人狼討伐記
俺の名前はジョン。25歳。
一人前の剣士となるためにこの国に来た。
が、俺の身は今まずい状況にある。
金が無い。
銅貨一枚ではパンも食っていけないし、俺の装備品―――剣・弓・その他諸々の品を売り払うなどの暴挙に出るわけにも行かない。
かといって人様の金品を強奪するような真似はしたくない。
さあ、どうしたものか。
頭を抱えて街を歩いていると張り紙を見つけた。
「“傭兵募集”
:山中に潜伏中のワーウルフ1頭の討伐に参加し、
討ち果たしたもの全員に金貨40枚の褒美を取らす」
金に困った俺がとった行動は言うまでも無い。
早速志願するために城へと向かった。
大金が出るだけあって各地から屈強な男たちが集まっていた。
大木をもなぎ倒す剣使い。
岩を持ち上げる大男。
その点俺は普通の一般剣士。
はあ、こんな俺がバケモンたちと戦えるのかよ。
異人・奇人が多い志願者の中にさらに一風変わった人物がいた。
15、6歳くらいのジパング人だ。
ボサボサの黒髪に鋭い目つき。
そしてヨレヨレにボロボロの服。
脇に打ち刀を大事そうに抱えている。
ひとまず声をかけることにした。
「おい、俺はジョンだ。職業(ジョブ)は『剣士』。お前は?」
「ワタリ=セイタ。『傭兵』だ。討伐は初めてか?小僧」
俺は最後の一言にむっとした。
俺よりも明らかに歳下の奴から小僧呼ばわりである。
「あ、ああ。初めてだよ。お前はどうなんだよ、小僧」
「25回目だ。正規の依頼だけで、な。ま、お互い頑張ろうな」
討伐の召集というのはそうそうあるものではない。
2年に一回あるかどうかである。
俺は百戦錬磨のガキを疑惑の目で見ていた。
二日後、俺達よりも先に山に向かっていた先発隊が壊滅状態との報が入った。
そして第二次隊も早々に撤退。
早くも第三次討伐隊の出番となった。
俺は他の十数名の討伐隊員と共に山へと向った。
しかし翌日。
「おい、ワタリ!起きろ!」
「どうした、朝から騒ぐな」
「みんな帰っちまったらしい。テントの中がすっからかんだ。雇われたガイドも居ない」
「全くだらしねぇ連中だな。
いい、行かせておけ。『去るものは追わず』だ」
横になりながらセイタがぼやいた。
俺は怒りよりも絶望の念しかなかった。
「二人だけでどうやって」
「『二人だけ』?十分だろ」
唖然としてしまった。
ワーウルフは大男何人でかかっても敵わない存在であるという。
総勢力二名を十分と言い切ってしまうこいつは
とてつもない大物なのか、それとも単なる馬鹿なのか。
間もなくして俺たちは拠点基地を後にした。
しばらく歩くと、目の前を歩く少年は立ち止まった。
「居やがった」
遠くの方に人影が現れた。
狼の耳と手足、尻尾、そして鋭い牙。
まるで少女のような外見のワーウルフ。
「エーファヘッセお前かよ」
アラキは奴の名を呟くように呼んだ。
耳をぴくりと動かし、奴はこっちを向いた。
「あ、お久しぶりね。200年ぶりかしら?」
「そうか、あれから200年か。まさか国中を荒らし回っていた狼がお前とはな」
200年?
俺は脇にいる少年を見つめた。
「おいお前、いくつだ?」
「423歳だ」
彼は目線をそのままで面倒くさそうに答えた。
「老人、にしては若いよな。お前は一体」
「うるせぇ!誰がじじいだ!説明は後回しだ」
彼は再び狼に向かって話し出した。
「こいつは復讐だぜ。エーファ」
「復讐?面白いわ。ま、君たちなんか目じゃないけどね
君らを徹底的になぶって、いたぶってあげるよ」
「いたぶるか。なぶるか」
「本当に『二人いれば十分』なのか?ワタリ」
その時俺はセイタの眼を見た。
異常に殺気立っていた。
そして、微かに笑っていた。
まるで狼のような、全てを飲み込むような眼。
少年はゆっくりと刀を抜いた。
俺はさっきのメスのワーウルフが立っている場所を見た。
しかし、そこには居なかった。
俺は剣を構えなおした。
刹那、何かとてつもない力に俺は押し倒された。
地面に強く頭を打ち、俺の意識は遠退いていった
「おい、大丈夫か!?」
「大丈夫、ちょっと気絶してもらっただけだよ」
「おまえ、何故人間に手をかける」
「ふふ、楽しいからに決まっているじゃない」
「だから俺の家を壊してもいいのか?」
「家を?あったかな〜。そんなこと」
「200年前、俺が村に住んでいたとき、いきなりお前らが殴りこんできて
家を粉微塵にしていったじゃねぇか!」
「ふ〜ん。それが?」
意外な彼女の言葉がさえぎった。
「それがどうしたの?人間。
人間の村の建物を壊して何が悪い?
見つけた敵を傷つけ、殺して何が悪い?
男をさらって、犯して、徹底的にいたぶって何が悪い?
何世紀も前から、あたいらは人間を襲うこと生業としてきたんだ。
いきのいい男もいるし、食い物も手に入る。
それに、こんなに楽しいことしないなんて」
「うるせぇ」
我慢の限界であった。
これ以上は耐え難いものであった。
俺は彼女めがけ弓矢を発射した。
風を切って矢は耳元を掠めていく。
「なにすんのさ!」
「どうやら、狗には首輪が必要らしいなぁ?二度と悪さをしないように。お前には俺が家を失った分の、それなりの代償を払ってもらうぜ」
「じゃ、やってみな!」
彼女は俺に向かって走り出し、鋭い爪を振り下ろした。
俺は刀でそれを受け止める。
だが華奢な腕は俺を圧倒する。
彼女は俺を押し倒し、仰向けにさせた状態で俺の両手を掴んだ。
紅く光る目をぎらつかせこちらを睨む。
むき出しにした牙は今にも俺の首に喰らいつきそうだ。
しかし彼女のワーウルフとしての力が勝ってしまった。
俺は刀をはじかれた。
「しまった」というまもなく彼女は身体を押し付けてくる。
そして俺は彼女に押し倒された。
彼女はゆっくりとズボンを脱がせる。
俺の人には言えないほど大事な部分を掴み、摩り始めた。
そしてそのままゆっくりと腰を沈めた。
息が荒い。
ハアハアと息を荒げる。
嫌な臭い。
発情した狼の臭い。
ヤバイ、いっちまいそうだ。
ああチクショウ、きもちよすぎる
俺の快楽は絶頂へと達した。
狼女はニヤリと不気味な笑みを漏らす。
しかしすぐに何かに気がついたような、呆気にとられた顔をした。
「あんた」
「そうだよ、俺は子孫を残せない。何世紀も前に生殖機能を失った」
俺は彼女の顔面に思い切り拳を叩きつけた。
突然の攻撃に彼女は不意を突かれ、まともにそれを食らってしまった。
彼女の鼻から、血が滴り落ちる。
だが、彼女は微かに笑っていた。
血で歯を赤く染めている。
「へえ、そうなの。でもそんなの関係なしに、徹底的にやってあげる」
飢えた狼は腰を上下に揺さぶった。
俺は一滴も射精せず、何度も昇天した。
屈辱だ。
悪戯をする子供のように無邪気に笑っている。
冗談じゃない!こんな所でやられてたまるか!
俺は力を振り絞り矢に手を伸ばした。
すばやく引き抜き、彼女の足めがけて突き刺した。
「ぐあああぁぁぁ!!」
痛みに顔を歪め、悶え狂う。
彼女は傷口を必死に押さえるが鮮血は身体から止め処なく流れている。
「銀で作った矢だ。よく効くだろう?」
「うぐぐぐ」
「ここを通る者を、襲撃するな。
人里に下りて、略奪するな。
その他諸々のことはこの紙に書いてある。
これを無条件で受け入れろ。いいな?
それと、本当ならこの場でけりをつけたいところだが、命までは取りたくねぇ。
今後、俺の僕(しもべ)として仕えろ。一から根性叩き直してやる」
数分前まで殺し合いを演じ、自分が犯していた奴から情けをかけられる。
屈辱的なその仕打ちは彼女のプライドが許すはずもなかっただろう。
森の中で女の泣き声と狼の喚き声が響いていた。
泣きじゃくりながらも彼女は言った。
「あたいがこんなになるまで打ち倒されたのははじめてだよ。
あんたはあんたは、あたしの主人に相応しい」
そして、気を失った。
俺はようやく目を覚ました。
頭がぐらぐらするような気がする。
実際、頭からは血が出ている。
起き上がると少年とその横に首輪をはめられたワーウルフがいた。
俺は剣を抜こうとしたが、それよりも早く少年の剣先が俺の喉もとを制していた。
「俺の下僕に手を出すな。こいつはもう敵じゃない」
「下僕?」
「お前が気絶している間、俺が闘って屈服させたんだ」
「どうしてそんなことを?」
「殺したくないからだ。かといってこいつを里に帰しても」
「生かしておくのか?」
「こいつは俺と同じニオイがする。永い間、孤高の存在であったニオイが。
こいつは俺が預かる。心配するな、賞金は手に入るはずだ。
王には俺がよく話し込んでおくよ」
そして俺たちは引き上げたのだった。
それから数日後、確かに金は届いた。
しかし、あの少年(?)は一体何者だったのだろうか。
なぜ止めを刺さなかったのだろうか。
そんなことを考えながら俺は机の上に並べられた40枚の金貨を見つめていた。
8月3日 天候晴れ
人狼討伐において、人狼一匹を捕獲した。
他人は何故殺さないというかもしれないが、殺せるはずもない。
彼女を殺せば俺自身が滅ぶ。
殺生をすれば自身に歯止めが利かなくなる。
しかしながら、人狼はもとより他人と生活したことが全くない。
明日、バフォメットに手紙を送ってワーウルフとの接し方を聞くことにしよう。
一人前の剣士となるためにこの国に来た。
が、俺の身は今まずい状況にある。
金が無い。
銅貨一枚ではパンも食っていけないし、俺の装備品―――剣・弓・その他諸々の品を売り払うなどの暴挙に出るわけにも行かない。
かといって人様の金品を強奪するような真似はしたくない。
さあ、どうしたものか。
頭を抱えて街を歩いていると張り紙を見つけた。
「“傭兵募集”
:山中に潜伏中のワーウルフ1頭の討伐に参加し、
討ち果たしたもの全員に金貨40枚の褒美を取らす」
金に困った俺がとった行動は言うまでも無い。
早速志願するために城へと向かった。
大金が出るだけあって各地から屈強な男たちが集まっていた。
大木をもなぎ倒す剣使い。
岩を持ち上げる大男。
その点俺は普通の一般剣士。
はあ、こんな俺がバケモンたちと戦えるのかよ。
異人・奇人が多い志願者の中にさらに一風変わった人物がいた。
15、6歳くらいのジパング人だ。
ボサボサの黒髪に鋭い目つき。
そしてヨレヨレにボロボロの服。
脇に打ち刀を大事そうに抱えている。
ひとまず声をかけることにした。
「おい、俺はジョンだ。職業(ジョブ)は『剣士』。お前は?」
「ワタリ=セイタ。『傭兵』だ。討伐は初めてか?小僧」
俺は最後の一言にむっとした。
俺よりも明らかに歳下の奴から小僧呼ばわりである。
「あ、ああ。初めてだよ。お前はどうなんだよ、小僧」
「25回目だ。正規の依頼だけで、な。ま、お互い頑張ろうな」
討伐の召集というのはそうそうあるものではない。
2年に一回あるかどうかである。
俺は百戦錬磨のガキを疑惑の目で見ていた。
二日後、俺達よりも先に山に向かっていた先発隊が壊滅状態との報が入った。
そして第二次隊も早々に撤退。
早くも第三次討伐隊の出番となった。
俺は他の十数名の討伐隊員と共に山へと向った。
しかし翌日。
「おい、ワタリ!起きろ!」
「どうした、朝から騒ぐな」
「みんな帰っちまったらしい。テントの中がすっからかんだ。雇われたガイドも居ない」
「全くだらしねぇ連中だな。
いい、行かせておけ。『去るものは追わず』だ」
横になりながらセイタがぼやいた。
俺は怒りよりも絶望の念しかなかった。
「二人だけでどうやって」
「『二人だけ』?十分だろ」
唖然としてしまった。
ワーウルフは大男何人でかかっても敵わない存在であるという。
総勢力二名を十分と言い切ってしまうこいつは
とてつもない大物なのか、それとも単なる馬鹿なのか。
間もなくして俺たちは拠点基地を後にした。
しばらく歩くと、目の前を歩く少年は立ち止まった。
「居やがった」
遠くの方に人影が現れた。
狼の耳と手足、尻尾、そして鋭い牙。
まるで少女のような外見のワーウルフ。
「エーファヘッセお前かよ」
アラキは奴の名を呟くように呼んだ。
耳をぴくりと動かし、奴はこっちを向いた。
「あ、お久しぶりね。200年ぶりかしら?」
「そうか、あれから200年か。まさか国中を荒らし回っていた狼がお前とはな」
200年?
俺は脇にいる少年を見つめた。
「おいお前、いくつだ?」
「423歳だ」
彼は目線をそのままで面倒くさそうに答えた。
「老人、にしては若いよな。お前は一体」
「うるせぇ!誰がじじいだ!説明は後回しだ」
彼は再び狼に向かって話し出した。
「こいつは復讐だぜ。エーファ」
「復讐?面白いわ。ま、君たちなんか目じゃないけどね
君らを徹底的になぶって、いたぶってあげるよ」
「いたぶるか。なぶるか」
「本当に『二人いれば十分』なのか?ワタリ」
その時俺はセイタの眼を見た。
異常に殺気立っていた。
そして、微かに笑っていた。
まるで狼のような、全てを飲み込むような眼。
少年はゆっくりと刀を抜いた。
俺はさっきのメスのワーウルフが立っている場所を見た。
しかし、そこには居なかった。
俺は剣を構えなおした。
刹那、何かとてつもない力に俺は押し倒された。
地面に強く頭を打ち、俺の意識は遠退いていった
「おい、大丈夫か!?」
「大丈夫、ちょっと気絶してもらっただけだよ」
「おまえ、何故人間に手をかける」
「ふふ、楽しいからに決まっているじゃない」
「だから俺の家を壊してもいいのか?」
「家を?あったかな〜。そんなこと」
「200年前、俺が村に住んでいたとき、いきなりお前らが殴りこんできて
家を粉微塵にしていったじゃねぇか!」
「ふ〜ん。それが?」
意外な彼女の言葉がさえぎった。
「それがどうしたの?人間。
人間の村の建物を壊して何が悪い?
見つけた敵を傷つけ、殺して何が悪い?
男をさらって、犯して、徹底的にいたぶって何が悪い?
何世紀も前から、あたいらは人間を襲うこと生業としてきたんだ。
いきのいい男もいるし、食い物も手に入る。
それに、こんなに楽しいことしないなんて」
「うるせぇ」
我慢の限界であった。
これ以上は耐え難いものであった。
俺は彼女めがけ弓矢を発射した。
風を切って矢は耳元を掠めていく。
「なにすんのさ!」
「どうやら、狗には首輪が必要らしいなぁ?二度と悪さをしないように。お前には俺が家を失った分の、それなりの代償を払ってもらうぜ」
「じゃ、やってみな!」
彼女は俺に向かって走り出し、鋭い爪を振り下ろした。
俺は刀でそれを受け止める。
だが華奢な腕は俺を圧倒する。
彼女は俺を押し倒し、仰向けにさせた状態で俺の両手を掴んだ。
紅く光る目をぎらつかせこちらを睨む。
むき出しにした牙は今にも俺の首に喰らいつきそうだ。
しかし彼女のワーウルフとしての力が勝ってしまった。
俺は刀をはじかれた。
「しまった」というまもなく彼女は身体を押し付けてくる。
そして俺は彼女に押し倒された。
彼女はゆっくりとズボンを脱がせる。
俺の人には言えないほど大事な部分を掴み、摩り始めた。
そしてそのままゆっくりと腰を沈めた。
息が荒い。
ハアハアと息を荒げる。
嫌な臭い。
発情した狼の臭い。
ヤバイ、いっちまいそうだ。
ああチクショウ、きもちよすぎる
俺の快楽は絶頂へと達した。
狼女はニヤリと不気味な笑みを漏らす。
しかしすぐに何かに気がついたような、呆気にとられた顔をした。
「あんた」
「そうだよ、俺は子孫を残せない。何世紀も前に生殖機能を失った」
俺は彼女の顔面に思い切り拳を叩きつけた。
突然の攻撃に彼女は不意を突かれ、まともにそれを食らってしまった。
彼女の鼻から、血が滴り落ちる。
だが、彼女は微かに笑っていた。
血で歯を赤く染めている。
「へえ、そうなの。でもそんなの関係なしに、徹底的にやってあげる」
飢えた狼は腰を上下に揺さぶった。
俺は一滴も射精せず、何度も昇天した。
屈辱だ。
悪戯をする子供のように無邪気に笑っている。
冗談じゃない!こんな所でやられてたまるか!
俺は力を振り絞り矢に手を伸ばした。
すばやく引き抜き、彼女の足めがけて突き刺した。
「ぐあああぁぁぁ!!」
痛みに顔を歪め、悶え狂う。
彼女は傷口を必死に押さえるが鮮血は身体から止め処なく流れている。
「銀で作った矢だ。よく効くだろう?」
「うぐぐぐ」
「ここを通る者を、襲撃するな。
人里に下りて、略奪するな。
その他諸々のことはこの紙に書いてある。
これを無条件で受け入れろ。いいな?
それと、本当ならこの場でけりをつけたいところだが、命までは取りたくねぇ。
今後、俺の僕(しもべ)として仕えろ。一から根性叩き直してやる」
数分前まで殺し合いを演じ、自分が犯していた奴から情けをかけられる。
屈辱的なその仕打ちは彼女のプライドが許すはずもなかっただろう。
森の中で女の泣き声と狼の喚き声が響いていた。
泣きじゃくりながらも彼女は言った。
「あたいがこんなになるまで打ち倒されたのははじめてだよ。
あんたはあんたは、あたしの主人に相応しい」
そして、気を失った。
俺はようやく目を覚ました。
頭がぐらぐらするような気がする。
実際、頭からは血が出ている。
起き上がると少年とその横に首輪をはめられたワーウルフがいた。
俺は剣を抜こうとしたが、それよりも早く少年の剣先が俺の喉もとを制していた。
「俺の下僕に手を出すな。こいつはもう敵じゃない」
「下僕?」
「お前が気絶している間、俺が闘って屈服させたんだ」
「どうしてそんなことを?」
「殺したくないからだ。かといってこいつを里に帰しても」
「生かしておくのか?」
「こいつは俺と同じニオイがする。永い間、孤高の存在であったニオイが。
こいつは俺が預かる。心配するな、賞金は手に入るはずだ。
王には俺がよく話し込んでおくよ」
そして俺たちは引き上げたのだった。
それから数日後、確かに金は届いた。
しかし、あの少年(?)は一体何者だったのだろうか。
なぜ止めを刺さなかったのだろうか。
そんなことを考えながら俺は机の上に並べられた40枚の金貨を見つめていた。
8月3日 天候晴れ
人狼討伐において、人狼一匹を捕獲した。
他人は何故殺さないというかもしれないが、殺せるはずもない。
彼女を殺せば俺自身が滅ぶ。
殺生をすれば自身に歯止めが利かなくなる。
しかしながら、人狼はもとより他人と生活したことが全くない。
明日、バフォメットに手紙を送ってワーウルフとの接し方を聞くことにしよう。
17/02/28 01:24更新 / 荒木