしゃ・・・」
「どうだ・・・?」
「おいしいですか・・・?」
「・・・・・・美味い。」
「おぉ!それはよかった!」
「やったです〜!一歩進化ですシンノスケ〜!」
「なんだろう、この赤い物の酸味、そして、緑色のこう、シャリ!っとした感じ、すべてがちょうど良いほどに合わさっている・・・特に黄色いやつが気に入った・・・!」
こんなにもうまいのかさんどいっちよ・・・日本でも食べたいものだ・・・
「うわ〜!卵が気に入ったみたいですよサリーさん!」
「うむ!とにかく、作った甲斐があったというものだな。」
これが卵なのか・・・?そういえば、そんな感じがしなくもないが・・・どうやってこんな味がだせるのだろう?・・・すごいぞ大陸・・・
「あと、この上下のもふもふはなんだろうか?これも見たことがないぞ・・・?」
「これは[パン]ですよ〜ちなみに麦からできてるんですよ〜」
「こ、これが麦から!?・・・信じられない・・・」
「まぁとりあえず!遠慮せず食べてくれ。こんなにも私の料理を気に入ってくれたお前が気に入ったぞ!」
「わ〜いです〜♪」
その後、用意されていたものの半分以上を平らげていった真之介だった。
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昼食をとった後、サリーさんが切り出した。
「ところで真之介よ。お前はこれからどうするのだ?」
「え?どうするかって・・・?」
「身寄り、はないはずだよな。」
僕は黙って頷く。
「じゃあ!僕らのアトリエに来るです!それでいいですよねシンノスケ〜!」
「お、おぉ・・・しかし・・・」
迷惑では? そう言いかけたが止めた。確かに僕はさっき突然ここに来た身である訳で・・・もちろん身寄りなんてあるわけがないし・・・
「いいじゃないか。身寄りはないだろうし。それでどうだ?真之介よ?もしかしたら、お前が来てしまった理由が探せるかもしれないぞ?」
「キラキラキラ・・・」
「・・・いいのか?」
「もちろんです〜♪」
リュシーの言葉で意を決したのか、真之介はその場で座りなおし、所謂[正座]になった。そして、そのまま頭を深々とさげて
「宜しくお願いします。」
「やった〜〜〜〜〜〜♪♪♪」
僕がそういった瞬間、リュシーちゃんがぼくに勢いよく抱きついてきた。
ご き り
「あぐぅあ!!!?」
「ん?なんだ今の音は?」
「ん〜〜〜♪すりすり〜〜〜♪」
「おごあぁぁぁ・・・首がぁぁぁ・・・」
そのとき僕は白目をむいてたかもしれない。しかし、犯人はお構いなしに僕に頬ずっていた。
「よし、そうと決まったら、早速帰るとしようかリュシーよ。」
「あ、はーいですー♪シン〜〜〜起きるです〜〜〜!」
ペシペシ・・・
あ、懐かしい感触が・・・
「う・・・うぐぅ・・・わかった・・・よっこらせっと・・・」
真之介はとりあえず起きあがろうと、リュシーをくっつけたまま立ち上がった。
「それでは!僕らのアトリエに〜〜出発進です〜〜〜!」
「かりど・・・あとりえ・・・どんなところなんだろ?」
真之介の頭は、先ほどまでの混乱そっちのけで、これからのリュシーたちとの生活、そしてカリドの街に期待しまくっていた。
11/02/01 22:59更新 / れじぇん道
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