連載小説
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本日の業務:部署の挨拶回り・書類の送付


別に。これといっては。
「バイトは楽しいか」と聞いた友人への返事。


そんなものはない。
「上司に恩でもあるのか」と聞いた友人への返事。


とくに自分が使う予定はない。
「金が必要なのか」と聞いた友人への返事。


理由なんか必要なのか?
「なんで働いてるんだ」と怒鳴った友人に彼は聞いた。


・・・他にやることないしな。
絶句する友人に、思いついたことを言うと、友人はぶっ倒れた。


〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜


ぱちり。
鼻腔をくすぐるいい匂いにつられ、黒田は目を覚ました。
のそりと床から起き上がり、身を包んでいたシーツを畳むと、使われてないベッドの上に置く。そして、いい匂いのするリビングへ向かった。

「・・・あらあらまぁまぁ、おはようございます」

「・・・あぁ、はい」

「朝ごはんができていますよ」

小さなテーブルの上には、白いご飯と味噌汁、焼き鮭と香の物が並べられていた。ほかほかと湯気を出しながら、その匂いで黒田の脳を刺激し、くぅとちいさくお腹を鳴らさせた。

「朝ごはんは食べられますか?」

「・・・あぁ、はい」

「嫌いなものはありますか?」

「・・・いえ」

「あぁ、よかった」

″彼女″は心底安心したようにホッと一息つく。薬缶から湯呑みにお茶を注ぎ、にっこりと笑う。

「さぁ、温かいうちに召し上がりなさい❤よく噛んで、ゆっくり食べるのですよ。まだ時間はたっぷりあるのですから」

「・・・あぁ、はい。いただきます」

黒田は箸を持って手を合わせていただきますを言った。
まず味噌汁を一口啜り、鮭を箸で一口サイズに切り取る。鮭を口に入れるとちょうどいい具合の塩味で、ご飯を口に運ぶのだった。

「あらあら、そんなに慌てて食べては身体に毒ですよ」

「・・・慌てては、ないです。ところで・・・」

「はい?」

もぐもぐと口を口の中のものを飲み込んだ後、黒田はじっと″彼女″を見つめた。





「・・・・・・・・・どちら様ですか?」

「そのような些細なこと、気にしなくていいのですよ。我が子よ❤」





『バゴォン!』

「全ッ然些細じゃないわアホーーーーーーッ!!!職権乱用してまで世話焼きすなーーーーーーっ!!!各部署大混乱しとるわーーーーーーっ!!!」




扉を蹴破る音とともに部屋に入ってきたパルンが、ハート柄エプロンを着たメルディアの顔に飛び蹴りをかました。

(・・・鮭とかいつぶりに食べたかな)

黒田は、パルンがメルディアをボコしてる間、久々のマトモな朝食を堪能していた。



〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜


大混乱の最中、強制閉会した六芒会議。
その総括議長でもあったメルディアは、パルンの黒田就任1日目報告が終わった瞬間に、行動していた。

『非常事態宣言』により、様々な予定をドタキャンして自分の午後の休みを取り。
『緊急転移陣使用証書』を偽造して異世界に飛んで「一般的な朝食の作り方の本」と材料を調達し。
翌日の早朝、『総括部署住居点検権限』を使って黒田の部屋に侵入した。



・・・簡単にまとめると。

職権乱用して仕事を休んで、
職権乱用して旅行に行って、
職権乱用して住居不法侵入したのと同義である。



「お昼もちゃんと食べるのですよぉぉぉ・・・」と言いながら警備隊に引きずられていく上司を見て、総括部署の部下たちは何を思ったのだろうか。

とりあえず、『なにやってんだあの人・・・』は確実である。


〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜


「・・・ということが朝あったんじゃ」

「もうかける言葉がないんですけど」

「メルディア様、もう○0歳だからって慌てすぎじゃない?」

「さよならマーリィ、貴女は言うほど惜しくない使い魔でしたよ」

「サリア勝手に死なさないでくれる!?」

パルンの執務室で、「しかもそれほどってなーにー!?」と叫ぶマーリィから遠い目をするサリアが距離を取る。そしてその二人を前にパルンがはぁとため息をつく。

「なんというか、今までこっちに連れてきた夫たちに黒田みたいなタイプがいなかったために、あらゆる場所に影響を出してしまっておる。とりあえず奴には『適度に』働く男になってもらわんといかん。よって、奴に対する扱いは気をつけねばならん。あと、主に魔物娘の正気とか良心をガリガリ削らないように、やつの身の上話はベラベラしゃべるでないぞ。みんな死んだ目で仕事するのは避けたい」

「はぁい」

「マーリィりょーかいしましたー」

『ヒャァッッッハーーーッ!!!サンダーバードがッ、16時を、お知らせするぜーーーーーーッ!!!痛っ、あっ、先輩、すんません、チョーシこきました、すいません』

ちょうどその時、マイクのハウリングと共に、時報が鳴った。

「むっ、ちょうど良いな。第一回『対黒田会議』は以上とする」

「うちもうちで、おにー様用会議があるところまで行ってしまいましたねぇ」

「サリア?やつを連れて来たのは誰じゃったかな?」

「いや違うんですここまで大きくなるとは多少思ったりしてたんですけど意外に早かったなぁって思っただけなんです待ってくださいその笑顔やめてください怖い怖い怖い」

「・・・今のうちにおにーさんの様子見てこよっと❤」

影のある笑顔をしてパルンがサリアに詰め寄ってる間に、ささっとマーリィが部屋を抜け出し・・・




「・・・きぃぃぃやぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」




数分後、マーリィの叫び声が部署内に響き渡った。


〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜


『えぇ〜っ!?お兄さんが事故!?』

『うぅ〜、すぐ行ってあげたいんだけど、外回りの仕事がぁ・・・』

『書類を渡しに行くだけなんだけど、結構時間かかっちゃうよね・・・』

『誰か手が空いてる人いない!?回るところの部署のリストアップはできてるんだけど!』





『・・・あの、自分でよければ』





こんな会話が、30分ほど前にあった。

『ヒャァッッッハーーーッ!!!サンダーバードがッ、16時を、お知らせするぜーーーーーーッ!!!痛っ、あっ、先輩、すんません、チョーシこきました、すいません』

黒田は16時の時報を聴きながら、目の前の地図とにらめっこをしていた。
渡された仕事は、再承認や再提出を求めるものや、庶務部署で承認を得たら次の部署に回すべき書類を届けに行く仕事であった。大きな部署は6つだが、その中で複数の課・係に別れるため、部署一括でまとめて渡すと混乱する。なので、書類配布の場合は係単位に分けられて渡すのだ。
近場の庶務部署内部はすぐに終わった。手元の地図を見ずとも、普段の通り道や仕事中に見た場所はすぐにわかったためだ。
問題は、地図を見ないと場所がわからない部署だった。

(・・・最適な道がわからない)

地図を見て、だいたいの場所はわかるのだが、時間をかけずに最短のルートを探すとなると話が変わる。
通路や階段などを何回往復するかなど、ちょっとルート構成を変えるだけで時間など変わるものだ。
しかも同じ部署でもちょっと離れていたり、違う部署が隣り合ってたりでバラバラである。一応、仕事の種類が被りそうな部署は近場にされているのだが、まだ新人の黒田には中身がわからないゆえに発想の融通がきかない。

(・・・どれくらい時間がかかるだろうか?)

せかせかと歩く黒田だが、地図を見たり、配送リストを見たりしながらのため、曲がり角に迫る影に気づかなかった。

「あっ」

「きゃっ!?」

時すでに遅し。
お互いが気づいたときにはドンッと音を立ててぶつかってしまった。

『ドタッ!!!』
『バサァッ!!!』
『むにゅんごちん』

音が三回続き、黒田の視界が真っ暗になった。

「いたたた・・・ひぅっ!?」

(・・・やわっこい)

ただ、視界が暗いことに加えて、顔には柔らかい感触が広がっていた。といっても、目の周りだけだが。

「な、な、ななな・・・」

(・・・あぁ、うん。なんとなくわかった)

鼻で呼吸すると、甘い匂いが鼻腔を占領する。花の匂いとかではなく、かといって香水で無理やりつけた匂いでもない。なんだかとても、いい匂いと形容するしかない。

「へ、へ、へっ・・・」

(・・・この展開は)

さらに、わずかだがどくんどくんという鼓動が感じられる。そのリズムは早く、興奮してるようだ。

つまり、黒田はそれらを合わせて、自分が女性の胸に顔を突っ込んで倒れたのだと理解した。



「変態バカさっさとどきなさいよーーーーーーっ!!!」

ガッ!ブンッ!ドゴォッ!

「ぐべぁっ!?」

瞬間、胴に何か巻かれたと思ったら、壁に叩きつけられていた。


〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜


「変態!変態!!変態!!!」

『シャーーーッ』

「・・・えっと、その、すいません」

胸を庇いながら顔を真っ赤にし、髪にいる蛇たちが威嚇しながら、メドゥーサの女性が叫ぶ。対する黒田は平謝りするばかりでペコペコしている。結構な音量なので、近くの部屋にいた者たちがちょろちょろ顔を出している。

「ふーっ、ふーっ・・・」

「・・・その、すいません」

「・・・あんまりよくないけど、そこまで平謝りされるとこっちも申し訳なくなるわ」

「いや、地図を見ていて前を見ていなかった自分に非がありますし・・・」

「地図?」

ふとメドゥーサが床に落ちた地図を拾い上げ、それとさらにこれから回るべき部署の一覧を拾い上げた。

「・・・ねぇ」

「・・・はい?」

「これなんかあと30個くらい課が書いてるんだけど、全部回るの?」

「・・・はい」

「地図持ってるってことは場所把握してないのよね?」

「・・・はい」

「・・・徒歩で軽く見積もって、場所わかってる私でも定時には終わりそうにないなんだけど?」

「・・・そう、なんですか」

「庶務なら魔女とかいるじゃない、飛行手段とか借りれなかったの?」

「・・・えっと、はい?」

「・・・新人いびりとか、そーいうことする部署ではないと思ってるけど、ちょっと緩すぎなんじゃあないかしらねあの万年幼児脳組織は・・・」

がっさと器用に尻尾で書類を集めたメドゥーサは、書類を綺麗に整頓して黒田に持たせた上で、その黒田自身を尻尾で持ち上げた。

「・・・あの・・・?」

「リストにうちの課があったからそこまで運んであげるわ。そのあとなんらかの移動手段借りれないか掛け合ってあげる」

「・・・あぁ、はい・・・ありがとうございます」

「べつに。のたくた時間外労働して無駄なことするようなのを見逃すのが嫌ってだけ」

「・・・ごもっともです」

まだぷりぷり怒っているメドゥーサに文字通り持っていかれながら、黒田は尻尾を見て思うのだった。

(・・・そういえば、あいつに連絡取らなきゃな・・・)


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看護関連部署、食料衛生管理課、魔王城食堂管轄係。

ずらっと漢字が並んでいるが、すんごい簡単にいうと食堂のメニューを考えたり、食堂の環境を整える部署である。
魔王城に勤務する魔物娘の種類・人口は膨大であり、それに比例して食事の好みや傾向も多種多様。その上で大きな不平不満が出ないようにするのは大前提で、その上でさらに誰でも食事を楽しめるように日々改善を重ねている。
最近の新メニューだと、『魔界猪のリンゴ蜜漬け』『霧の大陸流、魚の煮付け』『やわらかパンズのサンドイッチ〜栄養満点サンド〜』があった。

なお、この部署の最高幹部は、アヌビス・クリティウスが担当している。



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「はじめまして、庶務課、総務係、第一部所属の黒田と申します」


『ガチャァンッ!!!』


(クリティウス様!?)
(御手からお皿が!?)

書類を担当のワーシープに渡した際に「新人さんですか〜?」と聞かれて黒田が答えたところ、『実食室』と書かれた部屋の中から皿の割れる音が聞こえた。

(・・・なにかあったのかしら・・・)

「はじめまして〜、大変でしょ〜」

「・・・いえ、それほどでも」

「あら〜、本音を言ってもいいんですよ〜、庶務課はいっつも〜、人がたくさんいて大変だって〜」

「はいはい、ストップ。こいつあと30近い部署回るんだからおしゃべりしてる暇なn」


『ドガシャァン!!』


(クリティウス様!!?)
(調理器具をひっくりかえされた!!?)

さらに『実食室』の中から大きな音が聞こえ、小さく聞こえる叫び声に、メドゥーサは言葉を止め、ワーシープは首を傾げた。

「・・・ど〜したのかしら〜?」

「・・・さぁ?」

「・・・それでは、次の部署に向かいますので、これで」

「あーちょっと待ちなさいって!城内移動徒歩でやると時間かかるんだから何か移動手段借りれないか聞いt」



『バァンッ!!!』
「それ以上の非効率的肉体酷使系過重労働はこのクリティウスの名の下に絶対許しませんよクロダァァァァァァァァァッ!!!」



突如、実食室の扉が勢いよく蹴破られ、うっすら涙目なクリティウスがズカズカと歩み出てきた。
ちなみにどこかぶつけたのか、額が赤くなっている。

「・・・は、はい?」

「く、クリティウス様!?」

「貸しなさいっ!!!」

クリティウスは黒田の手元から書類をひったくると、これから書類を届けなければならない部署一覧に目を通し、部署の横に番号を書き込みはじめた。

「私の記憶してる限りのスケジュールと部署配置から、最適な部署巡り順を記しておきますのでこの順に行きなさい。あと移動手段は私が使っていた人力車を使いなさい。軍部のミノタウロスに引かせているのでスピードは保証できます。あと『エウリュン』はこの後の仕事を他の者に振り分けますのでクロダについていきなさい。定時になってもまだ終わりそうにないなら庶務課へ引き返して明日に回すように掛け合いなさい。私の承認サインをここに記しておきます。わかりましたね?定時で切り上げるのですよ。必ず。絶対。約束。ですよ。分かりましたね!」

早口で言い切ったクリティウスは、書類を黒田に突き返し、エウリュンと呼ばれたメデューサの肩をもふっと掴んで「ぜっ、た、い、で、す、よ」とマジな目をして伝えた後、肩で息をしながら実食室へと戻っていった。

「・・・えっ、なに、アンタ、クリティウス様の知り合い?」

「・・・いえ、初対面ですが」

「えっ、じゃあ今のクリティウス様の対応なに?いつも冷静沈着なあの方が取り乱すアンタなんなの???」

「・・・わかりませんが・・・次に行きますか」

「そ、そうね・・・なんかわからないけど、とりあえず一緒に行くわ」

「・・・ありがとうございます。よろしくお願いします、エウリュンさん・・・」

なんだかよくわからないまま、二人は外で待っていたミノタウロスに、車を出してもらうようにお願いした。



〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜

ミノタウロスが引く人力車(スピード:すっごい速い)により、部署巡りを始めた黒田とエウリュン。
全部署でのやり取りを書くと時間がないため、一部を抜粋してみよう。



『あ、お疲れ様でーす』

『サンキュー・・・あれっ、却下で返ってきてる』

『・・・ありがとう、ございます』

『うむ、大義である』


『貴様・・・新人か?いや、名前は言わなくていい。うっすらわかる・・・その、なんだ。メシは欠かさず食え。適度な運動をしろ。想像より細いぞ貴様。軍部のトレーニングルームは申請すれば使えるから使え。あと定時には仕事を切り上げろ・・・書類を貸せ。おい、ペンはどこだ』


『待機。待機。待機命令。アナタ、そう、アナタ。身長、体重、体脂肪率、骨密度・・・様々なデータが必要。本来コストに見合わないけれどワタシの傑作に例外は不許可。絶対。なのでアナタの身体・精神のデータ採取を依頼・・・時間がない?なら後日。絶対。健康診断を受診。早期対処が必要。本日も早めに切り上げることを要請。承認印を押印。書類を提示。これは、命令。』


『・・・・・・・・・・・・・・・・・・健康管理は魔王城に所属する者の義務だ。そのクマをさっさと消せ』
(ウッソでしょちょっと思ったより具合悪そうじゃんていうか部署巡りの仕事与えるとかバカじゃないのパルンのやつなにしてんのもーやだつらみしか感じないとりあえず今日早退しなよ許可サイン書いてあげるから書類貸して)

『だ、団長・・・首が取れて本音ダダ漏れてますが・・・』



『我が子よ!!!』

『メルディア様!まだ謝罪文書作成中です!!』



〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜


「アンタ何者!!!!!!??????」


「・・・庶務課に配属になった、」

「いやそーじゃなくて!?幹部の皆様全員に知られてるのはなんでよ!?メルディア様とか『我が子』とか呼んでたし!?」

「・・・なんで、でしょうね?」

「うっわマジできょとんとしてる。びっくりするわこいつ」

定時前になったため、まだ残った書類を抱えて庶務課へ戻る道中。なぜか偶然いらっしゃった最高幹部全員にそれぞれ異なれど、気を使われてる発言をされてる黒田に、エウリュンは脂汗を禁じ得なかった。

(まさか次期魔王様の旦那候補?いやでも次期魔王様は別世界出張だし・・・現魔王旦那様の親族関係だったらこんなポストじゃないだろうし・・・ていうか似てないし・・・どちらにしても、もっと対応を考えなきゃいけないのかしら・・・)

「・・・あの、エウリュン、さん」

「えっ!?な、なに?」

考え事中に声をかけられ、びくりと肩を震わせてエウリュンが振り向くと、黒田が首の後ろをかきながら小さく頭を下げた。

「本日はとても助かりました。 おかげでスムーズに仕事が進められました。自分一人であれば書類をわたすだけだったのが、いろんな方々とお話しできたのも、エウリュンさんが一緒にいたからだと思います」

「いやあの最高幹部の皆様は確実にアンタ目当てだったけど?」

「いえ、私一人だと気づかずに去ってしまうかもしれません。エウリュンさんの案内と説明があったからだと思ってます。本当に、ありがとうございました」

最後に深々と頭を下げる黒田を見て、エウリュンはしばらく黙ったあと、ハァと息を吐いた。

「・・・なんか身分隠してんのかとか悩んだ私がバカみたい」

「・・・はい?」

「気にしないで。独り言。ホラ、帰るわよ。もう今日は定時上がりでいいんだから」

「・・・はい」

ポンポンと背中を叩かれて微笑まれた黒田は、よくわからないまま返事を返した。




〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜



『もうあたしの権限使って有給強制するよ!?バカーーーーーー!!!』
『パルン様が素になってマジギレしてる!珍しい!』

『・・・しかし新人には有給残数など付与されてないのでは?』

『付与されてるよバカーーーーーー!!!』



「・・・やっぱなんなのアイツ・・・」

見送った庶務課の中から聞こえてきたやり取りに、エウリュンは眉をひそめた。
17/10/15 15:39更新 / みきりお
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■作者メッセージ
たくさんの感想ありがとうございます。
もーちょっと書くペース頑張ろうと思います。




以下、オマケ。
読まなくてもOK。




黒田 史郎

身長:168cm
体重:48kg
血液型:AB
趣味:特になし
好きなもの:特になし
嫌いなもの:特になし

身体評価(S〜Fまであり。Sは最高、Fはゴミクズ)
体力:S
精神:S
筋力:E
敏捷:D
魔力:D
幸運:E

プロフィール:
本作の主人公。
とにかく身体が頑丈。メンタルもタフ。仕事もテキパキ終わらせるエリート人間。孤高の存在であり、他人との交流を拒否する。

・・・と、いうのが人間界での見解。

身体が頑丈なのは、魔力により自分の体調を無理やりギリギリ健康状態にしているため。実際いつぶっ壊れてもおかしくない。
なお、体調自動修復スキルは常時発動、かつ本人コントロール不可(というか無自覚)なので、魔力が切れた瞬間に終わる綱渡り状態。

メンタルがタフなのではなく、過去に色々あったために自分に関係することをすべて後回しにして目の前の仕事を最優先する異常な思考が凝り固まってしまっている。
なお他人が感じる罪悪感とか責任感とかを考慮するスキルも欠如しているために相当な能天気or事なかれ主義でない限り、彼に関わると高確率でストレス性胃痛・涙腺異常・SAN値直葬のデバフがかかる。

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