策謀(???)後編
シュッ
意図も簡単に案内される前の畑に二人で戻る。
もう夕日が沈みそうだ。
肝心の彼女はというと当然、元の女子高生に戻っている。自分の口をにょーんと伸ばしたり、
太ももをぷにぷにとさわっている辺り、記憶はあるんだろうけど。
「どうなったんですか?!これ!」
「あーー、んーー、魔法。」
あっけらかんという俺をぽかんと見る那知ちゃん
え?何?なんで最初から使わなかったのかって?
「…実は俺ね、魔力、ゼロなんだよ」
「魔力…授業で習いましたが、………ゼロ!?」
そう、どんな普通の人間でも魔力はある。オレはそれがゼロ。かといって魔法が使えないわけじゃない。
「バッテリー空っぽのスマートフォンだよ。
普通の人がバッテリー20%のポケベルだとして、
オレは、他の人に触れて魔力をもらうことで、いろんなことができる。今みたいにね。」
瞬間移動、重力操作、空気や水の生成など、“なんでもできる”。ただし、自分一人では絶対になにもできない。
しかもやることによってそれ相応の魔力がいる。
使えてよかったことと、那知ちゃんが戻ったことを見てホッとする。
「よかった。やっぱり神社の中で作動するみたいだね」
「…わかったでしょう?」
胸を押さえながら、彼女は苦しそうに声を出す。
「ん?何が?」
「わたしが、化け物ってことです。…私はあなたを殺そうとした。」
「うん、そうだね。」
「その…気持ち悪いとか、思わないんですか?それになんで…なんで、あなたは銃を撃たなかったんですか?
私、あなたを襲ってましたよね!」
彼女が大声でまくしたてる、目からは大粒の涙がポロポロと流れていた。
「うん、見た。死にかけた。…それがなに?」
「じゃあ!」
「“それ”と君を嫌いになるかは別。…君はこうなる前にちゃんと俺に忠告してくれた。それに君は必死に抗っていた。…オレは強くて、優しい子だと思ったよ。」
と、言った後でグ〜と二人のお腹がなる。
チッ 空気を読まない腹の虫め。
「ハア…こんなときでも腹は減るもんだね…」
「…ふふっ、そうですね。…人間、ですものね」
「キミの腹の虫も聞こえてるからな。」
「ギクリ(;゜゜)」
「っはは、」
「ふふふ」
そうして、二人で、少し笑いあった。
笑いながら、流れた涙をぬぐって、那知ちゃんが言う。
「私の家に来て下さい!」
ーーーーーーーーーーーーーーl
28でまさか女子高生の家に泊まるとは思わなかった。
普通の一軒家である。両親は仕事で長い間海外赴任とのことだ。
彼女のカレー作りを手伝い、完成したものを食べながら、口を開いたのは彼女からだった。
「最近の警察の人って魔法まで使えるんですか?」
「うーん、どっちかって言うと、オレは警察に雇われてる傭兵みたいなものかなあ。」
「元々、軍人の方だったんですか?」
「…………うん」
スプーンをおいて、少し真面目に話す。
「元々、俺は軍学校を卒業して、それから軍隊に入ったんだ。…結局、心を壊して倒れちゃって。それから…」
ポツリ、ポツリと話していく。
あっちの世界に転送された後、現魔王を助けたこと、
自分が現魔王、勇者パーティーと一緒に旧魔王を倒したこと、
すべてが終わった後、現実に帰ったら魔物娘の天下になっていたこと。
「…そーぜつですね。」
「あれ?疑わないの?」
「今さっき見たものを否定できませんし、見なければ信じないなんて硬い頭でもありません。…それに命懸けで助けてくれた人が、ウソをつくはずもないので、」
「ありがとう。」
またカレーをパクつく。
しばらく彼女も食べていたが、急に神妙な顔になり、
「私も、本当のことを話します。」
と決意したように言った。
「話したくないなら、話さなくてもいいんだよ?」
「いえ、ここまで巻き込んでしまった私には、あなたに話さなくてはならない義務があります。」
そうして、彼女は語った。
行方不明の5人の女子高生は自分の友人で、
自分が友人を喰らったのだ。と
ーーーーーーーーーーーーーーーー
「神主さんは優しいかたでした。つい最近、この村に来て、」
すぐにその6人は仲良くなったらしい。よく神社に遊びに行ったと言う
「ある時、神主さんが神社に伝わる宝物を見せてくれたんです。」
“朱の複眼”その紅い朱い宝玉から目が離せなかったという。5人が帰ったと思った後こっそり、その玉を手に取った。
「そうしたら、“入った”んです。その玉が、“私のなか”に」
ずるり。まるで磁石のように引き寄せられ、胸のなかに入り、自分の身体に激痛が走ったと言う。
「私がいないと思った5人は、私を助けようとして、介抱してくれたんですが…」
“変化”が始まるのを自覚し、抗いながらも完全に意識が途切れーーーーーーーー
次に意識が戻った時見たのが血まみれの5人の制服と、
呆然と立ち尽くす神主の姿だった、という。
ーーーーーーーーーーーーーー
「なるほど、それで?神主さんは?」
「私の今の“呪い”をなくすって言っていました。
多分神社にいると思います。…呪いは神社の中に納めているから、神社には近寄らないように、と」
「参道の幻覚もその人が?」
「…はい。私以外の人が、神社に行かないように、と」
「警察に証言したのは、君?」
「…少しでも、神社に立ち寄るひとを少なくしたくて…」
「…ご両親は?」
「あ、東京に仕事に行っています。ですのでこのことは知りません。」
「…事件が起こってからずーーっと自炊してたの?
すごいね。」
「それほどでも…テレテレ」かわいい
ーーーーーやっぱり、この子は人間、だよなあ。
少し、考え込み、彼女の頭を撫でる。
「よく頑張ったね。」
…やっと、オレのなかで覚悟が決まった。
「明日、また神社につれてって。」
「え」
「大丈夫、絶対、助ける。」
彼女の腕をぎゅっと握る。
「本当、ですか?…信じて、いいんですか?」
「約束だ。明日、キミの呪いをなくす。全部終らせてみせるよ。」
ぽろ、
ダムに、小さな傷がついたように、
彼女は今まで溜め込んだものをオレの胸元で吐き出した
泣いて、泣いて、泣きじゃくった。
俺はただ頭を優しく撫でてあげることしか、できなかった。
…彼女の“ありがとう”とかぼそい声が聞こえて、
俺は右腕で頭を撫で、
左腕で魔王からもらった資料を握り潰した。
ーーーーーーーーーーーーーー
彼女が眠った後、「「魔王」」と表示された画面をタップする。
「俺だ。大至急、アリサに使った弾と“ミニ”をこっちに寄越せ。」
感情を押さえようとするが、苛立ちが押さえきれない。
「お前がどこまで事情を知ってたかは知らんが、オレの想定だとお前、悪魔だわ。」
「褒め言葉ありがとー❤️」
「侮辱してんだよ。さっさとーーー」
「はい、送った。」
ドサッ、ゴルフケース大の荷物と、万年筆のケースのような荷物がいつの間にか足元に、“あった”。
「……全部、お前の想定通りか。」
「じゃあ、こっちは事後処理の準備しとくわ。吉報を
よ、ろ、し、く♥️」
ブチリ。切れた電話を見て、それからゴルフケースに視線を移す。
そして万年筆ケースにあった弾丸をしっかりと、拳銃に装填した。
まだもう少し、時間がある。
ソファに戻って少し、眠り直した。
意図も簡単に案内される前の畑に二人で戻る。
もう夕日が沈みそうだ。
肝心の彼女はというと当然、元の女子高生に戻っている。自分の口をにょーんと伸ばしたり、
太ももをぷにぷにとさわっている辺り、記憶はあるんだろうけど。
「どうなったんですか?!これ!」
「あーー、んーー、魔法。」
あっけらかんという俺をぽかんと見る那知ちゃん
え?何?なんで最初から使わなかったのかって?
「…実は俺ね、魔力、ゼロなんだよ」
「魔力…授業で習いましたが、………ゼロ!?」
そう、どんな普通の人間でも魔力はある。オレはそれがゼロ。かといって魔法が使えないわけじゃない。
「バッテリー空っぽのスマートフォンだよ。
普通の人がバッテリー20%のポケベルだとして、
オレは、他の人に触れて魔力をもらうことで、いろんなことができる。今みたいにね。」
瞬間移動、重力操作、空気や水の生成など、“なんでもできる”。ただし、自分一人では絶対になにもできない。
しかもやることによってそれ相応の魔力がいる。
使えてよかったことと、那知ちゃんが戻ったことを見てホッとする。
「よかった。やっぱり神社の中で作動するみたいだね」
「…わかったでしょう?」
胸を押さえながら、彼女は苦しそうに声を出す。
「ん?何が?」
「わたしが、化け物ってことです。…私はあなたを殺そうとした。」
「うん、そうだね。」
「その…気持ち悪いとか、思わないんですか?それになんで…なんで、あなたは銃を撃たなかったんですか?
私、あなたを襲ってましたよね!」
彼女が大声でまくしたてる、目からは大粒の涙がポロポロと流れていた。
「うん、見た。死にかけた。…それがなに?」
「じゃあ!」
「“それ”と君を嫌いになるかは別。…君はこうなる前にちゃんと俺に忠告してくれた。それに君は必死に抗っていた。…オレは強くて、優しい子だと思ったよ。」
と、言った後でグ〜と二人のお腹がなる。
チッ 空気を読まない腹の虫め。
「ハア…こんなときでも腹は減るもんだね…」
「…ふふっ、そうですね。…人間、ですものね」
「キミの腹の虫も聞こえてるからな。」
「ギクリ(;゜゜)」
「っはは、」
「ふふふ」
そうして、二人で、少し笑いあった。
笑いながら、流れた涙をぬぐって、那知ちゃんが言う。
「私の家に来て下さい!」
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28でまさか女子高生の家に泊まるとは思わなかった。
普通の一軒家である。両親は仕事で長い間海外赴任とのことだ。
彼女のカレー作りを手伝い、完成したものを食べながら、口を開いたのは彼女からだった。
「最近の警察の人って魔法まで使えるんですか?」
「うーん、どっちかって言うと、オレは警察に雇われてる傭兵みたいなものかなあ。」
「元々、軍人の方だったんですか?」
「…………うん」
スプーンをおいて、少し真面目に話す。
「元々、俺は軍学校を卒業して、それから軍隊に入ったんだ。…結局、心を壊して倒れちゃって。それから…」
ポツリ、ポツリと話していく。
あっちの世界に転送された後、現魔王を助けたこと、
自分が現魔王、勇者パーティーと一緒に旧魔王を倒したこと、
すべてが終わった後、現実に帰ったら魔物娘の天下になっていたこと。
「…そーぜつですね。」
「あれ?疑わないの?」
「今さっき見たものを否定できませんし、見なければ信じないなんて硬い頭でもありません。…それに命懸けで助けてくれた人が、ウソをつくはずもないので、」
「ありがとう。」
またカレーをパクつく。
しばらく彼女も食べていたが、急に神妙な顔になり、
「私も、本当のことを話します。」
と決意したように言った。
「話したくないなら、話さなくてもいいんだよ?」
「いえ、ここまで巻き込んでしまった私には、あなたに話さなくてはならない義務があります。」
そうして、彼女は語った。
行方不明の5人の女子高生は自分の友人で、
自分が友人を喰らったのだ。と
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「神主さんは優しいかたでした。つい最近、この村に来て、」
すぐにその6人は仲良くなったらしい。よく神社に遊びに行ったと言う
「ある時、神主さんが神社に伝わる宝物を見せてくれたんです。」
“朱の複眼”その紅い朱い宝玉から目が離せなかったという。5人が帰ったと思った後こっそり、その玉を手に取った。
「そうしたら、“入った”んです。その玉が、“私のなか”に」
ずるり。まるで磁石のように引き寄せられ、胸のなかに入り、自分の身体に激痛が走ったと言う。
「私がいないと思った5人は、私を助けようとして、介抱してくれたんですが…」
“変化”が始まるのを自覚し、抗いながらも完全に意識が途切れーーーーーーーー
次に意識が戻った時見たのが血まみれの5人の制服と、
呆然と立ち尽くす神主の姿だった、という。
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「なるほど、それで?神主さんは?」
「私の今の“呪い”をなくすって言っていました。
多分神社にいると思います。…呪いは神社の中に納めているから、神社には近寄らないように、と」
「参道の幻覚もその人が?」
「…はい。私以外の人が、神社に行かないように、と」
「警察に証言したのは、君?」
「…少しでも、神社に立ち寄るひとを少なくしたくて…」
「…ご両親は?」
「あ、東京に仕事に行っています。ですのでこのことは知りません。」
「…事件が起こってからずーーっと自炊してたの?
すごいね。」
「それほどでも…テレテレ」かわいい
ーーーーーやっぱり、この子は人間、だよなあ。
少し、考え込み、彼女の頭を撫でる。
「よく頑張ったね。」
…やっと、オレのなかで覚悟が決まった。
「明日、また神社につれてって。」
「え」
「大丈夫、絶対、助ける。」
彼女の腕をぎゅっと握る。
「本当、ですか?…信じて、いいんですか?」
「約束だ。明日、キミの呪いをなくす。全部終らせてみせるよ。」
ぽろ、
ダムに、小さな傷がついたように、
彼女は今まで溜め込んだものをオレの胸元で吐き出した
泣いて、泣いて、泣きじゃくった。
俺はただ頭を優しく撫でてあげることしか、できなかった。
…彼女の“ありがとう”とかぼそい声が聞こえて、
俺は右腕で頭を撫で、
左腕で魔王からもらった資料を握り潰した。
ーーーーーーーーーーーーーー
彼女が眠った後、「「魔王」」と表示された画面をタップする。
「俺だ。大至急、アリサに使った弾と“ミニ”をこっちに寄越せ。」
感情を押さえようとするが、苛立ちが押さえきれない。
「お前がどこまで事情を知ってたかは知らんが、オレの想定だとお前、悪魔だわ。」
「褒め言葉ありがとー❤️」
「侮辱してんだよ。さっさとーーー」
「はい、送った。」
ドサッ、ゴルフケース大の荷物と、万年筆のケースのような荷物がいつの間にか足元に、“あった”。
「……全部、お前の想定通りか。」
「じゃあ、こっちは事後処理の準備しとくわ。吉報を
よ、ろ、し、く♥️」
ブチリ。切れた電話を見て、それからゴルフケースに視線を移す。
そして万年筆ケースにあった弾丸をしっかりと、拳銃に装填した。
まだもう少し、時間がある。
ソファに戻って少し、眠り直した。
20/06/29 22:18更新 / ぐだぐだ
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