読切小説
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キキーモラさんと意地悪なご主人様
私のご主人様はとても意地悪です。

毎朝ご主人様を起こすことは、キキーモラという魔物娘にとって必要不可欠な栄養分である『ご主人様の寝顔』を補給する、とても大切な儀式であると言ってもいいことです。
だというのに、ご主人様は決して寝顔を見せて下さいません。どんなに早く(と言っても、現実的に起こしても問題ない程度に早い時間ですが)私がご主人様のお部屋に行っても、ご主人様はベッドのシーツなど畳みながら眠気を感じさせない爽やかな笑顔で私に『おはよう』と言うのです。
私の親友であり、同じ種族の魔物娘であるTさん(仮名)などは毎朝たっぷり二十分は彼女のご主人様の寝顔を堪能し、時にはほっぺをつんつんするなどというとんでもない行為までしているというのに。


私のご主人様はとても意地悪です。

朝ごはんはご主人様の健康の為には欠かすことはできません。私の作るお料理がご主人様の身体を作るのだと思えば、一手間どころか何手間だって苦にはなりません。もちろん、決め手となる隠し味はご主人様への愛情です。
そうやって作ったお料理を、ご主人様は『いただきます』と言うと次々と平らげていきます。ご飯粒一つ落とすこともない完璧な所作です。
そして、全てのお皿が空になるとご主人様は私に『ご馳走様』と言います。
私の友人であり、同じ種族の魔物娘であるTさん(仮名)などは毎朝彼女のご主人様に『あーん』で朝ごはんを食べさせているのだというのに。



私のご主人様はとても意地悪です。

ご主人様はスーツを着てお仕事に出られます。私がアイロンがけまで行い、パリっと糊が利いたスーツを着たご主人様はとても凛々しくて素敵なのですが、ここまで何度もご奉仕の機会を奪われている私としてはそろそろ文句の一つも言いたくなってくる頃です。
しかし、そんな私の心を見通したようにご主人様は私を軽く抱きしめると『行ってきますのキス』をします。そして、私がうっとりと放心状態になっている間に私の手から鞄を取ると、そのままお仕事に出かけてしまわれます。
毎朝のことなので、いい加減に自分でも「今日こそは!」と思うのですが、仕方がありません。『行ってきますのキス』には、それだけの威力があるのです。きっと分かってやっているのですから、ご主人様はやっぱり意地悪です。
私の知り合いであり、同じ種族の魔物娘であるTさん(仮名)などは毎朝彼女のご主人様のネクタイを結び、どさくさに紛れて首筋にキスマークをつける事までしているらしいというのに。



私のご主人様はとても意地悪です。

いくら完璧なご奉仕をする私であっても、たまにはミスをします。例えば、ついうっかり食材を買うときに抜けがあったり、日用雑貨を切らしてしまったり。
ですが、そんなときに限ってご主人様は『無くなってたと思って』などと言って丁度それらを買って帰ってきます。
私が恥ずかしさや申し訳無さでむくれていると、『ついでに買ってきたんだ』と少し高めのアイスを寄越してきます。私はマカデミアナッツ味が好きなのですが、ご主人様はストロベリー味が好きなのです。結局、二人で半分ずつ分けて食べました。
よく知らない人ですが、同じ種族の魔物娘であるTさん(仮名)などは彼女のご主人様と一緒に買物に行くと買い物かごに勝手にお菓子など入れられるので困ってしまうのだそうです。



私のご主人様はとても意地悪です。

夕食を終えると、ご主人様はテレビを見始めます。
朝渡しておいたお弁当も含めてご主人様は綺麗に食べてしまわれるので、お皿洗いにもさほど手間はかかりません。
ソファに座っているご主人様の隣に私も座ります。
そうして少しすると、ご主人様は『いつもありがとう』と言います。


私はご主人様が大好きです。
14/12/18 01:26更新 / 地獄大帝

■作者メッセージ
リハビリ初投稿!

ご主人様のお世話したい!でもご主人様しっかりもの過ぎて満足にお世話させてくれない!でもそんなご主人様だから大好き!みたいな話が書きたかったのです。

年内には短編ぐらいは上げたいと思っていたのでさっさと書いてしまったけど、まだ色々と改善できそうなので後で直すかもしれないです。

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